ベートーヴェン(1770-1827)

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SACD

ピアノ・ソナタ第29番『ハンマークラヴィーア』、第26番『告別』、第27番 河村尚子

ベートーヴェン(1770-1827)

基本情報

ジャンル
:
カタログNo
:
SICC19052
組み枚数
:
1
:
日本
フォーマット
:
SACD
その他
:
ハイブリッド

商品説明


祝・サントリー音楽賞受賞!
しなやかな身ぶりで、鋼のように構築されていく音楽のアーキテクト。
ベートーヴェン生誕250年記念リリースされるシリーズ第3作は
大作『ハンマークラヴィーア』を含む後期の個性派ソナタ。


河村尚子が2年がかりで取り組んだ「ベートーヴェン・プロジェクト」での実り多い成果を刻み込んだ3枚目にして完結編となるアルバムです。河村のベートーヴェンは「新しいベートーヴェン像が目の前で確立されているような感懐を覚える決定的演奏」と絶賛されており、この作曲家に積み重ねられてきた伝説のヴェールを剥ぎ取り脱神話化を図るかのような河村のアプローチが全く新しい解釈として高く評価されています。
 32曲のソナタ中最大の規模と複雑さで知られる第29番『ハンマークラヴィーア』のほか、後期の入り口にあって独特の深みが魅力的な第27番、それに各楽章に「告別」「不在」「再会」という表題が付された第26番の3曲。あらゆる音符がしなやかに息づき、気品ある歌心が聴く者の心を捉えます。サントリー音楽賞やCDショップ大賞を受賞するなど、評価を急速に高めつつある河村ならではの密度の濃い演奏は、ベートーヴェン・イヤーのトリを飾る大きな話題になること必至です。(メーカー資料より)

【収録情報】
ベートーヴェン:
● ピアノ・ソナタ第26番変ホ長調 Op.81a『告別』
● ピアノ・ソナタ第27番ホ短調 Op.90
● ピアノ・ソナタ第29番変ロ長調 Op.106『ハンマークラヴィーア』


 河村尚子(ピアノ/ベーゼンドルファー280VC)

 録音時期:2020年7月19-21日
 録音場所:ブレーメン、ブレーメン放送ゼンデザール
 録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)
 SACD Hybrid
 CD STEREO/ SACD STEREO

 プロデューサー:フィリップ・ネーデル(ベルリンb-sharpミュージック&メディア・ソリューションズ)
 エンジニア:ミヒャエル・ブラマン
 調律:ゲルト・フィンケンシュタイン


【この録音に寄せて】
2020年は我々世界中の人間にとって様々な意味で忘れ難き年となることだろう。COVID-19。ひどい時には自宅待機を強いられ、他人と会うことすら出来なかった。あっという間に経済が循環しなくなり、スポーツや芸術を始め、あらゆるイベントを中止せざるを得ない状況となってしまった。4年に一度行われる世界的なスポーツの祭典であるオリンピックまでもが開催されなかったのだ。
 その期間中、ホールに聴き手がいなくても成立するCD録音やオンライン公開のための録画が音楽家の限られた活動の場所となった。(中略)録音セッション自体は1年前から予定されていたものの、ドイツで自宅待機が徐々に緩和された7月中旬に、もともと放送局のホールであったブレーメンのゼンデザールで3日間に渡って録音が行われた。
 新型コロナウィルスの影響のせいか、これまでの2枚のベートーヴェンの録音の時に常宿としていたホールのすぐ側のホテルが閉館してしまっていた。幸いにも代わりの宿泊施設が見つかり、毎朝晩、自転車で15分の道のりを通った。ちょうど大変気持ちの良い季節だったので、心身のリフレッシュともなった。
 今回の録音も、2008年の「夜想(ノットゥルノ)〜ショパンの世界」の時から一貫してお世話になっている録音チーム〜ピアノ技術師やトーンエンジニアが変わった時もあったが〜が担当してくれた。ベルリンのb-sharp社のトーンマイスターのフィリップ・ネーデル、トーンエンジニアのミヒャエル・ブラマン、そしてピアノ技術師のゲルト・フィンケンシュタインに3日間ずっと演奏を聴いてもらうことになった。彼らは皆ドイツ人。性格が異なるにしても、良い結果を出したい気持ちは皆一緒だ。3日間背筋を伸ばして椅子に座り、音楽を聴いて、ただコーヒーを啜るだけではない。私の演奏を聴いては、これまでの経験とそれぞれの趣向を生かした意見や疑問をビシバシ私に投げかけてくる。これも12年間一緒にCDを作り上げてきた過程で根付いた信頼と愛情のおかげだが、12年前の未熟な私では、このドイツ人勢の「攻撃」に対応できなかったことも確かだ。それぞれの意見を尊重し合い、最終的には演奏者の私自身が納得いく形を作ったつもりではあるが、(中略)このCDは、私一人の音楽的解釈だけではこのような結果に至らなかったということをご理解いただきたい。CDのカバーには演奏者である私一人しか写っていないが、縁の下の力持ちが多々潜んでいるということなのである。そのようにして人間は社会で人々に揉まれ、引き伸ばされ、形成されて、変化していくのだ。こうした過程を経て、現時点の私があるのだ、ということにあらためて感じ入り、私に力を貸してくださったすべての方々に感謝するばかりである。
〜2020年10月、バンベルクにて 河村尚子〜(メーカー資料より)

