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Review List of 千葉のアリアドネ 

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  • 9 people agree with this review
     2017/12/10

    遅いではないかという叱責も、どうせならユニヴァーサルグループのものは全て入れて(魔笛、コジ、フィガロ、影の無い女の旧盤、指輪…20枚強の増加に収まろうか)との要望も、更にはリマスター等音質はどうかといった懸念も、ひとまずは括弧にいれて、「なすべきこと」をしたDGに対して★五つ。ベーム盤の「現役率」は高く、豪エロクワンスや他レーベルでの発売も加えれば、かなりのものが購入可能ではあるが、薔薇の新盤、ベルク(ベームがベルクと親交深く、その音楽の普及にいかに貢献し、自他ともに認めるベルク演奏の権威であったことなど、もう若い人たちはご存じないとことと思うが)等、ここのところ入手しづらくなっていたものもあり、本「全集」の発売は大いに歓迎されよう。だがこの「全集」の意義はそうした「利便」にだけあるのではないだろう。この70枚のラインナップを見る時、本全集は、ベームという一指揮者の活動をこえ、20世紀中葉から後半にかけての独墺系オペラの演奏を語るうえでの最重要資料の一つであると強く感じる。この時代は「歌手メインから指揮者主導へ」或いは「戦後のオペラの黄金時代」などとも言われるが、カラヤンらとともに時代を牽引したベームのこれら演奏が、単なる「ある曲の名演奏」ではなく、それぞれの作曲者の演奏、解釈を考える時に、常に(規範とまで言う人も少なからず存在した程)意識、参照される存在であったからである。私自身ラインンアップを見て、改めてその「重さ、深さ、拡がり」に圧倒される思いがした。もちろんベームの音楽は、遺産としてではなく、今も、そしてきっと将来も、多くの人の心に感動を与え続ける「生きた音楽」であり続けると思うけれど。

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  • 17 people agree with this review
     2016/10/02

    熱心なファンにとっても、音の悪い少数のプライヴェート盤しか存在しない60年代のベームのブルックナーは霧の彼方であった。50年近く前の名演を往時のベルリンの聴衆と同様に聞けることは望外の喜びであり、まずは関係者に深甚の謝意を表したい。比較的近い時期のベーム、BPOのブルックナー(7番)につき吉田秀和氏は次の様に述べている〔「ヨーロッパの響き、ヨーロッパの姿」中公文庫1988年P263-265、プラハの春(1968)から3年半との記述から71年秋と推測される(同時期のプライベート盤もある)〕。「私はベームのブルックナーがこれほどまでにすぐれたものとは知らなかった。(中略)特に各声部が透明な動きと柔らかな響きとで、−つまりヨッフムのオルガンみたいな厚ぼったく重なり合った響きの塊でなくて―きいていてよくわかることと、それでいて、あのブルックナー独特のものすごく長くて、重いものをひきずるようなクレッシェンドが完全に実現されているのと、この二つのものが矛盾なく、双方きちんと出てくるので、感心してしまった。(中略)〔緩徐楽章で〕オーケストラと指揮者の呼吸が、水も洩らさぬようぴったり息があったままに、呼吸のように、小さなふくらみとへこみの運動を繰り返しながら、長い長い坂をのぼって、クライマックスに到達する。そこには、優れた演奏であると同時に、精神の尊厳の勝利とでもいいたくなるような圧倒的で絶対的なものがあった」。長い引用をしたが、これは、当8番の演奏にも-8番故剛毅なところもあるものの-そのまま当てはまるのではないだろうか〔ベームの8番ではこの演奏に限らず第3楽章(アダージオ)が特に素晴らしいと私は思う〕。ベームの8番は総体的にテンポが速めで最晩年にも「減速」しなかった〔VPOのセッション録音のみ80分台、当盤74分、BRSO(71)76分、ケルン放響(74)73分、最速はチュ-リッヒト-ンハレ管(78)の72分台〕。特に第二楽章が速めなのが特徴である。「ブルックナー嫌いにも理解しやすいブルックナー」との噂もあるベームの「ブル8」を皆さんはどうお聞きになるだろうか。4番、5番の初録音(1936)、またアメリカでの普及にも情熱をかけたにもかかわらず、70年の3番迄ステレオ録音の機会に恵まれなかったベーム(R.オズボーンによれば、マーラー同様、ブルックナーの研究家でもあったデリック・クックは大変これを惜しんだとういう-ライナーノーツより)、彼を「ブルックナー指揮者」と呼ぶかはとにかくとして、まだまだ彼のブルックナーを聴きたいと思う。NHKで放送された74.5.26の8番VPOライブ(確か楽友協会の行事でのベームのスピーチも放送されたと思う)なども是非とも発掘をお願いしたい。

