革命前のフランスで静かに流行したマンドリンの真相に迫る充実選曲!
今でこそ19世紀以降のイタリア観光ブームの影響で「マンドリンといえば南イタリア」のイメージが強いものの、この小ぶりの撥弦楽器が18世紀に一時ヴァイオリンや鍵盤楽器にも追い迫る人気を誇り、パリやウィーンなどの都市部で多くのアマチュア演奏者に求められていたことは意外に知られていません。近年の古楽器研究の成果でその栄華に迫る録音も増えてきましたが、歴史的マンドリンの研究と演奏実践で注目を集めてきたイタリアの名手アンナ・スキヴァザッパは今回、ルイ15世時代のフランスにおけるマンドリン人気に着目。ヴァイオリンとの調弦の共通性なども幸いし奏者人口を増やしていった頃、花の都パリでどのような音楽がこの楽器の妙音で奏でられていたかを多角的に解き明かします。
ヴィオールの名手フォルクレの名曲『ラ・マンドリーヌ』やグレトリーほかの声楽曲も盛り込みながら、マンドリンが蔭に日向に活躍する室内楽曲をバランスよく集め、特に編曲者不詳ながら往年の人気作曲家たちの音楽をセンス良くマンドリン向けにアレンジした一連のソナタには世界初録音の作品もあり。メロディアスで心地よい音作りの曲が多いだけに、歴史的に検証されたマンドリン(一部18世紀製のオリジナル楽器も使用)の軽やかで奥深い響きの魅力が、ひときわ際立つトラックの連続となっています。
パリで絶大な人気を誇ったグレトリーの作ほか声楽曲では、ジョルディ・サヴァール指揮のモンテヴェルディ『オルフェオ』の表題役で聴かせた圧巻の名演の記憶も新しいマルク・モイヨンの歌唱が絶品。他にもリ・インコーニティの鍵盤奏者アンナ・フォンターナ、多様な歴史的ハープを弾きこなすマリア・クリスティナ・クリアリーらの共演も頼もしく、ポンパドゥール夫人やマリー=アントワネットらが生きた時代ならではの優雅な空気を存分に楽しめます。そこにマンドリンの響きがいかに自然に馴染むか、嬉しい驚きに出会える1枚です。(輸入元情報)
【収録情報】
1. ジョヴァンニ・バッティスタ・ジェルヴァジオ[c.1725-c.1785]:マンドリン独奏と低音部のためのソナタ ハ長調
2. ニコラ・ドゼール[1740-1798]:エール『リゾンが茂みで眠っていると』(歌劇『ジュリー』(1772)より)
3. 作者不詳(フランチェスコ・マンチーニ[1672-1737]とフランチェスコ・バルトローメオ・コンティ[1681/82-1732]の原曲による):ソナタ第1番ハ長調
4. 作者不詳(マンチーニとコンティの原作による):ソナタ第6番ト短調
5. アントワーヌ・フォルクレ[1672-1745]:ラ・マンドリーヌ
6. 作者不詳(ニコラ・フランチェスコ・アイム[1678-1729]、マンチーニとコンティの原曲による):ソナタ第4番ト長調
7. ジェルヴァジオ:マンドリンと低音部のためのソナタ ニ長調
8. アンドレ=エルネスト=モデスト・グレトリー[1741-1813]:セレナード『草木も眠るこの時に』(歌劇『嫉妬深い恋人』(1778)より)
9. 作者不詳:ラ・フュルステンベルク
アンナ・スキヴァザッパ(マンドリン)
使用楽器:
ナポリのアントニウス(アントニオ)・ヴィナッチア1768年製作のオリジナル楽器(4)
ミラノのティツィアーノ・リッツィ2017年製作の18世紀ナポリ型マンドリン(1,2,3,6,7,8)
ミラノのアントニオ・モンツィーノ1792年製作の6コース・ロンバルディア型モデルに基づくミラノのティツィアーノ・リッツィ2010年製作の再現楽器(9)
マルク・モイヨン(テノール:2,8)
ピッツィカール・ガランテ(古楽器使用)
ロナルド・マルティン・アロンソ(バス・ド・ヴィオール=ヴィオラ・ダ・ガンバ)
ダニエル・ド・モレ(テオルボ、アーチリュート、バロックギター)
マリア・クリスティナ・クリアリー(トリプルハープ、シングルアクションハープ)
アンナ・フォンターナ(クラヴサン=チェンバロ)
録音時期:2022年11月17-21日
録音場所:イタリア北東部ヴェネト地方トレヴィゾ県カステルフランコ・ヴェネト、パルコ・ボラスコ荘祝宴ホール
録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)
世界初録音(4,6)