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Review List of つよしくん 

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  • 3 people agree with this review
     2011/01/21

    フランソワは、天性のラヴェル弾きではないかと思う。それくらい、ラヴェルの音楽を自らの血や肉として、それこそ天性の赴くままに、自由奔放に弾いているような感じがする。ここには理詰めと言った概念は薬にしたくもなく、即興性と言った言葉がぴったりくるような思い切った強弱やテンポの変化が連続している。これほどまでに崩して弾いているのに、やり過ぎの印象をいささかも与えることなく、随所にフランス風のエスプリ漂う瀟洒な味わいに満ち溢れているというのは驚異的ですらあり、フランソワの芸術性の高さを窺い知ることが可能だ。夜のガスパールは、そうしたフランソワの芸風がてきめんにあらわれた名演である。夜のガスパールを得意としたピアニストとしてはアルゲリッチがおり、アルゲリッチも自由奔放な、ドラマティックな名演を成し遂げたが、フランソワの場合は、加えて、前述のようなセンス満点の瀟洒な味わいがプラスされているという点に大きな違いがあると言える。優雅で感傷的な円舞曲やクープランの墓も、その即興性豊かな演奏によって、他のピアニストによる演奏とは全く異なる表情が随所に聴かれるなど、実に新鮮味溢れる名演に仕上がっている。HQCD化によって、音質に鮮明さが増した点も、本盤の価値を高めるのに大きく貢献している。

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  • 3 people agree with this review
     2011/01/20

    フランソワというピアニストは、決して理詰めで演奏するのではなく、自らの感性の赴くままに演奏していると言える。ある意味では、自由奔放とも言えるが、アルゲリッチのようなドラマティックというわけでもない。そこはフランス人ピアニストの真骨頂とも言うべきであるが、自由奔放に弾きつつも、フランス風のエスプリ漂う瀟洒な味わいを失うことがないのだ。思い切った強弱やテンポの変化など、あくの強ささえ感じさせるほど相当に崩して弾いているのに、そこから生み出される音楽の何と言う味わい深さ。これはフランソワというピアニストの類まれなる芸術性の高さの証左であると考える。本盤は、フランソワによるドビュッシーのピアノ曲のうちの有名曲を集めたものであるが、どの曲をとっても、フランソワの個性的なピアニズムに貫かれていると言える。前奏曲の4曲の思い入れたっぷりの音楽は、これぞフランス音楽とも言うべきセンス満点の名演であるし、サラバンドの詩情豊かさもフランソワならではのものだ。月の光など、他のどのピアニストによる演奏よりも快速のテンポで進行するが、それでいて、情感の豊かさにいささかの不足もないのは、殆ど至芸の領域に達していると言える。HQCD化によって、若干であるが、音質に鮮明さが増した点も評価したい。

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  • 5 people agree with this review
     2011/01/19

    凄い演奏だ。幻想交響曲の名演と言えば、どちらかと言えば、フランス人指揮者によるフランス風のエスプリ漂う演奏が多い。もちろん、ミュンシュ(特に、昨年発売のパリ管弦楽団とのライブ録音)やクリュイタンス(特に、来日時のライブ録音)のようなドラマティックな豪演もあるが、それららの演奏にも、フランス風の瀟洒な味わいが内包されていた。ところが、クレンペラーの演奏には、そのようなフランス風のエスプリなど、どこにも見当たらない。ゆったりとしたインテンポによるドイツ風の重心の低い演奏だ。同じく独墺系の指揮者による名演としてカラヤン盤が掲げられる(特に74年盤)が、カラヤンの場合も、演奏全体としてはドイツ風の重厚なものであるものの、カラヤンが鍛え抜いたベルリン・フィルの色彩豊かな音のパレットを用いて、可能な限り、フランス風の音を作り出していた。その結果として、重厚さに加えて華麗という表現が相応しい名演に仕上がっていたと言える。しかしながら、クレンペラーの場合は華麗ささえないと言える。強いて言えば、野暮ったささえ感じさせるほどなのだ。しかしながら、その重心の低いスローテンポの音楽から浮かび上がってくる内容の深さは、同曲のいかなる名演をも凌駕すると言える。クレンペラーは、そもそも幻想交響曲を標題音楽としてではなく、純粋な交響曲として演奏しているのだろう。前述のように、ゆったりとしたインテンポによる決して前に進んでいかない音楽ではあるが、それによって、ベルリオーズの音楽の魅力が、その根源からすべて浮かび上がってくるかのような趣きがある。木管楽器の活かし方も新鮮さの極みであり、この音楽をはじめて聴くような印象を受ける箇所が多く散見される。そして、演奏全体としてのスケールの雄大さは、他にも比肩するものはない。あまりの凄まじい指揮ぶりに、必死でついて行ったフィルハーモニア管弦楽団も、アンアンブルが微妙に乱れる箇所(特に、終結部)もあり、スタジオ録音ではありながら、実にスリリングな印象を受ける箇所さえもある。HQCD化によって、音場が拡がるとともに、音質に鮮明さを増した点も、本盤の価値を高めるのに大きく貢献している。