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  • 8 people agree with this review
     2016/10/02

    没後すでに35年。1/3世紀を超えたというのに、こうしてまた60年代の元気なベームの演奏に接することができ、関係者に対し感謝の念に堪えない。同時発売のブルックナーの方が注目度が高いようだが、こちらもBPOとのドイツ的で、精気に溢れた素晴らしい名演揃いである。ベートーヴェンの2番は晩年ベームが特に好んだ曲で、VPOとのセッション(72)以外に、正規盤だけでも日本公演を含め3種のライブが知られている(演奏時間当盤34分22秒、72VPO35分8秒、78年BRSO34分17秒-老齢を感じさせない素晴しいライブ、80年ザルツブルクVPO37分58秒、80年日本公演VPO36分32秒)。3番と2番の飛躍より1番と2番の差が大きいと語っていたベームの言葉通り、曲の大きさを感じさせる。リズムの弾力性はやはり60年代のベームで、往時のBPO(ベームが指揮するとゲルマン魂が顔を出すなどと言われたものだ)が相手ということもあり、がっしりとした構築性と推進力が表に出る。しかし一方2楽章を中心に「歌」の要素にもこと欠かない。新たな名盤登場と言えるだろう(VPO盤の「歌」と「流れ」の魅力にも抗しがたいものがあるが)。モーツァルトの34番はBPOとのセッション録音(66)とよく似た感じだが、やはり表情、リズムの精彩が上回り、凛として格調高い「ベームのモーツァルト」の魅力横溢。曲が一段レヴェルアップしたかと思わせる。火の鳥は3大バレエでは唯一晩年のベームがしばしば採りあげた曲だが、解釈そのものはVPO日本公演(75)と変わらない(ドイツ系指揮者が振る国民楽派交響詩の感)。演奏時間はVPO盤と63年のケルン放響ライブの中間に位置する。迫力では当盤が勝り、情緒では(筆者は実演を聴いたので思い入れがはいっていようが)VPO盤が勝ると思う。3曲聴き終えて、大曲を取り上げている訳ではないのに、音楽的充実度は極めて高い。聴衆もさぞや満足であったろう。TESTAMENTさんには続編を是非お願いしたい。60年代も勿論、ベームのBPOライブでは70年代にも素晴らしいものが沢山放送された。ファン一同お待ちしています。(追記:当盤の商品説明には今日現在(10月2日)ベームのザツルブルク音楽祭の初登場が1956年との記載があるがこれは誤り。R.オズボーン氏のライナーノーツを誤解したのではないかと思われるが、初登場は1938年(自叙伝「回想のロンド」他)であり、録音でも記念碑的な47年のアラベラ等が存在する。訂正をお願いしたい。)

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     2016/08/28

    知・情・意のバランスの良い魅力的なバッハ。ミュンヘン在住の芸大卒ピアニスト、未来(みく)ニシモト-ノイベルト女史の演奏、今回初めて聴く。冒頭フランス組曲2番、アルマンド、ややゆったりと、しっとりした表情で始まる。叙情的な演奏かと思いきや、次第に構成感の優れた演奏ではないかと思い始める。低音の充実と各声部の絡み合いの明確さ、そして凛として乱れない拍節感が良いのであろう。バッハの音楽がしっかりと見えてくる。気張っているわけではないのだが、十分な量感と大きさを感じることができる。2番、6番とも大いに気にいった。第1番冒頭のアルマンドなどは、もっと流麗な歌い回しを求める方もいようが、これがこの演奏家の持ち味かなとも思う。既にフランス組曲では5番の録音もあるようだが、是非3番、4番もあわせ聴いてみたい。ゴールドベルクなどではどのような演奏をするのだろうか。メンデルスゾーンの曲も安易にロマンを歌うのではなく、「ドイツ」を、そしバッハとの繋がりを感じさせる充実の演奏。ご一聴をお勧めする。