【河村尚子】
ハノーファー国立音楽芸術大学在学中の2006年ミュンヘン国際コンクールで第2位を受賞、翌年、クララ・ハス
キル国際コンクールで優勝を飾り、一躍世界の注目を浴びる。ドイツを拠点に、欧州で積極的にリサイタルを行う傍ら、ウィーン響、バイエルン放送響、チューリッヒ・トーンハレ管、サンクトペテルブルク・フィルなどと共演。室内楽では、C.ハーゲン(チェロ)とのデュオで知られるほか、M.ホルヌング(チェロ)とロンドン・ウィグモアホール、R.オルテガ・ケロ(オーボエ)とニューヨーク・カーネギーホールにデビューするなど、同世代の実力派アーティストたちとも積極的な活動を展開している。
 日本では、2004年東京フィル定期演奏会でデビュー。P.ヤルヴィ指揮NHK響など国内主要オーケストラと共演を重ねる傍ら、フェドセーエフ指揮モスクワ放送響、ルイージ指揮ウィーン響、ヤノフスキ指揮ベルリン放送響、ビエロフラーヴェク指揮チェコ・フィルなどの日本ツアーに参加。その他、ノリントン、インバル、ラザレフ、テミルカーノフなど多くの指揮者から度々再演の指名を受けている。
 文化庁芸術選奨文部科学大臣新人賞、新日鉄音楽賞、出光音楽賞、日本ショパン協会賞、井植文化賞、ホテル・オークラ賞を受賞。主なCDに「夜想(ノットゥルノ)〜ショパンの世界」「ショパン:ピアノ・ソナタ第3番&シューマン:フモレスケ」「ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番&チェロ・ソナタ」ほか、2018年4月にリリースした最新譜「ショパン:24の前奏曲&幻想ポロネーズ」がある(RCA Red Seal)。2018年5月より2シーズンにわたり、ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ・プロジェクトを日本各地で展開し、高評を得ている。これまで、ウラディーミル・クライネフ、澤野京子、マウゴルジャータ・バートル・シュライバーの各氏に師事。現在、ドイツ・エッセンのフォルクヴァング芸術大学教授。(メーカー資料より)


【作曲家の精神の秘密に近づく〜河村尚子、ベートーヴェンを語る】
2018〜19年の春と秋、河村尚子は計4回にわたる「ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ・プロジェクト」を行い、一つのプログラムについて東京、横浜など数都市を巡り、ソナタ計14曲を演奏した。その曲目をドイツ・ブレーメンで録音するセッションも3回目を迎え、今回は第26番変ホ長調作品81a『告別』、第27番ホ短調作品90、第29番変ロ長調作品109『ハンマークラヴィーア』が収録された。

――第26番のタイトルは『告別』ですが、本来これは第1楽章のタイトルで、各楽章のタイトルは第1楽章〈Das Lebewohl(告別)〉、第2楽章〈Die Abwesenheit(不在)〉、第3楽章〈Das Wiedersehn(再会)〉となっています。
3つの楽章全てにタイトルを付けた、という意味で、標題音楽(プログラム・ミュージック)として成り立っているベートーヴェン唯一のソナタです。特別な存在です。

