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Review List of フォアグラ 

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  • 1 people agree with this review
     2023/07/07

    70年代後半関西に住んでいたので朝比奈/大フィルのコンサートへ度々足を運び、瑕疵が多く鈍い演奏に失望していたことはかつて7番のレビューに書いた。これはさらに昔の録音でありもっとダメかと思いきや、こちらは名演である。演奏には覇気があり伸びやかで少々のキズなど気にならない魅力がある。後半バテる大フィルが最後まで元気でバンダを加えたフィナーレは大迫力。私は90年代から宇野の「今度こそ最高」詐欺にうんざりして以降はあまり聴いていないのだが、多分朝比奈の最高の演奏ではなかろうか。私の勝手な想像だが、朝比奈にとって宇野の絶賛はプレッシャーにもなっていたような気がする。もともと不器用な人が慎重にミスがなくやろうとしてかえってミスを誘発し、演奏も流れに欠けるものになったのではないか。シカゴとの5番とこの演奏を比較すればどちらが優れているか明白だと思うのだが。まさに褒め殺し。こういう気力に充ちた演奏を聴きたかった。

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     2023/07/01

    マリー=テレーズ・フルノーは50年代にLP2枚を残しただけの幻のピアニストであり、そのLPは中古市場で高値で取引されているという。そのフルノーの60年以降の録音登場は驚き。もっと早く引退したのだと思っていた。フルノーの演奏は気品高く端正ななかにも何とも言えない味わいがある。テクニックは万全でないところも見受けられるがほとんど気にならないのは師匠ロン譲りだろうか。ドビュッシーだけでなくモーツァルト、ショパン、シューマンも魅力的。INAにはもっと録音は残されていないのかな。フランスの女流ピアニストの豊富さは異常だ。メイエ、ブルショルリ、ギュラー、アース、ルフェビュール、ブンダヴォエ、ダルレetc.しかも大半近年まで埋もれていた。フランスはかつて自国文化優先策をとっていたが、その割に自国アーティストに冷たかった。パリ管弦楽団が初代ミュンシュ以降フランス人指揮者が音楽監督についたことがないのも象徴的であり、その陰でこうしたフランスのアーティストが埋もれたことはもったいないことだった。

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     2023/06/25

    1番、5番、6番が名演。とりわけ1番はここまで曲の良さを引き出した演奏はなかったと思うほどの鮮烈さ。6番もたいそう面白い。一方2番もメリハリがきき快調に進むが、ここで暴れてほしいというところでなぜかルイージは引いてしまう。第3楽章はエスプレッシーヴォで素晴らしいのだが。3番はフォルテで響きが飽和してしまいタイトルの「広がり」がもうひとつ。4番はティンパニを抑えオケに溶け込むようにしており、第4楽章最後の2人のティンパニストのバトルでやっと全開させる。こういう解釈もあっていいと思うが私には狙いすぎに感じられた。2〜4番はダウスゴー/シアトルのほうがよかったな。ダウスゴーが全集にならなかったのは残念。DGの録音はどこかおかしい。ダイナミックレンジは広く鮮明なのだがどこか作り物じみて感じるのだ。最近のDGはみなこんな感じであり、私の嫌いなLSOライヴの音に似てきている。ギュンター・ヘルマンスのいたころのドイツ・グラモフォンとは名前は同じでも全く別会社になったとつくづく思う。

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     2023/06/23

    ヘンデル若き日イタリア時代の宗教曲を中心にソプラノ・ソロ作品を集めたもの。若き日と言ってもさすがヘンデル、作品の品格、密度はヴィヴァルディなどの及ぶところではない。これをアヴィニョン生まれのジュリー・ロゼが歌うのだが、これが素晴らしい美声なのだ。テクニックも申し分なく、アラルコンの見事なバックを受けての名唱は至福の時を与えてくれる。録音も優秀。

