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『トウキョウソナタ』 黒沢清監督インタビュー3

Friday, September 26th 2008

トウキョウソナタ



最新作『トウキョウソナタ』が9月27日(土)より公開中の、黒沢清監督に今作についてのお話しを伺った。
次々と取材が控えている中、こちらの質問にゆったりとした口調で、真摯にお答え頂いた言葉の数々に、ぜひ触れて頂きたい。

今作は、2008年 カンヌ国際映画祭 「ある視点部門」 審査員賞受賞・・・などでも注目されている作品であるが、
ただただ1つだけ言うならば、本当に素晴らしい作品である。

主演に香川照之氏、小泉今日子氏を迎えた経緯や今作で初めて、
子供を本格的に描いた・・・ということなどについては、オフィシャルHPをご覧下さい。

それでは、第3回に続く、最終回は・・・。 


INTERVIEW and TEXT and PHOT: 長澤玲美


   
急に役所広司さんから、「3日くらいなら空けられそうなんですけど、何か僕に役ないですか?通行人でもいいんですけど・・・」っていうメールが入りまして(笑)。



---  では、キャストについてお伺いします。監督の作品には多く、役所広司さんが起用されていますが、今回も、役所さんが"友情出演"で参加されていますよね?


以前、『追悼のざわめき』の松井良彦監督が、作品に佐野和宏さんを多く起用するのは、「役者として、"色気"があるから」とお話しされていたんですね。佐野さんに"セクシャリティーな役柄"を求めても、それを見事に演じてくれるから、使ってしまうと。


同様に、黒沢監督にとっての役所さんというのは、どのような存在、または、役者さんなのかというのをお聞きしたいのですが。


黒沢  えーっとね、本当に役所さんとはたくさんやってますから、一言では言いづらいんですけど、ただまああの・・・これは大きいかもしれません。つまり、年齢、歳が一緒だっていう、バカみたいな単純なことがありまして。


ですから、いつもではない・・・まあ今回もそうなんですけど(笑)、自分と同じくらいの年齢の男が(ストーリーの中に)出てくることがあるんですね。それで、時としてはもちろん、主役だったりもするんですけど。


僕も、昔は若かったわけですが、今やもう歳を取ってきて(笑)、そういう自分自身に結構近い年齢の男が出てきた場合、当たり前ですけど、役所さんも同じように歳を取ってきてますので(笑)、いつもなんとなく、役所さんに自然に声をかけていたりしますね。僕そのものではないんです、ただ僕と同じくらいの世代の代表をどこかで一人、出したくなるんですね。


ただ、今回は違っていました。今回に限って言えば、非常に特殊なケースで、最初、泥棒役は、脚本を書いていた時は、全く誰だかわからなかったし、たぶんもっと若い人を想定していたのだと思います。出番ももっと、少なかったですし。


役所さんは今回、最初っからもう、スケジュールがいっぱいで、「出演は全くありえない」ということだったんですが、脚本を書き終わったくらい・・・おおよそ、キャスティングも半分以上、メインのところは決まってた時に、急に役所さんから、「3日くらいなら空けられそうなんですけど、何か僕に役ないですか?通行人でもいいんですけど・・・」っていうメールが入りまして(笑)。


でもね、通行人で役所広司が歩いてたら、すごい変ですから(笑)。だったら、今まだ決まってない泥棒役なんて、やってくれるかな?と思って、おそるおそる、「こんな役でいいですか?」って言ったら、「ぜひやらせて下さい」って、言って下さったんですよね。


それが決まってから、この泥棒の役がどんどん膨らんでいったんですよ。1日だけならあれでしたけど、「3日もあるならもっと出れるぞ」とかってですね、「もっともっと膨らましてやれ」っていって、だんだん何か、とんでもないことになってきて(笑)。やややり過ぎたかもしれないですけど、あのような泥棒になりました。でもこれは、本当になかなかないことで、すごくうれしかったですけどね。


---  本当に"友情出演"だったんですね?(笑)


黒沢  ええ。これぞまさに文字通り、"友情出演"だったと思いますよ。友情って言っていいかどうかわかんないですけど(笑)。


 

日本のフィルムの撮影、現像も含めて、そういう技術って、
世界のトップレベルにある・・・という気がしました。




メーカーさん  すみません・・・そろそろお時間ですので・・・。


---  はい・・・。


メーカーさん  (空気を感じて下さって・・・)あ、ではラストの質問までで、大丈夫です(笑)。


---  すみません、ありがとうございます(笑)。本当にいろいろお伺いしたいことがあったのですが・・・では、個人的にすごく惹かれた海の・・・あの小屋のシーンなんですが、色彩が本当に美しくて、うっとりしてしまいました。あのシーンは、どのように撮られたのかというのをお聞かせ頂けますか?


