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宇野広報 さんのレビュー一覧 

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  • 4人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2013/12/15

    私が初めて購入した Blu-Ray Audio ディスクです。
    このアルバムの演奏に関しては、すでに語り尽くされた感もありますので、以下には、音質のことのみ書きます。
     基本的に「John Cleese」さんのレビューと同感です。
     さっそく聴き比べをしてみたのですが、第一印象として、
     「これは大変なAudioメディアが現れたものだ」
    と思いました。
     これと同じソースは、すでに、HD-Audio ファイルとしてダウンロード販売もされています。
     このBlu-Ray Audio盤には、(1) PCM (2) dts-HD Master Audio (3) Dolby TrueHD の3つのフォーマットで 2ch 24bit/96kHz の音声データが収録されております。 各フォーマットの切り替えは、再生中にもできますが、ディスプレイがないと操作は難しいと思われます。
     この Blu-Ray Audio盤の再生音は、ほぼ同品質のフォーマットで収録されていると考えられる SACD の音質をはるかに上回ります。
    (ただし、これは、あくまでもうちの OPPO BDP-95 で再生した場合のことです。
     とはいえ、「John Cleese」さんのレビューもありますので、あながち、全く一般性の無い結果とも思えません。)

     何が違うかというと、
     1.各楽器の音が非常に鮮明で、総奏(テュティ)でも様々の楽器の音が本当によく存在感を持って聴き取れます。(マスキングが無い) 音抜けは極めてよいので、音量を上げたくなる一方で、「このままでも十分に鮮明で満足では?」と自問することがありました。
     2.「音が鮮明」と書くと「前へ前へとせり出した」感じの音場を想像されるかもしれませんが、もしろ正反対で、音場展開は「各楽器とも常にある距離を置いた位置で鳴っている感じで、その間の空間を感じさせる」ような具合です。それでいて、楽器が強奏されたときのせり出し、たとえば、5番の3楽章冒頭のホルンの強奏の冴え渡った音には、度肝を抜かれました。(聴きなれているはずなのに)
     3.さらに、「単に様々の楽器の音が鳴っている」という感じより、ホールのステージに楽器が配置されて、ステージや天井、背面の反射板などから音が跳ね返ってきて「音響空間」が構成されている様が、かなりの程度再現されているように思います。  聴いているうちに、「そうだ Musikverein の音は確かこんなだったのでは?」という思いに駆られました。(昔ウィーンに1年間在住)

       念のため、ハイブリッドSACD も再生(第5番)して、比較してみましたが、決して悪くない(OriginalsシリーズのCDよりずっとよい)ものの、Blu-Ray Audio に比較すると平面的で、楽器の奥行き方向の位置や周りの空間展開が消えてしまった感じです。

       今のところ、まだ1枚だけの結果ですので、何れにしても断定的なことは言えませんが、私が感じたのは、「やはり Blu-Rayディスクはメディアとして容量にも転送速度にも余裕があるため、それが音に出てくるのではないか」ということです。(デジタル・フォーマットの音質差ではないと思います。)

    4人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2011/08/01

    このCDには、ヨハン & ヨゼフ・シュトラウスやスッペの曲も収録されていますが、「金と銀」があまりに飛び抜けた名演奏なので、このCDを買った人は、誰しも「ウィンナ・ワルツ名曲集」ではなく「レハールの『金と銀』」のCDというイメージを持つようです。

    とかく、このルドルフ・ケンペというドイツの指揮者のイメージは、「質実剛健」で「控えめで手堅い演奏をする人」という感じが強いのですが、この曲の演奏はそのイメージからは程遠いもので、非常に大胆な感じです。そして、
     「大きな緩急をつけて、名旋律を歌い尽した」
    本当に感動的な演奏となっています。
    (このようなカンタービレは、他にはシューリヒトとVPOの未完成以外にはきいたことがありません。)

    とはいえ、そこはケンペです。人工的な面や作為的な面は一切感じられずに、
     「心の中の感動と盛り上がりが抑えきれずに堰を切ってあふれ出した」
    ような自然さのもとに、本当にやりたいことをやり尽くしています。
    私の場合、この演奏を聴いて、この曲に対するイメージがそれ以前とは全く変わりました。