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  • 9 people agree with this review
     2011/01/18

    同曲演奏史上最高の超名演だ。録音は1975年であるが、これは、カラヤン&ベルリン・フィルの黄金時代。カラヤンにとっては、その後、様々な故障を抱えて体力的に衰えていく分岐点となった年であるし、ベルリン・フィルも、楽団史上最高の名奏者が集まった全盛期であった。そして、ロストロポーヴィチの脂が最も乗った時期でもあり、当時のベルリン・フィルの首席ヴィオラ奏者のコッホも加わったメンバーの組み合わせは、正に豪華絢爛にして豪奢と言わざるを得ないだろう。こうした豪華な面々の組み合わせがかえって仇になる作品もあるとは思うが、R・シュトラウスの管弦楽曲の場合は、そのオーケストレーションの華麗さ故に大いにプラスに働くことになる。カラヤン&ベルリン・フィルの重量感溢れる豪壮な演奏は、それだけで聴き手の度肝を抜くのに十分であるし、ロストロポーヴィチのチェロの表現力の幅の広さは、正に史上最高のドン・キホーテと言っても過言ではあるまい。主題提示部の圧倒的な迫力から、終曲の詩情豊かな繊細さに至るまで、このチェリストの底知れぬ実力を感じずにはいられない。カラヤン&ベルリン・フィルは、本盤の約10年後に、メネセスと組んで、ドン・キホーテを録音しており、名演ではあるものの、とても本盤ほどの魅力はない。HQCD化によって、音場がやや拡がった点も評価したい。

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  • 4 people agree with this review
     2011/01/17

    ケンぺは、R・シュトラウスの協奏曲やオペラからの抜粋を含めたほぼ完全な管弦楽曲全集を録音したが、本盤は、当該全集から2曲を抜粋したCDだ。いずれも、素晴らしい名演と高く評価したい。アルプス交響曲は、カラヤン&ベルリン・フィルの名演が発売されて以降、録音点数が激増し、今や、多くの指揮者の主要レパートリーとなっているが、本盤の録音当時(1970年)は、他にも殆ど録音がなかった。CD時代とLP時代の違いということも要因の一つと考えられなくもないが、現代の隆盛からすると隔世の感があると言える。ケンぺの演奏の特色を一言で表現すると質実剛健ということになるのではないか。最近の演奏が特色とする華麗さなどは殆ど見られない。堅固な構成力を重視した演奏で、標題よりも、交響曲という形式に主眼を置いているような渋い印象を受ける。ドレスデン国立管弦楽団のいぶし銀の響きも、こうしたケンぺのアプローチを助長することに繋がっており、演奏が含有する内容の濃さ、味わい深さといった点では、アルプス交響曲の数々の名演の中でも最右翼に掲げるべきものであると考える。同様の評価は、併録のティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずらにも言える。音質はもともとイマイチであったが、HQCD化によって、若干ではあるが、音質に鮮明さを増した点も高く評価したい。

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  • 4 people agree with this review
     2011/01/16

    テンシュテットが咽頭がんに倒れる直前の録音である。当初は、全集の中に組み込まれる予定であったが、本演奏の中に、テンシュテットがどうしても取り直しをしたい箇所があったということで、当初発売の全集には組み込まれなかったいう曰くつきの演奏である。全集の発売後、数年経ってから漸く発売されたが、素晴らしい名演だ。テンシュテットが取り直しをしたかどうかは、私は承知していないが、そのようなことはいささかも気にならないような見事な出来栄えと言える。思い切った強弱の変化やテンポ設定、時折垣間見せるアッチェレランドなど、とてもスタジオ録音とは思えないようなドラマティックな表現を行っている。テンシュテットは、咽頭がんに倒れて以降は、コンサートや録音の機会が著しく減ったが、本盤のような爆演を聴いていると、病に倒れる前であっても、一つ一つの演奏や録音に、いかに命懸けの熱演を行っていたのかがよくわかる。ロンドン・フィルも、こうしたテンシュテットの鬼気迫る指揮に、よくついて行っており、独唱のバルツァやケーニッヒともども、望み得る最高のパフォーマンスを示していると言っても過言ではあるまい。HQCD化によって、音場が拡がるとともに、音質に鮮明さが増した点は、本名演の価値をより一層高めるのに大きく貢献していると言える。

