「2010年は誰の年か?」
2010年1月4日 (月)
連載 許光俊の言いたい放題 第172回「2010年は誰の年か?」
あいかわらずCDもコンサートも溢れている。世界中からおもしろそうな話題も聞こえてくる。だが、誰もが知るように、本当に注目すべきはごく一部だ。ズバリ、2010年以後、もっとも注目すべきもののひとつは、エリアフ・インバル指揮チェコ・フィルだろう。この人は、実力はあるのに、ポストに恵まれなかった人である。あちこちの名オーケストラに客演はしていても、常任指揮者、首席指揮者にはなかなかなれなかったのである。本人の性格に問題があるとも言われるが、私たちにとっても大きな損失だったことは否めない。
ところが、ここのところヴェネツィアのフェニーチェ劇場のポストを得たかと思ったら、何とチェコ・フィルの首席指揮者にまでなってしまった。おもしろいもので、一般的に言って、オーケストラは下手な指揮者と仕事をしたあとにはうまい指揮者を選びたがる。誰が下手とはあえて言わないが、インバルの指揮姿を見ていると、プロの仕事という感じがするのは確かだ。
昨秋、チェコ・フィルはブロムシュテットと来日公演を行った。インバルでなくて残念だったが、おそらくこの組み合わせは数年前から決まっていたのだろう。実は私はチェコあるいはプラハの暗い雰囲気が苦手で、一度行ったきり、二度と足が向かなかったのだが、インバル+チェコ・フィルとなれば、行かざるを得ない。2009年にはスクリャービンの交響曲第1番(最後、合唱が加わって芸術賛歌を歌うという、変な作品)がメインというコンサートを聴いた。やはり一流のオーケストラがキッチリと仕事をすると実に快い。各パートのうまさといい、全体のバランスやアンサンブルといい、さすがと思わせる洗練。ちなみに本場で聴くチェコ・フィルは、私が好きなステージ横の席で2000円。まあまあのホテルが2500円。おそらく世界でもっとも安く超一流のオーケストラが楽しめるのがプラハに違いないと思った。
ちなみに今シーズンは、まるで「日本のファンよ、おいで」と言っているがごとくのプログラムが組まれている。マーラー交響曲第10番(クック版)、ショスタコーヴィチ第11番、ブルックナー第7番、バルトーク「管弦楽のための協奏曲」と、どれも聴きたくなるものばかり、特に、チェコ・フィルの実力が爆発するであろうショスタコーヴィチやには、とりわけこの作曲家を好まない私ですらよだれが出るし、バルトークでもすばらしいアンサンブルが堪能できるだろう。音がいいライヴ録音を望みたいところだ。インバルも70歳を超えた。聴くなら今しかない。一刻も早い来日公演が期待される。
ところで、2009年に私がもっとも感激したコンサートは、何とこともあろうにベルナルト・ハイティンク指揮ロンドン交響楽団(本拠地での演奏)だった。ハイティンクは今までまったく興味がないどころか、嫌な思い出しかない指揮者。ロンドン交響楽団も、決して好きではないオーケストラ。にもかかわらず、呆然とするほかないような音楽を聴かされたのだ。何しろ、「あ! 天国が見えた!」とまで思ったのだから。コンサートは行ってみないとわからないのである。いよいよ最晩年にさしかかったハイティンク、チケットの高さが話題になったシカゴ響との来日公演には行かなかったけれど、もしかしたらできるだけ聴いておくべきかも。詳しいことは、別の機会に記そう。
幸い、ロンドン響との録音があれこれ出るようだ。心して聴いてみようと思っている。
今度の春にはサロネン指揮フィルハーモニア管の来日公演がある。この組み合わせも目下絶好調だ。昨シーズンは、「グレの歌」、「抒情交響曲」、「浄夜」、マーラーの交響曲第7番、それに今シーズンの「ヴォツェック」と、ここのところ狂ったように20世紀初頭の傑作を演奏した。「グレの歌」はCDにもなった。モーツァルトもベートーヴェンもブラームスもほとんど演奏しないのに名指揮者と呼ばれているとは、考えてみればサロネンも稀に見る例外的な存在である。
来日公演のプログラムもお得意の曲が並ぶ。今年上半期もっとも期待できるコンサートだ。「はげ山の一夜」や「中国の不思議な役人」は、CDで聴いても痛快な演奏が楽しめる。
(きょみつとし 音楽評論家、慶応大学教授)
ブロンズ・ゴールド・プラチナステージの場合です。
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