「TAO」 第6回:ゲスト→村上賢司 【4】
Wednesday, April 7th 2010
平和って、多様なものがそれぞれを認め合って存在してる世界だと思うんですよ。
--- ラブホテルのお話で・・・都築さんがオーディオコメンタリーで参加されてますね。
村上:あれはラジオみたいな感じですよね。で、言ってるのは「いいよね」ってだけ(笑)。あれは自分で聴いててちょっと「ひどい!」って思いましたけど、あとは・・・都築さんが怒ってる(笑)。でも、怒るのは当たり前だと思いますよ。だって、都築さんは編集者じゃないですか?編集者って、「おもしろいものを探す」「それを紹介する」っていうのが仕事でしょ?それが提案しても全然ダメで取り上げてもくれない・・・都築さんもおっしゃってましたけど、「何で面白いラブホテルがあるのはわかってるのに映像化する奴が今までいなかったのか」って。それは僕もわかんないですよ。僕は企画書を書いたら動いてくれた方がいたから実現出来たけれど、あれを撮る前は僕も、「他にやってる人いるんじゃないかな」って思ってましたけど、実際にいなかったからびっくりしましたね。
--- 意外ですよね。
村上: 本当に意外。何で今まであれを撮る人がいないのかが僕もすごく不思議ですね。
--- どうして撮らないと思いますか?
村上:1つは語弊がある発言かもしれないけれど、怖いんだと思うんですよ、ああいう業界に飛び込んでいくのが。実際に飛び込むと一発でわかりますけど、普通の方ですよ、みなさん。ヤクザ的なものは全くない、本当に街で仕事をしている人達・・・普通のおじさん、おばさん、お兄さん、お姉さん。もう1つはやっぱり、はずかしいのか、かっこつけてるんじゃないかなって思いますよ。今はみんなレッドカーペットみたのが当たればああいう風にやる。僕ね、また余談だけど・・・ごめんね、何かグチっぽくって(笑)。僕ね、お笑いのコントに字幕が付いてから、世の中が変わったと思いますね。トーク番組とか取材番組のテロップフォローはいいですよ。それを最初に付けたのは『探偵!ナイトスクープ』って言われてますが、あれはまだわかるし、僕もおもしろいと思ったから『夏に生れる』(1998年に制作のセルフドキュメンタリー作品)でそれをやってるんですけど、コントは違いますからね。そのうち、落語の下に字幕入れますよ。
--- このままでいくと・・・。
村上:このままでいくと(笑)。僕は運がよくて、テレビの仕事は結構自由度の高いところでやらせて頂いてるんでそういうストレスはあまりないんだけれど、あれで「世の中変わったなあ」って気がするんですよね。だからじゃないですが、今はそんなにテレビを観なくなっちゃいましたね。90年代なんかもう本当にテレビを1日10何時間毎日観てて、録画したビデオが山になってて、それが突然崩れて死にそうになったりしてたのが今は週に数時間ですもんね。テレビ観ます?
--- あまり観ないです。でも、ニュースとNHKと・・・あと「タモリ倶楽部」は観ます。
村上:あのね、僕ね、「タモリ倶楽部」がテレビの放送でなくなったらね、亡命しますよ。
--- 亡命(笑)。
村上:亡命ですね。僕、はっきり言って唯一毎週観てるのは「タモリ倶楽部」です。で、「タモリ倶楽部」でいいわけじゃない、テレビって。だけど「タモリ倶楽部」があって、その後の「爆笑問題の検索ちゃん」があって、「虎ノ門」っていうある種の・・・ゼロ年代に残された唯一いい感じっていうのがなくなったとかね。でもまあ、とは言いながら、みんな戦ってるとは思うんですけどね、「おもしろいことやりたい」って。ただ、コント番組にテロップを入れてる人達は(はっきりと)間違ってますね。これはもう断言してもいいですよ、彼らは間違ってる。だって、やっぱり観なくなると思いますよ、テレビを。制作する側の人間は一般の方より感性的なところだけでも、リードしていかなきゃいけないわけだし、そのために僕達は深夜まで歩いてるわけじゃない(笑)。日曜日に働いてるわけじゃない。で、平日に寝てるわけじゃないですか。平日寝ていられる人間っていうのは、「こういうものがあるんだよ」っていう風におもしろいもの紹介出来なくちゃダメだと思いますよね。
--- 「インターネットが普及したことによって、パソコンの前に座って検索すれば情報が得られると思ってるから間違ってる」と都築さんは以前、お話されていました。
村上:僕はね、一長一短だと思います。1つは人を説得させるためには確かに、それがありな場合はあるんですよ。例えば、企画を早くしなくちゃいけないネタの時は企画書を書いてる時間がもったいないんで、検索したものをばーっとプリントアウトして見せて「これやりたい」って言う手はあります。ただ、手付かずではないのでそこはダメだなと僕も思う。だけど、例えば人のブログだとかそういうところから派生した何かで見つけるっていうのは僕はありだとは思うけれど、結局、Googleの上にくるものでしょ?そこには何もないような気もするし。それよりは街を歩いたりだとか、どこかを自転車で走ってる時の方が全然、発見はあると思いますけどね。僕もネット気違いなんで今はあんまり言えないんですけど、ただ、何かを発見するためにネットを見てるって感じではないですね。やっぱり、過去にあった何かを確かめるとか、かなり後ろ向きな作業ですね(笑)。でも、何で秘宝館好きなんですか?