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  • 6 people agree with this review
     2011/01/16

    テンシュテットが咽頭癌を患った後の演奏は、いずれも命懸けのものだった。一つ一つのコンサートに臨む姿勢たるや、正に神がかりのような凄まじく燃焼度の高いものであった。テンシュテットが最も得意とした作曲家はマーラーであったが、現在発売されているマーラーの数々の名演の中でも、1993年のマーラーの第6と第7は、別格の超名演と高く評価したい。明日の命がわからない中でのテンシュテットの大熱演には、涙なしでは聴けないほどの凄まじい感動を覚える。本盤の第7を、過去に完成した全集中のスタジオ録音と比較すると、演奏の装いが全く異なることがよくわかる。粘ったようなテンポ、思い切った強弱の変化やテンポ設定、猛烈なアッチェレランドを駆使して、これ以上は求め得ないようなドラマティックな表現を行っている。あまりの指揮の凄まじさに、テンシュテットの手の打ちをよく理解しているはずのロンドン・フィルであえ、ある種の戸惑いさえ感じられるほどだ(特に、第1楽章終結部のアンサンブルの乱れなど)。それでも、必ずしも一流と言えないロンドン・フィルが、ここでは、荒れ狂うのようなテンシュテットと渾然一体となって、持ち得る最高のパフォーマンスを発揮していると言える。演奏終了後の聴衆の熱狂も当然のことであると考える。HQCD化によって、音質がより鮮明になったのも嬉しい限りだ。

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  • 8 people agree with this review
     2011/01/16

    ベルリン・フィルは、今日に至るまで、マーラーの第9の名演を数多く成し遂げてきた。本盤のバルビローリを皮切りとして、カラヤンの新旧2種、アバド、そして、最近のラトルに至るまで、カラヤン以降の歴代の首席指揮者が素晴らしい名演を遺してきている。バーンスタインによる客演もあり、それは名演と評価するにはいささか躊躇するが、それでも大熱演を成し遂げたことは否定し得ない事実である。こうした名演、熱演が目白押しの中で、バルビローリの名演こそ、その後のベルリン・フィルによる名演、熱演の礎になったのではないかと考える。本盤の録音当時は、ベルリン・フィルは、必ずしもマーラーが好きではなく、演奏頻度も高くなかったと聞くが、そうした中で、このような名演を成し遂げたという厳然たる事実に対して、バルビローリの同曲への愛着と集念、そして、ベルリン・フィルとの抜群の相性の良さを感じずにはいられない。この交響曲に内在する死への恐怖と闘い、それに対する生への妄執を、バルビローリは、思い入れたっぷりのコクのある指揮で、見事に表現し尽くしていると言える。特に、終楽章の美しさは出色のものがあり、ベルリン・フィルの厚みのある重厚な音色と相まって、これ以上は求め得ないような絶美の表現に仕上がっていると言える。HQCD化によって、音場が拡がるとともに、鮮明さが増した点も高く評価したい。

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  • 7 people agree with this review
     2011/01/15

    大河ドラマのファンにとって、待望のアルバムと言える。大河ドラマは、原則として1年間に渡って放送されるので、メインテーマについては約50回程度聴くことになり、どのような音楽でも自然と耳に入ってしまう。それ故に、過去の大河ドラマのメインテーマを聴くと、それぞれの年の想い出とオーバーラップして聴くことになるのが、懐かしくもあり、楽しくもある。そのような貴重な体験をさせてくれる意味でも、きわめて意義の多いアルバムと言える。私個人としては、大河ドラマを通しで見たのは峠の群像以降であるが、1年を通して聴いた曲については、正に、それぞれの年の想い出に浸りながら楽しく聴かせていただいた。峠の群像以降に限って言えば、ドラマとしての最高傑作は徳川家康といのち、楽しさだけに限れば、独眼竜政宗と八代将軍吉宗だと考えているが、メインテーマはいずれも超一流の作曲家の手による作品であり、音楽自体はいずれも実に高水準の優れたものであると言える。それにしても、世界的な作曲家であるモリコーネや武満徹、富田勲をはじめ、池辺信一郎など、超一流の者ばかりであるし、演奏も、デュトワやアシュケナージをはじめ、我が国を代表する指揮者によるもの。加えて、我が国最高のオーケストラであるNHK交響楽団が演奏するというもの(3作目以降)であり、あらためて、大河ドラマの豪華さを思い知った次第である。残念なのは、50作目の江が入っていないこと。2月発売のCDとの兼ね合いがあることはよくわかるが、それであれば、時期を遅らせて、江を含めた上で発売しても良かったのではないかと思った聴き手は私だけではあるまい。