――この「Lebewohl(レーベヴォール)」は、今でもドイツで使われる言葉なのでしょうか。
日常的には使わない言葉ですね。お葬式などの後に、友人に「レーベヴォール」と言って別れることはあります。「Auf Wiedersehn(アウフヴィーダーゼーン/さようなら)」のような軽い感じではなく、格式ばった言い方。日本語なら「お達者で」みたいな古風な言い回しでしょうか。重い意味を込めて、長い間会えないであろう親しい友人に心を込めて言う言葉ですね。

――『告別』はナポレオン軍の第2次ウィーン占領(1809年5〜10月)のため、ルドルフ大公が疎開したのを機に書かれた作品です。
その事実が本当に重いと思います。とてもメッセージ性の強い曲です。ベートーヴェンはウィーンに残り、安全に生活できるかどうかは分からない。ウィーンは毎晩のように砲撃を受け、その砲声だけで、聴覚が衰えているベートーヴェンはとてもダメージを受けたようです。自分は死ぬかもしれない、無事に過ごせるだろうか、そういう願いを込めての作品でもあります。第1楽章が1809年に、第2・3楽章は翌年に書かれています。その1年ほどの間、戦争が終わることを祈っている感じがします。

――第1楽章にはアダージョの序奏があり、その冒頭で3音モティーフ「ソ−ファ−ミ♭」には歌詞のように「Lebewohl!」と記されています。実演でも録音でも、3つめの音「ミ♭」の前にタメを置いて弾かれ、思いの深さを感じました。
3つめの和音は偽終止で、ちょっと驚いている感じですね。「レーベヴォール」と言って別れつつ、「また会えるよ」と思いたい。でも3つめの和音で「会えないかもしれない」という自分への問いかけがあります。
アレグロの主部冒頭にも「ソ−ファ−ミ♭」が出てきますが、ここには全く偽終止がなく、オクターヴで確信に満ちた音が鳴ります。同じ3音を使いながら情景もキャラクターも全く違う。モティーフを自由自在に変奏していくベートーヴェンの作曲法はさすがですね。

――第2楽章は〈Die Abwesenheit(不在)〉。
アンダンテ・エスプレッシーヴォの音楽ですが、ベートーヴェンはドイツ語でも「In gehender Bewegung, doch mit Ausdruck(歩くような律動で、でも十分に表情をつけて)」と書いています。いろいろな弾き方が考えられますが、いかにも寂しげに弾くと、動きが出ない。ベートーヴェンの指示は「歩くような動きの中で表現してほしい」ですから、落ち着いた中でも静かに躍動している感じを大切にしました。
「Abwesenheit(アプヴェーゼンハイト)」の意味は「家にいない」「留守にしている」ですが、「意識がここにいない」という意味もあります。今、身体はここにあるけれど、意識はどこか他のところへ行っている。意識を飛ばしている先はルドルフ大公なのか、あるいは思いを寄せている女性かもしれない。それは何とも言えないですが、少なくとも「家にいない」だけの意味ではないように思います。

――第3楽章は「Das Wiedersehn(再会)」。楽譜にはイタリア語でVivacissimamente、ドイツ語で「Im lebhaftesten Zeitmase.(最高に生き生きとしたテンポ感で)」とあります。
イタリア語の方は「ヴィヴァチッシマメンテ」、発音すると舌を噛みそうですよね(笑)。ベートーヴェンが書いたイタリア語には、イタリア人なら「こんな言葉はないよ」と言いそうな、造語に近いものもあるらしいです。意味は「ものすごい躍動感で生き生きと溌剌と」弾いてほしい、というもの。音楽には「戦争が終わった!」「平和が来た!」という喜びが爆発しています。
新型コロナ感染症のため、今年は『告別』の状況を自分でも体験したような思いがあります。ドイツでは春から夏にかけてロックダウンがあり、多くのコンサートが中止になりました。文字通り「Abwesenheit(不在)」で、ホールへ行っても誰もいない。
7月はじめにロックダウンが解除されて久しぶりにリサイタルを開き、『告別』を弾きました。その時、ベートーヴェンがどういう気持ちでこの曲を書いたのか、理解できた気がしました。ロックダウンが始まった時、皆がどうなるのか、この状態がいつまで続くのか分からない。その後ようやく、リサイタルを開催できるようになって、皆と再会できて本当に嬉しい。アーティストは誰もがそうだったと思います。そういう喜びを分かち合えるのがこの曲ですね。

