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ザンデルリング最後の演奏会 完全収録〜ベルリン交響楽団 記念BOX

2006年1月28日 (土)

ベルリン交響楽団 記念BOX(5CD)
〜ザンデルリングの最後の演奏会 完全収録〜
さきごろ惜しまれつつ引退した「最後の巨匠」クルト・ザンデルリングの生誕90年とオーケストラの創立50周年を祝うベルリン交響楽団記念ボックスの登場です。添付されたブックレットは、記念盤にふさわしい立派なもので(60ページ)、ザンデルリングの写真も多数掲載されています。
 得意のドイツ物、ロシア物がズラリと並ぶ収録曲目は壮観で、これまでに録音の発表されていない作品が数多く含まれているのも大きなポイントです(音源は“Deutsches Rundfunkarchiv”)。
 また、なにより嬉しいのは、評論家の許光俊氏が大絶賛していた2002年5月19日にベルリンのコンツェルトハウス(旧称:シャウシュピールハウス)でおこなわれた「ザンデルリングの最後の演奏会」が完全収録されているという点(音源は“Deutschland Radio”)。
 巨匠最後の境地ともいうべき深い感動が胸に迫る見事な演奏内容です。
 なお、当セットにはザンデルリングのほか、彼と関係の深かったダヴィド・オイストラフの指揮による演奏も3曲収録されています。
 以下、「ザンデルリングの最後の演奏会」について、許光俊氏(音楽評論家、慶応大学助教授)が、チャイコフスキーの4番(TDK)のライナーノーツに記した文章を抜粋してご紹介いたします。


ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲
...すでに最初の《ハイドンの主題による変奏曲》からして尋常ではなかった。ザンデルリンクとしてはやや遅めに設定されたテンポのうちに、明るいながらもメランコリーをぬぐい去れない平明な主題が歌い出される。むろん、この主題自体の中に明るさとメランコリーが混在しているとはいえ、いかなる誇張もなしに深々と主題が歌いだされた途端、この夜が演奏家にとっても聴衆にとっても特別で稀有のものになることが確信できた。悲しげな微笑のような主題のあと、変奏のひとつひとつが実に丹念に奏された。変奏とは人生のアレゴリーなのだろうか。慈しむように愛情を込めて奏される様子を見ていると、そう思いたくなるのは否めない。音楽がさまざまな姿を現しながら雄大な時間の流れとして流れ続け、最後、激しくはない高揚のさなか、主題が回帰してくる...
モーツァルト:ピアノ協奏曲第24番K491
...独奏者を務めたのは内田光子である。内田はかねてからザンデルリンクに心酔していることを公言しており、両者の共演は少なくなかった。彼女もまた、この演奏会では持てる限りを尽くしたと思う。あるときはシューベルトのような深淵に立ちくらみ、あるときは冷たい悲哀に沈み込むことをいとわぬ密度の高い音楽だった。演奏後、内田は涙ぐんでいたが、それが満場の聴衆にいっそうの感銘を与えた...


シューマン:交響曲第4番
...スケルツォ楽章の弦楽器の力業は圧巻だったし、そこからフィナーレにかけての、弱音部分の緊張感の素晴らしかったこと。休符が生きていたこと。いかなる誇張もなく、極端なピアニシモというわけでもない響きが放つ輝きに、私は今自分はとんでもない音楽を前にしているのだという感慨にとらわれた。「交響曲第4番」はこれほどまでに整然と美しいものかと呆然とした...



ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番
I.オイストラフ(vn) ザンデルリング 指揮 ベルリン交響楽団
1966年10月3日 メトロポールテアター、ベルリン(ステレオ)
初登場音源。20世紀最高のヴァイオリン協奏曲のひとつであるこの作品の数ある録音の中でも最高の部類に属する優れた演奏(父親がミトロプーロス指揮NYPと共演した名演に匹敵!)。
 当時のイーゴリ・オイストラフの切れ味鋭いテクニックと、ザンデルリングの重厚さと機敏さを併せ持つ見事な統率が、この名作の魅力をいっそう引き立てています。
 第1楽章「夜想曲」からほれぼれするほど美しいソロとヘヴィーなオケの絡み合いが印象深く、続くスケルツォでは、変転する独特のグロテスクなまでの諧謔性を、ソロの超絶技巧とオケの多彩な表情が描ききって申し分ありません。まさに悪魔的なスケルツォです。
 第3楽章「パッサカリア」では、作品に込められた深い哀しみを、息長く安定したソロと、重厚きわまりないオーケストラが感動的に表出。変奏曲の果てに訪れる長大なカデンツァも凄まじい気迫と技巧で弾き抜かれており、アタッカでつながる第4楽章では、一転してスピーディでリズミカルなノリの良いアプローチを聴かせます。特に4:11からのもの凄いスピード感には驚くほかありません。
 音質は1966年のライヴ録音とはとても思えない鮮烈なもので、コントラバスの重低音やハードなティンパニから、ソロ・ヴァイオリンの美音まで完璧に捉えられていて文句ナシの高水準ぶり。
 ザンデルリングのディスコグラフィーにまた傑作が加わりました。

