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Review List of フォアグラ 

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  • 3 people agree with this review
     2021/07/24

    クーベリックの遺産中最高のものがシカゴ響とのマーキュリー録音である。クーベリックのライフワークであった「わが祖国」も第1回録音のシカゴ盤が断然素晴らしく同曲のベストワンだと私は思っている。知と情のバランスが見事でフォルムは崩れず、それでいて白熱的な演奏であり、シカゴも圧倒的な素晴らしさだ。またブラームスの1番、チャイコフスキーの4番、6番も屈指の名演であり、クーベリックが欧州に帰って数年後に録音したウィーン・フィルとのデッカ、EMI録音とは密度も燃焼度もまるで違う。クーベリックはエモーショナルな表現が突然出てフォルムを崩したり、知が勝ちすぎて面白みのない演奏になったり私はあまり評価していないのだが、シカゴ時代はそんなことがないのだ。オケとの関係が良好だったことも伺える。加えてマーキュリーの超優秀録音!ウィルマ・コザート、ロバート・ファイン夫妻との出会いがこの幸福な録音を生み出すことになった。エロクエンス盤の解説が読み応えがある。これを見ると当時クーベリックが意欲満々のプログラムを組んでいたことがわかる。また、クーベリック退任の大きな要素になったシカゴ・トリビューン紙クローディア・キャシディの功罪がまとめられているのも興味深い。彼女の批評の表現はちょっとありえないレベルでありこれだけ優れた演奏をしてこんな叩かれ方をされたらクーベリックが深く傷ついたのもむべなるかなと思わせる。

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     2021/07/22

    私にはもうひとつわからない指揮者であるキリル・ペトレンコの新譜。7番はマーラーの交響曲中最も好きな曲なので評価も厳しくならざるを得ないが、高水準な演奏であることを認めつつトップ5に入るものではないという感想だ。ペトレンコでよくわからないのは表現の一貫性が希薄なことで、ここでも抜群に切れ味鋭い部分と案外サラッと過ぎてしまうところが混在している。そのため部分的には面白いのだが、意外に盛り上がらないのだ。第3楽章も随分明るい音楽になっているが失われたものも多いように思える。

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     2021/06/14

    ベートーヴェンのピアノソナタ全集にはポミエのような楽しく聴けるものもあるが、ポリーニは違う。CD1枚がブルックナーの交響曲3曲分くらいのカロリーがあり疲れ果ててしまう。1音も疎かにせず完璧で息の詰まるポリーニの演奏は苦手であり、ショパン、シューマンは聴き続けられない。しかしベートーヴェンは作曲家の懐の深さが違い、ポリーニの40年の挑戦もがっちり受け止める。奇抜な表現は全くないが、それでもこんなベートーヴェンは唯一無二であり、大変な偉業だと思う。やっと全曲聴き終えたが、これからもまた少しずつ聴き直してみよう。ポリーニの半生かけた全集なのにパッケージが安物くさいのが気に入らない。ポリーニに失礼ではないか。また、通し番号がなくニックネーム表記もないのも不親切だ。作品番号だけでああ、あの曲と分からない人はリスナーにいらないということなのか。

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     2021/06/02

    イギリスを中心に活躍する藤倉大の作品集。多作家らしいがソニーから毎年新作をリリースされているのはコンテンポラリー作曲家としては異例だし幸運とも言えよう。フリー・ジャズ風だったり環境音楽風だったりで肩の凝らない作品群だが、ホルン協奏曲がホルンという楽器の魅力を無視したところを面白いと思うかどうか。その点では笙のための「OBI」が最も楽器に即した音楽になっている。正直もう一度聴きたいとは思わないのだが、最後の「UMI」は少し様相が違い、聴き手のイメージを喚起させる力を持っている。藤倉は映画音楽に力を入れたいそうだが、確かにその方向が合っているかもしれない。

