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Review List of mari夫 

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     2015/06/20

    同じ日のおそらく前半のプログラムが一枚目に、後半(ベト7)とアンコールが二枚目に収められているが、これは偶々そうなっているプログラムとは思えない。シェーンベルクと「未完成」は、スローな、暗いロマンティシズムを抱えたウィーンの音楽でこの連続性を嗅ぎ取ったセンスは面白いが、反対に、舞踏の曲ばかりからなるアンコール四曲は、当然メインプログラムのベト7とつづいている。ベト7が基本速い楽章の中にスローな二楽章を挟んでいるように、アンコールも、ラヴェルだけは舞踏と言ってもスローな曲で、これは明らかに意図的に仕組まれた配列に違いない。全曲収めた企画側の見識に拍手だ。シェーンベルクはチェリとしては珍しいレパートリーだが(確かシュトゥットガルドと作品31の変奏曲―フルトヴェングラーが初演した曲!―をやっていたことがある)、ワグナーのヴェーゼンドンク・リーダーを世紀末的に煮詰めたような曲で、暗いトーンの中の微妙な光や甘美さが精妙に描き出されている、多分(始めた聴いた曲なのでそうしかいえない)。「未完成」は、チェリとしたら普通の出来ではないか?とくに一楽章はあまり特徴を感じない。音がお互いに溶け合わないこのオケの特性もドイツものではちょっと枷になっているような気がする。ベト7でも冒頭のオーボエの生な音色なんかに違和感を覚える。この曲の一楽章はゆっくりめのテンポで、せっかちにやると2対1(三連譜)に近くなりがちな付点のリズムを、うんと丁寧に3対1にしている。三楽章以下も勢いに任せて、というよりは克明な音楽。チェリのベートーヴェンは基本いつでもこの傾向で、私淑したフルトヴェングラーの阿修羅のような忘我的演奏とは違う。ディオニソス的ではない。アンコール四曲はいずれも名演。ドヴォルザークはよくやる彼の十八番。「優雅にして」はスウェーデンでもそうだが、全曲ではなく一部だけ。いつもそれしかやらなかったのだろうか?メインの二曲に多少留保が残るので☆四つにした。ちなみにフランスの聴衆、拍手が早すぎるよ。

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     2015/06/19

    このシリーズは本当に素晴らしい。フランスのオケなのでドイツのそれと比べると音が溶け合わず、線の明快さと色の粒だちの良さが際立っているブラームスは、この当時のチェリならではのハンターのような敏捷さと素晴らしい推進力に富み、流麗な音塊の隆起が美しい。ただ明快さの反面、ドイツものとしては少し翳りや含みに乏しいと感じる人はいるかもしれない(好き好きだろう)。オケの美質が曲とピッタリ合っている他の二曲はそれ以上の聞き物。ミヨーは、フランスと言うより南米風の乾いた、開けっぴろげの音楽で、後年のしんねりむっつりしたブルックナーのチェリとは水と油みたいだが、この当時のチェリは見事にそれを料理して、この指揮者の間口の広さを偲ばせる。「ローマの松」は読響とのライブを40年近く立った今でもまざまざと覚えていて、私的にはそれが再現されていることに心から感謝したい。冒頭の、音が光と色彩のシャワーのように降り注ぐ様から、あああの時もそうだったと思わせるが、来場していたオーレル・ニコレ(チェリ当時のBPOの楽員)が絶賛していた「ジャニコロの松」の印象派的な木管の実に目の詰まった表現も、ここではフランス流の魅惑を伴って再現されているし、「アッピア街道の松」では、ブラスを増強した金管群が地響きを立てるように咆哮し、ステージにドス黒い空気が充満したが、最後の最後では、それを払拭するかのように、ブンブンと風車のようにタクトを振り回すチェリがイヤァ、という裂帛の気合をかける様がまざまざと昨日のように蘇る。