    とくに、よく知られているように、ウィンナ・ワルツの形式は、
     序奏と終結(コーダ)の間に、6(?)曲のワルツが2度ずつ繰り返して奏される
    ような形になっていますが、このケンペ聴いてもすぐにわかるくらいに、1度目と2度目の演奏の仕方が違っています。
    しかし、それが全く不自然でなく、むしろ、そうあるべきようにきこえるのです。

    私の場合、評論家の宇野功芳さんの推薦文を見てLP(オイロディスク=キング)を購入したのがきっかけでしたが、それまで、ただの通俗名曲であったこの曲が、金や銀ではなく、ダイアモンドのように光り輝く魅力的なものに変わりました。

    私の手元にあるコロムビア発売のCD(多分、CDCOCO70420と同じマスター)の場合は、最初は、弦の音抜けが悪くて、LPで聴いたときの感動が伝わりにくい感じでしたが、再生装置のレベルアップとともにほぼ満足できる音が出るようになって来ました。

    このような名盤こそ、XRCDで発売してほしいと思っております。

    2人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 8人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2010/05/23

    (長文でで恐縮ですが、解説に重複する部分も敢えて書きます)
         
    小澤征爾指揮ベルリンフィルの「カラヤン・メモリアルコンサート」の Blu-Rayディスクは、NHKエンタープライズからリリースされているものが「高画質&高音質」の代表的ソフトとして有名です。
         
    このカラヤン・メモリアルコンサートは、2008年1月23日のベルリン公演を皮切りに、パリ、ルツェルン(スイス)、ウィーン、ザルツブルク という順番に、カラヤンと縁のある都市で計5回の公演が行われました。
    NHKのBlu-Rayディスクは、2008年1月23日のベルリン公演を収録したものですが、5日後の1月28日のウィーン公演もUNITELにより収録され、それがこの medici art社から発売のBlu-Rayディスクです。 (Blu-Rayは輸入盤のみ。DVDは国内盤もあります。)
         
    私の場合、すでに、NHKのBlu-Rayディスクについては、同じベルリン公演が地デジで放送された際の録画を持っておりますし、知人の家でも、一部を見たことがあります。
    それで、このウィーン公演のものを以前より入手したいと考えておりました。
    ところが、比較的入手性が悪い上、HMVでは ¥4,000 以上とユニバーサル系(DGやDECCA)のものよりかなり高価なので、なかなか購入に踏み切れませんでした。
         
    今回偶然にも、このウィーン公演のBlu-Rayディスクが、安価で入手できました(HMVさんごめんなさい)。
         
    このBlu-Rayディスクでは、NHKのものでは収録されていなかった、アンネ=ゾフィー・ムター(ヴァイオリン)による
     ベートーヴェンの「ヴァイオリン協奏曲」 
    とアンコールの
     バッハのサラバンド(パルティータNo.2から) 
    も収録されており、コンサートの全曲目が収録されているほか、ムターと小澤のインタビューも収録されております。
         
    画質については、他の購入者の評判ではベルリン公演のNHKの収録のものと比べると劣るとの事でしたが、私の場合は、ベルリン公演の方は地デジの放送を録画したものしかないので、ウィーン公演のBlu-Rayディスクは 1080iながらそれよりはきれいなように思いました。
    もちろん、バーンスタインとウィーンフィルのDVDの画質とは比較にならないくらい優秀な画質です。
    音質については、現状ではHDMI接続では、ディスプレイのスピーカーからの出力となってしまうので、よくわかりませんでした。
         
    以下に、見て感じたことを書きます。
         
    [1]【ベルリン公演のフィルハーモニーとムジークフェライン(楽友協会)大ホールの雰囲気の違いは結構大きい】
      とくに、このウィーン公演の方はカラヤン夫人の姿も映し出されており、かつ、聴衆のほとんどが黒い「喪服」を着ているのが印象的です。(ムターも喪服のような黒のドレスです。) そういう意味で、ベルリン公演より、ずっとセレモニー(日本的にいえば「法事」)を意識させる雰囲気があります。これに比較すると、ベルリン・フィルハーモニー・ザールの方は、オーケストラの後方に常に聴衆の姿が見えるのですが、ほとんどがカジュアルな服装という感じで対照的です。さらに、ムジークフェラインの方は、通常聴衆を配置するオーケストラ横の座席も使用せずフェンスが立ててあります。この点も対照的です。
         