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     2023/06/18

    まず、アルファーノ補筆初稿版について。ほぼ全ての人がトスカニーニがカットした現行版より初稿版のほうがいいと思うのではないだろうか。アルファーノは当然プッチーニとは作風、タッチが違い違和感はあるが、初稿版ではだんだん慣れ、トゥーランドットの細やかな感情表現が感銘を呼び、感動さえすることになる。アルファーノ補筆部分で感動するなど自分でもびっくりだが、それだけアルファーノは真剣に書いたのだ。トスカニーニはその価値が理解できなかった。私はトスカニーニの芸格に疑問を持つものだが、今回もやっぱりなという思いだ。補筆初稿版による演奏が初演から約100年かかったというのはまさにトスカニーニの呪縛だったわけだが、今後初稿版を無視することはできなくなるだろうし、変に神格化されたトスカニーニが現代に通用するものなのかも議論してほしいところだ。演奏はすこぶる優秀。カラヤンの妖艶さはないが、パッパーノの作り出す音楽はより斬新でプッチーニが意外にシェーンベルクと近いところにいることを音で実感させる画期的なものだ。歌手もいい。有名どころが並ぶ男性陣に対し、ラドヴァノフスキー、ヤオは初めて聞く名だが、もうベテランなんだな。ともに表現が実に巧み。カウフマンも無謀な王子にぴったり。記念碑的な録音でありお薦めしたい。

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     2023/06/11

    ミルンズ、シルズ、レヴァインとアメリカ人が並んだ「セビリアの理髪師」。レヴァインはともかくミルンズとシルズは日本ではめっぽう評判が悪い。大体表面的な歌唱と片付けられる。しかしこの演奏なかなかいいのだ。ミルンズはたしかに声の力で押すところがあるが芸達者で充分楽しませてくれる。シルズも声が不安定に揺れる癖があるものの、とても軽やかにロジーナを歌っておりすました表情が魅力的。ベテランのゲッダの余裕あるアルマヴィーヴァ、カペッキ、ライモンディら脇の歌唱も充実。そしてなによりレヴァインの生気に満ちた指揮がいい。レヴァインはこの頃がピークだったと思う。アバド、パタネに及ぶかと言われればそれはないが、名演奏のひとつだと思う。宣伝文句に「まるでヴェルディのような」とあるが、私は全くそう思わなかった。

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     2023/06/04

    グールドの残した録音の中では人気のあるものではなさそうだが、このシェーンベルクはバッハに劣らない秀逸な演奏だ。作品11からこれだけどす黒い表情を引き出したものは私の知る限りない。12音作品はさらに冴えて一つ一つの音が生きゾクゾクさせる。12音はパズル的なところがあるのでグールドは面白くてしかたないという感じなんだろう。ポリーニのテクニックは最高だが表情は単一な演奏の対極だと思う。

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     2023/05/27

    ウェーベルンの思わぬ好演を聴いてシェーンベルク全集も出してほしいとレビューに書かせていただいたが、なんとロバート・クラフト・コンプリートコレクションが登場。グールドの録音以外は初めて聴くものばかりだが、聴き始めると面白くあっという間に聴き通してしまった。このコレクションを聴いての感想は、ロバート・クラフトは熱い男だということだ。当時の最前衛の音楽の面白さを伝えようと懸命であり、少々不器用でも聞こえるべき音はちゃんと聞こえるし、クラフトの熱い心は聴き手にも伝わる。ブーレーズのクールな演奏とは対極的だが、柴田南雄氏が「ロバート・クラフトのダメさは書き尽くしたので繰り返さない」とまで酷評されるほどその演奏が稚拙だとはどうしても思えない。CBC交響楽団(実態はトロント響らしい)、コロンビア交響楽団(LA、NY、トロントの3団体)も予想外の好演だが、セッション・オケにこれらの難曲を充分理解させるのは大変であったろう。ピラルツィクの「期待」「ピエロ・リュネール」も名唱、「結婚」3バージョンも面白く優れた演奏。ジェズアルド、シュッツ、モンテヴェルディも違和感なし。クラフトが様式を理解した優れた指揮者であったことがわかる。ソニーのコレクションはいつも素晴らしい出来だが、今回のものは疑問がある。「ル・マルトー・サンメートル」はステレオがあるはずだがモノラルが採用されているし、オリジナルジャケットも最後のストラヴィンスキーは使われていない。62年以降のプロデューサーはジョン・マックルーアだが、それ以前の録音は記載されず。途中で面倒になったのかもしれない。解説もこのHMV紹介文にあるのがほぼ全て。ロバート・クラフトについて語るべきことはもっとあるだろう。RCA専属だったシカゴ交響楽団が1曲だけ参加しているのも不思議だ。クラフトは92歳で2015年に亡くなっている。このコンプリートを生前に出してあげてほしかったと思うのは私だけではないだろう。