――第27番とは10代のころに出会ったそうですが。
バートル=シュライバー先生に師事していた時、「この曲を弾いてみたら?」と勧められました。そのころからずっと好んで弾いていますが、ベートーヴェンが40代半ばで書いた曲ですから、10代の私に曲の内容までは理解できなかったですね。
勇ましくなったり、急に優しくなったり、情景がころころ変わる。コントラストが激しい曲です。聴覚を失った人が一人だけの世界に浸って、誰ともコンタクトをとらずに自分の気持ちの中だけを描いた感じがします。
第1楽章は古典的ですが、レガートで歌えるメロディの後に無表情なピアニシモが出てきたり、角ばってトゲトゲしいところがあったりします。一方で第2主題は歌心に満ちている。プラスとマイナスが行き交うイメージですね。
第2楽章はシューベルトのリート(歌曲)のように簡素に書かれていて、恋人に何かを伝えるような愛らしい心を感じます。フレーズの呼吸が深いことは深いのですが、フレーズ自体は短い。その短さの中でどう表現するか。レガートとノンレガートなどアーテイキュレーションの試みも緻密に書かれていますので、それを重視して弾いてみました。

――第29番『ハンマークラヴィーア』は、ピアノ音楽の最高峰とも言われる大作。初めて聴いた時、あるいは譜読みをした時、ピアニストとしては衝撃を受ける作品でしょうか。
まず、弾きにくい(笑)。初めて譜読みをした時、これはピアノのために書かれた曲なのだろうかと疑問に思いました。その後、実際にピアノに向かって曲を仕上げていく過程で感じたのは、やはり聴覚を失ったベートーヴェンが(ピアノではなく)机に向かって書いた曲だな、と。決して全てがピアニスティックには書かれていないですし、ドイツ語で言うSchreibtischmusik(シュライプティッシュムジーク/机の音楽)、英語ならdesk musicという感じ。頭の中で音楽が鳴って、それをどんどん展開している。
間違いなく大傑作なのですが、ピアニストは(私を含めて)苦手意識をもちがちです。とにかく、長い(笑)。第1楽章も第3楽章も長くて、第4楽章は長大なフーガ。あまりに曲の規模が大きいので気持ちが萎縮してしまうのですが、弾いてみると長さは気にならない。
それはなぜか。一つひとつのモティーフがどれも素晴らしいからですね。やはり筋が通った音楽で、それぞれの声部に絶妙なフレーズが配されている。それらをまとめるのが大変ですが、弾き進めていけば全然苦にならない。私は弾いていて楽しかったですね。

――改めて録音を聴いて、第1楽章はダイナミックな躍動感が目の前に迫ってくる感じを受けました。
第1楽章は幻想的なものではなく、リアルな音楽だと思います。提示部の終わりなどにあるカンタービレ・ドルチェ・エド・エスプレッシーヴォの部分はファンタスティックですが、全体は「自分は生きているんだ」と証明するような生命を感じる楽章です。
第2楽章も生き生きとした音楽。第1楽章と第3楽章のブリッジであり、凝縮されたスケルツォです。

――第3楽章は繊細な音色の変化、細めの音から幅広い音までグラデーションの美しさが印象的でした。
この楽章は「夜の音楽」かなと思います。昼間には弾けない楽章だろうと。セッションでは第1楽章を朝から昼過ぎまで録って、第3楽章は午後4時ころから弾き始め、8時半ころに終えました。ホールの灯りを下げ、暗めにして録音しました。一人で何かを感じて、考えて、訴えて……という音楽ですね。内面的で、心の奥の奥まで降りていって、そこから何かを問いかけるような。

――第4楽章には変化に富んだ序奏があり、いよいよフーガが始まります。
一番、勉強するのに時間がかかったのがフーガでした。しっかりとテクニカルにマスターしないと弾けない楽章です。練習にかなりの時間を費やしましたが、弾いていてすごく楽しい音楽です。
最初のフーガで、テーマはトリルが付いた音で始まります。1回目の提示では何も書かれていないのですが、2回目以降は声部が重なることもあってスフォルツァンドがある。そういうディテールの面白さ。トリルが重要な役割を果たす面白いフーガですが、トリルが出てくるたびに、電気にしびれて指が自動的に動くような、不思議な快感があります。テーマを逆行にしたり鏡像にしたり、あるいはカノンにしたりと、「どこまでやれば気が済むの?」とベートーヴェンに訊きたくなるほど延々と変化が続きます。でもその中身が分かってくると、弾き手も楽しめるんですね。
なかでも素晴らしいのが、楽章の後半にあるセンプレ・ドルチェ・カンタービレ(第250小節から)。それまで、ある意味で醜いもの、激しくて強烈なものが続いた後に、一転してこの世のものではないような美しさがやってきます。安堵の気持ち、ベートーヴェンの清らかな心がここには込められている気がします。