    [2]【「悲愴」のカメラアングルでは指揮者(小澤征爾)の捕らえ方が違う】
      NHKの方は、指揮者の背後からの少し距離を置いたショットが多く、ウィーン公演のものは舞台上から指揮者の表情をアップでとらえたショットが多いようです。この点、小澤の表情やオーケストラに対する要求内容については、ウィーン公演のものの方がずっとよくわかります。一方、通常、聴衆として見る指揮者背後のショットが多いNHKのものは、多分、大型の再生装置を使った場合にはコンサートの雰囲気をより自然な形で伝えるものという感じがしました。
         
    [3]【NHKのもので正面からのショットが少ない理由は他にある?】
      NHKのものでは数少ない正面からのショットを見ているうちに、あることに気がつきました。はっきり確認できるのは、第2楽章の中間部の終わりの方で楽章冒頭の主題に戻る直前の部分です。小澤征爾の蝶ネクタイの下5cmくらいの位置にあるカッターシャツのボタンが外れています。もし、これが理由で、正面からのショットの収録が少ないのであったら、ちょっと残念です。バーンスタインのDVDの製作の際は、複数の公演での収録映像に加えて、さらに聴衆なしの収録映像を加えて編集を行っていましたが、今回の場合そのような編集はおそらく全くないものと思われます。NHKのもので正面からのショットが少ないのは、製作者の意図でそうしたのか、はたまた、この「事故」により、正面からの撮影した映像の使用を嫌ったのか、一体どちらなのかと疑問がわきます。ただし、もし後者の理由であれば、はっきりとボタンが外れていることが確認できるような映像をたとえ少ないながらも、なぜ使用したのかということも大いに疑問です。
         
    [4]【ムターのベートーヴェンの演奏は自由に振舞いながらもツボを押えた名演】
      カラヤンとの演奏のときよりはずっと主張の強い演奏になっています。「カラヤン主体で、彼の演出による舞台と装置の中で自分の役を演じるムター」というのが旧盤のスタイルであれば、このBlu−Rayディスクでは「大プリマドンナがオーケストラ伴奏を従えての大熱演」とでもいう感じです。
         
    [5]【「悲愴」はスタイリッシュで引き締まったベルリン公演、肩の力が抜けてやり尽くしたウィーン公演】
      前に、小澤の「悲愴」について知人に宛てたメールの中で、     
    ※※ この曲では、私には、やはり、小澤征爾より、カラヤンの方がピッタリきます。 
    ※※ (両者で大きく異なるのが、第1楽章の展開部のテンポ感で、カラヤンでは、 
    ※※ 【伸縮感】があり、爆発と収縮を繰り返しながら、目がくらくらする混沌と 
    ※※ した感じに至るという感じです。それに対して、小澤征爾はきわめて正確な 
    ※※ インテンポで几帳面に進めていきます。ただし、オーケストラは良くなっており、 
    ※※ 音響面での効果は良くあがっていると思います。)   
      と書いていますが、今回のウィーン公演のディスクを聴いてこれは訂正が必要と思いました。     
    そのあと、もう一度ベルリン公演のものも聴きましたが、「インテンポで几帳面」というよりは、もっと思い入れの大きい激しい演奏であることがわかりました。ただし、その点がウィーン公演の方がよりよくわかる形で現れているように思いました。第2楽章の冒頭の旋律で、例の飛び跳ねるようなテンポルバートの部分も鮮やかに決まっています。この辺有数の音響を誇るムジークフェラインと演奏旅行での公演、さらには、回を重ねた4回目の演奏会という好条件がプラスに働いたのかもしれません。

    とくに、ウィーン公演とベルリン公演の比較については、同じような意見が、
    NEW カラヤンBBS (2) :http://karajanbbs2.progoo.com/bbs/karajanbbs2_tree_p_1358.html  
    にもあります。しかし、一方、ベルリン公演を聴いた人の絶賛の賛辞:
    戦慄的感動の演奏:http://www.asahi-net.or.jp/~mf4n-nmr/kandou.html  
    もありますので、ベルリン公演の方が内容が悪いということではないと思います。