黒沢  あの海のシーンは、実は・・・かなり凝ったことをやってるんですね。海のシーン全体なんですけど、何でもないようであれはね、大変だったんですよ。というのはまあ、狙いからして、「真っ暗な海を撮りたい」と。だけど、光学的には撮れない訳ですよ、真っ暗な海なんてね(笑)。でも、何かはもちろん、見えている・・・というところで、「一体どうするか?」っていうのをずいぶん、撮影部、照明部、悩みまして・・・僕も細かくどうしたってうまく言えないんですけど。


照明も焚いたんですけど、実際、本当にかなり暗い中で撮影してですね。実は、部分的にはデジタル的な効果、コンピューターグラフィックスほどではないですけど、何気なくそういう処理をして、いじってあるところなんです。暗い海なんですけど、「ちょっと変でしょ?」っていうのを出してるんですね。


---  そうだったんですね。あのシーン、本当に美しいですよね。CM的でもあり、すごくアート性もあって・・・。今まで家の中から出なかった母親が家の中から外に出て行った先には、あんな光景が広がっているなんて・・・と、すごくはっとしたシーンでもありました。


黒沢  ありがとうございます。僕も、今回ももちろん全部、35ミリのフィルムで撮影してるんですけれども、自分で言うのもなんですが、日本のフィルムの撮影、現像も含めて、そういう技術って、世界のトップレベルにある・・・という気がしました。


昔はヨーロッパはなかなかよかったんですけど、今はもうだめですね、正直言って。ごく一部で、なかなかいいのもありますけど、今たぶんヨーロッパより日本の方が優れている・・・アジアの中でも。アメリカはやっぱりまだね、相当いいのがあるんですけど。


内容だけじゃない、そういう撮影の技術が本当に日本映画は今、すごいところに来ている。それは、誇っていいことだろうと思いました。(少し小声で)まあ、そうじゃない作品もありますけどね?(笑)。「やれば出来る」。それは本当に言えると思いますね。


---  お時間が足りないくらいだったのですが・・・。


黒沢  そうですね、残念ですけどね。


---  本日は、ありがとうございました。


黒沢  いえ、こちらこそ。ありがとうございました。  




おわり






叫 『叫』

Jホラー史上最恐!連続殺人事件発生、容疑者は刑事。「俺、何やった・・・?」"全ての謎"が解き明かされた時、究極の恐怖があなたを襲う。劇場公開時にはカットされた「もうひとつのエンディング」を収録!

   



アカルイミライ 『アカルイミライ』

映画初主演のオダギリジョーと、浅野忠信、藤竜也の3人のコラボレーションによる作品。生きる目的もない主人公・雄二が唯一心を許せる存在の守。ある日、守が飼っていたクラゲを託された雄二は・・・。

   



地獄の警備員 『地獄の警備員』

バブル期のとある総合商社を舞台に、理由なき殺戮をくりかえす警備員を描いた本格ホラー・ムービー。黒沢監督の"恐怖"の原点とも言うべき傑作!主演は、久野真紀子&松重豊。


   



回路 『回路』

大学生川島亮介のパソコンの画面に浮かんだ「幽霊に会いたいですか」のメッセージ。その時から亮介の周辺で奇妙な事件が起き始め、一人また一人と人間が消えていく。


   



Cure: キュア 『Cure: キュア』

被害者の胸に文字が刻まれるという猟奇殺人事件の謎に迫る一人の刑事の姿を描いた、役所広司&萩原聖人共演で贈るサイコ・サスペンス。


   




ドッペルゲンガー 『ドッペルゲンガー』

自由奔放な分身に恐れながらも、次第に協力関係を結んでゆく、堅物男の奇妙な体験をシュールかつユーモラスに描く。役所広司が一人二役に挑戦した異色作。


   



降霊 Kourei 『降霊 Kourei』

音響技師である夫の器材ケースから、誘拐されたはずの女の子を発見する。思いもよらぬ出来事に夫は狼狽するが、霊能者の妻はこの事件を利用し、自分をあざけってきた世間を見返してやろうと、ある計画を企てる・・・。

   

神田川淫乱戦争 『神田川淫乱戦争』

黒沢監督の記念すべき35mmデビュー作!ピンク映画として製作された低予算映画ながらも、"ゴダール的手法"の延長線上にある遊び心に溢れた演出などから、カルト的な人気を誇る作品。 

   



楳図かずお 恐怖劇場: 蟲たちの家 / 絶食 『蟲たちの家 / 絶食』

ホラーコミックの先駆者・楳図かずおと、日本を代表する映画界の鬼才がタッグを組むホラームービーの第1弾。黒沢清監督による『蟲たちの家』と、本作が監督デビューとなる伊藤匡史監督による『絶食』を収録。

   



Loft: ロフト 『Loft: ロフト』

スランプに陥り、郊外の一軒家に引っ越してきた女流作家は、沼から引き上げた千年前のミイラを無断で運び込んでいた男を目撃する。それ見て以来、女は得体の知れない恐怖に襲われるようになり・・・。

   



893(ヤクザ)タクシー 『893(ヤクザ)タクシー』

銀竜商会の詐欺に引っかかり、1億円の手形を握られた田中タクシー。その社長の幼なじみである猪鹿組の親分は、不渡りになる前に手形を買い戻そうと思案する。


   



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黒沢清の映画術 『黒沢清の映画術』

伝説の8ミリ学生自主映画製作集団「パロディアス・ユニティ」から最新作『LOFT』まで、映像のカリスマが自らの秘密をすべて明かす決定的自伝。


   



映像のカリスマ: 増補改訂版 『映像のカリスマ』

増補改訂版。1973年から1992年までの評論、対談、脚本を収録した黒沢清の初著作。増補として、「アカルイミライ」、「大いなる幻影」、幻の企画のシノプシス他、初公開となる文章を収録。