Wednesday, February 13th 2008

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-2003年にPharoah Sandersのベスト盤『Meditation Take 1&2』の選曲をなさっていますが、やはりCalmさんにとって、Pharoahの音楽は特別なものなのでしょうか?
「そうですね。その企画も自分の持ち込みだったんで。それぞれの楽曲の権利を持っているところに直接出向いて、話しして。2枚で合同でできないですか、とお願いして、なんとかやってもらったんですけどね。どうしてもPharoah Sandersの良さをみんなに広げたかったっていうのが1番にあったんですよ。(ベスト企画を立ち上げた)その時点ですでに、クラブ・ジャズやヒップホップ系の人達にも、Pharoah自体は、めちゃくちゃ有名だったと思うんですけど、ただやっぱり・・・曲が限られているというか・・。大ネタじゃなくて、実は、もっとこんなに心に沁みる曲があるんだよ、っていうのをみんなに知って欲しかったんですね。」 -ご自身の音楽観に与えた影響も大きかった?
「・・・何て言ったらいいのかなぁ、ウソをついてない感じというか・・・、これは、上手く説明できないものがあるんですけど、結構「感覚的」な問題なんで。Pharoah Sandersは、色々なレーベルを渡り歩いて来ているんですけど、一貫としたものがあって、自分の音楽性にウソをつかずにやっている、というところがすごく影響的には大きいかな。もちろん、ヴォーカルが入ったり、ちょっとイマっぽくなってたりもするんですけど、でも必ず芯が1本通っていて、Pharoah Sandersでしかないっていう。」
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Pharoah Sanders 『Meditation -Serection Take 1』
スピリチュアル・ジャズ、そしてPharoah Sandersに深い造詣と愛情をもつCalmに よる監修・選曲。「クラブ的評価」とはまた一線を画したカタチでコンパイルされた世界初 にして、究極のPharoahベスト・セレクション。アートワークは、Calm作品全てを手掛 けるFJCが担当。氏曰く「Pharoah Sandersという偉大なアーティストのスピリチュア ルで美しい部分を抜き出したものになったと自負してます」。

Pharoah Sanders 『Meditation -Selections Take 2』
Calm監修・選曲。Pharoah Sandersが最も脂の乗り切った時代でもあった80年代 の代表曲を中心にコンパイル。70年代後期のArista時代の名演、80年代にDr.Jazz や、オランダのTimelessレーベルに残した録音などを加え、レーベルの壁を越えて Pharoahの軌跡を振り返るベスト企画盤テイク2。こちらもアートワークは、FJCが担当。
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-Calmさんにとって「スピリチュアル・ジャズ」というコトバは、どのようなものを指し示していると思いますか?
「多分、すごく似ている表現に、「ソウルを感じる」というのがあって。例えば、ヴォーカリストで、「ソウルフル」じゃなくて、「すげーソウルを感じる」って時があるんですよ。「ソウルフル」っていうのは、ちょっと歌が上手だったりして、「あ〜、ソウルっぽいねぇ」程度な感じなんですけど。じゃなくて、例えばBobby Womackなんかが歌っているのを聴くと、「おっ、これはソウルだな」って感じて。なんかその感覚にすごい近いんですよね。」
「つまり、「ソウルフル」だと、所謂ソウル・ミュージックをやっている中での「ソウル」っていう感じですけど、ファッションなんかは同じで、例えば楽器を演奏したりとか、ちょっとジャズ・マナーの中でやったりして、その中で感情がバッと溢れ出た瞬間に、「すごいスピリチュアルだなぁ」と感じるんですよ。」
「その中で、さらに自分の中での「スピリチュアル・ジャズ」っていうのは、少し切ないというか、感傷的というか、美しいというか。なんか、感情だけバァーツって出しちゃうと、フリー・ジャズ寄りになりすぎるんで、もう少し音楽的
な要素に縛りがあるというか。意外と、フリー・ジャズの人がきれいな音楽をやると、すごく感情的で、グッとくる時があるんですよね。Milford Gravesってフリー・ジャズのドラマーがいて、彼が自分のアルバムでガァーッと叩いている中で、1曲だけピアノを弾いている曲があって。その曲とか、すごいグッとくるんですよね。自分の中では、そういうのが、「スピリチュアル・ジャズ」なんじゃないかなと思いますけどね。世の中では、もうちょっと違う基準なのかも知れないですけど」
-メロディアスだったり、美しい旋律を持っているものに対して、特に「スピリチュアル」な部分を強く感じ取ることが多いのでしょうか?