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  • 18 people agree with this review
     2016/01/04

    プライヴェート盤により熱心なベームファンには知る人も多かった演奏と言うが、私は未聴。我が家には正月2日に届いたが今年の初めを大きな感動に包んでくれた。正規盤として世に出してくれた全ての関係者に感謝したい。最も聴きたかったのは新世界。木管がオンにすぎ、ややざらつきも感じる録音だが、演奏の特徴をかえって鮮明にしているかもしれない。80年11月録音。翌年8月ベームは生涯を終えている。そうしたことが信じがたいほど気力の充実した、また強い「思い」を感じさせる演奏だ。1楽章冒頭から木管の強い表情、ティンパニの強打、えぐるような低弦の響き。2楽章はVPO盤も情感豊かな美しい演奏であったが、思いの深さでは当盤が上回る。確かにオケのコントロールは甘くなっているところがあるが、それを補って余りあるのが楽員たちの(演奏ミスも少々あるが)強い共感に満ちた大熱演である。彼らの思いなくしてこの堂々として格調高く、そして哀切極まりない名演は生まれなかったに違いない。彼らもまた、9月の来日を迎えた日本の聴衆と同じく、巨匠との演奏はこれが最後との想いがあったのであろうか。76年のブラームスとモーツァルト29番はそれぞれ日本公演の1年後、1年前にあたり演奏スタイルは非常によく似ている。ベームがまだまだ元気だったことを示す極めて充実した演奏で、VPOでなくてもベームがきちんと自分の音楽を展開していることを示す。むしろ互いに慣れているVPOでない分、自分が振らなくてはという意識があるのか、音楽の推進力という面では上まわっている感もある。録音はホールも違うせいかよく言えば柔らかい音になっている。78年のベートーヴェンは73年のバイエルン放響ライブと80年VPOライブ(ザルツブルク、東京)の中間の時期にあたり、テンポなども両者の真ん中に位置するが、私としては推進力の横溢した73年盤を推したい(4楽章終盤の追い込みが素晴らしい。映像だが64年インスブルックライブも是非ご覧いただきたい)。ベームの「新盤」が次々と「発掘」され、往時を知らないファンと一緒に巨匠の音楽に新たな思いで接することができるのは喜びに絶えない。75年1月30日のブラームス交2(BPO)、76年8月11日の英雄の生涯(SKDザルツブルクライブ)等、名演は知られているだけでもまだまだ沢山ある。是非今後も各社にリリースを続けていただきたい。

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  • 18 people agree with this review
     2015/04/30

    企画としては幾分中途半端な感もあるが、DG本体の発売であり、今後への期待を込め☆五つ。コレクターズエディションに入っているベートーヴェン、ブラームスの交響曲全集、モーツァルトのセレナーデ・協奏曲集をはずしたのは解らないではないが、ロングセラーであるピーターと狼が含まれないのは残念。ポリーニ、ギレリスとの名演も入っていない。だが今回の発売の中には内外とも長く入手不可だったシューマンの4番(実は私もこの盤のみは所有していない)、不思議と?ロングセラーを続けながら最近の再発では4番のみだったチャイコフスキー、国内盤、海外盤両方買わないと全曲揃わないワーグナーのようなものあり、発売自体は大変喜ばしい。これで音の改善があるというのであれば、クラウスの書きおろしの解説や貴重な写真もあるということだから、私の様なものでも手が出てしまうのだが、そこのところはどうなのだろうか。さて演奏だが70年代のセッション録音のベームは・・などという風評に惑わされずにじっくりとお聞きいただければと思う。確かにライブのSKDとのシューベルトの9番など、いったい何歳の時の録音かと思わせる溌剌とした演奏で数あるベームのグレート中最高という人も多い。しかしイゾルデの愛の死のようにバイロイトでの演奏とは異なった彼岸への浄化を強く感じさせる演奏にも深く感じさせるものがある。ハイドン、モーツァルトの滋味深さ。ブルックナーの純音楽的な建築美。さらに最後の録音となった第九では、一音一音にこめたベームの執念が心を動かす。ヴェニアスの3つの壮年期録音集、ドキュメントから出たシュトラウスのオペラの二つのボックッセットと、忘れられる筈だったベームの音楽が非常に入手しやすい形で世に出され、大変な好評を得ていることは、HMVをご覧の方はよくご存じであろう。これまた大好評であったイタリア・ユニバーサルから出た22枚組の交響曲集でベームの偉大さをあらためて認識された方も多いことと思う。DGの今回の発売もこうした流れを見てのことかどうかはよくわからないが、今後まず成すべきことは、オペラの分野でのベームの貴重極まりない遺産を最良の形で、現在の音楽ファンそして後世に伝えていくことだ。是非ナンバーワン、クラシックレーベルの名に恥じない仕事をしていただきたい。