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     2023/05/21

    若手女流指揮者三羽烏といえば、ボローニャ・テアトロコムナーレのオクサーナ・リニウ、シティ・オブ・バーミンガムのミルガ・グラジニーテ=ティーラそしてオランダ放送フィルを率いるカリーナ・カネラキスだ。先の二人に比べCDデビューの遅れたカネラキスだが、配信ではオランダ放送フィル、hr交響楽団、LPOなどで既にお馴染み。長髪をなびかせてダイナミックに指揮するカネラキスの魅力は音だけでも充分伝わる。まず、4つの管弦楽曲が素晴らしい。そんなに演奏される曲ではないが、カネラキスはスケール大きく色彩豊かに描き出し、こんなにいい曲だったのかと思わせる。管弦楽のための協奏曲でも実に細かくオケに指示を出しているが、音楽自体は起伏に富み小細工は感じさせない。例のショスタコーヴィチの「レニングラード」を茶化した部分も下品になるスレスレまで突っ込む。そして全曲から溢れる生気に満ちた表現、オケのノリ、名演である。ちょうどパーヴォ・ヤルヴィ/N響と続けて聴いたが、オケの実力はN響のほうが上だが演奏の面白さは断然カネラキス。大注目の人である。

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  • 2 people agree with this review
     2023/05/03

    チャイコフスキーの交響曲では4番が最も好きでついついCDも買ってしまうが、これまでのなかで個人的にベストなのがこのティルソン・トーマス/SFS盤だ。テンポは遅めでティルソン・トーマスは細部まで表情を描きこんでいる。これほど愛情深く表現された演奏は稀だろう。一方切れ味も素晴らしく第1楽章展開部は荒れに荒れて凄い迫力。オーケストラも最高であり録音も優秀。聴きごたえ満点だが、演奏後爆発的な歓声と拍手でこれがライブであることに驚かされる。私はティルソン・トーマスが大好きなんだがN響あたりが呼んでくれないだろうか。

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  • 3 people agree with this review
     2023/03/17

    サラステの1回目の全集はベルグルンド/ヘルシンキ・フィル、Nヤルヴィ/エーテボリと同時期に発売され、これらに及ぶ評価を受けなかった。すぐにサンクトペテルブルグライヴの2回目全集がフィンランディアから出て、こちらは高く評価され、サラステのシベリウスといえばフィンランディア盤と日本ではなっている。1回目のRCA盤を1枚ずつ買っていた私はこの評価に納得いかなかった。今回セットで買い直したのだが、やはり1回目全集のほうが断然素晴らしい。この曲はもうひとつだなという演奏がない。全て最高なのだ。なかなかいい演奏がない6番はなんといじらしい表現だろうか。終楽章の淋しさには胸がいっぱいになる。一方5番は実に雄渾でティンパニの強打が痛快、これでなくてはと思わせる。2番は通俗性から遠い瑞々しい解釈で終楽章クライマックスは深い感動を呼ぶ。7番は様々なエピソードが有機的に繋がり圧倒される。いや、ほんとにどれもいいのだ。。私はマゼール/ウィーン・フィルが好きだしマケラ/オスロ・フィルもよかったと思う。しかしサラステ1回目には及ばないというのが私の評価だ。ベルグルンド、ヤルヴィよりはるかにいい。2回目ライヴはオケの実力の限界が出てしまい、地味な演奏になってしまった。併録の管弦楽曲も美しさの限りでありパッケージは冴えないが激安なので是非お薦めしたい。

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  • 1 people agree with this review
     2023/03/09