    機会があれば、是非ご自分で確かめていただけばよいかと思います。

    8人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 4人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2010/04/13

    【1】
    あるWebページでこのDVDの演奏を「後期ロマン派的なアプローチ」で「マーラー的」な演奏をしているとして非難されておりました。
    管楽器の数を倍に増やしたり、少し粘り気味のゆったりとしたフレージングなど、確かに後期ロマン派的なアプローチは見られます。この点は認めます。
    しかし、バーンスタインは、シベリウスの曲をマーラーと同じような調子で演奏しているわけでは断じてありません。
    たとえば、彼自身が演奏した「ウエストサイド・ストーリー」を「マーラー的」な演奏であるという人は、少なくとも私は、見たこともきいたこともありません。
    が、このシベリウスの演奏を「マーラー的」などというのは、それと同じ位ばかげたことです。
         
    【2】
    ご承知のように、バーンスタインは、若いときからシベリウスに取り組んでおり、CBS時代にニューヨーク・フィルと交響曲全集を完成しています。
    もし、彼が、「後期ロマン派」の交響曲としての視点からのみシベリウスの曲を取り上げ、演奏しているのであれば、交響曲第3番以降の曲は、おそらく取り上げないだろうし、たとえ取り上げても、その演奏内容も充実したものにはならないと思ます。
    (そういう意味では、バーンスタインにとっては、シベリウスはブルックナーなどよりはずっと親近感を持つ作曲家であったと思います。)

    「静寂の中、迫りくる脅威と大自然に馳せる思い」を見事に描ききった素晴らしい名演奏だと思います。
         
    【3】
    とくに、ライブで聴いて衝撃的な印象を刻み付けられた交響曲第1番の演奏は、私のとっては宝物のような存在です。とはいえ、そのような個人的な事情を抜きにしても、非常な名演奏であると思います。録音も良くて、音が美しいのに迫力満点です。
    (ライブでも、ウィーンフィルがそこに自分がいるのが信じられないような本当に素晴らしい音を出していて、舌を巻きました。絶対に忘れられない思い出です。)
         
    【4】
    ちなみに、私が聴いたのは、1990年2月22日19:30〜のコンサートで、シベリウスの交響曲第1番の前に、マーラーの「Lieder eines fahrenden Gesellen(さすらう若者の歌)」と「リュッケルトの詩による5つの歌曲」が、ハンプソンの独唱で演奏されました。
    このDVDの交響曲第1番は、聴衆を見る限り、1つの演奏会の収録をメインとして、別の日の演奏会や聴衆なしの演奏を編集して作られています。
    ただし、残念ながら、メインで使われている映像の収録日が2月22日かどうかはわかりませんでした。

    4人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 4人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2010/01/21

    先に、当CDの印象について書きます.
              
    書きたいことはいっぱいあるのですが、何から書いたらよいのでしょう?
              
