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TOP > My page > Review List of うーつん
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1 people agree with this review 2020/10/12
明晰な音運びと、(録音した教会に由来するのか)豊かな音響でやわらかく包み込んでくれる演奏。「眠りに導く」というコンセプトにしては音楽がクリアで音も前に出すぎるため眠る気持ちに音が勝ってしまっている気もする。まぁ、音はボリュームを調節すればいいわけで、枕元に音源を置くより少し離れた場所からそこはかとなく流れてくるくらいがちょうどよいように思う。照明を落とした湯船につかりながらゆったり聴くのもなかなか良かった(注:湯船で寝てはいけません。寝落ちしないよう各自の責任で十分気を付けてください!)。曲の中ではリストとラッヘンマン、アルカンの曲に惹かれた。あのラッヘンマンでこの優しい調べ…とびっくりした。眠りを愛する人々に向けたやさしさに溢れた愛すべきディスクと思う。眠りに限らず、肩の力を抜いてリラックスしたいときにもおすすめしたい。
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2 people agree with this review 2020/10/08
実に味わい深いディスクと感じた。あまり前のめりにならないように落ち着いたバランスと、ゆったりした滋味深いシフのピアノが心に沁み込む感覚を味わいながら、ヴィトマンの彫りの深い豊かなクラリネットの響きがいろどりを加えていく。 それにしてもヴィトマンのクラリネット、最弱音の表現の素晴らしさに参ってしまった。そっと息を吹きかけただけのような最弱奏の効果が特に際立つディスク。楽器のことはよく分からないが、最弱奏から強奏まで自在に吹き分けていく手練れは他の演奏ではなかなか聴けないと思う。ほんのり息を吹きかけるようなそっとした繊細な音が最晩年のブラームスの心のひだを表すかのよう。音楽の骨格はシフのピアノが盤石の支えとして作られ、そこにヴィトマンのクラリネットが(ヨアヒムのモットーではないが)”自由に、しかし孤独に”歌いあげていく。 ヴィトマンの「ピアノのための間奏曲」は聴きやすい小品集。私は聴いていて、なんとなくブラームスとヤナーチェクを足して2で割ったような雰囲気に似ているように感じた。個人的なイメージだが「心の迷宮に迷い込んだ」ような不思議なさすらいの感じを持っていると感じた。
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3 people agree with this review 2020/09/26
ロマン派が成熟し完熟を迎え、そこから新しい文化の芽が出現してゆく過程の作品が品よく揃えられている。どれも濃厚な色付けはなく、かといって素っ気ないわけでもない。どの曲も「良い趣味」で奏されていると感じた。普通に食べたらこってりしていそうな熟成した(完熟した)素材を、さっぱりと味付けしたコース料理を提供されている感じといったらよいだろうか。ある文化の端境期の室内楽を良質な演奏で愉しみたい方におすすめ。
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8 people agree with this review 2020/09/21
受難曲というとキリスト教信者かその文化に詳しい人でないと立ち入れないのでは、と昔は思っていた。だが、人間が永遠に繰り返すであろう弱さや不安そして望みを、イエス・キリストという「仲介者」によって客観的にあぶり出し、エヴァンゲリストによって進行されるドラマと考えると実に示唆あふれる作品なのだと最近は考えている。 その意味でこの「ヨハネ受難曲」は劇的この上なく「人間の業」を描き出していると思う。折しも、コロナ禍のギリギリの状況で収録されたという当盤はその状況ゆえか高いテンションでドラマが展開していく。 冒頭の「Herr, unser Herrscher, dessen Ruhm」からして、幕が開くなり眼前に悲劇が飛び込んでくるような緊迫感があり、聴き進めるごとに哀しみが積もっていく。「マタイ受難曲」と比して今まであまり聴いてこなかったが、このディスクによってもっと勉強できそうだ。独唱のアリアはそれぞれ登場人物の心境を真摯に描き出して聴き入ってしまうが、私がもっとも惹かれたのは合唱部分。コラールであれ聖書場面であれメッセージが前面に出てきてドラマに没入している。この受難曲が特定の個人でなく、「我々人間たち」のドラマであることを表しているかのようだ。聖書内のストーリーでなく、今の我々にも十分に適用されるドラマなのだろう。 ちょうど礒山雅氏の遺作「ヨハネ受難曲」(2020年)も読んでおり、これによってもヨハネ受難曲の精髄を学べるので、当盤を「参考ディスク」として聴きながら礒山氏の著作を読み進めることも併せておすすめしてみたい。
