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東濃の古楽ファン さんのレビュー一覧 

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     2010/01/20

     このCDにはミラン・ムンツリンゲル指揮アルス・レディヴィヴァ合奏団とジャン−ピエール・ランパルによるバッハのフルート協奏曲が3曲収められている。BWV1055とされる協奏曲はしばしばオーボエ・ダ・モーレが,BWV1056とされる協奏曲はオーボエが,そしてBWV1059とされる協奏曲(偽作として取り上げられないことも多い。)はオルガンが,それぞれ独奏楽器として活躍するVersionとして復元演奏されている。
     申すまでもなく,これら協奏曲は,現存するライプツィヒ時代の「ハープシコード協奏曲群」を移調の上で復元している。失われたケーテン時代の原曲を求めて,ここで(と言っても,録音年月日はデータ記載もないので,定かではないが,録音スタイルと演奏様式,そしてムンツリンゲルの活躍時代からして1960年代であろう。),ムンツリンゲルは,上記の管楽器以外にフルートにて復元を試みている。
     フルート以外の管楽器,あるいはハープシコード協奏曲として,これらの協奏曲に耳をなじませている私達には,「フルートが独奏楽器」とは意外に思えたが,聴いてみての今はなるほどとうなずける。
     さて,ムンツリンゲルの解説は英文であるので,私が読んだ上でムンツリンゲルの主張をかみ砕いて繰り広げると次のようになる。
     BWV1056の第2楽章は,カンタータBWV156のソロオーボエのシンフォニアとして現存するが,最後の小節に着目することでフルートの音色とピッチに妥当な質感を与えることができる。BWV1055については,フルートの音域を保つことを念頭に,これまでのイ長調(オーボエ・ダ・モーレもハープシコードもイ長調として演奏される。)からハ長調として復元し,理論上も音感上もフルートが最も納得のいく独奏楽器だとしている。
     さらに,BWV1059は,これが最もカンタータとの関わりが深いとして注目した。BWV35の第1部の冒頭シンフォニア,それはオルガン通奏低音によって特徴付けられるが,楽器構成から,何らかの管楽器のための曲からの移調である,としている。
     そして,同じくBWV35のプレストの3拍子シンフォニア(このカンタータの第2部の冒頭を占める。)は協奏曲の終幕を飾るにふさわしい楽想である,と結論づけた。また,中間の緩徐楽章については,同じくBWV35の冒頭シンフォニアの直後のアルトアリアに由来するとして,有機的関連を指摘した。その上で,このアリアのシチリアーノ風リズムはバッハが中間楽章に好んで用いたとして,オルガン通奏低音形式から,原曲は管楽器のための協奏曲からの移調であり,前2曲との関係からもフルートを独奏とする協奏曲がふさわしい,とムンツリンゲルは結論づけたようである。
     そして,このCDの最後に付されたシンフォニアこそは,カンタータBWV209の冒頭のシンフォニアである。(注:これは,すぐにフルート協奏曲そのもののスタイルであると分かる。)オリジナルがフルート協奏曲であるにせよ,ないにせよ,バッハの歓喜に満ちた芸術スタイルの典型であるとして,ムンツリンゲルはアルバムの最後として選択したのである。
     「私達の今回の試みはバロック時代のフルート芸術の円熟味を提示したのみでなく,(それはもちろんバッハの原曲と思われる作品群に依るが…。)さらに,この偉大なる芸術家の作品の人柄のより深い理解と作品理解を深めることに役立ったと認識している。」とムンツリンゲルはライナーノーツを締めくくっている。
     もう40年も前に,ムンツリンゲルにより,このような画期的,かつ革新的な試みが行われていたことに,古楽ファンの1人として敬意を表したいと思う。

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  • 5人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2009/11/21

     これは1988年に日本コロムビアより発売されていた「マイ・フェイヴァリッツ2000」と同じCDでしょうか。もしもそうであればと言うことでしたためます。
     録音は1973年,ノートルダム・デ・ローズ教会です。当時はBWV1046,47,49とBWV1048,50,51の分売でした。
     録音は大変優秀でクリアそのもの,他のCDに比して記録レベルが高めで,澄んだ鏡のような印象です。私の装置(かなり前のPIONEER)でも,本当に目の前で直に演奏されている臨場感と音のふくらみ,各楽器の肌触りを感じます。ジャケットにはDENONとクレジットがありますので,PCM録音なのかなと思いますが,明記なしです。
     BWV1049は,普通ブロックフレーテで演奏されますが(あの1965年のイムジチでさえもそうです。),ここではランパルとマリオンのフルートがふくよかな調べで曲全体をおおいます。それはまるで天上より響き降りたまでの夢心地です。様々なスタイルのブランデンブルグ協奏曲を聞いて30年以上ですが,このようなBWV1049は,未だ経験したことがありません。ブロックフレーテや他のフルートのイメージとは全く違います。この一曲だけでも購入価値ありです。BWV1051では,アンヌ=マリー・ベッケンシュタイナーの控えめで知的なまでのクラヴサンが印象的です。これは通奏低音としても,全体にわたって感じます。
     ここには,1970年から80年にかけて発売された,パイヤール室内管弦楽団のあまたのバッハ,ヘンデル,ヴィヴァルディなどの古楽LP演奏を彷彿とさせる「エラート魂」が健在です。

    5人の方が、このレビューに「共感」しています。

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