黄色い家

川上未映子

基本情報

ジャンル
ISBN/カタログNo
ISBN 13 : 9784120056284
ISBN 10 : 4120056287
フォーマット
出版社
発行年月
2023年02月
日本
追加情報
:
608p;20

内容詳細

2020年春、惣菜店に勤める花は、ニュース記事に黄美子の名前を見つける。60歳になった彼女は、若い女性の監禁・傷害の罪に問われていた。長らく忘却していた20年前の記憶―黄美子と、少女たち2人と疑似家族のように暮らした日々。まっとうに稼ぐすべを持たない花たちは、必死に働くがその金は無情にも奪われ、よりリスキーな“シノギ”に手を出す。歪んだ共同生活は、ある女性の死をきっかけに瓦解へ向かい…。善と悪の境界に肉薄する、今世紀最大の問題作!

【著者紹介】
川上未映子 : 大阪府生まれ。2008年『乳と卵』で芥川龍之介賞、09年、詩集『先端で、さすわさされるわそらええわ』で中原中也賞、10年『ヘヴン』で芸術選奨文部科学大臣新人賞および紫式部文学賞、13年、詩集『水瓶』で高見順賞、同年『愛の夢とか』で谷崎潤一郎賞、16年『あこがれ』で渡辺淳一文学賞、19年『夏物語』で毎日出版文化賞を受賞。『夏物語』は40カ国以上で刊行が進み、『ヘヴン』の英訳は22年国際ブッカー賞の最終候補に選出された(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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読書メーターレビュー

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  • ヴェネツィア さん

    主人公(物語の語り手でもある)の花は、これまでにも世間一般の幸福からはほど遠かったし、それは今もまたそうであり、将来もまたおそらくはそうだろう。結局のところ花が幸せだったのは、あの黄色い家で黄美子、蘭、桃子と暮らしたあの時期だけだったのである。10代で身分を保証するものは何もなく、頼る相手もいない。そんな中で犯罪と知りつつも日々の苦闘を続けていた花。この危うい生活が崩壊に向けて突き進んでいくことは、花にもわかっていた。しかし、どうすることができただろう。事柄の真相は花にも読者にもわからないのだが、⇒

  • さてさて さん

    『黄色』にこだわり『黄色』を名前に含む黄美子との過去を振り返りながらコロナ禍を生きる主人公の花。そこには世紀末の世に極めて危うい橋を渡りつつ『金運』に支えられた人生を生きてきた花の姿が描かれていました。世紀末の世に『X JAPAN』が意味を持って取り上げられるこの作品。”カード犯罪”の恐ろしさとそれに関わる者たちのあまりの安易さに呆れもするこの作品。単行本608ページという圧倒的な物量にも関わらず、スピード感に溢れ、ぐいぐい読ませる川上未映子さんの筆致に、あっという間に読み切ってしまった圧巻の物語でした。

  • starbro さん

    川上 未映子は、ご主人阿部 和重共々、新作中心に読んでいる作家です。本書は、著者の新境地でしょうか、桐野夏生ばりのシスター・ノワールの意欲作でした。600頁超ですが、ノンストップ読書で軽やかに駆け抜けました。最初黄美子が主人公かと思いましたが、花でした。 少し気が早いですが、今年のBEST20候補です。 https://www.chuko.co.jp/special/kiiroiie/ 🟡🟨🟡🟨🟡🟨🟡🟨🟡🟨🟡🟨🟡🟨🟡🟨🟡🟨🟡🟨🟡🟨🟡🟨🟡🟨🟡🟨🟡🟨

  • まこみや さん

    最初は『ヘヴン』だった、川上未映子の圧倒的力量を認識したのは。人物も背景も違うけれど、この『黄色い家』は『ヘヴン』の延長上にある。両者に共通するのは、崩壊する精神が描く詩情、いわば徹底した生活のリアリズムを追窮する中で垣間見える心のリリシズムとでも呼ぶしかない文体だ。どうにもならない壁に向かって血を流しながらひたすら爪を立てて足掻く人物の心の叫びは、読み手に破滅に向かう切迫感と狂気の淵を覗き込むような息苦しさとを覚えさせずにはおかないのである。

  • bunmei さん

    こんなに心が沈んでいく物語は初めて。自分のエネルギーまでもが吸い取られていくようで、遅々としてページをめくる手が進まなかった。親からも見放され、必死になって働いて稼いだ金も、自分の手の中から無情にもすり抜けていく。それによって、よりリスクの高い悪の稼ぎへと手を出し、堕ちていく若者。そんな社会の底辺を生きる者が、黄色は金運と幸福を招く色と信じ、唯一手を差し伸べてくれた人に付いていこうとする。結局、金は裏切りや妬みとなって、自分に降りかかってくる現実を、リアルな描写で描き切った、クライム・サスペンス。

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