    【1】「幻想」は、とにかく想像を絶するものすごい演奏であることは確かです。
    【2】録音も1967年当時のライブ録音としては、非常に優秀で、ハープや鐘の音もしっかり入っております。それに、このオーケストラがもっている色彩感が良く出ています。ちなみに、スタジオ録音のEMI盤では、「鐘の音」について、チューブベルを使用したのではないかなどと言われておりました(私は自分の装置での再生結果からこの説には否定的でした)が、今度のライブ録音を聴けば、紛れもなく「鐘の音」であり、チューブベルの音ではありません。
    【3】第1楽章の後半から終結部に至る盛り上がりは、EMIの録音をはるかに超えており、本当に、聴く者は息も出来ないくらいです。(この部分を聴いて、不覚ながら涙が流れてきました。)
    【4】第2楽章の緩急の自然さと自在さは、まるで足かせをはずした怪物のようです。つまり、これに比較するとEMIの録音は、まるで足かせをはめているような窮屈さがあります。(まさに、夢の中の舞踏会です。)
    【5】第3楽章のホルンや管楽器のニュアンスが「フランス的」です。旧パリ音楽院管弦楽団がもっていた良い点が、ここでは聴けます。注目の最後の方のティンパニーの前のピチカート部分の直前には、彼の他のライブ録音と同様に、やはり、カットがあるようです。(3種のスタジオ録音にカットはありません!)
    【6】第4楽章の冒頭のティンパニーのクレッシェンドと強打は、オーディオ的にはもう少しDレンジがほしい感じですが、心理的には十二分以上に衝撃的です。現在入手可能なEMI盤のサウンドをはるかに上回ります。また、この楽章の後半の盛り上がりも大変な状態で、もう、本当に気がおかしくなりそうです。
    【7】そして、第5楽章。オーケストラの方も、ここまで来て、もうこの演奏の出来栄えに確信をもって、さらに、気分的にも余裕が出始めたところを、ミュンシュはさらに過激な緩急や表情付けで要求のレベルアップを行っていきます。この演奏のコーダ(終結部)盛り上がりを聴いたら声を上げて拍手をしたくなります。
    【8】ドビュッシーの「海」も名演奏です。とくに、第3楽章がすごい。
    【9】ドビュッシーの「海」では、楽章間に時間があり会場ノイズが聞こえますが、「幻想」は楽章間に時間がなく、ほとんど、アタッカのように聞こえます。はたして、実演ではどうであったのかと興味がわきます。
              
    名指揮者でも、たとえば、ムラヴィンスキーの場合は、独裁的専制君主という感じで、指揮者に対して奏者は絶対服従という人間関係で、「俺のいったとおりにやれ、それ以外のことは何もするな」という感じの一種のクールさももった演奏形態です。
    それに対して、ミュンシュの場合は、
    「さあお前らやってみろ! もっとできるだろう! さあ、もっと!」
    というような感じで、奏者を鼓舞して、どんどん過激なことをやらせてしまう。そういうタイプです。舞台演出家や映画監督にもそのような人がいます。
    奏者の方は、指揮者の要求への呼応と技術的な破綻への危険との対立関係の中で、極度の緊張と集中を強いられて、しかも、常に、安全な方ではなくて、危険を冒すほうに駆り立てられてしまうという感じの演奏形態です。
              
    私事でかつ長文ながら、このミュンシュの「幻想」交響曲のEMI盤の発売当時のことについての私の思い出を書かせていただきます。
              
    日本でミュンシュ・パリ管弦楽団の「幻想」のLPが発売されたのは1968年になってからだったと思います。(録音は先に書いたとおり1967年10月)
    私は、それに先立ち、AM と FM の放送で聴きました。前者は、NHK第1放送局の「朝の名曲」という番組でしたが、朝起きてきたときには、ほとんど終わりかけておりましたし、音のほうもあのラジオですから、演奏内容についてはわかりませんでした。
    数週間して、FMのクラシックの番組(藁科雅美さんの司会でした)で、全曲を聴きました。放送が始まる前から、ドキドキするほど期待と緊張の中で、曲が始まりました。
    使用されたのは VSM(仏HMV)の輸入盤で、これは、本当にすばらしい音でした。低音こそ量感と伸びはありませんでしたが、音の切れと伸びと色彩感は抜群でした。第1楽章の最初の遅い部分から、第1主題(女性の動機も含まれる)が出た後、加速していく部分の激しさとまるで万華鏡を見るような色彩的なサウンドの展開、この部分をきいただけで、もうすっかり興奮してしまいました。
    それは、まるで、放射性物質が臨界点に達して青白い閃光を発するのを見たような瞬間でした。でも、それだけではすみません。
    音楽が進んで、第4楽章の冒頭。この部分で、私の音楽体験の決定的とも言える衝撃の瞬間が待ち構えていたのです。この部分、ご承知の通り、ティンパニーが弱音からクレッシェンドして最強音で一撃を食らわします。その「衝撃の瞬間」とは、この部分の最後のところ、普通の演奏では長いクレッシェンドで音量は上限に達して、頭打ちとなり、そのまま、最後のいくつかの音が鳴らされるような感じになります。ところが、この日に聴いたものは違いました。ちょうど、普通の演奏では上限に達したと思われるところから、さらに、指数関数的な強烈なクレッシェンドと爆発が待ち構えていたのです。
    この衝撃的な音に、本当にあっけにとらられて呆然としてしまいました。
    この音は耳に焼き付いてしまって、それから、何日間も頭の中で鳴り続けていました。その後、国内盤のLPが発売されると別のFMの番組でも放送されましたが、最初に聞いたVSMの輸入盤とのあまりの音の違いに、がっかりを通り越して憤りを感じるほどでした。
    つまり、音の切れが悪くて、鈍重で沈潜する、しかも高域の音はヒステリック。第4楽章の冒頭も頭打ちで音が伸びない。
    約1年後の12月には、この国内盤のLPを購入しましたが、家の再生装置で聴いても、残念ながら、この印象は変わりませんでした。
    当然ながら、何度も輸入盤を入手しようと考えました。
    しかし、当時は、フランス・プレスの輸入盤LPは極めて数が少なく、たまに見つけても、VSM盤ではなくて、パテ(Pathe)レーベルの盤でした。
    (同一の演奏が2つのレーベルで発売されるという変な国です。)
    しかも、値段も、通常の輸入盤なら2枚は買える 2800円〜3000円位していました。
    当時高校生の私が、すでに、国内盤を持っているにもかかわらず、このような高価なLP盤を買うなどということは、できるはずもありませんでした。
    結局「良い音は一度だけ」の教えどおりの結果となり、以後、CD の時代になっても、何度リマスター盤が現れても、最初に聴いたFM放送の音を再び聴くことはできませんでした。
              