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4 people agree with this review 2020/09/20
後世の我々が意識している「運命はかくのごとく…」(弟子の作り話だが)に代表されるイメージを洗い流した演奏と感じた。このコンビらしく楽器間の音がバランスよく配置され、音の情報量が豊富でモティーフの受け渡しの流れが見通しよくわかりやすい。 しかし、私が今まで聴いてきたドラマ(同曲の重厚で「闘争から勝利へ」みたいな)をもったディスクとは趣が違い、純粋に音響とモティーフによって構築された音楽を提示しているように思った。いわゆる「運命交響曲」と思って聴くと少しさっぱりと思ってしまうかもしれないが、交響楽作品として聴くにはいろいろな発見ができそうなディスクではないだろうか。初演されたときには「バリバリの前衛音楽」に聴こえたのであろうと頷ける革新性は持っており、愉しめるのは間違いないと思う。 ディスク全体のコンセプトもフランスとの関わりや作品の制作にまつわる検証をめざした性格を持っているので「ベートーヴェンとその時代、他作曲家とのつながり」を学べる内容になっているのもうれしい。ベートーヴェンの聖年にちなんだ、時代考証研究も踏まえた良質なディスクなのでおすすめしたい。
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7 people agree with this review 2020/09/18
ヴィヴァルディとイタリアの現代作曲家による作品と聞いて、どんなものかと入手してみた。のっけから刺激と奇想がほとばしるようなテンションで幕を開け、様々な楽器の組み合わせで作品が登場するので先が読めないジェットコースターのようにライヴ感も体感できる。 が、しかし、であるが不思議とあとに感興が残らない。アイディアもテクニックも面白いが、なにか心に残るものが少ないのだ。私の聴き方が稚拙だからかもしれないが、聴き終えると前述のライブ感も薄っぺらく思えてしまう。「ヴィヴァルディ、その先に」あるのは「ライヴは楽しめたがそれはアトラクションとして」みたいな妙な空虚感だった。
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2 people agree with this review 2020/09/14
名著『マタイ受難曲』を読み終え、次なる山はヨハネ受難曲。実はまだ読了していませんが、他の方の目に少しでも触れて手に取ってもらいたく急きょレビューしておきます。 私自身、バッハの受難曲と言えば「マタイ」で「ヨハネ」はおまけというかその次…みたいな感じ方でいました。そんな中でこの本を読み始め、すぐさま夢中になり、CDラックに長らく眠っていたCDを取り出しつつ読んでみると、実に劇的で内容が充実していることに気づかされました。 本書ではバッハ以前のヨハネ受難曲の歴史に始まり、バッハによる複数の改訂バージョンについての論考や各曲のポイントや聴きどころ、テキストと音符の密接な連関への指摘など挙げるべき点は多いですが、それを次々に読ませる最大の要因は著者のバッハへの想いや曲への愛着と探求心ゆえでしょう。これを読んでいる時(2020年9月)に鈴木雅明&バッハ・コレギウム・ジャパンによる新盤のニュースも入り即購入しこれを聴きつつさらに読み進めるつもりですが、バッハが言葉の一節一音に至るまでイエスの劇的な「死へのドラマ」を音化していることに驚かされてしまいます。 コロナ禍で過去が消え去り、今日が不安に換わり、明日が見えなくなった2020年。不謹慎かもしれませんが、こんな今こそヨハネ受難曲のドラマは聴かれるべきではないかと思います。マタイ受難曲では静かにしかし厳粛に曲が始まりますが、ヨハネ受難曲ではいきなり悲劇の中に鷲掴みで連れていかれるような切実な曲で幕開けします。まるで遠いところにあると思い込んでいたコロナウィルスがいきなり自分の身の回りに襲いかかる今日の状態に近いとも感じてしまいます。「ヨハネ受難曲」で綴られる悲劇は聖書の中や音楽の中だけのものでなく、読んで聴いて今の自分たちと重ね合わせて「実感」するものであるということを痛切に感じます。 もちろん著者はコロナとの関連などは意図していません(コロナ禍以前に逝去されているわけですから)が、バッハの音楽が長い間「普遍」として存在しているのはそれなりの「力」を持っているからで、その力は2020年の現在にもなお「力」と「存在意義」を持ち続けていると言えるかもしれません。いずれにせよ、この著作を通じてヨハネ受難曲を知り、親しみ、そしてバッハの精神世界に思いを馳せてみたくなるでしょう。礒山氏の道案内でヨハネ受難曲の世界に入ってみたい方にぜひ読んでいただきたいです。