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  • 7 people agree with this review
     2011/01/15

    かつて従来CDで聴いた際は、それほどいい演奏のようには思えなかったが、今般のHQCD化によって驚いた。これほどまでにいい演奏だったとは。テンシュテットは、本来的にはマーラー指揮者だと思う。マーラーを指揮する時、テンシュテットはまるで別人のように燃え尽くす。その劇的な演奏は、かのバーンスタインにも匹敵するほどで、特に、ライブ録音における命懸けの爆演は、身も体も吹っ飛ばされるような圧巻の迫力を誇っていると言える。他方、テンシュテットは、ブルックナーのすべての交響曲を録音しているわけではない。しかも、録音した交響曲(特に、本盤の第8や第4が中心となるが)に対するアプローチは、マーラーに接する際と同様だ。ブルックナー演奏の王道とも言えるインテンポなど薬にしたくもなく、激しく変転するテンポ設定や思い切った表情づけ、強弱の変化、アッチェレランドの駆使など、ある意味では禁じ手とも言えるような指揮ぶりだ。それでも、聴いた後の感銘はなかなかのものなのだ。最近発売されたベルリン・フィルとのライブ録音も聴きごたえのある名演だったが、高音質化された本盤の手兵ロンドン・フィルとの演奏も名演だ。ヴァントや朝比奈の超名演と比較して云々することは容易であるが、彼らの演奏だけが正解ということはない。必ずしも正統的な演奏とは言い難いが、テンシュテットの個性があらわれた異色の名演と評価してもいいのではないだろうか。

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  • 1 people agree with this review
     2011/01/15

    ブルッフは、ブラームスとほぼ同時代の作曲家であり、交響曲をはじめ、様々なジャンルの作品を遺しているにもかかわらず、今日でも演奏される機会があるのは、ヴァイオリン協奏曲第1番、本盤におさめられたスコットランド幻想曲など、わずかしかない。辛口のブラームスでさえ、ブルッフを評価していたのであり、それは相当に不当な評価と言わざるを得ない。ブラームスのように、堅固な様式美を誇ったわけでもなく、むしろ旋律の美しさが際立つ作品を遺したこともあって、もしかしたら、そのあたりに聴き手に飽きられる要因があるのかもしれない。もっとも、スコットランド幻想曲など、その極上の旋律美には、身も心もとろけてしまいそうになるくらい魅力的だ。そのような作品だけに、パールマンのように、明るくて美しい音色と華麗なテクニックを看板にするヴァイオリニストの演奏がよくないわけがない。本演奏は、スコットランド幻想曲の美しさを見事に表現し尽くした素晴らしい名演と高く評価したい。あわせて、本盤には、第1番に比して殆ど演奏されないヴァイオリン協奏曲第2番が収録されているが、これも、極めて美しい名演であり、録音が殆どなされていないという意味でも貴重な演奏と言える。HQCD化による音質向上効果も著しい。

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  • 6 people agree with this review
     2011/01/15

    素晴らしい名演だと思うが、その成功の要因は、まずはジュリーニ&シカゴ交響楽団による名演奏にあると言える。ジュリーニは、イタリア人指揮者でありながら、ブラームスなど独墺系の楽曲を得意とした指揮者であるが、本盤でも、そうした実力を大いに発揮していると言える。ブラームスの重厚なオーケストレーションを、無理なくならすとともに、そこに、イタリア人ならではの温かみのある音色を加えた味わい深い演奏を行っていると言えるのではないか。どの箇所をとっても、ヒューマニティ溢れる美しさに満ち溢れている。ブラームスの他の楽曲では、こうしたアプローチが必ずしも功を奏するわけではないが、ブラームスの楽曲の中でも明るさを基調とするヴァイオリン協奏曲の場合は、こうしたジュリーニのアプローチは見事に符合すると言える。シカゴ交響楽団もジュリーニの指揮の下、実に楽しげに音楽を奏でているようだ。こうした安定感抜群の伴奏の下、パールマンは、変幻自在の素晴らしい名技を披露している。正に唖然とする巧さと言うべきであるが、ジュリーニの名指揮によって、技量だけが全面に出ることなく、内容の豊かさが伴っているのも素晴らしい。HQCD化によって、音質がより鮮明になったのも、本盤の価値を高めるのに大きく貢献している。