    今回の「発足記念演奏会」のものでは、ひょっとして最初にVSM盤を聴いたときのような体験ができるのではないかと期待しておりましたが、この点ではほぼそれが満たされたと思います。

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     2009/09/15

    [1]全体として、現役のオペラ歌手はゲオルギューくらいで、ドミンゴとカレーラスが登場するのは、冒頭だけ。さらに、彼らの歌唱もやはりふけたなと思わざるを得ない感じで、残念ながら魅力に乏しい。
    [2]続いて登場するシェリル・ミルンズも、もはや、現役としては通用しないレベルと思いました。彼は、後のほうまで出番がありました。
    [3]中盤から、後半にかけては、パヴァロッティと親交のあったポップス界の歌手や器楽奏者などが中心となっており、これらの歌手や奏者の名前すら知らなかった私には、あまり、興味がわかない。
    [4]ポップス歌手(男性)とゲオルギュー(ソプラノ)によるオペラの有名曲のデュオなどという珍妙なものは、イベントとしてはともかく、音楽的には、それほど魅力があるとは思えませんでした。
    [5]結局、このディスクで音楽的に一番のききものは、ローマのカラカラ劇場で1990年に行った「3大テナーコンサート」でパヴァロッティ自身が歌った「誰も寝てはならない」(プッチーニの「トゥーランドット」)という皮肉な結果でした。
    [6]画質については、映像そのものの精度は悪くないと思いますが、カメラーワークや照明については、もう少し何とかしてほしいと思いました。
    [7]音質については、私の再生環境ではよくわかりませんが、このようなライブ収録としてはまずまずの出来かと思いました。
    [8]字幕は英語の部分では何も表示されず、イタリア語で話しているときのみ英語の字幕が出ます。歌詞の字幕もありません。

    ただし、次のようなこともわかりました。

    [9]上記の5に書いたように、最後の曲として、「3大テナーコンサート」におけるパヴァロッティ自身の録画の歌唱が収録されているのですが、やはり、もともとSDビデオフォーマットで収録されているため、たとえ、Blu-Rayディスクであっても、それほど画質が向上しているとは思えませんでした。

    つまり、クライバーの「カルメン」やレバインの「魔笛」のように、SDビデオフォーマットで収録された映像は、例え Blu-Rayディスクで再発売しても、画質の向上はわずかであると感じました。

    残念ながら、このディスクについては、今後あまり見ることもないと思います。

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     2009/07/05

    画質もよく、十二分に楽しめました。
    (収録時間は、約110分、20曲)

    この「ヴァルトビューネ」、毎年開かれているベルリン・フィルの
    ヴァルトビューネ・コンサートが有名で、NHKのBSで放送されたり、
    DVDで発売されたりしております。

