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「TAO」 第6回:ゲスト→村上賢司 【5】

Wednesday, April 7th 2010

『工場萌えな日々』が僕の人生変えましたね。



---  ここからはラブドールについてお聞かせ頂きたいんですが、ラブドールはなくなってしまうものではないですよね。


村上:そうですね。なくなってしまうものではないですね。あれはThere's(ゼアリズ)の社長さんが僕に提案して下さったものですね。僕はラブドール自体の存在は知ってたんですけど、あれはね、あとで聞いたら、いろんなプロデューサーが映像化しようとしてたらしいんですけど、何か上手く企画に出来なかったらしいんですよね。だけど、「ラブドールをいろんなところに置いてみて撮ってみるだけでもいいんじゃないかな?」っていうことでまとまり、There's(ゼアリズ)さんって海外のセールスが強い会社なんで、ラブホテルもそうなんですけど、「外国の方が観たら喜ぶんじゃないのかな?」っていうことで、作品化できたと思います。

あんな精巧なラブドールが存在してるってこと自体が日本独特だと思うんですよね。現物を見るとやっぱりすっごいですからね。ラブホテルも今考えてるいろんな企画も全て、僕が見たりした時に「撮りたい!」「わあ、すげえ!」と思ったものなんですよ。すごく単純。ラブドールも上野にあるショールームに購入者のふりをして見に行ったんですね。そこに入って初めて出会った彼女達を見た時に「こ、これはすごい!」って思ったんですよ。僕もこれからいろんな企画を出していって、ダメなものもあると思うけれど、「おもしろい」「これ、すごいなあ」って本気で思えたものを撮っていきたいですよね。


---  今年、『空気人形』が公開になって、『ラースとその彼女』以後、ラブドールが世の中に広まって来てますよね。週刊誌にもラブドールの記事が載っていたりもしますし。オリエント工業さんがラブドールを製造されているんですよね?


村上:そうです。『空気人形』でもオダギリ ジョーさんのシーンはオリエント工業さんで撮られてますね。ラブドールっていうのは、オリエント工業さんが生産する商品の名前なんで、あれらは製品名で言えばリアルドールなんですね。リアルドールの中のラブドール。ラブドールって言ったらオリエント工業さんのものなんですよ。あそこの社長さんとかもやっぱりね、すごくおもしろい方ですよ。

最初はいわゆるドキュメンタリー番組的に製造過程も撮ろうと思ったんですけど、プロデューサーといろいろ話し合って止めたんですよ。それはやっぱりね、グロテスクなんですよね。だから、今回はそうではなくて、「こういうかわいい子達がいるんだよって紹介するというコンセプトでやってみない?」っていうことで行こうかなって。


---  あそこに出てくるラブドール達は、少しずつ顔つきも体つきも違いますね。それぞれに名前を付けて、設定を設けて、衣装やヘアメイクにも変化がありました。具体的にどのように決めていったんですか?「こういう趣味の方には・・・」というようなことも?


村上: うーん、あれは川崎周辺で撮ってるんですけど、そこにあるいろんなシチュエーションにはめていって、効率的に撮影しているというのは正直あります。衣装とかのイメージっていうのはヘアメイクの方達といろいろ相談し 合ってやってみたという感じですね。

技術的なことなんですけど、あれはEOS-5Dっていう、CANONから出てるスチールカメラのムービーモードで撮ってるんですよ。2年連続PFFで入選してる岩永(洋)くんっていう監督が、仕事はキャメラマンをやっているので、彼がそれを提案してくれて。「ラブドールは動かないものなんで、深みのある映像を選んだ方がいいですよ」っていうことで彼がEOS-5Dでほぼ全編撮ってくれたんですけど、あれはおもしろかったですね。ビデオでは再現出来ない・・・本当に35ミリフィルムのムービーカメラで撮ったような映像作りが出来るので、動かない彼女達でも観ていられる画が作れた。レンズが代えられるのでそれぞれの特徴で映像の表情が変わっていく。そこのところはやってておもしろかったですね。


--- すごくきれいな映像でした。


村上:来年から低予算の映画はEOS-7D、EOS-5Dで撮られると思いますよ。もうね、「あーすごい」っていうような映像が撮れますよ。


--- ちなみにいくらぐらいするんですか?