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  • 6 people agree with this review
     2011/01/15

    風格のある実に素晴らしい超名演だ。フィンガルの洞窟は、LP時代はスコットランドにカプリングされ、その後、CD化された際には、スコットランドがイタリアとカプリングされたことから、長らく日の目を見ることがなかった幻の名演であったが、やはり本盤を聴くと、その雄渾なスケール感に圧倒される。ゆったりとしたインテンポによる演奏で、特に、何かをしているわけではないが、その深沈たる内容の濃さは、他のいかなる名演を凌駕する至高のレベルに達していると言える。真夏の夜の夢には、同じく名演としてプレヴィン盤があるが、プレヴィン盤は、聴かせどころのツボを心得た演出の巧さが光った名演であった。ところが、クレンペラーには、そのような聴き手へのサービス精神など薬にしたくもない。堂々たるインテンポで、自らの解釈を披露するのみであるが、その演奏の味の濃さと言ったら、筆舌には尽くしがたいものがあると言える。テンポも実にゆったりとしたものであるが、それだけに、メンデルスゾーンがスコアに記した音符のすべてが音化され、音楽に内在する魅力が前面に打ち出されてくるのが素晴らしい。木管楽器の活かし方など、出色のものがあり、クレンペラーの数ある名演の中でも、トップの座を争う出来と言えるのではないか。HQCD化による音質向上効果も目覚ましいものがある。

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     2011/01/15

    スコットランドの名演は極めて少ないと言える。独墺系の作曲者の手による交響曲の場合、かなりの点数の名演があってしかるべきであるが、スコットランドほどの名作にしては、あまりにも少ないと言える。本盤のクレンペラーがダントツの名演であり、かなり引き離されてマークやカラヤンと言った当たりが掲げられる程度。シューマンで名演を披露したバーンスタインに大いに期待したが、意外にも肩すかしを喰らった次第。少し本筋を離れたが、クレンペラー盤は、スコットランドの随一の超名演である。録音から50年も経っているにもかかわらず、その高評価が不動であるのは脅威ですらある。決して前に進んでいかない音楽であるが、その深沈たる味わいの感動的なこと。木管楽器の細やかな活かした方もクレンペラーならではのもので、第2楽章の味の濃さは、他のどの演奏よりも図抜けた存在だ。終楽章の終結部について、クレンペラーは後年、冒頭部の主題に改編して演奏しているが、本盤の雄渾にしてスケール雄大な名演を聴いていると、原作に忠実な方がいいのではないかと考えたくなる。イタリアは、スコットランドと同様のアプローチであるが、それ故に、いささか重苦しく感じられないではない。しかしながら、北ヨーロッパ人が南国イタリアに憧れるという境地を描いた演奏という考え方に立てば、必ずしも否定的に聴かれるべきではないのではないかと考える。何も、トスカニーニやアバドの名演だけが正解ではないのだから。HQCD化によって、音場に拡がりが出た点も高く評価したい。

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     2011/01/15

    3年前に惜しくも解散したアルバン・ベルク弦楽四重奏団。この四重奏団が遺してきた数々の名演を念頭に置いた時、音楽界においてこれほど残念なことはなかったと考える。最近では、カルミナ弦楽四重奏団とかアルカント弦楽四重奏団など、切れ味鋭い、現代的センス溢れる名演を繰り広げる楽団が、全盛期を迎えつつあるとも言えるが、そうした現代的なアプローチの元祖とも言うべき存在は、このアルバン・ベルク四重奏団にあると言える。そして、現代隆盛の四重奏団にないものが、このアルバン・ベルク四重奏団にはある。それは、ウィーン出身の音楽家で構成されていることを強みにした、美しい音色であろう。こうした「美しさ」という強みによって、各楽曲へのアプローチに潤いを与えていることを見過ごしてはならない。それ故に、どの曲を演奏しても、前衛的なアプローチをしつつも、温かみのある血も涙もある演奏に仕上がっていることに繋がっているものと言える。本盤のブラームスの弦楽四重奏曲もそうしたアルバン・ベルク四重奏団の長所が見事にプラスに働いた名演だ。鉄壁とも言うべきアンサンブルを駆使しつつ、楽想を抉り出していくような切れ味鋭い演奏を行っているにもかかわらず、ブラームスならではの枯淡とも言うべき抒情の描出にいささかの不足もない。オビの解説の、ウィーン古典派と新ウィーン楽派をつなぐ結節点としてのブラームスの一面を見事につかみだしたという評価は、本名演の評価として誠に当を得た表現と言える。HQCD化による音質向上効果もめざましいものがある。

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