--- わたしは・・・エログロナンセンスが大好きなんです。
村上:(大爆笑)。長澤さんのインタビューしたいな、僕。何でエログロナンセンスが好きなんですか?それは天井桟敷的なものですか?
--- 天井桟敷的なものも好きですけど、やっぱり、猥雑で雑多なものっていいですよね。生理的に惹かれるものや好奇心が沸くもの、興奮を覚えるものが特にエログロナンセンスにまつわる作品とアートと活字なんです(笑)。初めての体験を与えてくれるものが多いので。
村上:エロは何ですか?
--- エロは・・・わたしはAVも観ますし、ピンク映画も好きなんです。裸って、美しいというよりは笑ってしまうマヌケさみたいなものもあり、自分が所有している肉体というところもあって、本質的な部分ですよね。
村上:根源的なものであり、個性が出るものだから、バリエーションが多いからおもしろいですよね。僕ね、グロがダメなんですよ。
--- わたしもすごくグロ過ぎちゃうとダメなんですけど、井口昇さんの作品ですとか、会田誠さんのアートも大好きですね。あとは少しベクトルは違うんですけど、以前、死体カメラマンの釣崎清隆さんに取材させて頂いたんですね。釣崎さんの死体の撮り方は、死体と真摯に向かい合っている姿勢が映像からすごく伝わってきて、本当に美しいと思いましたし、妙な興奮を覚えました。そこをグロと言っていいのかはわからないですけど。
村上:なるほどね。僕ね、まじめなことを言うと、子供ができてから「平和って何だろう?」って考えるようになったんですよ。で、まあね、平穏無事なセキュリティーがすごい世界っていうのが平和だと思われるけど、それは絶対違う。平和って多様なものがそれぞれを認め合って存在してる世界なんですよ。排除しちゃダメなんですよね。さっきのラブホテルの話になると、多様だったものが悪法によって均一化されようとしてることに憤ってるんですよ。当然、経済の論理もあるんだけれど、秘宝館も同じようにみんな摘発を受けてますからね。そういう動きこそが、平和なものから遠ざけると僕は思うんですよ。
まあ、これは僕の原風景にはなるんだけれど、すごく語弊があることを言うと、僕が子供の頃に生きていた世界っていうのはもう、いろんな人がいたわけですよ。犯罪者もいたし、薬の中毒の方もいたし、僕の友達の親がヤクザさんっていう人もいて、そこに遊びに行ったりしてたけど、それが危険だって思ったことは一度もなかった。そこのところを排除しようだとか、平和に生きようとするためにセキュリティーな方向に行くっていうのがよくない。だから、僕は意識的に秘宝館だとかラブホテルだとか・・・ラブドールはThere's(ゼアリズ)さんからの依頼だったんだけれど、ああいう方向に行くっていうのはそういうことへの戦いというか気持ちがありますよ。そうじゃないとヤバイじゃない、自分の子供が。ああいう、どこにでも監視カメラがあるような世界っていうのはどう考えても異常ですからね。よりによって、僕が一番よく使う埼京線に今度”監視カメラ”が付くってニュースで言ってたのを聞くと、本当「バッカじゃねえの」って思う。意味わかんないよ。「監視カメラで映るようなところで誰が痴漢するんだよ」って。人が見えないところでやるのが痴漢なわけだから。だからもう行くところまで行ったなあって。まあね、もっとどんどん行くんだと思うんだけれど、「ちょっと待って」って気はしますよね。