村上:本体とレンズで20万から30万くらいかな。レンズはやっぱりいろいろ揃えないといけないとか、データーのバックアップとかでいろいろあるんですけど。何かね、そこでふと思ったのは、これはすごく専門的な話になっちゃうかもしれないけれど、これまで結構あった「キャメラマンなんて誰でもいいじゃないか」「ディレクターが回しちゃって下さいよ」っていうようなノリからまた、キャメラマン復権の時代が始まる。もうあれはね、演出しながらじゃ全然無理ですからね。レンズを交換するとか、レンズをきれいにするとか、メンテナンスとかいろいろ出てくるんで。時間をかければ出来ますけど、現実的にはキャメラマンは演出家と別じゃないと現場が全然進まないなあって。これからまたキャメラマン復権の時代が来て、すごくおもしろくなると思いますよ。映像に幅が出てくると思う。


--- そこに関しては明るいですね。


村上:うん。おもしろくなると思う。そういう1つの技術によって、安価でおもしろいものが出来てくるっていうのは、インディーズでも映画を作っている人間達にとってはおもしろいと思う。95年にデジタルビデオの民生機が発売された時がすごい映像革命なわけだったんですよ。あれからかなりの部分が変わったんですよ、映画は。アナログからデジタルになった瞬間っていうのは、白黒からカラーどころの話じゃないんですよ。あれを実体験で25の時に体験出来たっていうのは、自分にとってはよかったなあって思います。それがどんどんどんどん加速的に進んでいって、で、もう今は『アバター』ですからね。3Dに至るわけですよ。


--- ラブドールもラブホテルも劇場公開されましたね。


村上:そうね(笑)。それはやっぱり、There's(ゼアリズ)さんが映画配給会社なんで考えてくれたと思うんですけどね。でも、自分でもびっくりしましたよ、「ラブホテルを劇場公開する」って言われた時は。でも、劇場公開されたことによって「取材に協力してくれたホテルの人達、みんな喜ぶなあ」と思いました。実際、喜んでくれましたよ。最近、撮影した内の一軒が改築されちゃうって話を聞いて、追取材に行ったんですけど、ホテルの各部屋にラブホテルコレクションの映画告知のチラシが置いてあった時は、ちょっと泣きそうになったな。「そっか、ここに夜入った人達はこのチラシ見てるんだ」って思って。


--- 村上さんにお客さんの反応は入ってきてますか?


村上:入ってきてますけど、それはまあ、賛否両論ありますよ。ドキュメンタリーって言ったらやっぱり、人間が出てこなきゃっていうのがあるから。それがあの作品では全部、排除してるので、そういうところで唖然とする方はいるし、笑う方もいるし・・・それぞれですね。だけど、みんながみんな喜ぶ映画ではないことはわかってるし、怒る方の気持ちもめちゃめちゃわかりますよ。でも、それはもうしょうがないって言っちゃいけないのかもしれないけど・・・でもねえ?


--- きりがないですよね。


村上:そう、きりがないよね、そういうことを考え始めると。


--- 先ほどお話にあった『工場萌えな日々』ですが、ラブドールの最後のシーンには工場とのコラボレーションが・・・。


村上:やってみたかっただけなの(笑)。


--- 『工場萌えな日々』はすごくヒットしましたよね。


村上:しましたね。あれが僕の人生変えましたね。あれによって、ああいうものがオッケイなんだっていうことになったと思う。あれは本当にたまたまなんですよね。昔ね、ホラーのオリジナルビデオを一緒に作ってた制作会社のプロデューサーとひさしぶりに会おうと思って、彼が経営していた別の会社に行ったんですね。そしたら、そこに『アメリ』を日本に持って来たことで知られる叶井俊太郎さんがいて。叶井さんが当時出演していた眞鍋かをりさんが司会の「ブログの女王」っていう番組の企画で「ブログを買う」っていうのがあって、そこで「工場萌えな日々」を買ってたんですけど、それを「映像化しなきゃいけないのにどうしたらいいんだろう」って、ちょうど考えあぐねてたみたいで。だからたまたま、その時に「せっかく来たんだから、村上さんやります?」って言われて。