「自分の中では、それぐらいの「括り」をしないと、もう「スピリチュアル・ジャズ」がものすごくデカくなってしまって(笑)、どれもスピリチュアル・ジャズじゃん、みたいな感じになってしまうんで。そういう意味では、やっぱり、どこかに美しい旋律や、感情込めてガーッと演ってる感じが入っているもの対して、スピリチュアルだなぁと」
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Milford Graves 『Percussion Ensemble』
1977年の来日時には、阿部薫(as)、近藤等則(tp)、高木元輝(ts)らと激しいステ ージを繰り広げた、真に革新的なドラマー/パーカショニスト、Milford Graves。こち らもオブスキュアなドラム奏者Sunny MorganとESPに吹き込んだWソロ・ドラム録音 盤。今も昔もメインストリーム・ジャズ界とは常に対極にいるMilfordのプレイ。鬼気迫る 中にみせるふとした人間臭さ。それこそが「スピリチュアル・ジャズ」なのだろうか?
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-フリー・ジャズも結構聴かれるのでしょうか?
「そんなに沢山は聴いていないですけど。やっぱり、フリー・ジャズってめちゃくちゃ難しいって言えば難しくて、あれも、スピリチュアル・ジャズ同様、感情的な部分を聴き取るしかないんでね。」
-Calmさんの中で、スピリチュアル・ジャズとフリー・ジャズの線引きはどの辺になるのでしょうか?
「意外と近いんですよね。モードとかバップとかに比べると、両者はかなり近いですね。でも、モードとかバップのスタイルでもって、フリー・ジャズの精神でガッとやると、意外にスピリチュアル・ジャズになるんじゃないかなっていう勝手な想像もあるんですけど(笑)。だから、フリー・ジャズを(カタチから)真似したら、多分何もできないと思うんですよ。本当のフリー・ジャズではないと思うんですよ。そういう人達はいっぱいいますけどね(笑)」
-以前、Calmさんのある寄稿で、「最初にターンテーブルに乗せた、自分の中でのジャズ作品」にSteve Reichの名前を挙げていましたよね。
「あの人は、楽器とかの組み合わせが違うだけで、精神的にはジャズのミュージシャンにすごく近いのかなって思ったんですよね。冒険しているところや、実験しているところなんかで。ただ、やっていることが、テープ・コラージュだったり、ループさせていたりっていうのが多いだけであって。例えば今、ヒップホップの中でも「これはジャズなんじゃないの?」ってよく言われる、その考え方に近いのかなと思うんですけどね。さらに言えば、Steve Reichは、ものすごく聴きやすいと思うんですよ、他の現代音楽なんかに比べると。」
-Reichも、ご自身の作品に与えた影響は多々ありましたか?
「やっぱり、あのループ感はすごく(影響的に)大きいですよね。一番は、判るか、判らないかの感じでの実験性というか(笑)。極端な実験性を出している時もあるんですけど、「あ、ここ地味に実験してるなぁ」みたいなところをたまに発見できたりすると、面白いですね。派手に判り易くやるのは、聴く方からすれば簡単でいいとは思うんですけど、もう少し「宝探し」みたいな発見がある感じでやるのが、自分も好きなんで。そういう部分では考え方が近いのかなって思いますね」
-「クラブ・ミュージック」と「ジャズ」。この2つの便宜的に「カテゴライズされた」コトバを、Calmさんご自身はどのように捉えているのでしょうか?
「自分の中では、クラブ・ミュージックって、クラブでかけれる音楽は大体そうなんじゃないかと思っているんですけど。でも、クラブでもバラードや、ビートがないものだってかけれるし。その中に、ジャズが入ってくるのかなって気がするんですけど」
-例えば、すごく一般的に「クラブ・ミュージック」=「踊れなくてはいけない」、昔ほどではないかも知れませんが、「ジャズ」=「少し敷居が高いもの」というような感覚があるかと思うのですが。
「多分、ジャズは、ある程度理論的なものを理解した上で、演奏したり、それを壊したりとかする部分があると思うんですが、クラブ・ミュージックは、理論的な部分が解ってなくても、それができるというか。でも、出てくるものは意外と同じだったりする場合もあるんですけど。要は、解ってやっているかと、解らずにやっているかの違いが、大きいかなと思うんですよ。音楽的理論を理解した上でやっている人が、全てジャズかというと、それはまた別の問題になってくるかと思うんですが。そういう意味で「敷居が高い」ってことなんでしょうね」
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Steve Reich 『Octet-Music For A Large Ensemble』
Calm氏もそのループ術に舌を巻いた、Steve Reichの80年ECM作。様々なパターン を採用し、ある種の「病み付き感」を誘発するところは、現代のクラブ・ミュージックにも 相通ずる。まさに確信犯的でもあり知能犯でもある証。ピアノ、ストリング・カルテット、 そして2本の木管楽器が加わっている小編成で、どこまでも広がりゆくそのパルスは、 より繊細で美しい有機体を形成している。
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