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Calm Talkin' about JAZZ - 後編A

Friday, February 22nd 2008



-次の10のレーベルで、Calmさんのフェイヴァリット・ジャズ・アルバムをそれぞれご紹介頂けますか?

-Black Jazz

Kellee Patterson『Maiden Voyage』ですね。Doug Carn/Jean Carnの諸作品も好きです。」

-Strata-East

「やっぱり、さっきのEnsemble Al-Salaam。それと、Stanley Cowell・・・あとは、Soul Jazzレーベルから出ていたコンピ『Soul Jazz Love Strata East』と、『Strata-2-East』ですね。多分もう廃盤だと思うんですけど。あれはものすごくいいコンピでしたね。」

-Tribe

「若杉実さんが監修したコンピがすごいよかったですね。まぁ、この辺は、『Message From The Tribe』っていうコンピを聴いてもらえればいいかな。」

-Nimbus

「女性のフルート奏者なんですけど、Adele Sebastian『Desert Fairy Princess』です。」

-Flying Dutchman

Leon Thomasの『Gold Sunrise On Magic Mountain』っていうアルバムに、LPの片面全部を使っている「Na Na / Umbo Weti」って曲があるんですけど、それがとにかく大好きですね。あとは、Gil Scott-Heronの作品かなぁ。」

-ECM

「ECMは、挙げるとキリがないですね(笑)。さっき言った、Keith JarrettPat MethenyEgberto Gismonti・・・あと、CodonaっていうDon Cherryらがやってるプロジェクトがあって、それらは、もう全作品すごいですね。その辺は、全部CDになってると思うんで、みんなに聴いてもらいたいですよね。」

-MPS

「結構普通なチョイスですけど、George Dukeの作品かな。このレーベルも、若杉さんとかが監修したコンピがかなり出ているんで、その辺がオススメですね。もう廃盤かも知れないですけど。曲単位とかだと、いいものはあるんですけど、アルバム1枚を通して聴くとなると、やっぱりGeorge Dukeになってしまいますね。『Aura Will Prevail』と、「Someday」が入っている『I Love The Blues、She Heard My Cry』あたりがオススメですよね。」

-Impulse

「たくさんあるなぁ。それこそ、Pharoah SandersとかJohn Coltraneとか、死ぬほどあるんでね(笑)。あと、Alice Coltraneとか。でも、まずはPharoahとColtraneを聴いてもらいたいですよね。」

-Blue Note

「これもいっぱいあるんですけど、個人的に大好きで人に薦めてるのは、Chico Hamiltonの『Peregrinations』ですね。昔、Blue Noteの50周年のリミックス・アルバムに参加した時に、色々な曲を(サンプル・ソースで)使わせてもらったんですけど。その時の「Quo Vadis」は、Chico Hamiltonの曲をメインでサンプルしたんですよ。このぐらいの時期のChico Hamiltonは、ホント大好きで、そのBlue Note作品だけでなく、Staxから出している『The Master』なんかも最高にいいんですよ!これぞスピリチュアル!って曲が1曲あって、Bossくん(Ill-Bosstino)と『狂言』っていうコンピで共演したときに、その曲を弾き直したりして演ったんですよ。あと、Babyface Willetteですね。ああいったオルガン系ソウル・ジャズの人の中では、一番好きですね。」

-Prestige

Shirley Scottなんかのオルガン・ジャズものも勿論好きなんですけど、Moondogと、Pucho & His Latin Soul Brothersがいいかな。」


Kellee Patterson / Maiden Voyage
> Kellee Patterson 『Maiden Voyage』

黒人女性として初めてミス・インディアナに選ばれ、71年のミス・アメリカ候補にもなった
と言う才色兼美のシンガー、Kellee PattersonのBlack Jazzからのデビュー作。
Hancockの「処女航海」は原曲の持つ浮遊感・虚無感をさらに浮き彫りにするような歌
唱とアレンジが素晴らしい。クラブ・ジャズ古典として名高い「Magic Wand Of Love」
で味わえる「幸福感」、これもスピリチュアル・ジャズを代弁するキーワードと言えるだろう。