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     2015/06/11

    チェリと言えばブルックナーばかりが言われがちだが、それをも超えるチェリの十八番はこの『ロメオとジュリエット』である。超スローでテクスチャーを拡大鏡で見せているような晩年様式と、このCDを含むもう少し前の時代とでは随分スタイルが変わった。それで失われたもの―彼のモダンで、獲物を追いつめる敏捷な猟師のような張りつめた感覚ーも少なくないと私は思っている。私にとっては、このライブは、(余計なお世話だけれども)いわゆるリスボン・ライブなどよりずっと貴重な記録で、マジカルというか殆ど呪術的な凄さである。実は昔海賊版でもっていて(この二曲にラヴェルの「道化師の朝の歌」が一緒だった)、それはエアチェックにせよ、それなりの音質だと思っていたが、今回のは放送局のテープの起こしだと言うだけあってまるで別もののレヴェルである。レンジも広いし、スタジオ録音でもこれだけの音は滅多に聞けないほどで、それが演奏の意味を細部にまで明らかにすること全く目覚ましい。ここまで凄い演奏だとは前のCDでは感じられなかったのだから、再生音楽は恐ろしい。会場のノイズも含めてライブならではの瑕瑾もなくはないが、「少女ジュリエット」の、神経の上で舞われている静かなパントマイムのような感覚、「ジュリットの墓の前の」身を切られ揺さぶられるような凄まじい慟哭、「タイボルトの死」の、この時期のチェリにしかなかった目覚ましい躍動感、いずれも究極の音楽と称するしかない。アルゲリッチとのシューマンももちろん素晴らしいもので、最後には昂奮した聴衆の超フライング拍手が聞かれるのもむべなるかな。バランスとしてはピアノの音量がまるで楽器の中にマイクをセットしたみたいではあるが、その分アルゲリッチの翩翩を極めるピアニズムが聞ける。この曲はピアノとオケが対等に(弁証法的に?)張り合うというよりも、思いを籠めて囁き合ったり、思わず声を上げ合ったりという風があるが、この演奏は(二人が互いに相手をどう感じたかは知らないが)、そういう趣きを極限にまで高めている。☆10個くらい欲しいところ。

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     2015/06/06

    ケンプとのベートーヴェン協奏曲集の名サポートに喫驚し、チャイコとか、シューベルト、ブルックナーとか聞きながら、ここに到達しました(ファンの方たちには今更かといわれそうですが)。本欄のセールストークにフルトヴェングラーうんぬんがあり、書き込みをされた方にもこれへのレスがありましたが、そのフルトヴェングラーのベートーヴェンなど何種類もある今では考えられないけど、このケンペンの吹き込みが行なわれた時には、BPOのベートーヴェンの吹き込みって、ごく少なかったはずですね―セールストークの源が分からないのですが、フルトヴェングラーうんぬんって、当時はどれと比べていっていたのか?戦前の第五とかがあったにせよ、それ以外は、EMIでライバルのVPOとベト全を入れ始めていた時期(トスカニーニもNBCで、カラヤンはPOで)で、例のベルリン復帰ライブやバイロイトの第九も出たのはもっと後だし、BPOとしては、ベートーヴェンの吹き込みが欲しかったはずですから、一歳下のベーム(第五=53年)や12歳下のクリュイタンス(全集前のモノの第六、第七=55年)に先立ってこのケンペンの吹き込み(51-53年/ケンプとの協奏曲も53年。55年には当人が物故)が行なわれたと言うのは、彼の評価の高さが窺われます。そういうレコード界の事情は別としても、やっぱりこの演奏ももの凄い!色々と聞いてきてこれぞ真打ちと言う感じでした。エロイカの最初の二和音の全身全霊をうちこんだみたいな物々しい音は、フルトヴェングラーでも例のウラニア盤くらいしかないのではないでしょうか?トスカニーニ(あるいはカラヤン)みたいに、和声とテンポを指示する前振りとしてすんなりと機能的にやるやり方もありとは思いますが、やはりこの凄さは並大抵のものではないし、如何にもフルトヴェングラー時代のBPOの音がします。昔の人は比較云々よりむしろある程度サウンド・イメージを重ねていたのではないでしょうか?とはいえ、ケンペンはフルトヴェングラーの緩急自在なテンポの扱いというよりは、ぐっと重心を低くして、刻みにせよ、第七の付点音符にせよ、とても克明に弾かせるので、実に彫りの深い音楽ですが、怒濤の寄り身の音楽で、巨匠にも引けを取るとは思えない迫力だと思います。音も結構良いから、☆は六つでも七つでもいい。