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  • 20 people agree with this review
     2021/05/15

    オリジナルカップリングになっておりバルビローリボックスよりはるかにいいが、裏ジャケットの復刻はしてほしかったな。「ロメジュリ」やチャイコフスキー3大バレエは表裏一体のイラストだったから残念。それはともかくジャケットを眺めていたら70年代録音の80%はLPで持っていたと思い至った。当時中学生から大学生、どうやって資金調達したのか。プレヴィンの大ファンという訳でもなかったのだが、そういえばこの頃のプレヴィンで失望したものはひとつもないのだ。プレヴィンはレコーディングに詳しく、クリストファー・ビショップ、クリストファー・パーカーとのチームは当時のEMIでは別格の良質の録音を提供していたと思う。ラフマニノフ、チャイコフスキー、ウォルトン、ブリテンは今も最高の演奏。合わせ物も大変上手い。ソリストと丁々発止でありながら見事にソリストをたてている。手を出さなかった残り20%はプレヴィンと相性がいいとは思えなかったシリアスな曲でそのショスタコーヴィチを8番から聴いたのだが驚愕。73年にロシア以外でこの曲の真髄にここまで迫った演奏があっただろうか。シカゴとの4番も傑出した出来。ほんとに70年代のプレヴィンは冴えていた。これが80年代RPOとの録音では残念ながらタガが緩んでいる。プレヴィンにとっても、そしてLSOにとっても70年代は黄金時代だったと思うが、たしかプレヴィンはドイツものが弱いとして楽団員、会員からクレームが入り辞任のきっかけになったと聞く。絶頂期は後年になって気が付くものだ。

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     2021/05/11

    2020年3月のライブ。オケ、合唱とも2団体の合同で、写真を見るとステージ上の人数は凄いことになっている。さらに普通に客も入っており、ドイツでは3月にまだこんなコンサートがやれたんだと驚く。グレの歌が上演できるのは次回はいつになるのやら。その意味でも価値ある録音ではある。ティーレマンの練達の指揮、歌手陣及びシュプレッヒゲザングのグルントヘーバーの好演等水準の高い演奏であることは伝わる。ただ、聴き手を巻き込むところまではいかない。マイクが遠く音量が小さいのも一因で、生々しさが足りないのだ。オケもあまり上手く聴こえないし「山鳩の歌」の痛切さ、兵士の合唱の複雑怪奇な魅力ももうひとつ。先の「影のない女」でも録音に不満があったが、折角のキャスティングなんだから、スタッフはちゃんと仕事をしてもらいたいものだ。

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  • 14 people agree with this review
     2021/05/03

    レーグナーの年表をHMVが作ったのを知って大いに驚いた。旧東独で活躍したスイトナー、ケーゲル、レーグナーは欧米では無名なのでこんな詳細な年表を作るのは日本ぐらいなのだろうが、これを無料で見れるのだから深く感謝し未だレビューがないので御礼もかねて書かせていただく。レーグナーは日本と深く関わった人だが、その割によくわからない指揮者と評されることが多い。それはレーグナー応援団であった評論家宇野がクナッパーツブッシュやシューリヒトに例えて賞賛したことが大きかったと思う。まず、クナとシューリヒトでは全く個性が異なるし、大体この評自体が頓珍漢なのだ。レーグナーは音楽の見通しがよく、タメを作らず前へ前へ音楽を推進する腕の立つ職人指揮者であり、タイプとしてはスタインバーグが近い。このブルックナーでも音楽は快調に進み、やるべきことは全てやっているので早いテンポでも不足感はない。むしろブルックナーの音楽が持つアグレッシブな面が出てきて非常に面白い。6曲いずれも出来は安定して優れておりレーグナーの実力がわかるし、読響もそれを認めていたから東独崩壊後も彼を招聘し続けたのだろう。ウェイトブリックから出ているブラームスも優秀であり、昔の変な評に左右されず聴いてほしい音楽家だ。尚、4番はノーヴァク版と紹介されているがハース版だと思うのだが。