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  • 9 people agree with this review
     2015/02/01

    やりますね。ヴェニアスさん。第一集が出たとき、せっかくならあれもと思わざるを得なかった、今も多くの音楽ファンの心を掴んでつかんでやまないブラームスの2番、ミサソレムニス、レクイエムといった名盤中の名盤が全て入り、どれか一つだけでも購入の価値ありなのに、歴史的なブルックナー(1936年録音の4番、5番は初の全曲録音とされる)を加えて、豪華メンバーの最初の第九まで入ってこのお値段。1枚、1枚買い集め、オークションで競り落とし何倍かのコスト、時間をかけて集めてきた私には羨ましい限り。ここまでやるなら、戦前のドレスデンでのR.シュトラウスの録音もなどと考えてしまいますが、それは高望みというものでしょう。ブルックナーですが4番、5番の録音状態はこの時期のものとしてはかなり聴き易く(私は4番はDocuments版、5番はZYX盤を所有)
    改訂版全盛の時代に出たばかりのハース版を引っ提げて録音に臨んだ若き(当時42才前後)ベームの清新な音楽づくりがよく解ります。全曲の見通しの良さ、構造の堅固さはこの時点から明確。この時代のロマン主義の演奏とは一線を画し、早めのテンポで颯爽とまとめあげた演奏は魅力的で現代にも通じるものと考えます(一方43年のVPOの7番は第二楽章が極めてゆっくりと聞きます。私が持っている44年SKDもとても遅いのですが)。第二集だけでも、第一集と合わせればなおさら、ベームの足跡と偉大さ、彼の原点そして長いキャリアの中で、何が変わり、何が変わらなかったのかがご理解いただけるセットと思います。是非ご一聴をお勧めします。

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  • 1 people agree with this review
     2014/09/21

    同時期の8番が手を替え品を替え高音質CDが出されるのに、地味な扱いに甘んじてきた当録音が、久し振りに高音質化されて国内盤で登場したのは大変結構なこと。SHM-CD化で音質は大分改善されたと書きたいのですが、私の場合比較対象が84年のCD。90年代の国内盤やDGのGALLERIAシリーズ盤(94年発売で現役)との比較ではどうなのでしょうか。ベームの「(ロマン主義的)重厚長大型ブルックナー」とは一線と画した、純音楽的アプローチの真価は、VPOの熟成された響きがより鮮明になって、音楽の運びの委細、密度がはっきりすることにより、益々明らかになったと思います。何度となく聞いている演奏なのに、3回も聴き直してしまいました。日本公演でも是非取り上げて欲しかったとつくづく思います。それにしてもこのCDの帯の文言は何ですか。「ドイツ系音楽を主なレパートリーとしてきたベーム。ブルックナーを本格的に取り上げたのは1970年頃からで、録音にまで昇華したものは4曲だけでした」。我々の世代なら当たり前に知っていることですが、ベームは1936年にブルックナーの交4.5の全曲録音(世界初とされる。改訂版全盛期にハース原典版をひっさげて!)を成し遂げた人。ワグネリアンとしてスタートしたベームは当然ブルックナー演奏にも熱心で、ブルックナー協会からのメダルも受けています(カール・ベーム「回想のロンド」93-97ページ、白水社1970)。このうち4番は当hmvを見ればお判りのように立派な現役盤ではありませんか(DOCUMENTSのBOXものに所収)。一体商品のチェック体制はどうなっているのでしょうか。