0 people agree with this review 2020/09/12
第2弾となったこのディスクもすこぶる快活で自発性と即興性のある仕上がりと思う。ピアノ協奏曲第4番はアルヒーフレーベルから出ていたR.レヴィン&ガーディナー盤と同様に即興的でみずみずしい出だしから始まる。フォルテピアノとオケがぴったりと寄り添いベートーヴェンのいわゆる「傑作の森」にふさわしい音楽の喜びが全体を支配する。 すばらしいディスクなので他の方にもお勧めしたい。だが、個人的な印象として4番には「女王、または皇后」のイメージを持っている(5番が「皇帝」と呼ばれるスケールの曲だからかもしれない)。そのため快活というよりは優雅でたおやか、気品があふれつつ芯の強さも併せ持つような演奏の方がしっくりくる。その点でいうとこのディスクでは快活さやオケの雄弁(静かな哀しみを漂わせた第2楽章で時に強くブツッと奏されるオケの響きなど)が私の考えている雰囲気にすこし方向が合わない個所もあるのが気にかかってしまう。あとせっかくプロメテウス序曲をカップリングするなら、せめて抜粋でもよいのでもう少し入れてほしかった。この2つの理由で★をひとつ減らしておきたい。
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2 people agree with this review 2020/08/10
トリプル・コンチェルトももちろん注目(ソロ3人のお祭り騒ぎにならず、がっちりとハイティンクが手綱を握り安定感のある演奏)ではあるが、私の目当てはピアノ協奏曲第2番の方。 ピリスとハイティンクというコンビによる素晴らしく清々しい演奏をお勧めしたい。昔のCMではないが、「何も足さない、何も引かない」演奏がここにある。このコンビからすれば楽譜にあるがままを奏するだけでよいことであり、何も足す必要はないだろうし、何も引く必要性もない、ということになるのだろう。そんな充実した演奏を安心して聴くことができる。今となっては2人とも引退してしまった以上、このディスクで渇きを癒してみてほしい。
0 people agree with this review 2020/08/02
「変奏の楽しみ」がこのディスクの隠れた愉しみではないだろうか。次々と表情を変え、モーツァルトが微笑みながら「次はこんなの、どう?」と言っているかのよう。ベズイデンホウトによる自由でチャーミングな演奏は「モーツァルトさん、こうやってみたよ!」と対話しているかのよう。誰もが耳にしたことのある有名曲も入っているし、他のディスクでそう出てこない曲もある。しかしマンネリ化しそうな有名曲も新鮮に聴かせてくれるのが彼の良いところ。その工夫は学究的な雰囲気はなく実に自由自在。「どのように?」と問う方には「まぁ、聴いてみてよ!」とすすめてみたい。モーツァルト入門でも、よく聴きこまれている方でも肩ひじ張らずリラックスして愉しめます。
0 people agree with this review 2020/07/21
古楽器の世界を切り拓き、現在に連なるピリオド楽器演奏の礎とも言えるレオンハルトの多才と表現力の多彩さを堪能できるボックスセット。チェンバロ・オルガン・指揮を行き来し、ドイツ・イタリア・イギリス・フランスなど様々な国々へ旅するプログラムを追体験できるのが嬉しい。にぎやかさより謹厳さをまとった慎ましい演奏に襟を正しつつ聴いてみてほしい。 加えて、中に入っているライナーノートも素晴らしい。ヘレヴェッヘをはじめとして彼の薫陶を受けたり、彼と共に演奏する機会を得た音楽家などから寄せられた寄稿文を読むとレオンハルトがいかに彼らの「コンパス」となっていたかが理解できる。レオンハルトのような真の意味での「音楽家」はなかなか出現しないと思われる。そんな彼が刻んで遺していった作品に耳を傾けてみてほしいものである。
4 people agree with this review 2020/07/05