Doug Carn / Spirit Of The New Land
> Doug Carn 『Spirit Of The New Land』

スピリチュアル・ジャズ・シーンの伝説的キーボード奏者、Doug Carn、72年Black
Jazzレーベルからの2作目。奥方Jean Carnの歌声をフィーチャーした、Lee Morgan、Miles Davisのカヴァーも素晴らしいが、やはりハイライトは、オリジナルの5曲。アブス
トラクトな「My Spirit」、Charles Tolliverのソロが烈火を放つ「Trance Dance」、
永遠のスピリチュアル・ジャズ・アンセム「Arise And Shine」など名演多数収録。



Stanley Cowell / Musa
> Stanley Cowell 『Musa』

69年にCharles Tolliverらと結成したMusic Inc.。その活動をより活性化するために、Strata-Eastを設立したことでも知られる知性派ピアニスト、Stanley Cowell。73年
に亡くした父に捧げたピアノ・ソロ・アルバム。彼の繊細でありながら、力強いプレイが存
分に堪能できる名盤。




Adele Sebastian / Desert Fairy Princess
> Adele Sebastian 『Desert Fairy Princess』

79年に設立された西海岸発のインディペンデント・レーベル=Nimbus(ニンバス)。
そのNimbusのアイドル的存在でもありながら、27歳の若さでこの世を去った女性フル
ート奏者/ヴォーカリスト、Adale Sebastianの唯一のリーダー・アルバム(81年)。
ラテン、アフロ、ゴスペルのテキストを用いた、同レーベルの中でも抜群の爽快感を残す。




Codona / Codona
> Codona 『Codona』

Don Cherry、Ravi Shankarを師に持つインド楽器/パーカッション奏者、Collin Walcott(ex−Oregon)、さらには、ブラジルのパーカッション奏者、Nana Vasconcelosによる「民族音楽×ジャズ」プロジェクト、Codona。79年ECMからの
1作目。同レーベルらしい幻想感と、各国文化三つ巴の融合配色とが、最高のカタチで
結実した1枚。



George Duke / Aura Will Prevail
> George Duke 『Aura Will Prevail』

70年代は、MPS時代のGeorge Duke最高傑作(75年)。Alphonso Johnson(b)、
Leon“Ndugu”Chancler(ds)による「Weather Rhythm」リズム・セクション+
Airto Moreila(per)が全体をグイグイと引っ張り、ファンク、ブラジリアン、はては
Zappaナンバーまでをハイブリッドに表出する。




Alice Coltrane / Impulse Story
> Alice Coltrane 『Impulse Story』

John Coltraneの第二の妻としても知られる、スピリチュアル・ハープ/ピアノ女史、
Alice Coltrane。Johnの死後から吹き込んだ、Impulse時代の7枚のアルバムから
選出された名演をコンパイル。2004年のカムバック作からも表題曲「Translinear
Light」を収録。2007年1月12日、呼吸器不全のためこの世を去った。




Chico Hamilton / The Master
> Chico Hamilton 『The Master』

あのLittle Featとの共演作となる、73年Stax/Enterprise盤。南部テイストたっぷ
りに繰り広げられる、粘り腰のサザン・フライド・ファンク・セッション。言うまでもなく、全
盛期のLowell Georgeのスライド・ギターも大きくフィーチャーされており、ファンキー・
ロック〜スワンプ・ファンにも是非耳にしてもらいたい。




Moondog / More Mooondog+The Story of Moondog
> Moondog 『More Mooondog+The Story of Moondog

ジャズでも現代音楽でもビートニクでもアヴァンギャルドでもなければ、ましては大道芸人
余興でもない、孤高の盲目アーティスト、Moondog。56年のPrestige盤『More Moondog』と、同年『The Story of Moondog』のカップリング徳用盤。浮世離れとも
言える、出典予測不可能な音の塊たち。




Pucho & His Latin Soul Brothers / Super Freak
> Pucho & His Latin Soul Brothers 『Super Freak』

レアグルーヴ興隆期の折、クラブ・シーンで再評価された、ティンバレス奏者、Henry”Pucho”Brown率いるラテン・ジャズ・バンド、Pucho & the Latin Soul Brothers。72年の本Prestige盤には、必殺のCurtis Mayfieldメドレー「Superfly
〜Pusherman〜Freddie's Dead」を収録。乱暴な言い方をすれば、ブラックスプロ
イテーション・ムービー諸作が持つ「B級」のかっこよさに溢れている。




-ジャズの作品に限った中で、所謂「クレジット買い」の対象になるプレイヤーなどは、いらっしゃいますか?