僕、工場見るのは好きだったから、「やりましょう」って言ってたんですけど、彼らが用意した企画書には「クラシック音楽に合わせて工場を見せる」って書いてあったんですよ。だから、僕は「これはダメですよ。だって、アダルトビデオの絡みのシーンで音楽かけます?それと一緒ですよ」って言って。工場が好きな人は工場だけを感じたいわけだから、音楽のリズムに合わせちゃったら絶対ダメなんですよね。そうではなくて、高性能のマイクを持ち込んで、工場の音を録って、一定のリズムで見せた方がいいっていう話をして。そしたら、その提案を「工場萌えな日々」のブログをされてる方も喜んでくれて、企画が動いたんですよね。AVの例を出したのがわかりやすくてよかったのかなって思いましたね。結局、フェチズムですから。

そういうフェチズムみたいなものを・・・それを熱心に観てくれる人をいつも想像して制作するんです。『工場萌えな日々』を作ってる時は、「人間関係に疲れた30歳のOLが夜一人で観る」っていうのを想像したんですよ。だから、合間に入る音楽もそういう方々が不快にならないもの、邪魔にならないものにしている。あれで音楽をかけてるところは本当はこれはネタバレなんですけど、現場の音が使えなかったところなんですよね。例えば、最後の横浜の工場で音楽かかりますよね?あれね、周りに釣り人が100人くらい並んでる防波堤で撮ってるんですよ。だから、「ぱちゃーん」と魚が釣れた音とか「ああ、釣れた、釣れた」っていうような声が入ってて使えないとか、あとは千葉の水上のところも船の音だけだったら使うべきだと思うんだけど、あれ、遊覧船に乗って撮ってるんで、観光ガイドがずっと流れてるんですよ。


--- それはダメですね(笑)。


村上:ね(笑)。OLさんが夜ね、暗い部屋で工場を見ている感じを思い浮かべながら編集してたんですけど、その思いは届いたんじゃないかな?っていう気はしますね。まあ実際ね、OLさんが観てるかどうかは別として。


--- 女性の方にも観られてるみたいですよね。


村上:正直、女の人の方が反応がいいです、工場は。やっぱり、機能美・・・それがエロティックなのかな。意図しない美しさっていうのは、森を見るのと一緒だから。すんごく自然なんですよね。例えばエタノールを精製するっていう目的はあるんだけれど、その目的を遂行するためだけに作ったものが、美しい。もしかしたら、ある種のコンセプチュアルの呪縛みたいなものから離れたいっていう欲望があるんじゃないですかね?よく、芸術作品とかで「コンセプトって何?」とかって聞かれるじゃないですか?この前も美大生の子と話してて、「コンセプトの話をするのが嫌だ」っていう話が出たんですけど、確かにそれはわかりますよ。僕は企画書にはキチンとコンセプトを書く方だけど、もっと初期衝動的な、観てはっと思うようなものがあっていいと思う。だって、 岡本太郎にコンセプトって聞くのかよっていうさ(笑)。


--- 聞きませんね(笑)。


村上:ねえ?(笑)。ピカソにさ、「すみません、この作品のコンセプトなんですか?」って聞くのかなあとは思いますよね。子供が粘土をこねてたらいつの間にか変なものが出来てみたいな方がおもしろいんじゃないかなって思うし、子供の視線で「これ、かっこいいな」って思うようなものが大事なような気がするんですけどね。その1つが工場だと思うし。あとはやっぱり、潜在的にあの発売時期、みんな「工場」を求めてたんじゃないですかね。今でもそうだけれど、巷に溢れてる・・・コント番組に字幕を付けるようなものが嫌なんですよ、みんな。そういう説明過多なものが面倒くさいんですよ。それをされることが本当にウザイ。発見がしたいんですよ、能動的に。受動的なものはもう嫌なんじゃないですかね。だから、早送りして頂いて本当に結構なんですよ。ドラマだとか映画だとかで早送りされたら泣いちゃいますけど(笑)、ああいう作品に関してはもういくらでも早送りしてもらって、自分の好きなところを探す、好きな人形を探す、好きな工場を探す・・・ホテルだって、「この部屋いいよね」ってみんなで遊ぶとか「今度行ってみよう」ってコミュニケーションのツールとして使ってくれたら本当にうれしいし、お父さんがセクハラに使ってもいいし。デスクトップに「○○ちゃーん、これ何だかわかる?」「何ですか、それ?あー、課長、これかわいーい。行きたーい!」「行く?○○ちゃん」みたいな、そういう感じっていいじゃないですか、「週刊大衆」みたいなノリで(笑)。そういうのが夢ですね。奥手の男子が「長澤さん、ここ行きますか?」って。「え、何?」みたいな。「いやいや、何もしないからさ」・・・。