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  • 16 people agree with this review
     2014/09/07

    何度も書いてきたが、21世紀には忘れられるなどという輩の発言をよそに、ベーム盤の現役率は高く、壮年期の1950年代(全盛期だとする人も多い)の名盤についてもここ数年再販が続いて、状況は改善されてきた。それでも当サイトでの評価も高いベートーヴェン交5旧盤のように入手不可のものもあり、このセットの登場は大いに歓迎される(だが何故か著名なブラームス交2が無いのは臥龍点睛を欠く感がある−国内盤は入手可能だが)。音の状態も良いことを期待したい(モノラルでも良質の原盤が多いので)。演奏はいずれも堅固な構成と推進力、歌う心とのバランスが素晴らしく(オケによって重心がやや相違するところがまた興味深い)、後年の優秀なステレオ録音があるものでも、壮年期の活力あふれるこの年代の録音を聞かずして、ベームを語るわけにはいかない。ベームの音楽を愛好してきた方は勿論、ベームは鈍重などという誤った印象をお持ちの方にこそ是非聞いていただきたいと思う。ここまで書いてきてつくづく思うのだが本来こうした企画はDGから出るべきではなかろうか。イタリアユニバーサルから出た交響曲集、メンブランから出たシュトラウスのオペラシリーズ(余談だが10月には既出のエレクトラに続き、サロメ、薔薇の騎士(旧)がエロクワンスオーストラリアから再発になる-概して音の良いレーベルなのでこちらも気になる)、がどれだけ支持を受けているかを見れば、好楽家がベームに寄せる思いがわかろうかというもの。ブラームス交2、ミサ・ソレムニス、モツレク、バックハウスやグルダとの協奏曲を含む50年代完全版(オペラは別途)を丁寧なリマスタリング、きちんとした解説付きで発売すれば、たとえ高価であっても私は躊躇なく買う。

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  • 4 people agree with this review
     2013/12/10

    全盛期のベームの素晴らしさ、ライブの面白さを十分に堪能できるセット。音質は62年にしては、良いとは言いかねるが、音楽の鑑賞には差しつかえないのではなかろうか。40番は定盤のDG盤(BPO)とほぼ同時期にあたる。第二楽章迄はDG盤よりゆっくりしているが、晩年の一部の演奏と違い、遅さがリズムの切れの悪さに繋がらない。構造的で推進力があり、ある種硬質でもあるDG盤に較べると、土台は同様にしっかりしているが、歌い回しはより大きく、しみじみとした情感の豊かさを感じさせる。終楽章は逆にDG盤よりも速いテンポで締めくくる。64年のインスブルックライブ(VPO)ともまた違った味わいだ。亡き子はセッション録音(DG)の前年にあたる。ディースカウは自叙伝の中で、BPOの卓越した技術、ベームの格の違う指揮を得て、難問だらけのこの歌曲での課題達成に、ゲネプロの時から涙ぐんでしまったと記しているが、その感動の息吹はこのライブ盤により明らかではないだろうか。DG盤より声はONに捉えられている。ツァラも素晴らしい演奏だ。セッション録音(58年DG)に比べテンポはやや早目で緩急はより自在。あくまで自然な流動の中で、彫りの深く大きなクライマックスが形成されいく。音楽の立体感、表情のみずみずしさはDG盤を上回り(最新のSHM-CD盤は私は聞いていないのだが)、シュバルベのソロもセッション録音に比べずっと伸び伸びと歌い上げている。ベームファンはもとよりシュトラウスファン必聴の演奏。それにしても何と音楽的密度の濃い一夜の宴なのだろう。Testamentはこれまでベームを殆どとりあげてこなかったが、これを皮切りにどんどん取り上げて欲しい。BPOとの演奏は70年代にも素晴らしいものがいくつもあった(私たちの世代はFM放送で幾度も聞くことができたのだが)。一回一回の演奏に目を離せないベームのライブの素晴らしさを、是非今に蘇らせて欲しい。