    ここは、作られたのも新しいのでPA等の設備も結構整っているようです。
    このBlu-rayディスクも、折に触れて会場の観客が写りますが、
    小さな子供をつれた家族などがおり、くつろいだ雰囲気があります。

    演奏の方は、当代随一の人気と実力を誇る若手オペラ歌手、
     アンナ・ネトレプコ(ソプラノ)
     ローランド・ヴィラゾン(テノール)
    の二人に、ベテランの
     プラシード・ドミンゴ(テノール)
    を加えた3人による、オペラやオペレッタの有名なアリアや
    「Tonight」、「忘れな草」などポピュラーな歌曲です。

    1990年にローマのカラカラ浴場でひらかれた「3大テノールによる夕べ」
    の現代版ともいえますが、女性歌手が含まれていることもあり、
    より多彩で華やかです。

    画質は大変よく、1080i との表示ですが、1080p より劣るところは
    見られません。音質の方は、さすがに野外会場ですので、オーケストラ
    の音が楽器によっては硬い感じもしますが、何せ液晶モニターの内臓
    スピーカーですので当てにはなりません。ただし、マイクの数は十分で
    不鮮明さは全く感じませんでした。字幕表示は「英語」で見ましたが、
    オペラのような台詞のない、このようなアリアなどの歌曲のみの場合は、
    それほど大きな支障にはならない感じでした。

    実は、最近はオペラの話題などにも疎くて、ドミンゴ以外の2人も今回
    初めて聴きました。2人とも人気がある理由が分かったように思います。
    とくに、ヴィラゾンは、3大テノール以降で初めて「これは」という歌手
    に出会ったという感じがして、他のソフトも聴いてみたいと思いました。

    ネトレプコは、歌の技術は、私が聴いても多少荒削りな感じがして、
    それほどうまいとは感じさせる人ではなさそうですが、「ここぞ」という
    時に圧倒的な声の威力を見せるカリスマ性を持った歌手という感じです。
    また、Blu-rayディスクの高画質向きの美人であり、その点も人気に
    つながっているのではないかと思います。

    アンコールでは、会場の熱狂ぶりもただごとではなく、最後は
    この会場ではあまり見たことがないスタンディング・オベーションで
    お開きとなります。

    先にも述べたとおり、カメラワークもなかなか良いので、
    「会場で聴けたらなあ」などと思いながらも「いいものが聴けたなあ」
    と会場の雰囲気を十分味わった自分がいることに気がつきます。

    カタログを見ていると、Blu-rayディスクで、すでに、
     ★ネトレプコとヴィラゾンの「椿姫」
      https://www.hmv.co.jp/product/detail/2807799
     ★ヴィラゾンの「椿姫」(フレミングとの共演)
      https://www.hmv.co.jp/product/detail/3509011
     ★ネトレプコの「マノン」(マスネ作曲)
      https://www.hmv.co.jp/product/detail/2761652
     ★ネトレプコの「清教徒」(ベッリーニ作曲)
      https://www.hmv.co.jp/product/detail/2754714
     ★ヴィラゾンの「ロメオとジュリエット」(グノー作曲)
      https://www.hmv.co.jp/product/detail/2807798
    などこの2人のものが5点以上も発売されている事が分かりました。
    これらのうちのいくつかも入手して聴いてみたいという思いに駆られる
    ほど、今回のBlu-rayディスク内容が良かったともいえます。
    (ユニバーサル系の乏しいBlu-rayカタログの中で5点というのは多いと思います。)