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  • 2 people agree with this review
     2021/04/23

    メータ/LAPボックスの7番を聴いた後にクルレンツィスを聴いたのだが、メータのほうがよかった。メータはヴァイオリンを両翼配置にしているがクルレンツィスはやっていない。クルレンツィスは第1楽章で内声の弦の刻みを強調しはっとさせるが、実はメータもやっている。そしてメータにある興奮がクルレンツィスにはないのだ。結局クルレンツィスは表情をどぎつくやっているだけという疑問が湧く。ピリオドでこれだけの精度は瞠目すべきものであるが、徹底的な作りこみがベートーヴェンの音楽が本来持つ爆発力を減退させたのではないか。その点ではロトやエラス=カサドのほうが上だと思う。まあ、こんなことを言って毎回CDを買っている段階でクルレンツィスの術中に嵌っているのだが。彼は元々聴き手を感動させようなどとは考えていない。その手口を検分して議論にしてもらうことが目的なのだ。もしかすると21世紀のクラシックはこうしたものかもしれない。

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  • 1 people agree with this review
     2021/04/16

    ルース・スレンチェンスカ。天才少女として4歳でデビュー、7歳でコルトー指揮パリ・フィルと共演の写真がブックレットにある。2度のリタイアを経て夫の死後教え子の後押しで2度目のカムバック。日本との関りも深く2018年にサントリーホールでリサイタル、この時なんと93歳。今もご存命でお元気の様子。私は全く知らないピアニストだったのだが動画で知り、興味を持って購入。30代後半の録音だが、これが実に素晴らしい。CD1のショパン・エチュードから冴えたテクニックと繊細なタッチ、溢れる詩情で魅了される。ショパンはどれも抜群だが、リストもいい。機械的と批判されたそうだが、当時は彼女の新しさが十分理解されなかったのかもしれない。どうやら彼女のことを知る人は今も多くないらしく今回のリリースの大半は初CD化らしい。エロクエンスはよく復刻してくれたものだ。幼少期、全盛期の写真も豊富。多くの方に是非聴いていただきたい。

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  • 12 people agree with this review
     2021/04/12

    他のレビュアーの方も書かれているが、ユニヴァーサルとしては異例な裏ジャケットまで復刻、カプリングが変わったものもさりげなく裏ジャケットにオリジナルのように曲目追加してある。カルショウが嘆いていたようにデッカの営業はジャケットにコストを費やす気はさらさらなかったから魅力的なジャケットはあまりないのだが、それでもコンプリートボックスを購入する人間には大事なポイントだ。アバド/LSO、グリュミオーのBOXがなぜできなかったのか、不思議な会社だ。全盛期のデッカの録音は実に素晴らしく聴いていて本当に楽しいしリマスタリングで奥行きも広がっている。。演奏もどれも大変優れている。ラヴェルを楽しみにしていたのだが、ロジェ・ワグナー率いる合唱共々こんなに艶っぽい「ダフニス」は他にないし「ラ・ヴァルス」の痛快さも気持ちがいい。有名な「春の祭典」もスリル満点。「ペトルーシュカ」は1911年版と記載されているが、1947年版の間違いだろう。バレンボイム・ソニーBOX、アバド/LSOBOXと続けて聴いて、彼らの70年代の演奏はなんて面白いんだろうと思わずにいられない(今度出るプレヴィンワーナーBOXも)。覇気が合ってノリがよくやりたいことをやりきっている。これが80年代ベルリン・フィル、ウィーン・フィルの常連になる頃から皆つまらなくなってくる。オケ、伝統と妥協することで個性は薄れ立派だが退屈な演奏に陥ってしまったのは誠に残念なことだった。

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  • 2 people agree with this review
     2021/04/06

