「現代指揮界の四天王とは」
Tuesday, January 22nd 2013
連載 許光俊の言いたい放題 第215回「現代指揮界の四天王とは」
現代の指揮界における四天王とは、ズバリ、アーノンクール、サロネン、ヘンゲルブロック、ミンコフスキであろう。彼らの才能と実力は他を圧している。なんと4人のうち3人は古楽系の人。古楽嫌い、古楽わからないを明言していたこの私がこんなことを言い出すのだから、世も変わったものだ。実は私はあるとき、「あ、こういうことか」と古楽のキモを悟ったのである。と同時に、誰がすぐれていて、誰がそうでないかも実に明快に判別できるようになった。当たり前だが、古楽ふうの演奏をしている音楽家が全員すぐれているなどということはあり得ない。やはり本当にわかっているのはごくごく一握りなのである。さらに、いくら理解力はあっても、表現力がない音楽家では不十分なことも自明だ。単なる流行や世界の大勢に乗っかっただけではない古楽、そ
れを聴かせてくれる人は残念ながら多くはない。
で、その古楽のキモとは・・・と書きたいところだが、ウェブ上で書くには長くなりすぎる。さらに、それより重要なこととして、一般的にこのようなウェブ上で発言するには微妙な面がある。それゆえ、機が熟したときに書くことにしよう。決して、もったいぶっているわけではない。もし古楽演奏が日本でいまだ普及し切らない、十分に理解されていないとしたら、それには決定的な理由があるのだ。
さて、四天王のうち、精神的な深みという点ではアーノンクールが他を圧している。特にここ数年はすごい。私が昨年聴いた最高の演奏は、間違いなくウィーンでのアーノンクールだった。
他の3名はもっと感覚的な喜びに満ちている。そのうちの2人、サロネンとミンコフスキが2月に来日する。サロネンはフィルハーモニア管のポストを得てからオーバーワーク気味で、しょっちゅうくたびれた様子をしているのが気になるが、演奏のほうは好調だ。さすがに永遠の青年風の顔も老けてきたけれど、音楽はまだまだ生気がある。来日公演のプログラムは多彩だが、休憩前の前半は聴く気が起きない内容ばかりなのが嘆かわしい。サロネンに限らず、プログラムの前半がつまらないのは来日公演によくあることだが、決して安くないチケット代を払うのだから、もっと実質のあるものでないと困る。
メインの曲目はマーラー「巨人」、ベートーヴェンの第7、「春の祭典」だ。最大の聴きものは間違いなく「春の祭典」である。サロネンの「春の祭典」は一生に1度は絶対聴いたほうがよいと断言できる圧倒的な見事さだ。しかし残念ながら、会場は池袋の東京芸術劇場。細部までリアルに音を聴くのに都合がよいステージ横の席があまりにも少なすぎる会場である。私にしたところで、その席の入手に失敗したので、どうしようか困っているところだ。正直、その席が買えた人がうらやましい。
サロネンはなんと広島の近く、岩国での公演もある。しかもその日は「巨人」とベートーヴェン第7という大サービスプログラムである。行ったことがない町、ホールだし、ちょっと出かけてみたい気もするのである。しかしどうせなら、ベートーヴェンと「春の祭典」のほうがよい組み合わせだったろうに。チケットの値段は、ここが安い。学生に至っては1500円で聴ける。
いずれにせよ、曲目、ホールの特徴、チケット価格などを考えると、選択が難しい来日公演である。ま、選択などと言わず、すべて行くのがマニアの基本姿勢だけれど、誰にでも勧められることではないので。
ちなみに手っ取り早くサロネンのすごさを知りたければ、若き日にフィルハーモニアと録音した「ペトルーシュカ」が抜群によい。天才的という言葉は、こういう演奏のためにあるのである。ぜひともSACDにしてほしいものだ。
ミンコフスキのほうは、手兵を連れてくる。やはり古楽系の指揮者は、絶対に手兵で聴かないとダメ。これは断言できる。いくら上手でも、モダンオケではダメ。基本的な奏法、やり方を徹底できないからだ。東京では2つプログラムがある。「未完成」「グレート」と、「未完成」「ハ短調ミサ」だ。ミンコフスキのシューベルト、私は生でも聴いたことがあるが、すばらしかった。「グレート」が時間性だけではなく、空間性をもっている。この曲で納得させられることはなかなかないけれど、そういう珍しい経験のひとつだった。交響曲全集としてCDも出ているが、ナマだともっと冒険的で大胆に聞こえると思う。CDはウィーンでのライヴ収録なのだが、録音を意識してか、おとなしめだ。もっともミンコフスキはこの交響曲全集には満足しているらしく、パリでは舞台上で宣伝もしていた。そんな風景も珍しい。
モーツァルトの「ハ短調ミサ」では古楽演奏ならではの合唱が楽しめるだろう。小編成でニュアンス豊かな合唱を楽しむには、オペラシティは大きすぎるのが残念なところだが、近くて聴けばおそらくほぼ大丈夫だろう。古楽演奏の基本は声楽にある。だから、こうしたすぐれた演奏家が声楽曲を日本でやってくれる場合には聴き逃すべきではない。
ミンコフスキの録音はすでに数多いが、ハイドンの「太鼓連打」が猛烈によい。これは音質も含め、目下のところ彼の最良の仕事のひとつではないか。大胆でキレがよくて全体の姿が明快という彼の美点が実に鮮やかに伝わる。いきいきした感じも、ナマで聴くミンコフスキのもっとも目立つ特徴のひとつだ。冒頭に書きかけた古楽のキモ、それを理解するためには現在一番役立つ録音のひとつかもしれない。
それにしても、ミンコフスキは見た目が完全にくまさんである。昨今、くまが山を下りてきてあちこちに出没するというニュースを聞くたびに、私はミンコフスキを思い出してしまうのである。
(きょみつとし 音楽評論家、慶応大学教授)
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