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からっ風野郎 さんのレビュー一覧 

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     2021/07/04

    かつてマルクスは、資本主義を「労働の生き血を求める吸血鬼」に例えたが、グローバル資本主義化の進んだ現代、この吸血鬼はますます肥大化し、より多くの生き血を求めている。
    『ザ・トゥルー・コスト』はファストファッション産業における、いわゆる「南北問題」を扱ったドキュメンタリー映画である。先進国の行き過ぎた資本主義・物質主義によって搾取される発展途上国(グローバルサウス)の低賃金・長時間労働、劣悪な環境で働く労働者たち。2013年バングラデシュで起きた5つの縫製工場が入った商業ビル「ラナ・プラザ」崩壊事故で、1000人以上の死者が出たのは記憶に新しい。衣服労働者が、先進国のための安価な衣服の代償を払わされたのだ。「これらの服は私たちの血でできています」バングラデシュの縫製工場で働く女性の言葉が重く響く。
    ファストファッションはわれわれ日本人にも非常に身近な存在である。たとえば今あなたが着ているTシャツのタグを見れば、Made in VietnamやBangladeshと書いてあるだろう。安さや利便性だけを考えて、その裏側にある「本当のコスト」に思いが至らないならば、マルクスのいう吸血鬼はわれわれ自身にほかならない。

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     2021/04/25

     入管問題に関するNHKのドキュメンタリー「エリザベス この世界に愛を」を観た。入管センターでの外国人の自殺やハンガーストライキによる餓死など衝撃的な内容であった。より詳しく知りたいと思い、この『ルポ入管』を手に取ったのである。副題に「絶望の外国人収容施設」とあるが、これは決して大げさな表現ではない。入管職員による肉体的精神的暴力、病気でも医者に見せもしない医療放置、長期化する無期限収容、治安維持法に規定された予防拘禁よりも酷いとさえ言われる非人道性。そこには基本的人権など微塵もない。国連もこの「人権侵害」に懸念を表明しているが、それも無視して改善しようとさえしない。これが、この、現代の、(一応)文明国である日本で起きている現実である。
     日本の人権意識の低さは今に始まったことではないが、外国人政策にはそれが如実にあらわれている。日本は難民条約に加入しているにもかかわらず、難民認定率がG7の中でも著しく低い(近年は1%未満)。この「排外主義」の一方で、人手不足を補うために、現代の「奴隷制」とまで呼ばれる技能実習制度によって、労働力としての外国人を次々受け入れている。こうした歪んだ政策を続けていれば日本はどうなるだろうか。
     本書は優れたルポルタージュであるが、入管施設という密室での取材の苦労は想像に難くない。秘密主義や情報非公開に何度も涙をのんだという。「民主主義とは公平性、平等性を原則にしており、それを担保するのが透明性、公開性である。」その意味では「入管問題とは民主主義の問題でもある。」ゆえに「入管問題は入管当局や外国人の問題ではなくて、われわれ日本人の問題」とも言えるのである。
     多くの日本人に、まずはこの現実を知ってほしい。

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     2021/03/21

    17世紀フランスのモラリスト貴族ラ・ロシュフコーの箴言集。箴言とは…説明するよりもいくつか引用してみよう。
    「人がよいことをするのは、多くの場合、罰せられずに悪いことができるようになるためである。」
    「称賛を固辞するのは、もう一度褒められたいという魂胆からである。」
    「財産などいらないという人はすいぶんいるが、それを他者に与えようという人はほとんどいない。」
    「親友が逆境に陥ったとき、われわれはいつも、なんとなく浮き浮きした気分になる。」
    心を見透かされているような辛辣な皮肉。ラ・ロシュフコーの比類なき人間観察力によって暴き出される人間性の真実だ。
    「われわれが苦心惨憺しているのは、幸福になるためというよりも、自分が幸福であると他人に思わせるためである。」
    SNSで承認欲求を満たすために、必死に自己アピールしている現代人の姿そのものだろう。自己愛に溺れ、虚栄心にまみれ、謙虚さを忘れた現代人にこそ、この300年以上も前に書かれた箴言が、より一層心に響いてくる。ニーチェや芥川龍之介も愛読したというこの書を、かばんに一冊、枕元に一冊、トイレに一冊、常に身近に置き、自己への戒めとするべし。
    「忠告ほど、人が気前よく与えるものはほかにない。」

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     2021/03/06

    フランスの社会学者デュルケームによる「社会学的」自殺論。デュルケームの社会学的方法とは、社会的な事実を客観的な「物」のように考察すること。ここでは自殺というきわめて人間的な行為を、統計的データなどをあげながら淡々と分析していく。自殺をいくつかのタイプに分類して論じているが、結局デュルケームは、自殺は個人の問題ではなく社会的原因であるという。さて我が日本は先進国でも自殺率が高い国である。若者の死因の第一位が自殺というのは悲しむべきことである。この原因が社会であるならば、社会を構成する我々日本人一人ひとりに責任があるということになるだろう。100年以上前に書かれたこの本は、今日から見れば時代遅れな部分もあるが、多くの示唆を含んでいる。社会的なつながりが希薄で、自殺が大きな社会問題である日本人にはとりわけ読む意義があるといえるだろう。

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