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  • 11 people agree with this review
     2013/11/09

    好企画に対し☆5つ。Boxものならもう少し「売れ筋」の作品を集めてと思われるかもしれないが、DGでCD廃盤扱中の「薔薇(旧)」、「アラベラ」(両者ともダウンロードは可能)が手に入り、「無口」、「カプリッチョ」を含めてこの価格というのは大変喜ばしい(企画としては「薔薇」より「ダフネ」をいれた方が、シュトラウスの後半戦、ベーム初演の二作品を含む両者の協力の時代ということでより筋が通ったかもしれないが)。戦後復活第一回のザルツブルク音楽祭の「アラベラ」、センショーションを巻き起こしたといわれる「無口」の「復活」公演といった記念碑的公演、良き時代のウィーン国立歌劇場の雰囲気充溢の「カプリッチョ」、ドレスデンの響きが何とも魅力的な「薔薇」、長く伝えたい演奏ばかりである。全てに共通する綺羅星のような歌手陣も大きな魅力。古い音源をMembranがどう料理したか(期待と不安が交錯)、楽しみに待つことにしよう。

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  • 20 people agree with this review
     2013/04/17

    2007年には「魔弾の射手」(72)、2008年なんとあのバイロイトの「マイスタージンガー」(68)、2009年にはザルツブルクのバックハウスとのブラームス(68)、「マクベス」(70)、2010年はウィーン国立オペラ再開時の歴史的「フィデリオ」(55)、没後30年にあたった2011年には綺羅星の様な歌手陣を擁した「アリアドネ」(76)と、ベームの巨匠たる所以を存分に現代に示す超貴重録音をリリースし続けてきたOrfeo。今回少し間が空いて心配していたところ、今回もやってくれましたね。待望のローエングリン。以前ゴールデンメロドラムで出ていたのと同じ65年5月16日のプレミエの録音のようですが、同じOrfeoから出ているルートヴィヒのウィーン国立オペラライブ名演集(C758083D)に23分ほど収録されており(この部分だけでも指揮も、ルートヴィヒも素晴らしい)、全曲を聞いてみたい思い断ち難いところへこの朗報。感謝の念に絶えません。ベームとウィーン国立オペラのワーグナー全曲盤(正規盤)はこれまで存在せず、バイロイトの演奏に感嘆しつつも、ベームのワーグナーの「半分しか聞いていない」という思いが強かっただけに本当に楽しみです。次は是非同じ65年(12月16日プレミエ)の「エレクトラ」(ニルソン、リザネック他)をお願いします(この組み合わせの正規盤もありません)。是非全盛期のベームをもっともっと聞かせてください。ベームに限らずこの会社は好楽家の心に響く本当に良い企画が沢山ありますね。本来全曲聞いてから星印はつけるべきでしょうが、本企画への感謝と、会社の姿勢に心からエールを送りたく☆5つとさせていただきます。

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     2013/04/14

    ペレアスとメリザンド、この不思議な象徴の世界をロバート・ウィルソンは何と美しく、哀しく描き出すのだろう。舞台上に被造物は殆んど無い。青を貴重とした照明、パントマイムにも似た(能に似たという人もいる)様式化され、切り詰められた出演者の所作、表情。それらが音楽と切り離しがたく結びついて観る者に深い感銘を呼び起こす(W・ワーグナーとの親近性を指摘した方もいるようだがどうなのだろうか)。ロバート・ウィルソンは演劇が專門でその道の大家と聞く。が、何と深く音楽(オペラ)を理解し、愛しているのだ゙ろう。ここには無意味でこれみよがしが自己主張も、奇怪な読み替えも無い。そして何よりこの人の演出では、音楽が、鳴っている音以上によく聴こえて(見えて)くる。当公演では美貌のツァラゴワが起用されているが、冒頭ゴローと出会う場面で、彼女が白い衣装で寡黙に横たわっているのを見ただけで、アルケル王までも虜にするその魅力が理解されるのではなかろうか。ドュクーも好演。マスネからR.シュトラウス迄守備範囲も広く、欧米歌劇場で引っ張りだこという期待のジョルダン。カラヤンやブーレーズほどのインパクトはまだ感じられないが、明晰にきちんと纏めていると言えるだろう。ブーレーズの映像も大変素晴らしいが(最初にストーリーを追うにはブーレーズのほうが好適と思う)、ペレアス必見の映像として強くお薦めしたい。つい最近完売になってしまったグルックのオルフェオ(ガーディナー指揮)、こちらも素晴らしかった(コジェナーの熱唱も含め)。是非復活をお願いしたい。

