歴史修正主義とサブカルチャー 90年代保守言説のメディア文化 青弓社ライブラリー

倉橋耕平

基本情報

ジャンル
ISBN/カタログNo
ISBN 13 : 9784787234322
ISBN 10 : 4787234323
フォーマット
出版社
発行年月
2018年02月
日本
共著・訳者・掲載人物など
:
追加情報
:
240p;19

内容詳細

なぜ歴史修正主義を支持するのか?自己啓発書、雑誌、マンガ、新聞報道―1990年代の歴史修正主義とメディアの結び付きを、アマチュアリズムと参加型文化という視点からあぶり出し、現代の右傾化に通じる保守言説の「原画」と「知の枠組み」を照らし出す社会学の成果。

目次 : 序章 なぜ「メディア」を問うのか/ 第1章 歴史修正主義を取り巻く政治とメディア体制―アマチュアリズムとメディア市場/ 第2章 「歴史」を「ディベート」する―教育学と自己啓発メディア/ 第3章 「保守論壇」の変容と読者の教育―顕在化する論壇への参加者/ 第4章 「慰安婦」問題とマンガ―『新・ゴーマニズム宣言』のメディア論/ 第5章 メディア間対立を作る形式―“性奴隷”と新聞言説をめぐって/ 終章 コンバージェンス文化の萌芽と現代―アマチュアリズムの行方

【著者紹介】
倉橋耕平 : 1982年生まれ。関西大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。博士(社会学)。立命館大学ほか非常勤講師。専攻は社会学・メディア文化論・ジェンダー論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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読書メーターレビュー

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  • ろくせい@やまもとかねよし さん

    右派政治イデオロギーを批判する内容。昨今の保守と括る思想イデオロギーの台頭について「慰安婦」を題材に、現代の複数メディアの変遷から論考。知識層のなかで問題の専門家ではない素人が主導し、素人である彼らはディベートを多用しながら大衆「素人」を巻き込み、そのツールとして「マンガ」を論壇に俎上させながら、敵対メディア「朝日新聞」を設定する思想キャンペーンで成功したと分析。対立する事象ではなく、やり方、言い方、態度の批判で説得。大衆が騙されていると。しかし現代日本の大衆はこの程度の稚拙さに騙されるレベルだろうか。

  • おさむ さん

    随所になるほどと思わせるものがある。歴史修正主義者は学者による批判を意に介さない。1990年代に論壇誌の正論が部数を伸ばしたのは読者をコンテンツの製作者側に包摂したから(読者コーナーの充実)。自分の論理を支持する読者を囲い込み、立場を共有する者たちの言論空間を作ってきた。売れればいい、という消費文化の論理で参加型の集合知とも言える。メディア間の対立をあおり、彼らと我々の構造を作った。論破したり、いいね!したり、拡散したりする(エンゲイジメントする)ことで承認を得て言説を存立させるのが主流になっている。

  • 小鈴 さん

    面白くて一気読み。「歴史修正主義の『知』の形式はどのようなもので、そしてどのようなメディア文化によって、どのように形成されてきたのか」を分析するわけだが、直後に思ったことを。いわゆる昔ながらの専門家(プロ)の知識を受け身で拝聴するパンピーというあり方が崩壊し、論壇雑誌というお固いはずの雑誌が読者(アマチュア)参加型になることで商業誌として稼ぐようになったのが90年代。80年代のサブカルのように歴史修正主義的言説が「売れる」ようになった。サブカル化した。アマチュア有名人と読者の共同体の作り出す「知」、

  • さとうしん さん

    歴史修正主義をメディアとの関係の中でとらえる。ネット前夜の1990年代に論壇のサブカル化、雑誌等でのハガキ職人の隆盛、歴史ディベートの登場、相対主義の絶対化、朝日新聞を叩くと売れるという構図の出現などによって現在の状況の下地が作られていったと分析する。「ゲームが違う」という歴史修正主義者の基づくルールを熟知したうえで、その「ゲーム」を壊せるか、ルールを変えられるかと考えると、かなり絶望的な気分になるが…

  • ドラマチックガス さん

    歴史修正主義の章だけ読むつもりで買ったが、とんでもなく面白く全部読んでしまった。90年代半ば以降の歴史修正主義の台頭、ネトウヨの出現が、産経新聞の経営難とその立て直しから始まった(著者はそう書いているわけではないけれど)というのは楽しすぎる。ネトウヨさんたちにはこの本の序章と第一章だけでも読んでほしいなぁ。おそらく恥ずかしくてネット開けなくなるから。ネトウヨがなぜ学界で完全に叩きのめされた言説にこだわり続けるのか、なぜ上から目線で「論破」と叫び続けるのか、滑稽なまでにわかる快作。

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