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     2015/06/03

    ブルックナーは1951年、シューベルト(9番)は43年となっている。録音はその年代にしてもいいとはいえない(とくにシューベルト)が、演奏は素晴らしい、というか凄い。へボウの「グレート」に関しては50年のベイヌムの音はこれよりむしろ落ちるから良しとしなければならないかも。「グレート」の冒頭はごくゆっくりしたテンポで始まるが、そのホルンの響きのロマンティックなこと!同オケの3年前のメンゲルベルグはマーチのように始まり、テンポは急変していくが、ケンペンのは遅くて、主部に入っても急がない。以下悠々たる進行で音楽とオケの巧さ(この音でも)を堪能させる。「ロマンティック」の方は、逆に冒頭のホルンの音程が危なっかしいが、これは凄いという点では一層凄い演奏で、圧倒的な迫力がある。とくに終楽章の集中力は凄まじい。ただし、どうも改訂版みたいで、びっくりするのは三楽章で、レントラーのトリオが終るとそのままスケルツォ主部に戻らないで終ってしまう。やはり改訂版で知られるクナでも、これはしていない(そのかわりトリオへの不思議なつなぎがあるけれども)。ウソだろうみたいな終り方。さすがにそこは大減点だろうが(ただし終楽章の主題の提示の後に再度盛り上がる所でクナが派手に鳴らすシンバルはここではない)、それでもこんなに迫力のある「ロマンティック」は、クナやチェリを除いて、他に殆ど例がないと言うことで、一聴の価値はあるだろう。シューベルトでメンゲルベルグを引き合いに出したが、ブルックナーでクナも、とくにライブだと結構派手にやる大時代的なアゴーギグはケンペンにはない。その分近代的だったのだろう。でもケンペン、やはり凄い指揮者だったんだ、色々と覚悟をするなら、それは十分堪能出来る、ということで顰蹙覚悟で☆五つ。

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     2015/06/02

    実は1番と6番のみ未聴ですが、他の各曲に関する限り、小沢のベスト・アルバムに数えられるのではないでしょうか?もっとがつんと来るようなマッチョなプロコフィエフもあり得るでしょうが、この繊細にしてしなやかに躍動するモダンな感覚は、BPOの高性能にも助けられているとはいえ、他に代え難い魅力があります。これより少し前のロストロポーヴィッチ及びLSOとの「協奏交響曲」も併せて、素晴らしい出来です。先日サイトウキネンとの「幻想」にあまり芳しくない評価をしたばかりですが、同じ組合わせのショスタコの5番などでも感じるリズムの底の浅さが、ここでは全く見る(聞く?)ことが出来ません。BPOとの演奏は、カラヤン追悼の「悲愴」もすぐれた出来映えでしたが、オケとの相性なのか、プロコとの相性なのか、2番(とくに一楽章)のようなモダニズムも、5番のようなもっと社会主義リアリズム風に傾斜した曲もともに屈指の名演であると思います。