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     2013/04/13

    3月17日、私はNHKホールの3階前部にいた。「レオノーレ3番」の終結部にまず興奮。喝采のあと、楽員の補強ののちすぐに「火の鳥」が始まった。ベームとストラヴィンスキー、セッション録音は1枚も無い。戦前ダルムシタット監督時代(1927-1931)には前衛の旗手としてならしたベーム(ベルクとの交流はこの時からだ)、実に70年代初頭(この演奏の数年前)まで世界的権威としてヴォツェックの指揮を執っている。しかし他は、シェーンベルクのペレアス(VPOライブ、DG)、ケルン放送響との火の鳥(63年ライブAudite)がある位ではないだろうか。火の鳥は海賊盤も数種あるから、案外お気に入りの曲だったのかもしれない。「私には古典の依頼しかこないんだよ」と本人は言っていたそうだが、この選択「巨匠のひそやかな反抗では」と推測したのは、巨匠と親しかった真鍋圭子女史である。序奏はずっしりとした面持ちで始まった。音色は豊かだが、原色的な鋭さは無い。王女たちのロンド。ここは良かったなあ、各ソロの素晴らしさ、素朴でしみじみとした郷愁にあふれて。カスチェイの凶悪な踊り、NHKの3階でもビンビン音が上がって来たが、大迫力であっても決して絶叫にはならない。子守唄も美しかったが、まさに大団円といわんばかりの終曲の圧倒的盛り上がりには感動した。前衛というより、国民学派の交響詩を聞くような感がしたのは事実だが、今CDとして改めて聴いても、全曲を貫く格調の高さ、そして温かさに驚く(これに比べるとよくある手練手管の演奏があざとく聞こえてしまう)。前衛(といってももう作曲後百年以上経つが)、バレエ音楽かくあるべしという方以外には是非お聞きいただきたい演奏だ。
    休憩後のブラームス。会場にいた私達も、ラジオの前で釘付けになっていた多くの音楽ファンにも驚愕の45分間が荘重に開始された。 多くのことが語られてきたこの大演奏について私が付け加えることは無いのだが、第二楽章、あのヘッツェルのソロ。第四楽章、荘重な開始のあと、ウィンナホルンが朗々とあのNHKホールに鳴り響き、主題が晴朗に弦楽で奏でられた瞬間のこと。終盤音楽の密度が益々増していき、崇高で輝かしいフィナーレに大興奮したことなど38年経った今でも鮮明に記憶に焼きついている。今改めて聴き直しても、全体の構成感をしっかりと押さえつつ、VPOの豊かな表現力を最大限引き出したこの演奏は、この曲全ての演奏のうちで最高レヴェルにあるものと断言して憚らない。表現は豊かでも小賢しい演出などは何も無い。あくまで自然な流れの中で、あるべきものがあるべきところにあり、我々を深くブラームスの世界へ誘う〔当然一発ライブだから管楽器の細かいミスなどもあるが-ウィーン式の彼ら独自の楽器は音色の代償に演奏は難しい-こうしたことを論って批評したつもりの今日の批評家風情は一体何を考えているのだろう〕。
    興奮さめやらぬところで「美しき青きドナウ」のプレゼント。この後何分拍手が続いたのだろうか。団員も去ったあとベームは何回出てきてくれたのだろうか(DVDでは団員がひくところで終わってしまうが)。本当に凄い演奏会だった。翌18日私は疲れて1日寝込んでしまった。翌々日のシューベルト(3月19日)がまた凄かった。