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     2009/06/18

    私は、1989年の8月から1990年の7月までウィーンに在住。この演奏の1990.3.1の演奏会のライブを聴きました。レーニーがメガネをかけているのは、おそらく2.28の演奏会であろうと思われます。つまり、このDVDの映像、大半は3.1の演奏会の収録からとられているようです。ついでに、いくつかのショットで私の顔が映っていたりします。(本当に感激です。)
    当時、すでにレーニーの体調はななり悪かったはずですが、2楽章のパワフルな指揮ぶりには本当に驚きました。あの圧搾空気で電柱を地中に打ち込んでゆくような強烈なアタックとエネルギーは、全くブルックナー的ではありませんが、今聴くと超個性的ながら、彼が感じていたものがわかるような気がします。
    この3月1日の演奏会、実に色々なことがありました。ご参考までに書いておきたいと思います。
    そのきっかけは、前の週の2月末に開かれた4回のうちの前半のプログラムを聴きに行った時でした。その日のシベリウスの交響曲1番は本当に神がかり的な素晴らしい演奏でした。終演後、楽屋にサインをもらいに行ったのですが、(バーンスタインは応じてくれるときいておりましたので)マネージャーが出てきて、
     「彼は1日中働いて疲れているので勘弁してくれ」
    といって、結局、ファンの前には姿を見せませんでした。このとき、もしかしたら、バーンスタインの体調が悪いのではないかといやな予感がしたのですが、不幸にもその予感が的中していたことを後になって知りました。
    この3月1日のブルックナーの演奏会(プログラムは1曲だけ)では、まず、チェロのサブトップ(奥側)に座っているバルトロメイが、第1楽章途中で一番太い弦を切ってしまうアクシデントが起きました。通常の演奏会だったら、そっと、袖に退いて、弦をつけ直してくるのかも知れませんが、このときは、ビデオの収録中であったこともあり、彼は、弦が切れた後も3本の弦で奮闘しながら演奏を続けました。
    (実際に音を出していたのかどうかは、よく分かりませんでした。)
    続いて、第1楽章終了後、バーンスタインは舞台の袖に引き上げて、かなり休憩をとった後、再度現れた時です。指揮台に向かう途中に足がもつれて、楽員に支えられるという場面がありました。このとき、先の予感が、どうも現実に近づいているという感を強くしました。
    しかし、上にも書きましたが、第2楽章の演奏は、たとえ健康でも70歳を超えた指揮者の指揮振りとはとても思えない、全身の力を込めた極めてエネルギッシュな指揮ぶりで、「何もそこまで力を込めなくても」とさえ思いました。
    (その意味では、全くブルックナー的な演奏ではありません。)
    第2楽章終了後、ビデオの収録チームからパウゼ(準備待ち)の要求が出たらしく、バーンスタインは楽員と打ち合わせを始めました。その時彼は、指揮台の片隅に腰をかけて、コンサートマスターとサブの2人と打ち合わせを始めました。そのうちに、コンサートマスターのヘッツエルが席を立って自分の椅子をバーンスタインに譲りました。会場からも、少し驚きの声がしました。私も、思わず微笑んだのです。が、その瞬間、ちょうど舞台近くの席にいた私と振り返ったバーンスタインと目が合い、彼は「笑っているような事態ではない」といわんばかりの、背中も凍りつくような厳しい目でにらみつけたのを未だに忘れられません。
    (ほんの一瞬の事でした。)
    それにしても、ウィーンフィルはやはり素晴らしいオーケストラですね。常に音が美しい上、この超個性的な解釈によるブルックナーが、ちゃんとまとまりを持った音楽として仕上がっています。
    なお、私が映っていることもあり、このビデオについて、かなり詳細に分析を行いました。その結果を要約すると次のとおりです。
    [1]DVD は、359 のシーンからなり、そのうち、3月1日の収録と特定できたのは、楽章順に、
        59/138 + 51/99 + 55/122 = 165/359 シーン
    に上ります。一方、はっきりと、1日の演奏会以外の収録と判明したのは、
        28 + 7 + 14 = 49 シーン
    に過ぎません。(メガネのシーンも含みます)
    [2]1の 165 シーンの時間の比率ですが、楽章順に、
        (16:06/28:07)(8:44/12:50)(19:50/33:05)
    となっております。
    [3]以上より、この DVD の演奏は、私がきいた 3月1日の演奏会での収録分を基本として、不具合部分を、2月28日の演奏会での収録とリハーサルなどでの収録映像で補ったものと考えられます。

    ただし、以上の3月1日の演奏会の収録割合は、映像に関するものであって、もし、映像と音声について別々の収録分を組み合わせる形での編集をしていた場合は、多少の変化がある可能性はあります。(以上の時間表示は大体の値です。)

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