隔離の文学 ハンセン病療養所の自己表現史

荒井裕樹

基本情報

ジャンル
ISBN/カタログNo
ISBN 13 : 9784990559540
ISBN 10 : 4990559541
フォーマット
出版社
発行年月
2011年12月
日本
追加情報
:
344p;20

内容詳細

ハンセン病者への隔離政策が確立する一九三〇年代から、軍靴の音響くアジア・太平洋戦争期を経て、民主主義を謳歌する一九五〇年代まで―この激動の時代に、病者自身が描いた文学作品を研究・考察した十章から成る。ハンセン病者たちは、自分たちを抑圧し、抹消しようとする社会風潮や国家権力と、いかに向き合ってきたのか。また逆に、どのような言葉を駆使して抗してきたのか。終生隔離という極限状況に置かれた者が、いかにして「抑圧された生命を生きる意味」を紡ぎだすのかという普遍的な問題に挑む。

目次 : 隔離する文学―「癩予防協会」と患者文学の諸相/ 「断種」を語る文学―ハンセン病患者の文学にみる優生思想/ “身振り”としての「作家」―北條民雄の日記精読/ 「癩」の「隠喩」と「いのち」の「隠喩」―北條民雄「いのちの初夜」と同時代/ 御歌と“救癩”―近代皇族の文学はいかに問い得るのか/ 「病友」なる支配―小川正子『小島の春』試論/ ハンセン病患者の戦争詩(近くて遠い詔勅/ 隔離の中の“大東亜”)/ 「療養文芸」の季節―“弱さ”の自画像/ 文学が描いた優生手術―ハンセン病患者は「断種」をいかに描いてきたか?

【著者紹介】
荒井裕樹 : 1980年、東京生まれ。2009年、東京大学大学院人文社会系研究科修了。博士(文学)。日本学術振興会特別研究員。専門は日本近現代文学・障害者文化論。ハンセン病・身体障害(脳性麻痺)・精神障害の当事者たちの文学活動や社会運動の研究、および医療施設における自己表現活動の支援に取り組む(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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読書メーターレビュー

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  • ミムロ犬 さん

    ハンセン病患者の作家といえば北条民雄がいる。本書の読後においても北条の卓越性は揺るぎないと思うが、それと同時に北条民雄や光岡良二などの特定の作家のみでは「ハンセン病文学」というものは全く語りえないということが身に沁みる。戦前戦後問わずハンセン病患者は人権問題において被害を被り続けてきたわけだが、本書の焦点はハンセン病という表象であり、患者たちの自己表現の実態だ。ハンセン病患者を単なる<被害者>という枠で片づけることを良しとせず、ハンセン病を抱えた人間ひとりひとりの叫びに迫り、彼らの自己表現の歴史を綴る。

  • たろーたん さん

    文学には「制度としての文学」と「自己表現としての文学」がある。前者は社会にとって有用であり、人々の需要のある文学である。面白いストーリーとか、この本で言うと隔離生活の体験記みたいなものもこれに入るだろう。後者はより根源的な発露としての文学である。言葉にせずにはいられない衝動に突き動かされた表現。この著者の本はハンセン病患者の書いたものにはこういう傾向があるってことよりも、「なぜ書かざるを得なかったのか」「人間にとって表現とは何か」というより根源的な問いを設定するので面白い。文学とは何かを考えさせられる。

  • Akira Nogami さん

    戦後の療養文芸が、民主主義のもとで「価値転換のパトス」を展開していく一方、民主化の波によってある種の弱さの指標をも与えられたというのは非常に逆説的だと思う。ハンセン病文学のみならず、ハンセン病そのものについても考えさせられた。

  • 脂肪分 さん

    印象に残った所:「あなた達の存在自体が国辱なので、子供を作らないでひっそり生きて死んでください」とだけ国に強要されたらい患者たちも、戦時中はテンション上がってたのだが、「お国のために」と拳を振り上げてもするべき事が何もなくて愕然。

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人物・団体紹介

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荒井裕樹

1980年東京都生まれ。二松學舍大学文学部教授。文学研究者。文筆家。専門は障害者文化論および日本近現代文学。東京大学大学院人文社会系研究科修了。博士(文学)。2022年「第15回(池田晶子記念)わたくし、つまりNobody賞」受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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