―インタビュー続き―
―― ところで先日、『Buged Out』のミックスを聞かせていただきまして、
おっ! そうなんだ?
―― 予想よりもさらに幅広くボーダーレスな選曲で驚きました。あなたがこれまで受けて来た音楽的なバック・グラウンドについて、ロックもダンスも含めて教えていただけますか?
うん。僕は田舎の、文字通り小さな町で生まれ育ったんで、子供の頃は、目新しい、面白いレコードを自分で手に入れられるような機会が中々なかったんだ。だからビートルズとかストーンズとかビーチ・ボーイズ、そういう両親世代の聴いてた音楽を聴きながら育ったって感じなんだよね。もちろんそういう音楽も大好きで聴いていたんだけど、小さな町で生まれ育つっていうことは、もし新しい音楽に触れよう、新しい曲を手に入れようと思ったら、本当に文字通り町を出て、ロンドンまで出かけてレコード店巡りをしたり、あるいはそういうのを持ってる友達の所に遊びに行ってコピーしてもらったりとか、そういう苦労が必要だったんだ。
そんな中、僕が一番最初にエレクトロニック系の音楽に足を踏み入れるきっかけとなったのが、エイフェックス・ツインの『セレクテッド・アンビエント・ワークス 85-92』だった。それは実際の話、かなりラッキーなことだったと思う。というのも当時のワープ・レコーズには、本当に素晴らしいアクトが色々と揃っていたからね。で、エイフェックス・ツインをきっかけに、僕はオウテカとかLFOとかにハマっていき、そこからまた、デトロイト・テクノやシカゴ・ハウスを聴くようになっていった。そしていわゆるクリック系、パンソニックとかのエレクトロニカものを聴き始めたわけさ。
で、またそれと並行して、一風変わったロックものとかにも興味を持つようになったんだよね、例えば13thフロア・エレヴェイターズとか、シルヴァー・アップルズとか。それから、初期のエレクトロニック・ミュージック(電子音楽)の開拓者である、ジョー・ミーク(Joe Meek)とかディーリア・ダービシャー(Delia Derbyshire/※日本では「デライア・ダービーシャー」の表記もあり)とかを聴くようにもなっていってね。
まあ、正直な話、今だって、もし誰かが自分の持ってるCDを貸してくれるとか、自分のやってる音楽を聴かせてくれるとか言ってきたら、僕は心から喜んでそれを聴かせてもらうよ。どんな音楽であろうと、それを聴いて何か新しいものを発見したいっていつも思ってるから。僕は膨大な数のレコードを持ってるかもしれないけど、まだまだ僕の知らない音楽が世の中には本当に沢山あると思ってるからね。
―― 例えばSMDを成分表で表すなら、あなたとジェイムスはどんな成分で、どんな役割をどんな割合で果たしていると言えますか?
うーん、成分で表すのは難しいなあ……っていうか、実際の話、明確な役割ってのが僕らにはないんだよね。僕とジェイムズの場合は、何もかもを分担し合ってるって感じだから。2人とも楽器は弾けるし、サウンドの構築の仕方もミックスのやり方も、全部同じくらいわかり合ってるんだよ。だから常にポジションを交換し合ってるみたいな感じなんだ。
例えば1人があるものに取りかかったら、もう1人はプロデューサー的な役割に就き、一歩退いた所から、「こうしたらいいんじゃない?」とか「そこは絞ってみようか」とか「うん、そいつはいいね!」てな具合に意見を出したりする。そういう役割が局面ごとに入れ替わり、相手のいい部分を引き出し合い、微調整し合うんだ。だからどちらか一方が常に後ろに下がってるっていう図式じゃないんだよね。それがすごくうまくいっているんだ。それぞれが自由に自分のやってみたいことを試し、そして相手のやることに対して、「それはいい!」とか「そいつはあんまりよくないなあ」とか、お互いすごく自由に意見を出し合っているんだ。
で、コード進行にしろメロディーにしろ、一旦何か2人にとって満足のいくものが生まれたら、大抵は、まず土台となるベースとドラムスのパートを作り、全体を実際に通しで演奏してみて、エフェクト・セッティングを変えたりしつつ、演奏しながら色んなパターンを試し、段々と曲をビルドアップしていく。殆どの場合、深く考えながらやるというよりは、実際に演奏してみて、あれこれといじりながら、「こうしよう」「ああしよう」って具合に、曲全体の構成が変化していくんだ。
―― ジェイムスがプロデュース業務などで受けてくる新世代のロックバンドたちからの影響はあるのでしょうか? もしあるとしたら、それをあなたはどのように捉え、どのように返していますか?
うん、そりゃもう影響は絶対にある! つまりさ、そういったバンドのプロデュースを手掛けることによって、立派な設備のあるスタジオで仕事ができるという事実ひとつとってみても、僕らにとって非常に重要な経験になっていると思うんだ。例えば、自分の望む音を出すにはマイクの位置をどうすればいいかとか、そういったことまで熟知している有能なエンジニアと仕事できるのは、すごく大事なことだよ。優れたミックス・エンジニアから、色々なコツとかを教えてもらえるしね。
大抵の場合、必ずしも同じタイプの音楽をやっていなくても、他のバンドと音楽を作るという経験を積むことによって、自分たちの作品がより成熟したものになると言えるんじゃないかなあ。僕らの場合は2人とも、単にエレクトロニック・ミュージックを作ってるだけというわけじゃないしね。ジェイムズがアークティック・モンキーズと仕事した経験は、間違いなくSMDの糧となったと思う、それに僕らは2人とも、シミアンの作品のプロデュースも手掛けてきたしさ。
ロック・バンドと仕事をしたからと言って、僕らがロック系の音楽をやっているというわけじゃないし、必ずしも同じテクニックを使わなくたっていい。ただ常に頭のどこかに、そういったロックの要素や経験があることによって、自分たちの音楽には何らかの変化がもたらされているんだと思う。 もし僕らがエレクトロニック・ミュージックだけに携わっていたのなら、ものの見方も作品も、今とは違ったものになっていたと思うんだ。