リゲティの協奏曲集!
イザベル・ファウストの完璧無比かつ音楽的なソロ、ヌーブルジェの変拍子も楽勝のソロ
ロト&レ・シエクルの管弦楽の音色が冴える!
リゲティの協奏曲集の登場。ソリストはヴァイオリンの女王イザベル・ファウスト、そしてピアノは若くからコンセルヴァトワールの教授としても才覚を発揮しているジャン=フレデリック・ヌーブルジェ。指揮は近現代の作品にも独特の才覚と才気煥発さが化学反応的に爆発するロト、そして管弦楽はピリオド楽器のレ・シエクルという、これはもう考えうる限り最高にスリリングなリゲティ録音の登場といえるでしょう。リゲティというと猟奇的な部分が強調されがちですが、ここではコミカルな表情や軽やかなアンサンブル、天上のような透明美など聴きどころ満載で、とっつきにくさは皆無。驚くほどに豊かな音楽が響き渡ります。ジェルジ・クルターグ[1926-]の弦楽四重奏作品も収録しており、こちらも秀演です。
ヴァイオリン協奏曲では、とにかくファウストの豊かな歌と完璧無比な技巧が圧巻。そしてレ・シエクルの精鋭達が奏でる変幻自在の音色がファウストにこたえて全開の活躍です。リゲティが盛り込んだ「奇妙」でほとんど非現実的なハーモニー(時にはゆがんだハーモニー)、中世のホケトゥスからバロックの組曲、さらにカリブ海やアフリカ、東アジアの音楽の要素が、非常に音楽的に、そして鮮明に響きわたります。
ジャン=フレデリック・ヌーブルジェは近年カデンツァを書くなどピアノにとどまらぬ才能で活躍しておりますが、ここでは変拍子の独特のリズムも楽々とした表情、時にしゃれたジャズ、時にはオーケストラとの決闘など、変幻自在の表情を見せております。リゲティが「万華鏡の粒子」と呼んだ第4楽章も、硬質な音色と圧倒的なリズム感覚で解像度抜群。ロトの指揮は才気煥発、機敏さに満ちており、ソロとの複雑なアンサンブルや対決、複雑なリズムもなんのそので、音符の一つ一つが生き生きとしています。
ルーマニア協奏曲は、1951年に完成した、 間奏なしで演奏される4つの短い楽章の作品。共産主義体制下の戦後ハンガリーの美学を反映しています。そのエレガントなスタイルとシンプルさ、時に民俗的なエネルギーが炸裂する箇所など様々な面があり、新鮮さは今なお魅力的です。リゲティ(1923年生まれ)とクルターグ(1926年生まれ)が初めて会ったのは1945年ブダペストでのことでした。当時のブダペストではユダヤ人の半数以上が排除され、食料と住居が非常に不足しているという大変厳しい時代でしたが、「ナチス時代の辛い経験にもかかわらず、私たちは2人とも若々しい情熱に満ち、近代的なハンガリー文化への希望に満ちていた」とリゲティは回想しています。
クルターグの『遠くから』は、不在、痛み、距離、こわれた時計を思わせるような動き、常に何かに中断されるような感覚に満ちた作品です。
とにかく全体を通して音色のパレットが豊か、天上のような美しく透明な響き。怪奇現象的な面もありつつ、音楽的な面が際立たされており、それでいてコミカルさや激しさなど様々な面も保たれています。作品が要求する技術的難しさを超越したところにいる選ばれたメンバーにしかなしえない素晴らしい演奏です。(輸入元情報)
【収録情報】
1. リゲティ:ヴァイオリン協奏曲(カデンツァ:オスカー・ストラスノイ、イザベル・ファウスト)
2. クルターグ:遠くから III〜弦楽四重奏のための
3. リゲティ:ルーマニア協奏曲
4. クルターグ:遠くから V〜弦楽四重奏のための
5. リゲティ:ピアノ協奏曲
イザベル・ファウスト(ヴァイオリン/ストラディヴァリウス『セーケイ』:1,2,4)
ジャン=フレデリック・ヌーブルジェ(ピアノ/スタインウェイ:5)
レ・シエクル
フランソワ=グザヴィエ・ロト(指揮)
録音時期:2023年9月、10月
録音場所:フランス、アルフォールヴィル
録音方式:ステレオ(デジタル)
ジェルジ・リゲティは、1923年5月28日、旧ルーマニア領のトランシルバニア地方に銀行員の父と眼科医の母のもとに生まれたユダヤ系ハンガリー人で、のちにウィーンの市民権を得ています。
リゲティは14歳のときにピアノを学び始め、その後すぐに作曲も開始しますが、15歳から18歳までは数学に熱中して科学者の道を志し、クルージュ大学の数学と物理の入学試験にも見事に合格。が、1941年当時のハンガリーには
プロフィール詳細へ