「意外と買っているのが、Jack Dejohnetteがドラム叩いている作品ですね。あと、Dejohnetteが「ドラムを叩いていない」クレジットの時は絶対に買いますね(笑)!ピアノとか、パーカッションとかで参加している時のやつ。あの人は色んな事を演ってるんで。あとは、Keith Jarrettもピアノを弾いていないのもあったりして。持ち回り以外の楽器で参加している作品が、結構面白いんですよね(笑)。」

-一般的な「非ジャズ」作品の中で、Calmさんから見て「これは、ジャズだ」とお感じになっているような作品や楽曲はありますか?

「曲単位だと、Inner Zone Orchestraの演ってるヴァージョンの「At Les」ですね。どんな人に聴かせても、あの曲は「ジャズ」って感じがすると思うんですけどね。・・・あとは、Public Enemyの「Fight The Power」のインストが、プロモの12インチに入っているんですけど、これはもう思いっきりジャズですねぇ!Branford Marsalisがサックス吹いているんですけど、「Power Sax」っていうミックス・タイトルになっていて。ハードコア・ヒップホップ・トラックの上で、Branfordがサックス吹いているだけなのに、何かトータルがジャズになるんですよね。たまにDJでかけるんですけど、意外とみんな引いちゃうっていう(笑)。そいういえば、Gilles Petersonも、あの曲はよくかけていますよ。」

「インドのタブラ奏者のZakir Hussainが、「Elements」っていう「地・水・火・風・空」をテーマにした5作のシリーズものの中で、『Space』っていうのを担当しているんですけど、それは、思いっきりジャズ!ダブで、ジャズなんですよ!「スペース」っていうぐらいだから、ダブのスペースを使ってね。Francois Kとか、ホント好きそうな。一般的なインドのタブラ・インストじゃなくて、タブラの「音色」を使ったダブみたいな。めちゃくちゃかっこいいんですよ。このアルバム、インドでしか流通してなかったんですけど、たしか日本盤で近々CD化されるはずなんで、是非聴いてほしいですね」


Jack Dejohnette / Jackeyboard
>Jack Dejohnette 『Jackeyboard』

Jack Dejohnetteが、ピアノとメロディカ演奏だけで吹き込んだ、73年来日時のピアノ
トリオ・ライヴ作。バックには、ジョージ大塚(ds)、古野光昭(b)。McCoy Tynerのオ
ープニング曲から、カリプソ、ブルースといった自作曲を、良く歌うフレーズを以って弾きき
っている。それもそのはず、Milesバンド加入当時から、キーボード・プレイヤーとしての
腕にも注目されていた。



Inner Zone Orchestra / Programmed
>Inner Zone Orchestra 『Programmed』

デトロイト・テクノ第2世代を代表するCarl Craigのコンセプト・アルバム。キーワードは、
ずばりジャズ。つまりは、打ち込みと生演奏による、クラブ・ミュージックの感性を通した
ジャズ。驚くほどに深く、そして洗練されている。Stylisticsカバー「People Make The World Go Round」をはじめ、根底に脈々と流れるデトロイト・テクノの歴史と感性を、
多角的に表現してみせた野心的な1枚。



Zakir Hussain / The Elements - Space
>Zakir Hussain 『The Elements -Space』

「地・水・火・風・空」をテーマに作られた企画盤『The Elemnts』のひとつ。
Zakir Hussainが担当したこの『Space』は、その中でも突出した仕上がり。インドの
伝統的なリズム理論「ターラ」を踏襲しながら、リバーブやディレイなどの空間系エフェク
トを多用し、ダビーなせ界を構築するという音作りに。インド国内でも希少で、同国外で
は入手不可能といわれていた幻の名盤が遂に日本盤で登場。





-DJプレイされる時に、常にレコードバッグに入れて頻繁にプレイされているものは何でしょうか?

Pharoah Sanders『Love In Us All』は絶対入ってますね。あとは、Pat Metheny『First Circle』と、Keith Jarrett『Koln Concert』ですね。この3枚は、常にかけていますね。」

Calm

-ファンの皆さんに、ジャズという概念をCalmさんと共有できる作品を「入門」的に紹介するとしたら、まずは、どのような作品をレコメンドなさいますか?