父親である鈴木雅明に続いて今後BCJと新たな航路を開拓するであろう鈴木優人によるバッハのチェンバロ協奏曲。チェンバロ演奏・指揮・研究・編曲の成果を披露する一枚となったが、はたして結果はすこぶるすばらしいものだと感じた。 演奏は奇をてらうわず、いたって楷書的で落ち着いた雰囲気を漂わせるもの。バリバリ弾きこなしオケをドライブする才気煥発というよりはオケと同じ立ち位置で丹念にバッハの筆跡をたどる慎ましさを感じる。中でも第8番ニ短調 BWV1059Rは当盤で聴きどころとなるものだろう。一聴し、ごく自然に入り込むことができた。バッハの素材を方々から集めて吟味し小粋に調理、瀟洒な皿に盛りつけした美味しい一皿。不勉強ゆえ他の編曲(または再構成)があるのか分からないが集めて聴き比べをしてみたいところだ。 あれだけの実績と演奏を行った父親(もちろんまだ現役としてさらなる活躍を期待しています!)にしてこの息子、といった面目躍如たる出来ばえ。オーガナイザーとしても活躍しているしおそらくこれからもBCJと共に、チャラチャラせずに腰を据えて「正統派」として様々な発表を行ってもらえるものと期待していきたい。2020年9月にこのコンビでの「ロ短調 ミサ曲」を聴く予定(コロナウィルスが収束していますように)だが、これを聴いて俄然楽しみになってきた。チェンバロ協奏曲の続編はじめ他の作品が発表されるのも楽しみ。おすすめです。
1 people agree with this review 2020/07/04
演奏家である彼女がが何を考えながら演奏しているのか、目指すところ、演奏者目線からみたその曲の「ツボ」や「難所」が平易な言葉で書かれている。彼女の演奏を聴きながら読んでみると「あ、なるほど、そういうことなのか」と思うことばかり。これからクラシック音楽の扉を開く方には格好の入門書だし、聴きこんでいる方にも音楽の深さを知らしめてくれる案内書となるはずだ。インタビュー形式で収録した内容を一人称形式に直して編集されているが文体やメッセージから彼女の真面目であたたかく、穏やかな人柄と音楽への愛着や探求心がじんわりと伝わる読み物。おすすめです。
ゴルトベルクはどうしても華やかで自由闊達なメロディ部に耳がいってしまう。他の演奏者のディスクでもバスは隠れがちになってしまうが、当盤は「バス声部の変奏曲」である事がとても理解しやすい演奏と感じた。そして同時にバッハに対するメジューエワのリスペクトも。 更にゴルトベルク一枚にせず他にも魅力的な曲を添えてくれているのもうれしいところだ。 アリアに始まり、どの変奏も手が抜かれていない実に丁寧な演奏。他の奏者が丁寧でないというのではない。丁寧な弾きぶりが他の奏者以上なのだ。どの音もおろそかにしないでいて、かと言って凝り固まっている感じもない。右手のメロディ、左手のバス、両方の旋律が歌いあい、呼応しあい、入り混じっていく過程を愉しむことができる。敢えてリクエストするならリピート部の装飾においてあともう少し即興的な味付けがされたらいいな、と思うこともあったので次のディスク(または演奏)で期待したい。 ゴルトベルクは彼女の著書「ピアノの名曲 聴きどころ弾きどころ(講談社現代新書、2017年)」内にある同曲の記述を読みながら聴くとなおさら分かりやすいのでこちらの書籍もおすすめしたい。
0 people agree with this review 2020/05/24
舞台は原発の燃料棒を思わせる無機質に光るオブジェが上から吊り下がるシンプルなつくり。歌は前作「松風」と比べてもかなり直情的で激しい表情付けがされている。地震などの衝撃を、家族を亡くした感情の揺れを伝えるためだろうか。打楽器による激しい出だしも今までにないやり方。動きも抑制され逆に激しい歌いぶりが余計に目立つことになる。 母親クラウディア役の表情は能の物狂いにも似た感じで痛切にその哀しみを突き付けられた。クラウディアの義姉ハルコ役の藤村実穂子も役柄にはまっていた。人間の悲劇が繰り広げられる中、それでも海は静かにそこにある。最後はみな海のかなたに目線を送りながら様々な想いを心にひめ、幕は下りていく。 東日本大震災、その津波によって引き起こされた原発事故…現在に生きる日本人が決して忘れることができない悲劇。 福島、隅田川…突然の悲劇で子供と離ればなれになってしまった母親の哀しい狂気。 こういう括り方は不謹慎かもしれないが、悲劇であれ芸術であれ日本という地をきちんとした形で発信し理解の一端にしてもらうことは必要なことだと思う。オペラという形式で細川俊夫が伝えた「日本」。日本という国が、大震災のあった地であり、原発事故のあった地であり、「彼岸」という祖先または故人と交流する文化風習を持つ地であり、「能」という芸術が育まれた地でもある、ということを広く知って考えてもらえるようになればよいが。 2020年に当盤を入手し視聴したためかもしれないが、放射能を防ぐ防護服のシーンなどは本年の病院内で防護服を着用し苦闘する方々のシーンにかぶって見えてしまった。2011年のあの事故だけでなく2020年に起きている災厄にも通じるような感覚をもって観ることにもなるかもしれない。
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