――そして二重フーガが始まります[[9]9分9秒以降]。激しい曲想の後で浄化されたテーマが登場し、その2つが二重フーガとして統合される、という流れは交響曲第9番のフィナーレと共通しています。
やはり素晴らしい作曲法だなと感動します。『ハンマークラヴィーア』を演奏できたこと、録音として残せたことにとても感謝しています。
10年くらい前に第4楽章だけ聴いた時、「自分が『ハンマークラヴィーア』に取り組むことはないだろう、こんな曲を弾くなんて冗談じゃない、一生弾くことはない」と言っていたんですが(笑)。でも改めて向き合ってみると、やはり偉大な曲を弾くことには途方もない達成感がありますね。充実感と幸福感に満たされます。ベートーヴェンの精神の秘密に少しは近づけたかなと思います。

――今回の録音は2020年7月19〜21日の3日間。コロナ禍のさなかでしたが、問題はなかったのでしょうか。
録音日程は1年ほど前に決めていて、特に問題なくやることができました。ロックダウンが終わり、私を含む録音チーム4人がベルリン、オルデンブルク、ハノーファー、バンベルクからブレーメンのゼンデザールへ集合。それまで
は各自が隔離された生活を送り、皆がそれぞれ気をつけて過ごしていましたから、危険は感じませんでした。皆がやる気満々で集まりました(笑)。
プロデューサーのフィリップ・ネーデル、エンジニアのミヒャエル・ブラマン、調律のゲルト・フィンケンシュタインという録音チームはRCAデビュー盤『夜想(ノットゥルノ)〜ショパンの世界』(2008年12月録音)から12年間ずっと同じメンバーで、皆の仲が良く、理解があり、互いにリスペクトする関係です。「自分はこう思う」と率直に言ってくれる人たちがいて、テイクを重ねながらいろいろと議論して、最終的に良い音楽が出来上がる。それが一番、チームとして大事だし、ありがたいなと思います。CDは私の名前でリリースされるわけですけれど、あくまでチームの代表としてであって、録音はこれら全員の耳と技術と精神が集まってできたものです。セッションはとても充実した時間でした。

――コロナの時代に思ったことは?
社会が普通に機能するのはすごいことなのだ、と改めて感じました。自動的に動くものだと思っていたものが止まるとどうなるのか、私たちが暮らす社会がどれだけの人の働きで支えられていたのか。人と人との関わりを大切にするようになりました。ある人に電話したり手紙を書いたりするのは後でいいかな、と思うのをやめようと。コニュニケーションを大事にしたい。
ロックダウンの時、コンサートを開くことも聴くこともできなくなって、心理的にダメージを受け、心ががさがさしました。でも音楽家である私たちは、自宅で楽譜を読み、楽器に触れることができる。素晴らしい芸術作品と毎日向き合える。それは幸せなことだなと。芸術に触れて心が潤う、全てを楽観視できるようになる。音楽とともに生きていることのありがたさを改めて感じました。

2020年10月 東京(リモート取材)
取材・文/友部衆樹[音楽ジャーナリスト](メーカー資料より)

内容詳細

河村尚子による、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第26番「告別」と第27番、第29番「ハンマークラヴィーア」を収録。お決まりの“ベートーヴェン像”を打破するような、河村ならではの新しい解釈が聴きどころだ。(CDジャーナル データベースより)

収録曲   

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ベートーヴェン(1770-1827)

1770年12月17日(16日?):父ヨハン、母マリアの次男としてドイツのボンに誕生。 1778年:7歳でケルンでの演奏会に出演。 1781(1782?)年:クリスティアン・ゴットロープ・ネーフェに師事。 1800年:交響曲第1番を宮廷劇場で指揮。 1804年:交響曲第3番『英雄』を発表。 1805年:交響曲第5番『運命』、交響曲

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