オールマン・ブラザーズのファミリーから、よくこんな素直な若者が育ったもんだと思います。デレク・トラックスです。幼少からアリストテレスやプラトンを読みこなしていたという彼は、ブルーズやロックンロールも哲学書と同じように吸収したのでしょう。うならされるのは、音楽の間口の広さと深さです。根底にあるのは人間に対する深い関心であり、積極的にヒューマニズムを肯定する音楽です。デレク・トラックス・バンドのメンバーが映っている写真を見るととても理知的な印象があります。フィールドは全然違いますが、かつてイエスがこんな感じでした。しかし、イエスのような乾いた完璧主義にはならず、とても暖かい音楽なのは、まだまだ音楽と人生に対する探究心が旺盛である証拠です。
オープニングの1. Down In The Flood も素晴らしいですが、わたしの好きなのは6. Get What You Deserve。ドシャドシャと叩くドラムズに堅実なベース。埋もれた20年代ブルーズ曲の掘り起しかと思いました。ギターの歪み具合が素晴らしく、ふっと気を抜くと傷だらけのシングル盤を聴いているかと錯覚します。実にカッコよいです。テデスキさんの歌う曲もアクセントになってまたよいです。