「入門になるかどうかは分からないですけど、やっぱり、Pharoah Sanders『Love In Us All』は、是非聴いてもらいたいっていうのはありますね。あとは、Miles Davis『In A Silent Way』。高度かも知れないけど、入門として聴いてもらいたいですよね。John Coltraneが悩んで・・・、『Love Supreme』は、コンセプチュアルに出来ているんで、ハマる人は、すごいハマると思うんですよね。楽曲で言えば、『Africa / Brass』の方が、「Greensleeves」とか、とっつきやすい楽曲はあるかと思うんですけど・・・。まぁ、是非入門で『Love Supreme』を聴いてもらえれば、すごいいいんじゃないかなぁって思います」

-ヴォーカル作品でオススメなどはありますか?

「個人的には、Nina Simoneは、どの作品を聴いても大丈夫なんじゃないかなって思いますね。「Here Comes the Sun」なんかをやったりしている、後期の少しポピュラーな感じの作品もいいし、初期のブルースを主体にした時代のものもいいし、そのもっと前のスタンダードだけをやっているような時代のものもすごくいいんで。ものすごく、わかりやすいんで。例えば、Billie Hollidayだと、黒人の歴史背景なんかを理解しないと分からないようなフィーリングも含めて、ちょっとディープな感じもするんで。そういう意味でも、Nina Simoneの方が、入門編としてはとっつきやすいと思いますね」


Keith Jarrett / Koln Concert
>Keith Jarrett 『Koln Concert』

75年に録音され、発売と同時に日本におけるソロ・ピアノ・ブームにおける先駆アルバ
ムとなった名盤。発売当時は「これはジャズか?否か?」といった論争もあったが、30年
以上の歳月が過ぎると、まさにこのアルバムによって「ヨーロッパ・テイスト」のジャズの
認知が始まったと言ってもよい。美しいメロディと、Keithの息使いが、ジャズをもう一つ
のディメンションに誘ってくれた記念碑的作品。  



Miles Davis / In A Silent Way
>Miles Davis 『In A Silent Way』

あの『Bitches Brew』の半年前に録音された68年作。Milesが提示した、電化楽器を
取り入れ、ロック・ファンをも魅了する新しいジャズの形だ。Herbie Hancock、Chick Corea、Joe Zawinulとキーボード奏者が3人、さらにギターのJohn Mclaughlinを
加えた8人編成による演奏は牧歌的でもあり、そのサウンドは、どこかデビュー当時のWeather Reportにも近い感触を残す。 



Nina Simone / Anthology
>Nina Simone 『Anthology』

都会的なジャズ・ヴォーカルというよりは、アフリカの大地をストレートに感じさせ、時に、
枯れた味わいのブルーズのために咽び泣くNina Simoneの歌声。彼女のBethlehem、Colpix、Philips、RCA、CTI、Elektra、各時代の代表歌唱を網羅した2枚組ベスト。 





John Coltrane / Love Supreme: 至上の愛
>John Coltrane 『Love Supreme』

4部の組曲、「承認」「決意」「追及」「賛美」からなる『至上の愛』(64年発表)。Coltrane
のインド哲学に基づいた精神世界の指標の第一歩にして、モード・ジャズにおける境地の
1つの頂点。McCoy Tyner(p)、Jimmy Garrison(b)、Elvin Jones(ds)と共に、エ
ンディングへと向かう一体感がとにかく凄まじい。 





-最後になるのですが、2008年現在、Calmさんにとっての「ジャズ」とは何でしょうか?

「すごい好きなものであって、「尊敬」できるものですね。自分がやろうと思っても中々できないことなんで・・・偶然出てくることはあって、みんな、そこからボクの音楽の中に「ジャズ」の要素を感じてくれたりはするんですけど。自分の中では、「たまたま出来てしまった」っていうのが多いので、そこを狙って出来るっていうのがジャズ・ミュージシャンだと思うんですよ。そういう部分に憧れはありますね。」

「それは、「救い」でもありますよね。ジャズのミュージシャンって、やっぱり、「ピュア」にやっている人が多いと思うんですよ。他のジャンルだと、チャラっとしたものが、表に出てくる場合が少なくないじゃないですか?その点、ジャズ・ミュージシャンには、「ピュア」で、きちんと音楽に取り組んでいる人が多いかなって。逆に、そういった人達が奏でる音楽こそが、「ジャズ」だと思います。そういう意味でも、その「ジャズ」と呼ばれる音楽や、ミュージシャンに対してリスペクトしているんですよね」

-今日は長い時間、ありがとうございました。

「ありがとうございました」




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