--- 「遊びに行こうよー」みたいな(笑)。


村上:みたいなね、そういうのを思い浮かべながら編集してるんですよね。「そういう風になれ」って思いながら。そしたらね、思い出の映画になるじゃないですか?「自分の作品を記憶に留めたい」っていうのが作家の欲望だったら、それでいいんじゃないですか?いや、本当にそうだと思いますよ。

そういえば、この前、初めてグラビアビデオを撮ったんですよ。元々僕が監督することを想定されてたわけじゃないんだけれど、構成案がすでに決まってて、「工場とラブホテルで撮る」って書いてあったんですね(笑)。


--- 偶然ですね(笑)。


村上:そう。工場はちょっと難しいかなって思ったんですけど、いい感じで撮れましたね。でもね、ラブホテルの方がね、本当にヤバかった!『ラブホテル コレクション 甘い記憶: 東日本』の最後に出てくる迎賓館の螺旋階段の部屋でグラビアアイドルの松岡音々ちゃんっていう新人の女の子を撮ったんですけど、やってみたらね、本当によかったですよ。ラブドールを撮影してくれた岩永(洋)くんもびっくりしてたんだけど、やっぱりね、ラブホテルの部屋は女の子がそこに立った瞬間に本当にエロティックになるように照明が出来てるの。もうね、びっくりした。ぜひ観て欲しいな。自分で撮ってて、「ああ、こんないやらしいカットはない!」って思った。そう思ってるの僕だけかもしれないんですけど。で、たぶん、自分がエッチだなって思うのってこれなんだなって。だからね、長澤さんにもぜひそのライトを浴びてもらって、そしたら男性が「あ、いつもと違う・・・」みたいな、そういうまた違った側面を見せて欲しい。それってすごくいいじゃないですか?最高ですよ。それがやっぱり「生きててよかったなあ」って思う瞬間だと思うので、ぜひ行って下さい!(笑)。


--- (笑)。ラブホテルって異空間ですよね。普通のホテルで違う気分になるのにああいう特別なホテルに行くと自分がどうなるのかってちょっと試したくなりました。


村上:僕はね、最初は「笑い」でいいと思うんですよ。入った瞬間に、2人で笑い合えるのが重要なんじゃないかなって思うんですよね。たぶん、亜美伊新(あみいしん)さんとかもそれを考えてると思うんですよね。やっぱり、緊張するわけじゃないですか?「入るところ人に見られちゃ嫌だなあ」とかさ。すごく、人間を見つめている表現と思うな。今この取材は六本木でやってるけれど、六本木ヒルズよりは全然人間味がある・・・六本木って闇がなくなった部分がすごくあるから、東京で一番つまんなくなったような気がするけど、歌舞伎町なんかもう、とっくにそうですよね。一生懸命に再生しようとしてるけれど、闇をなくした瞬間に街っていうのは全然おもしろくなくなっちゃう。あと、「じゃあ、その消えた闇って今どこに行ってるんだろうな」っていうのはずっと思ってることで、僕は結婚して川口に引っ越して、その後、西川口に引っ越したんですけど、その時期にその辺りが総摘発を受けて、裏風俗だとかソープランドが一斉摘発された。あれで潰されたもろもろが「今は一体どこに行っちゃったのかな」って思うし、まあ、ああいうのを簡単に潰すような人達っていうのはさっきも言ったけど、どういう面下げてああいう取締りをやってるんだろうなって思う。世界の豊かさっていうか、そういうものをちょっと考えて欲しいなあっていう気はするよね。確かに性風俗っていうものは女性から搾取するものだから、その問題があるのは本当に認めるんだけれど・・・これからの僕の企画のことを話してもいいですか?(笑)。


--- はい、宣伝も含めて、よろしくお願いします(笑)。






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