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     2015/05/29

    ショルティのモーツアルトの中では「魔笛」は例外的にいい、と思っていた。ジュピターとも通じる古典的な枠組みの堅牢さがそれを保障しているのだ、と。LP時代のことである。(諸氏もいわれているように)プライのパパゲーノは理想的だし、ドイテコムの夜の女王も素晴らしい(一幕のアリアのコロラトゥーラの箇所の歌い方がヨーデルみたいで面白い)。でもCDになったら値段がなかなか下がらない。ということでしばらく見送っていたのだが、いよいよ安くなったので久々に入手。録音も69年とは思えないくらい鮮明。しかし、‥‥聞いてみたら、案に(記憶に?)相違して、どうも気に喰わない、というか楽しめない。いや、見事な造形なのだけれども、序曲のフーガ主題のアクセントの付け方からしてどうも違和感が残る。VPOの柔らかい音で緩和されているとはいえ、どうもこうやれという押しつけ方が気になってしまう。パパゲーノの登場のアリアでも、プライが窮屈そうではないか(籠の中の鳥?)。パパゲーノとモノスタトスとの最初の「出会い」も、こんな張り合いでなくたって良いのに。森からザラストロの神殿に舞台を移した二幕では、曲想に合うためか、抵抗は少なくなったけれども、昔のウィーン風の春風駘蕩でやってくれとは思わないけれども(そういう曲じゃないはず)、なんかなぁ、人間が呼吸していないんだよなぁ。水準が高いのは重々認めながら(本来的には星5つで当然でしょうね)、3つまで削ったのはそのため。ただ当方が歳取ったから、ということならそれはそれでいいのですけれど。

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     2015/05/25

    クライバーのデビュー盤だが、いきなり最高の名演で出てきたと言う感じ。その後も名演はつづくけれども、「こうもり」と並んで最高峰だろう。オケと歌手まで入れるとこれがNo.1ではないか?音の細胞の一つ一つまで生命力に満ち満ちている。圧倒的な切れ込みの鋭さや迫力と叙情的な部分の瑞々しさの奇跡的な併存。クライバーは、カルロスというスペイン名前だけれども、実はベルリン生まれだし、親にもラテンの血は入っていない。アルゼンチンにそう長くいたわけでもない。けれども、確かにドイツ的な暗さとは違うラテン的なテンペラメントを感じさせる指揮者だ。この曲でもドイツの暗くおどろおどろしい森の世界とは違う生命力の横溢した音楽が聞ける。実は、私は、仮説でしかないけれども、トスカニーニの若い頃(音が悪すぎて確かめられないのだけれども、一旦引退するより前)は、こんなだったのではないかという気がしている。少なくともフルトヴェングラーなんかとは全然違う世界だ。オケも素晴らしいし、ヤノヴィッツ、シュライヤー、アダムそれぞれ素晴らしく、申し分ない出来映え。永遠のレジェンドというべきだろう。

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     2015/05/22

    フィッシャー=ディースカウの「冬の旅」を全部クロノロジカルに聞き比べたことがあるわけではないが、62年のムーアとの吹き込みから最後期のブレンデルとの吹き込みまで比べると、段々(というのは全部聞いていないから違うかもしれないが)歌が主観的、表現主義的になっていくような気がする。この60年代中頃というのは声の点では絶頂期だろうが、62年盤よりも表現がストレートでなくなってきている。ただ、それに追いつくには、デームスのピアノはちょっと路線が違っていて、たとえばムーアのような目の詰まった伴奏ではなく、私の耳にはいささか歌手とピアニストの間で隙間が空いているような気がする。その分、星一つを減らした。

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     2015/05/22

    酒樽ファルスタッフ さんの評がほぼすべてを言い尽くしているようにも思いますが、全編活力に満ちたベーム絶頂期の名演です。ウィーン響の質朴な音もそれに合っているように思います。カラヤンとBPOのモダンオケの機能を120%活用したような演奏も見事なものですが、ハイドンの、とくに農民オラトリオみたいなこの曲には、ベームの方が(といっても、彼もまた近代人だったと私は考えますが)好ましいと言う人も多いでしょう。歌手はボーイ・ソプラノのようなヴィブラートの少ないヤノヴィッツの純正な声が素晴らしい。シュライヤーも、ヴンダーリッヒでないとしたら、ほぼベストでしょう。タルヴェラは相変わらず潰れたような声で私には興醒めですが、この曲ならホッターとかアダムのような威厳に満ちた声は必要ないので許容範囲。

