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Review List of フォアグラ 

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     2016/09/23

    バーンスタインはニューヨーク・フィルとチャイコフスキーの4番を3度録音しているが、この最初の58年盤がオリジナルジャケットでCD復刻されるのは初めてだと思う。私もこのジャケットを初めてみたが、58年盤こそ最高の出来であり、同曲中でも屈指のものだ。テンポが遅めなのは後年のものと共通するが、後年のように粘り過ぎることなく音楽の流れが自然。それに増して素晴らしいのは若きバーンスタインの表現力。テンポをうねらせて壮絶な心の嵐を起こす第1楽章(コーダの凄い迫力!)、深い悲しみと暖かさが心に沁みる第2楽章など秀逸である。ニューヨーク・フィルも60年代初頭まではアンサンブルも荒れておらず絶好調の演奏が聴ける。

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     2016/09/15

    アル・クーパーの69〜73年の5つのソロアルバムをオリジナルジャケット仕様で収録。ただし、見開きジャケットはないし、パーソナルもないのは残念。それでも、アメリカン・ロック界の大御所として名前だけは有名なアル・クーパーの傑作アルバムをこの価格で手に入るのはありがたい。今聴くと曲のクオリティの高さに本当に驚かされる。大人のロックアルバムとして最高。

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     2016/08/25

    モニク・ド・ラ・ブルショルリを初めて聴いたが、これほど凄い人だとは思いもしなかった。この中では唯一のステレオ録音であるサン=サーンスの5番が圧倒的。こんな花も実もある素晴らしいサン=サーンスは初めてだ。ショパンの舟歌も実にいい演奏。チャイコフスキーとブラームスのコンチェルトはヴォックスのスタジオ録音のはずだが、音質がスタジオ録音と思えないレベルなのは残念。それでも彼女の怒涛のピアニズムは充分に味わえるし、オケも触発されて健闘している。興味を引かれて動画を調べたら、幸い往年のテレビ画像があった。そこでは、いかにもフランスのマダムといった姿で映っているのだが、その姿からはここでの壮絶といっていいほどの熱情的でダイナミックな演奏はとても想像できない。個人的に今年最大の発見。

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     2016/08/25

    ルーセルとプーランクの有名曲の間にめったに演奏されない「6つの古代碑銘」を入れる選曲のセンスがいい。このセンスは全ての曲にも当てはまる。ミュンシュのようにエネルギッシュで熱狂的に演奏されることが多い「バッカスとアリアーヌ」では、柔らかいリズムと綿密な描写が際立ち、思いもかけないほどの妖艶な演奏になっている。ドビュッシーでのエキゾティックな響きも印象的。プーランクでは俊敏な楽想に応えるスイス・ロマンドの妙技が実に楽しい。山田は合唱指揮でも実力者であり、是非このコンビでプーランクの宗教合唱曲を録音してほしいものだ。ペンタトーンの録音は優秀だが、ティンパニとグランカッサが重く響きすぎ、オケを覆ってしまうところがあるのは今後改善してほしい。

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     2016/08/21

    ドイツの新しいレーベルの第1弾発売だが、真に不思議なことに録音スタジオ、エンジニアの記載があるのに日付がない。このルーマニアのカルテットがハンブルクのコンクールに出た際にNDRが収録したとHMVは推測して2009年?と紹介文に書いているが、そうすると少し前の彼らの姿ということになりそうだ。それはともかく演奏は清新で優れたものだ。4人の技術が完全に均衡であり、表現にもくせがない。メンデルスゾーンはイブラギモヴァ率いるキアロスクーロがあったが、このアルカディアのほうが断然いい。ブラームスもこのカルテットの内声の充実がものをいっており、聴きごたえのある演奏になっている。