10:27+06:01+11:45+04:41=32:54(実測値)

ショスタコーヴィチ:交響曲第5番《革命》
ザンデルリング 指揮 ベルリン交響楽団
1966年10月3日 メトロポールテアター、ベルリン(ステレオ)

初登場音源。有名なスタジオ盤の16年前、しかも実演ということもあってその印象はかなり異なります。単純に演奏時間だけ見ても全体では5分36秒(!)も差があるのです。もちろん重厚で堅牢な構築性や基本的なスタイルは共通していますが、何しろ速さが違います。 ライヴならではのホットな名演と言えるでしょう。

15:35+04:47+13:52+10:29=44:43(1966,実測値)
17:33+05:30+15:28+11:48=50:19(参考値 1982)


ショスタコーヴィチ:交響曲第10番
オイストラフ 指揮 ベルリン交響楽団
1972年9月29日 ドイツ・シュターツオーパー、ベルリン(ステレオ)
初登場音源。オイストラフは指揮者としても活躍しており、これまでにもショスタコーヴィチの交響曲では、第7番と第9番(ともにソ連国立響)がリリースされたことがありましたが、第10番は初めてとなります。 盟友ザンデルリングが1977年にレコーディングした演奏と較べると、緩徐楽章は遅めで快速楽章は速目というテンポ設定や、内声や低域をさほど重視しない明快なパート・バランスなど、かなり傾向が異なっていますが、ふだんザンデルリングが指揮しているベルリン交響楽団との共演ということもあって管楽器の音色などは同じなので、比較鑑賞も興味深いところです。

25:07+03:57+13:05+11:57=54:06(オイストラフ,実測値)
24:17+04:34+12:36+13:40=55:07(参考値 ザンデルリング)




プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第1番
オイストラフ(vn) ザンデルリング 指揮 ベルリン交響楽団
1971年4月19日 ドイツ・シュターツオーパー、ベルリン(ステレオ)
以前、メロディアのLPとDANTEのCDで同じ日の録音がリリースされていましたが、今回のハルモニア・ムンディ盤は申しぶんの無いステレオ音質なので、少なくともサウンド面では比較になりません。
 両端楽章、特に第3楽章での美音の洪水状態は、オイストラフを聴く醍醐味ともいえ、それを心ゆくまで堪能させる録音の優秀さもかなりのものです。

09:06+03:54+07:41=20:41(実測値)

プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第2番
オイストラフ(vn) ザンデルリング 指揮 ベルリン交響楽団
1965年3月8日 メトロポールテアター、ベルリン(モノラル)

初登場音源。濡れそぼるようなリリシズムに満たされた素晴らしい演奏。特に第2楽章の美しさは比類の無いもので、オイストラフの美音と歌ごころにあらためて感服。まさに陶酔のひとときです。音質もモノラルとしては最上の部類で、下手なステレオ録音よりもはるかに良い音がします。

10:23+09:53+06:05=26:21(実測値)

ストラヴィンスキー:ヴァイオリン協奏曲
オイストラフ(vn) ザンデルリング 指揮 ベルリン交響楽団
1967年3月7日 メトロポールテアター、ベルリン(ステレオ)

以前、メロディアのLPで1967年3月6日という録音がリリースされていました。この演奏と同じかどうかは残念ながらわかりませんが、今回のハルモニア・ムンディ盤は申しぶんの無いステレオ音質なので、少なくともサウンド面では比較になりません。オイストラフの名技とオケの凝った音響が忠実に再現された優れた録音です。

05:25+04:21+04:44+06:09=20:39(実測値)


ベートーヴェン:ロマンス第1番
オイストラフ(vn& 指揮 )ベルリン交響楽団
1965年3月8日 メトロポールテアター、ベルリン(モノラル)
以前、同じ日付の演奏がメロディアのLPとDANTEのCDでリリースされていましたが、そのときには指揮はザンデルリングと表記されていました。
 年代を考えれば当たり前ですが、周波数レンジの広い良質なモノラルで、鑑賞には支障ありません。オイストラフならではの美しい音が存分に味わえる演奏です。

6:51(実測値)


シューベルト:交響曲第2番
オイストラフ 指揮 ベルリン交響楽団
1965年3月8日 メトロポールテアター、ベルリン(モノラル)