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     2015/05/18

    シューベルトにせよヴォルフにせよ、ゲーテ歌曲は重厚な名曲が多いが、このアルバム(デームスと60年、ムーアとは69年と70年の、各々LP一枚分を併せてCD一枚にした)は素晴らしい出来だ。60年録音も申し分ない演奏、録音だが、ムーアとのものは更に微妙な音の泡立ちまで再現する素晴らしい録音で、ムーアも含めて殆ど神品の領域に入っていると感じた。D.F=Dの数多い録音の中でもとくに傑出したアルバムである。

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     2015/05/16

    若き日のポリー二の怪演。決して濁らずどこまでも澄んだクリスタルというかカットグラスのような音の構築物によるモダニズムの美学。作曲者が譜面に定着して以来200年に亘って、無数のピアニストたちがその時代時代の技法とメンタリティを反映しながら、これらの曲に沈殿させてきた「澱(おり)」のようなもの―人によってはこれを深さの次元ととるだろうーを奇麗に掬いとっている。評価はそこにかかるでしょうね。ただ比較的似た路線でも、他にギレリスとか、作品111のミケランジェリ(録音は遂に満足するものがないが、初来日の時に聞いたライブの緊張感は尋常ではなかった)とか、作品101のソコロフとかに比べると、これが比べるものとてないといい切れるかはもはや自信がない。

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     2015/05/13

    ホールがデッドなせいなのか、とにかくオケの音には幾分豊かさとか
    艶が不足気味。その分か、演奏のせいか、表情が平板に聞こえます。
    部分的には感心する表現もあるのだけれど(『幻想」は4、5楽章の
    方が良い)、全体を通すと、それほど高い評価はしずらい。
    昔日フィルのライブで聞いた『ロメオとジュリエット」は随分
    良かったという記憶があるから、小沢はライブで聞くべしといわれる
    とそうかもといわざるを得ない。けどcdとしてはやっぱり星三つまで
    だなぁ。ラヴェルも似たような印象。

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     2015/05/03

    67年(フランク)と66年(フォーレ)の放送録音で、この時期ならステレオでも良さそうなものだが、モノラル。ただ音質は良好。演奏はどちらも素晴らしい。パレナンもペルルミュテールも熱っぽく、霊感にみちた演奏っぷり。後者は師のコルトーを思わせるロマン的かつ詩的で高雅な演奏。フランスの室内楽の伝統の最良の成果の一つではないか?フォーレの二番は、ベルクの「叙情組曲」やバルトークの四番と十年も違わないのだが、霊感の飛翔の仕方がそれらとは全く違って、フランス音楽の伝統という土壌に確実に根ざしながら、革新的な手法によっている事を感じさせてくれる演奏。

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     2015/04/28

    セットで買ったら四枚組で千円に満たない。ケチを付ける所以はなさそうだが‥‥。昔LP でブル9をもっていて好印象だった。それを買い直すというだけでも安い値段なので、買ったわけだが、この欄での皆さんの好評に逆らうようで恐縮なれど、いま一つ心に響かなかった。まず下の書き込みにもあるように、ベルリオーズとブラ4が二枚にまたがっている(後者は一楽章だけ別。LPじゃあるまいし)。それとリマスターはしたんだかどうだか分からないけれど、年代が後の方が良いとはいえ、全体に固く、透明度というか解像度ももうひとつ。音に艶というか潤いがない。似たような印象があったクレンペラーのもう少し前の同じEMI吹き込みがBOX化で大幅に改善されたのとは違っていた。さて肝心の演奏だが、ジュリーニの演奏は、緊張感は高いが、高過ぎと言うか、抜くところがない。声楽的に言えばソット・ヴォーチェがない。主旋律部以外でも克明かつ一杯に弾かせる。それがかえって窮屈に私には聞こえる。フレーズが固いと言うか、甲冑に身を固めたような音楽。クレンペラーも同じ特徴があるのだが、何故かあちらにはこの窮屈感はない。この特徴がブラ4や「巨人」の終楽章には面白い方向に出ているとは思うが、全体としてはのびやかさに欠ける。ブル9は一番後なので、音も比較的には良いし、一楽章の第二、第三主題などは流れているが、それでも昔の印象ほどではなかった。ファンにはお叱りを受けそうだが、値段を度外視すると星三つまでだなぁ。

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