多声の綾を独唱とリュートの美音で綴る、16世紀流儀のリュート歌曲集
16世紀には、パレストリーナやラッススらによる教会音楽はもとより、ヴェルドロやジャヌカンらの世俗音楽も、多くの場合は3〜5声が別々のメロディを歌いあわせるポリフォニー楽曲として作曲されました。しかし当時のさまざまな史料から、そうした歌もリュート1挺を従えた独唱で演奏される機会が少なからずあったことも判っています。既にジョスカン・デプレの世俗歌曲群をその手法で、多くの声部をリュートで受け持って見事なアルバムを制作している、スロヴェニア出身の新世代名手ボル・ズリヤンとフランスの古楽歌手ロマン・ボクレールのタッグは今回、たったひとりで過ごす夜に去来する恋の悩みを歌ったイタリア語マドリガーレやフランス語シャンソン、およびスペイン語歌曲を集め、黄昏から夜明けまでの時の流れを追ったプログラムを2人だけでじっくり解釈。幾人もの歌手が歌うよりも現代人の感覚に近いと言ってもよい孤独感を鮮やかな演奏に結晶させました。
温もりあるボクレールの美声もさることながら、ジェズアルドのマドリガーレをリュート独奏で演奏した驚くべきアルバムで新たに注目を浴びたズリヤンの細部まで行き届いた解釈も見事なもの。一連の切ない詩句による歌の末、不意にアンコールのように盛り込まれたビートルズの『ブラックバード』もあまりに自然な美しさではっとさせられます。(輸入元情報)
【収録情報】
〜黄昏〜
1. フィリップ・ヴェルドロ[1480/85-1530/52]:おお、甘美なる夜
2. バルトロメオ・トロンボンチーノ[c.1470-after 1525]:眠ってしまうのか、わたしはむしろ
〜恋人の不在〜
3. 伝フランシスコ・ゲレロ[1528-1599]:こうも夜が暗くては
4. ジャン=ポール・パラダン(ジョヴァンニ・パオロ・パラディーノ)[1500-1566]:ファンタジア第1番(リュート独奏)
5. 作者不詳:そうした夜はあまりに長い〜『ウプサラの歌集』より
6. ディエゴ・ピサドール[1509/10-after 1577]:こうも夜が暗くては
7. 作者不詳:夜、誰もが休んでいるというのに〜オッタヴィアーノ・ペトルッチ編『フロットラ集 第4巻』(1505)より
〜夢〜
8. ジョヴァンニ・ピエールルイージ・ダ・パレストリーナ[1525/26-1594]:どうか、決して私の心から
9. オルランドゥス・ラッスス[1532-1594]:夜が来るたび
10. クレマン・ジャヌカン[c.1485-1558]:夜が来るたび
11. トマ・クレキヨン[c.1505-1557]/編曲者不詳:夜が来るたび〜ピエール・ファレーズの曲集より(リュート独奏)
12. クレキヨン:夜が来るたび
〜月の輝き〜
13. パラダン:ファンタジア第2番(リュート独奏)
14. クレキヨン:月が、恋人たちの悩みの種なら
15. フアン・バスケス[c.1500-1563]:月が上ったら
16. パレストリーナ:ああ、わたしが月の恋人であれば
17. 作者不詳:おお、輝かしい月よ〜『ウプサラの歌集』より
18. パラダン:ファンタジア第4番(リュート独奏)
19. ジョスカン・デプレ[c.1450-1521]:恋の悩みはあまりにも大きく
〜夜明け〜
20. ラッスス:夜は冷え込み、また暗くもあり
21. 作者不詳:夜には朝が続くもの〜ペトルッチ編『フロットラ集 第8巻』(1507)より
22. パラダン:ファンタジア第3番(リュート独奏)
23. ピエール・ド・マンシクール[1510-1564] :見よ、太陽と夜が
24. 作者不詳:夜明けにおいでなさい、恋人よ〜『ウプサラの歌集』より
25. ジョン・レノン[1940-1980]&ポール・マッカートニー[1942-]:ブラックバード
ドゥルセス・エクスヴィエ
ロマン・ボクレール(バリトン)
ボル・ズリヤン(リュート)
使用楽器:
7コースのリュート:ヴェネツィアのG.イエベル(ヒーバー)1580年頃製作のモデルに基づくロンドンのスティーヴン・ゴットリーブ1984年製作の再現楽器
6コースのリュート:ボローニャのH.フレイ1530年頃製作のモデルに基づくアレアウ(ブラジル)のセサル・アリアス2018年製作の再現楽器
録音時期:2022年5月
録音場所:南仏エロー県、サンテーユ聖母教会
録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)