    エルガーの交響曲もすっかりポピュラーになったが、それでも2番のほうは人気がもうひとつ。私もナマを聴いたことがない。メロディーが乏しく地味に聴こえるからだと思うのだが、それでも私は1番より2番のほうが好きなのだ。葬送行進曲ともエレジーとも言える第2楽章の落日の味わい深さは格別、もっと演奏してほしい曲だ。エルガーのスペシャリストである尾高の指揮は錯綜した楽想をうまく整理し大変聴きやすい。第2楽章はバルビローリ(旧盤)、バレンボイム(旧盤)では崩れ落ちるような悲しみの表現が心を打つが、尾高はそこまでいかないものの壮大にまとめあげている。優れた演奏だと思うが、もう一歩かな。大フィルは技術的に何の問題もなく朝比奈時代とは雲泥の差だ。ただ、ヴァイオリンが薄く感じられ、まるでノンビブラートのピュアトーンのように聴こえるのは尾高の表現なのだろうか。

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  • 5 people agree with this review
     2023/02/19

    ベイヌム/コンセルトヘボウのベートーヴェン録音がほとんどないことを残念に思っていたのだが、このBOXの解説を読むと納得。ベイヌム時代の10年間にクレンペラーは4回もベートーヴェンチクルスを行っているのだ。一方でベイヌムが得意とするブラームスはクレンペラーは取り上げていない。病気を抱えていたベイヌムと相互補完の信頼関係があったのだろう。そのベートーヴェンが衝撃的な素晴らしさだ。クレンペラーの気迫は凄まじく、どの曲も迫真的な演奏になっている。「レオノーレ」序曲第3番を聴いてほしい。終盤の爆発もコンセルトヘボウのアンサンブルは一糸乱れない。クレンペラーはコンセルトヘボウにとても満足していた、と娘のロッテが語っているがそれはそうだろう。申し訳ないがフィルハーモニアとはオケのレベルが全く違う。「復活」も同曲最高の演奏のひとつ。それにしてもクレンペラーの言動は現代なら即アウトだが、当時誰も双極性障害だとは思っていなかったのは驚きだ。コンセルトヘボウの団員のコメント「楽団員はクレンペラーの奇行を我慢していた。他の指揮者なら我慢しなかっただろう。それでもクレンペラーとはウマが合った。クレンペラーは異常だが、うちのオケもまともじゃないからね」。苦難の指揮者クレンペラーもある意味いい時代に生きたのかもしれない。音質は予想以上に良く、クレンペラーの遺産としては最も優れたものだと思う。

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     2023/02/07

    パレーはデトロイトとシューマン交響曲全集を完成しており、得意曲なのだろう。「ライン」は柔らかなタッチで音楽を進める。パレーがシューマンのオリジナルスコアを尊重していることがわかるとても爽やかな演奏だ。フランス放送フィルは弦の響きが薄く感じるがシューマンならOK。フランス国立放送管との4番は速いテンポの気迫に充ちたものでメリハリもきき素晴らしい。驚くのはほぼ全曲にわたってパレーがメロディーを歌っていること。余程好きな曲なんだろう。オケも熱演。アンコールのシャブリエとラヴェルは最高。めくるめく演奏だ。音質は鮮明だが潤いに欠ける。それでもパリに帰ってからのパレーの録音は貴重であり充分楽しめるものなのでお薦めする。

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     2023/01/26

    hr交響楽団は名前が浸透しないので対外的には昔のフランクフルト放送交響楽団の名称を使うそうだ。このオケの新しいシェフ、アルティノグルとの初録音はフランクの交響曲。生誕記念年の昨年めぼしい録音が出なかっただけに待望のもの。フランクの交響曲は重苦しい演奏になりがちだが、モントゥー、、パレー、マルティノンらフランスの指揮者はそうならないコツのようなものを持っている。アルティノグルもそうで、時折ハッとするような美しい瞬間を用意し重厚なだけの音楽になるのを避けている。音楽に勢いがあるのもいい。「贖罪」間奏曲は珍しいが、それよりも「呪われた狩人」が目覚ましい出来。この曲のこんな素晴らしい演奏は初めて聴いた。

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