    欧州に商用で出かけた際時間があればコンサート、オペラに飛び込むのを楽しみにしていたが、そうした機会にアーロノヴィッチを3回聴いた。パリで1回、ケルン2回。凄い確率だと思う。日本では知名度が低いが欧州では活躍した名匠であった。代表盤であるラフマニノフでもスケール大きくオーケストラを鳴らしこくもたっぷり、ピアノとの絡みも緻密で素晴らしい。ヴァーシャリも万全のテクニックと高い音楽性を持ったピアニストであり、ラフマニノフの憂愁、憂鬱な楽想を見事に描き出す。あまり演奏されないが実は非常に面白い曲である1番、4番の魅力をこれだけ引き出した演奏は少ないし3番もベスト演奏のひとつ。

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  • 4 people agree with this review
     2021/03/29

    正直こんなに安くなかったら手を出さなかった。史上初のベートーヴェンピアノソナタ全集ということで、規範的な折り目正しい演奏だと思っていたのだ。それを古い録音で聴くのはつらいなあと。ところが予想したのとは全く違う、早めのテンポの軽やかでファンタジックな演奏なのだ。「ハンマークラフィーア」ですら実に軽い。こんなベートーヴェンはあまりないのではないだろうか。ワーナーのリマスタリングによって音は聴きやすいし、聴き始めてすぐにシュナーベルの世界に入り込んでしまう。少しも古さを感じない名盤。

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     2021/03/27

    ジェイムズ・レヴァインが亡くなった。とはいえ、この20年病気で指揮台に立てた機会は少なく、さらにセクハラ騒動で引退状態だったのでショックはないのだが寂しい最後に感慨もある。そう、一時は飛ぶ鳥を落とす勢いだったのだ。私は昔からレヴァインはクラシック界のスピルバーグだと思っていた。ワクワクドキドキのエンターテインメントに仕上げる能力は抜群、ただ深みはない。コンサートよりオペラのほうが合っており、とりわけイタリア・オペラを面白く聴かせる。最高傑作がこの「カヴァレリア・ルスティカーナ」だと思う。重々しいカラヤンとは比較にならない充実ぶりで輝かしい歌とオケの饗宴であっという間に終わってしまう。歌手もみな好演。ドミンゴはプレートル、シノーポリとの後の録音よりこれのほうがよい。78年の録音だが、レヴァインが良かったのは70年代、RCA、CBS、EMIに入れていた頃だろう。オリジナル・ジャケットで出しなおしてほしいものだ。

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  • 0 people agree with this review
     2021/03/27

    バヴゼはお気に入りのピアニスト。ここでもテクニック、音楽性ともに万全。問題はノセダの指揮にある。早いテンポで疾走することで迫力を出そうとしているのだが、1番終楽章マジャール色は消えてしまい打楽器との掛け合いの面白さも中途半端になってしまっている。フリッチャイ、ショルティそれにブーレーズのテンポは実に見事だった。2番も全く同じことがいえる。2番終楽章のショルティの素晴らしさとは比較にならない。ノセダのバルトーク理解の底の浅さが露呈。BBCフィルはロンドンのオケ以上の好演だし録音も優れているのに残念。

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  • 8 people agree with this review
     2021/03/21

    ネゼ=セガンらしいよく整理された爽快な演奏。混乱したところもある1番だが、ネゼ=セガンはものともせずメリハリある表現で楽しく聴かせる。2曲とも雑味がないのでスルスルと音楽が進み、あっという間に終わってしまう。しかし、それでいいのだろうか。この2曲は聴き終わって苦いものが残る作品ではないのか。最近DGから出る指揮者はみなこういう傾向だと思う。今度ワーナーからプレヴィンのコンプリートが発売されるが、プレヴィンは濃厚なロマンティシズムと洗練のバランスセンスが抜群だった。近年の指揮者は感心はしても感動はさせてくれない、というのは私の感性が衰えたからなのか。

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