うさんくさい「啓発」の言葉 人“財”って誰のことですか? 朝日新書

神戸郁人

基本情報

ジャンル
ISBN/カタログNo
ISBN 13 : 9784022952639
ISBN 10 : 4022952636
フォーマット
出版社
発行年月
2024年04月
日本
追加情報
:
256p;18

内容詳細

なんか違和感ある日本語の正体。「コミュ力を上げれば、人生うまくいく」そんな「ノリ」には、もう惑わされない!世の中にあふれる「人材→人財」「企業→輝業」などの言い換え語。ポジティブな響きを伴いつつ、働き手を過酷な競争へと駆り立てる。“カンフル剤”の役割を果たし、職場などで用いられることも少なくない。一定の効用はあるとしても、乱用は禁物。それは時に、ブラック労働や政治的プロパガンダにつながることも…。“啓発”の言葉は、なぜ社会に根強く残るのか。ジャーナリズム、社会学、教育学、歴史学などの観点から徹底分析。

目次 : 第1章 「人材」じゃなくて「人財」?―働き手を選り分ける言葉の起源/ 第2章 「頑張る」が「顔晴る」に―現代人をむしばむ“努力至上主義”/ 第3章 仕事を「志事」と呼ぶ理由は?―働く厳しさマヒさせる“言葉の麻薬”/ 第4章 「企業」から「輝業」へ―平成期の“成功神話ブーム”/ 第5章 「最高」を「最幸」と書く心理―行政も用いる“お仕着せの感動”/ 第6章 「人財」はうさんくさい?―飯間浩明さんが語る意外な見解/ 第7章 職場を覆う「搾取ワード」―今野晴貴さんが分析する企業の狡知/ 第8章 「総動員」のための“物語”―辻田真佐憲さんが説く言葉の怖さ/ 第9章 互いに求めすぎる企業と労働者―赤木智弘さんが解く「人財」流行の謎/ 第10章 “リスキリング”首相発言への疑問―「心に手を突っ込まれる」気味悪さ/ 第11章 権力者がうたう「利便性」の罠―堤末果さんが見抜く“煽り”の罪/ 第12章 「コミュ力」と大人の支配欲―本田由紀さんが斬る「望ましい人間性」/ 第13章 「社員は宝と言うけど…」―三木那由他さんが思う造語の危うさと希望

【著者紹介】
神戸郁人 : 1988年、東京都生まれ。上智大学文学部哲学科卒業後、記者枠で一般社団法人共同通信社に入社。福岡支社、札幌支社、山形支局で勤務し、東日本大震災関連報道などに取り組む。2018年から2023年まで、朝日新聞社のウェブメディア「withnews」にて記者・編集者の職務を担い、宗教や障害、オタク文化、自己啓発本といったテーマについて取材。「人間が生きるための糧とは何か」との問題意識を持ち、記事を執筆した。その後もライフワークとしてライター活動を続けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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  • ネギっ子gen さん

    【なぜ、誰に“啓発”への道を歩まされているのか?】「人材→人財」「頑張る→顔晴る」「企業→輝業」など、巷に漂う一見煌びやかな語句や言い回しへの違和感について、言葉の観点から取り組んだ新書。巻末に、主な参考・引用文献一覧。著者初の書籍で、力作。「はじめに」で、<「人財」といった造語には、それを用いる側の働きかけによって、言葉の宛先となる相手の心情を変化させようとする趣があります。こうした語句を、筆者は「啓発ことば」と呼ぶ/あらかじめ設けれられた基準に適うよう、意識を「啓発」する、との特徴が見て取れる>と。⇒

  • Roko さん

    たとえば「人財」という言葉、これは元々は「人材」なのですが「人は財産である」という雰囲気を持つ造語なんです。こういう言葉を使う会社なら、人を大事にしてくれるんだろうなと、ついつい思ってしまいますが、現実はそうとは限りません。志事(しごと)、輝業(きぎょう)のように言い換えることで、さも素晴らしい事のようにイメージさせるという手法に、どれだけ大勢の人が騙されてきたことか。「自由な働き方」とか「個人事業主」という言葉に踊らされてしまった人たちや、「高額バイト」といいう言葉に騙された人たちも大勢いるのです。

  • あんさん さん

    勤め先が数年前から「人財」を使いだして、そんな言葉遊びより、新しい設備に更新したり、使いやすいソフトを入れたりして欲しいと考えていた。「人財」以外にも「顔晴る」「志事」「輝業」「最幸」などの肯定的な意味の漢字を使った「啓発ことば」もあるらしい。なるほど、従業員を使いやすく支配しようとする意図を感じていたのか。反対に使いづらい従業員には「人罪」「人在」と言い換える場合もあるらしい。感じのいい言葉を使って、国や政治家や経営者から、都合の良い型通りの理想を強制されていないか、立ちどまって考えるようにしたい。

  • Katsuto Yoshinaga さん

    私は世間一般ではホワイト企業と評される上場企業の子会社に勤めていたのだが、親会社を中心に「人財」「リスキリング」「志事(≒パーパス経営)」みたいな言葉やスローガンが大好きで、気持ち悪くてしょうがなかった。報告書等にあえて”人材”と書くと怒られたりした。というわけで、本書に記された「心の痛覚を麻痺させる言葉」とか「個人の心がけを過度に重視する仕事観と、それを労働者の意識に刷り込む言葉遣い」という批評に溜飲が下がった。ただ、本書全般については、非常にとっちらかった印象で、どうにもまとまりがない。惜しい一冊。

  • Naoko Takemoto さん

    書きすぎると身バレしそうなのでそこそこにするが、『人財』という書き替え言葉、企業は労働者を財産として考えるようになったのかとはじめは好意的に感じていたが、現実の酷さから違和を感じ始めて今やイラつきしか感じない。この思いの理由を明確にしたいと思って手に取る。なるほど、労働者の痛みや憤りを救うことを拒絶するためにもっともらしい読み替えをするのか。騙されてはいけない。

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神戸郁人

1988年、東京都生まれ。上智大学文学部哲学科卒業後、記者枠で一般社団法人共同通信社に入社。福岡支社、札幌支社、山形支局で勤務し、東日本大震災関連報道などに取り組む。2018年から2023年まで、朝日新聞社のウェブメディア「withnews」にて記者・編集者の職務を担い、宗教や障害、オタク文化、自己

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