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     2016/08/21

    マズアの交響曲全集は1987〜89年の収録で、東独崩壊直前ということになる。エンジニアにはクラウス・シュトリューベンという懐かしい名前もある。収録順は、87年3、4番、88年2番、89年1、5番だが、結論からいえば、1、5番が最高で遡るほど出来が落ちる。2番はやや平凡に傾くが、ライプチヒ放送合唱団の清廉な合唱と独唱の好演に救われている。3,4番はルーティン。それは録音のレベルも影響しているようで、これを聴くと、東独は87年頃に士気が最低になっていたのかもしれないと想像される。逆に89年は危機感から演奏も引き締まったのでは。コンチェルト・ケルンによるシンフォニアは、ピリオド楽器演奏にありがちなガチャガチャした響きがうるさく感じる。

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     2016/08/04

    大植/ミネソタ管のアーロン・ジェイ・カーニス作品集をつい最近聴き、とても良かったのでこの「大地の歌」も注文。いやはやこれは皆さんが書いているとおりの名演だ。「大地の歌」としてはたぶん、この30年で最高の演奏だろう。ラトル、サロネン、ナガノらより断然いい。大植というと、そのダイナミックな指揮ぶりにどうしても関心がいってしまうが、ここでは実に精妙で柔らかく、それでいて芯のある表現を聴かせてくれる。東洋的な無常観に繋がる演奏は実は殆どないのだ。ミネソタ管も上質で素晴らしいサウンドで応えており、2人の独唱者も優秀。録音も最上級。自信をもって最高点。マイナーレーベルのためあまり知られていないようだが(私もだが)、お勧めしたい。

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     2016/08/01

    これまでもトスカニーニのステレオ録音は存在したが、この「レクイエム」のステレオ効果は比較にならない。古い録音だし2つのテープを合成したらしいので、正規のモノーラル録音に比べるとどうしても音が汚れる。それでも、そのマイナス面が吹き飛んでしまうほどの圧倒的な成果があり、大事件、奇跡の録音の登場と断言したい。とにかくオケの広がり、合唱の生々しさ、独唱の伸びが凄く、臨場感に震えがくるほどだ。私はトスカニーニが苦手で、直情的でテンションあがりっぱなしの演奏を底が浅く感じてしまうことが多かったのだが、これを聴くと、何かとんでもない勘違いをしていたのかもしれないという気持ちになる。少なくともこの「レクイエム」は空前の名演だ。

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     2016/07/30

    稀代のヴィルトゥオーゾ、ベレゾフスキーをまとめて聴けるお徳用セットだ。デビュー・レコーディングのショパンは「俺はこんな風にも弾けるんだぞ」というツッパリ風。次のラフマニノフのコンチェルトもその気配が残っているが、ここではインバルが同曲最高の指揮でベレゾフスキーを大いに助けている。これ以降は急速に音楽が大人になり、リストもシューマンも見事な出来。ゴドフスキーでは原曲のショパンのエチュードも弾いているのだが、デビュー盤のツッパリがどこにもないのも面白い。しかし、このセットの聴きものはなんといってもロシア音楽。ラフマニノフもメトネルも「イスメライ」もこれほど凄まじく、かつ美しい演奏はめったにあるまい。そして最後にヒンデミットの高峰がくる。ピアノ好きなら持っていて損はないと思う。

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     2016/05/23

    ソ連時代のマーラーというと色眼鏡で見がちであり偏見のある評を読んだこともあるが、実際には極めて真っ当で優秀な演奏揃いである。コンドラシンの指揮は純音楽的アプローチというべきなのだろうが、それだけでは済まない熱さがある。3番はバーンスタインと並んで最古のスタジオ録音だと思うが、細部まで丁寧に描いており歌にも満ち古さを感じさせない。ロシア語バージョンのヴァレンティーナ:レフコの歌唱も見事。この時代にソ連でトップクラスの水準の3番が演奏されたのにも驚くが、他の曲でもロシアの3つのオーケストラ(HMVの紹介に漏れているが5番はソヴィエト国立響)のマーラーへの共感の深さも大変興味深かった。たぶん同時代のドイツのオケより上だろうし、何か根源的なシンパシーを感じる。3番以外では1番、7番、9番がとりわけ名演。6番だけは異常なハイスピードで、レニングラート・フィルの曲芸演奏にあっけにとられているうちに終わってしまう。南西ドイツ放送との猛演は好きだが、これはやりすぎ。録音が万全でない部分もあるが、それでも聴き手に充分な感動を与えるものであり、お勧めしたい。

