フランス音楽の知られざる故郷、ヴェネツィア楽派をヴェルサイユで!
17世紀後半に入り、王室音楽総監督リュリが独特の音楽劇様式をもって確立したと言っても過言ではない「フランス古典音楽=フランスのバロック音楽様式」。しかし実のところ、この政治的立ち回りにも才能を発揮したフィレンツェ出身の巨匠が頭角を表す前まで、フランス王室は別の流れをたどってイタリア最先端の音楽様式を積極的に吸収していたのです。教皇庁に連なる枢機卿マザリーノがローマの音楽を伝えたのもその一端でしたが、その17世紀ローマ楽派にも大きな影響をおよぼし、かつリュリ登場直前に俊才カヴァッリを介してフランス宮廷音楽の大きな素地にもなったのが、16〜17世紀のヴェネツィアの作曲家たち。政治的な事情からヴェネツィア共和国がフランス王室に急接近していた当時、かの水の都の分割合唱形式はフォルメーやブジニヤックなどリュリ前夜のフランス教会音楽にも大きな影響を及ぼしていました。
そのルーツに立ち返るべく、ヴェネツィアの巨匠ジョヴァンニ・ガブリエリの作品を中心としたプログラムを、ヴェルサイユ王室礼拝堂の響きで聴く画期的なアルバムがこちら。しかも演奏陣は近年躍進めざましい古楽鍵盤奏者オー、巧みなバロック歌唱で多忙な活躍を続けるル・シュナーデク、幅広い声域と細やかな解釈で中世まで遡る広範な音楽を歌いこなすモイヨンと、それぞれ異なる古楽フィールドで存在感を強めている異才ばかりが集う精鋭集団。ほどよい残響のなか各パートの動きがよく味わえる録音で、先入観を排してフランス音楽の真相を見極めるにも意義深く、かつバロックの金管と声楽とが自然に隣り合うヴェネツィア楽派の本分をよく伝える絶好の仕上がりになっています。楽器や収録曲についての解説(仏・英・独語)も興味深い内容。(輸入元情報)
【収録情報】
1. メールロ:『わたしの魂は主をあがめ(マニフィカト)』
2. ガブリエリ:4声の第3カンツォン
3. ガブリエリ:7声の『わたしは言った、主よ憐れんでくださいと』
4. ガブリエリ:8声の『主の定めに従い道を全うする者は幸いである』
5. ジョセフォ・グアーミ(1542-1611):フランス風カンツォン『ラ・ルッケジーナ』
6. ガブリエリ:6声の『わたしに耳を傾けてください、主よ』
7. ガブリエリ:10声の『おお偉大なる玄義、褒むべき秘跡』
8. ガブリエリ:4声の第4カンツォン
9. ガブリエリ:8声の『全地よ神を歓呼して迎えよ』
10. ガブリエリ:10声の『神よ、わが神よ』
11. ガブリエリ:オルガン独奏のためのリチェルカール
12. ガブリエリ:10声の『主よ、わが祈りを聞き届けてください』
13. アドリアン・ヴィラールト(1490-1562):『わが心にのしかかる重い責務が』
14. ガブリエリ:10声の『善き羊飼いは甦った』
15. ガブリエリ:第2カンツォン
16. ガブリエリ:6声の『麗しきは乙女マリア』
17. ガブリエリ:4声のカンツォン『ラ・スピリタータ』
18. ガブリエリ:12声の『天使は羊飼いたちにこう告げた』
19. ラッスス:『皆の者、さあ日も暮れた』
ラ・ギルド・デ・メルスネール(声楽&古楽器アンサンブル)
ヴィオレーヌ・ル・シュナーデク、アナイス・ベルトラン(ソプラノ)
マルニクス・ド・カット(カウンターテナー)
マルク・モイヨン、ルノー・ブレ(バス=バリトン)
マルク・ビュネル(バス)
アドリアン・マビル(木管コルネット&指揮)
ブノワ・タンテュリエ(木管コルネット)
フアン・ゴンサレス・マルティネス、アルノー・ブルトシェル、
アベル・ロールバック(サックバット)
ジャン=リュク・オー(オルガン)
録音時期:2019年10月8-11日
録音場所:ヴェルサイユ宮殿王室礼拝堂
録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)