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     2013/04/07

    3月19日、ベーム、VPOは、「未完成」で絶望の深淵と天上の美を感じさせる孤高の大演奏で多大な感銘を与えた後、大曲「グレート」を披露した。この日の演奏が17日のブラームスとともに、この時の来日ひいては、ベーム、VPOの評価を決定づけたと言って良い。第一楽章、ホルンが冒頭の序奏をしみじみと奏で出すところからこのコンビの世界に取り込まれてしまう。管楽器の情緒豊かなソロ、圧倒的な全合奏で、スケール大きく展開(未完成同様強弱の振幅が大きい)。第一主題にいくあたりからはもう少し加速してもと思ったが〔全体にこの時のグレートは73年の映像(VPO)、79年のライブ(SKD)に比べてゆったりしたテンポが採られている。ベームはあの巨大ホールの響きをどう計算にいれてこの日のテンポを設定したのだろうか。またBPO盤(63)の精妙さに比べると自然な流れに重きをおいていると思う)、終結部では誠に堂々と曲が締めくくられる。さて圧巻の第一は第二楽章。オーボエが優しく主題を吹き出せば、既にこの楽章の虜。短調と長調が頻繁に交錯するが、そうした部分の取り扱いの素晴らしさ(シューベルトの音楽のキモは転調にありと言われるが、転調の扱いの旨さが、旋律の歌い方のうまさとともに、ベームをして最高のシューベルティアンと言わせしめた一つの理由ではなかろうか。こうした扱いで曲想は深く、また構造的には、変化がありつつも堅固で安定したものになっていく)。デリケートな弱音部と底力のある全奏繰り返しを重ねるうちに、音楽は大きく、大きく高潮し、ついにはクライマックスのカタストロフィーを迎える。その後の優しさと気品。この楽章もベームの各種演奏のうちで最もゆっくりなものに属するが、緩んだ感じは微塵も無く、ただただ音楽に懐深く包まれてしまう(当時も今も私は最後のところでもう終わりかと思ってしまう)。第三楽章はゆっくりなテンポが幾分マイナスになっている〔この部分余り早いのは私は好きではないのだが(牧歌的な舞曲の雰囲気が減殺されてしまうので)〕。録音のせいで特に低音のリズムの克明さが明確でないため、そうした感が助長されてしまっている。これに較べ第四楽章は全く圧倒的だ(圧巻の第二!)。ここも他の演奏にくらべれば幾分演奏時間が長いのだが、全く気にならない。確信に満ちた運びからくる滔々たる歌の奔流。転調と並んで反復もまたシューベルトの特質だが、この徹底した音型、リズムの反復が、少しも苦にならないどころか、変化をとげつつ繰り返し押し寄せる大海の波濤のように我々に押し寄せてくる。演奏は終盤益々熱を帯び巨大なスケールを示すが、その音楽は格調が高いという次元を超え、もはや崇高ですらある。現場で聴かれた方の感銘、興奮は熱狂的な拍手が如実に物語っている(これを当時ベームは人気があったからなどと書いている評論家がいたが勘違い甚だしい。演奏が凄いから熱狂したのだ)。この後ベームは渾身の力を振り絞って、何とマイスタージンガーを聴衆にプレゼントした。演奏の素晴らしさは項を別にするが、聴衆の感謝と感激はもはや言葉にならなかったのではないか。まさに、ベームと、VPOと、聴衆が一体となった稀有の演奏会だった。
    こんなに素晴らしい演奏のレヴューの最後に叱責の言を書かなくてはならない。当盤のジャケット裏表紙、演奏時間の表記が全く出鱈目である〔第一楽章(誤)12分06秒→(正)14分55秒、第二楽章(誤)12分06秒→(正)14分25秒、第三楽章(誤)14分51秒→12分07秒、第四楽章(誤)14分24秒→(正)12分23秒、正の時間は旧F35G20017の値とした〕。余りにも低レベルのミスで悲しいとうより怒りを禁じえない。演奏家、リスナーに失礼なのは言を待たないが、仕事にプロとしての責任、プライドということが微塵も感じられない。一体どうなっているのだろうか。

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