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     2016/05/15

    ショスタコーヴィチは交響曲と弦楽四重奏曲を15曲書き、その中間点である8番がともに最高傑作であるのは、彼がまるで自分の創作活動をデザインしていたようで不思議だ。ただ、弦楽四重奏曲に比べ交響曲の8番は正当な評価を得ていない気がする。その要因としては、1 曲がまだ理解されていない(ロシア人指揮者以外は殆ど取り上げない)、2 ムラヴィンスキーの超絶演奏があり、おいそれと手をだせない、といったところじゃないだろうか。ヒット作5番をひな形にして隠れ蓑としたのはショスタコーヴィチの最も深刻な心象を吐露した作品だからであり、その2重構造を理解した上でムラヴィンスキーの残酷なまでに非情な演奏とは別の答えを引き出すのは大変難儀なことであろう。このラザレフ盤はそれに成功した稀有な演奏だ。ムラヴィンスキーと比べ、こちらには温かい血が感じられ、しかもそれが余計に曲の痛切さを聴き手に体感させる。第1楽章最後のトランペットは涙なしには聴けないほどだ。日本フィルも絶賛に値する。これを聴くと、東京のオケ水準は既にロンドンのそれを超えていると実感する。

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     2016/05/14

    Eテレでパーヴォ・ヤルヴィ/N響とのブラームスをやっていたが、とても良かった。ところが、このCDでは悪くはないが琴線に触れるものがない。基本同じスタイルなのに。ヤンセンは生を聴いたことがあり、極めて繊細な表情からエスプレッシーヴォな表現まで幅の広い優れた演奏家だと思った。CDではその魅力がなかなか出てこないのは残念なことだ。このブラームスでは、ローマのオケの下手ではないがコクのない響きが足を引っ張っているのも一因だが、ヤンセンの表現も軽いというか真実性が薄く感じられるのはもしかしてデッカの音にも原因があるのかな。

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     2016/05/13

    ザラ・ネルソヴァを初めて聴いたが、素晴らしい演奏だった。私がこれまでに聴いたブロッホではベスト。これほどの人の録音が少ないのはどういうことだろう。アンセルメの指揮はバーンスタインの強烈な演奏を聴いた耳にはいかにも淡泊に感じられる。むしろ無名のスイス作曲家オブシェとガイザーの方にアンセルメの良さが出ている。オブシェはなんとなくマルタンを思い出させるし、ガイザーはヒンデミットそっくり。この辺が無名で終わった原因だろうが、曲自体は決して悪くない。スイス・ロマンドもいつになく頑張っている。

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     2016/04/22

    OVPPによる演奏で声楽は総勢5人のためマス的な迫力は望むべくもない。にもかかわらず聴後の不足感はない。むしろ各パートがいかなる時も明晰に聴き取れる良さのほうが上回っている。声楽陣も素晴らしい出来であり、バットの早めの快適テンポもあって、あっという間に聴き終えてしまった。そしてまたすぐに聴きたくなる。アルトが男声ではなく女声なのもよい。OVPPの是非に関係なくもっと知られるべき名盤だ。

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     2016/04/09

    カルロス・クライバーの伝記を読むとミレッカーが出てくる。偽名でのオペラデビューはミレッカーの「ガスパローネ」であり、この「乞食学生」も指揮している。クライバーというと「こうもり」の印象が強烈なため、オペレッタを得意としていたと思われるかもしれないが、そんなことはなく、どうしてミレッカーか、と興味が沸く。さて聴いてみると、実に楽しく面白くてびっくりだ。演奏も素晴らしい。嫌われ役オーレンドルフのナンバーが最高で、これをプライが楽しそうに歌っている。67年の録音なので(台詞だけ70年代に採ったらしい)シュトライヒもゲッダも十分に魅力的だ。これをクライバーが振ったらどうだったかとつい考えてしまうが、アラースの老練な指揮も見事なもので何の不満もない。

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