以前、REVELATIONからリリースされていたものと同じかどうかわかりませんが、音質は良好です。
 第1楽章主部での激しく豪快な第1主題の扱いや、よく歌う第2主題など、オイストラフの指揮した録音の中でも最も成功した例のひとつとして挙げられるほどの充実ぶり。エネルギッシュな交響曲の、真にエネルギッシュな快演と言えるでしょう。

9:43+6:37+3:44+5:14=25:18(実測値)


ワーグナー:《トリスタンとイゾルデ》〜前奏曲と愛の死ザンデルリング 指揮 ベルリン交響楽団
1970年4月6日 メトロポールテアター、ベルリン(ステレオ)

ザンデルリングのワーグナーは珍しく、オペラからの作品は意外にもこれが初登場となります。演奏はいかにもこの指揮者らしい骨太な叙情が印象的なもので、オペラティックというよりも、なにかマーラーのアダージョでも聴いているような錯覚さえ抱かせます。
 特に7:12以降は、圧倒的な低弦をベースにしたザンデルリングならではのパート・バランスが見事であり、《愛の死》でも沈潜とは無縁の、激情ほとばしる演奏を聴かせてくれます。
10:41+5:17=15:58(実測値)

以下の3曲がラスト・コンサートの演目です


ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲ザンデルリング 指揮 ベルリン交響楽団
2002年5月19日 コンツェルトハウス、ベルリン(デジタル)

...すでに最初の《ハイドンの主題による変奏曲》からして尋常ではなかった。ザンデルリンクとしてはやや遅めに設定されたテンポのうちに、明るいながらもメランコリーをぬぐい去れない平明な主題が歌い出される。むろん、この主題自体の中に明るさとメランコリーが混在しているとはいえ、いかなる誇張もなしに深々と主題が歌いだされた途端、この夜が演奏家にとっても聴衆にとっても特別で稀有のものになることが確信できた。悲しげな微笑のような主題のあと、変奏のひとつひとつが実に丹念に奏された。変奏とは人生のアレゴリーなのだろうか。慈しむように愛情を込めて奏される様子を見ていると、そう思いたくなるのは否めない。音楽がさまざまな姿を現しながら雄大な時間の流れとして流れ続け、最後、激しくはない高揚のさなか、主題が回帰してくる...(許光俊)

20:21(実測値)



モーツァルト:ピアノ協奏曲第24番K491
内田光子(P) ザンデルリング 指揮 ベルリン交響楽団
2002年5月19日 コンツェルトハウス、ベルリン(デジタル)
...独奏者を務めたのは内田光子である。内田はかねてからザンデルリンクに心酔していることを公言しており、両者の共演は少なくなかった。彼女もまた、この演奏会では持てる限りを尽くしたと思う。あるときはシューベルトのような深淵に立ちくらみ、あるときは冷たい悲哀に沈み込むことをいとわぬ密度の高い音楽だった。演奏後、内田は涙ぐんでいたが、それが満場の聴衆にいっそうの感銘を与えた...(許光俊)

14:33+08:05+09:23=32:01(実測値)

シューマン:交響曲第4番ザンデルリング 指揮 ベルリン交響楽団
2002年5月19日 コンツェルトハウス、ベルリン(デジタル)

...スケルツォ楽章の弦楽器の力業は圧巻だったし、そこからフィナーレにかけての、弱音部分の緊張感の素晴らしかったこと。休符が生きていたこと。いかなる誇張もなく、極端なピアニシモというわけでもない響きが放つ輝きに、私は今自分はとんでもない音楽を前にしているのだという感慨にとらわれた。「交響曲第4番」はこれほどまでに整然と美しいものかと呆然とした...(許光俊)

11:58+04:38+05:47+10:19=32:42(実測値〜第1楽章,第4楽章呈示部反復)



許光俊の言いたい放題
→第12回 『ボンファデッリはイタリアの諏訪内晶子か?』
→第11回 『やっぱりすごいチェリビダッケ』
→第10回 『急げ!超必見、バレエ嫌いこそ見るべき最高の《白鳥の湖》』
→第9回 『《クラシックプレス》を悼む』
→第8回 『一直線の突撃演奏に大満足 バティス・エディション1』
→第7回 『ケーゲル最後の来日公演の衝撃演奏』
→第6回 『必見! 伝説の《ヴォツェック》名画がDVD化』
→第5回 『予想を超えた恐るべき《レニングラード》』
→第4回 『快楽主義のベートーヴェンにウキウキ』
→第3回 『謎の指揮者コブラ』
→第2回 『残酷と野蛮と官能の恐るべき《ローマの祭》』
→第1回 『謎の指揮者エンリケ・バティス』

その他、引用など
→『ケーゲルの《アルルの女》、他』
→『ヴァント、最後の演奏会〜ブルックナー《ロマンティック》、他』
→『ザンデルリング最後の演奏会 完全収録〜ベルリン交響楽団 記念BOX』


→許光俊の著作を検索

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