ヒステリックにラブホテルを排除するような人もいるけれど、排除される側にも生活があって、そこにはそれぞれの家族がいて生きてるんだから、それを想像しないで排除しようなんて言うのは本当にね、「何で僕はこんなに怒ってるんだ」っていうくらい怒るよ。シャレにならないっていうのはある。ラブホテルなんかは特に関係者に会っているからなおさらなんだけれど、そこでがんばってる人達を応援したいっていうのはある。僕が取材したデザインの凝ったホテルっていうのはやっぱりね、掃除が大変なんですよ。掃除が大変なところであそこまでメンテナンスをしてるっていうことは・・・例外はありますけど、ほとんどのホテルは全体的に質がいいんです。サービスがすっごくいいですよ。だって、経済的な論理で言えば上手く出来たアジアンリゾート風のホテルの方が効率いいに決まってるじゃないですか?
--- どの部屋もほぼ同じ造りで、掃除も短い時間で出来るような。
村上:そうそう。だって、回転がいいことが一番だもん。だけど、あんなに回転が悪いものを今でもがんばって続けているってことは、彼らはそこが好きなんですよ。愛してるからなんですよ。従業員がそこの場所を愛してるってことは、そこのホテルはいいホテルと言えると思う。だから、そういう人達が特にああいう運動とかがあると後ろめたい気持ちになるっていうことに対して、本当に怒りが込み上げてきますね。だって、彼らは何か悪いことしてるのかなって思うし・・・。
でも僕もすごく悩むことではある。以前、僕がホラー作品を作った時に「映画秘宝」でインタビューを受けて、僕にちょうど子供が出来た時なんですけど、自分がやってきたホラーだとかそういうものを「子供に見せられるのか?」みたいな話を突きつけられたんですよ。で、僕は「見せられる」って答えたんですよ。それはなぜかって言うと、そういうものを観て自分は育ってるから。そりゃあ、隠すよ。隠すけど、引っ張り出そうが何しようがそれはありなんじゃないかなっていう風に思ってますよ。
--- わたしはラブホテルコレクションを拝見して、例えば、大阪に行ったら、「京橋のあのホテルに泊まりたいな」とか・・・。
村上:泊まって下さいよ。全然ね、女の子一人でも泊まれるし。あそこのオーナーのね、オーディオコメンタリーで都築さんとも話してたでしょ?本当ね、びっくりするほど美人ですよ。またね、いじらしいお姉さんなんですよ。だって、例えば僕がね、「ほんと美人ですよね?」とか言うと「うーん、もーう、いけず」とかって言って僕の服をひっぱるの(笑)。もうね、京橋のマザー・テレサみたいな感じよ(笑)。
--- 京橋のマザー・テレサっていいですね(笑)。
村上:格好もね、ちょっとシスターみたいな感じなの、ロザリオとか付けててね。40歳くらいの超美人!もうね、何か感動する。京橋っていう街の猥雑な雰囲気も含めてたのしめますよ。
あとね、駒込のアルパ!あそこ、すごいでしょ?駅から1分ぐらいだからね。あそこは外国人の方が知ってますよ。都築さんも「外国人をあそこに案内する」って言ってましたけど、いやあ、あれなんかも、フリータイムで4千円ですからね、普段。2人で2千円払えばあの部屋が見れますから。本当にいろんな人が見に行って欲しいし、体験して欲しいと思う。秘宝館もね。
--- 村上さんも都築さんも、「もうすぐなくなってしまうかもしれないけれど、まだ間に合うから遊びに行ってみたら?」というような提案をきっかけとして与えて下さるので、それをまず映像で拝見出来たのがすごくうれしかったです。”ラブドキュメンタリーシリーズ”と題されていますが・・・。
村上:それはね、勝手に付けられただけ。たまたまLOVEが続いただけだよ。
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