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Review List of Q 

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  • 3 people agree with this review
     2024/07/15

    このCDはもしかしたらマイルストーンになるかもしれない。「交響曲第9番」はマーラー自身の初演はかなわなかった。「交響曲第9番」と「大地の歌」の初演はブルーノ=ワルターに任された、無論ワルターのレコードは大きな価値を持つものだけれど。特に「交響曲第9番」に関しては様々な解釈があるのではないか。大きく分けて「情念型」と「音楽的」に演奏するものと。もちろん中にはジュリーニのようにユニークな、しかしとても魅力的なものもあるのだけど。しかしこの録音のように、これほどまでに「生」に対する強烈な「あこがれ」・「讃歌」を突き付けるものを聴いたのはわたしは初めてである。このCDを聴いて思うのはまず全体に「夢見るような」雰囲気が感じられること。そして何より適切な、いや聴いて「だからこのテンポなんだ」と思わせること。それは極めて切実な、しかし幸福なものである。そしてやってくる第4楽章の澄み渡る情景…少し大げさに言えば「交響曲第9番」の聴き方さえ変わるのではないかとさえ思う。マーラー・アカデミー管弦楽団は見事な演奏。そしてフォン・シュタイネッカー!素晴らしい。まったく見事な演奏である。そして最大の賛辞はマーラーの「交響曲第9番」。この曲を聴けるのは喜びでしかない。

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     2023/09/09

    あれはもう30年以上前のことだろうか。当時在籍していた会社は夏休みがまとめて取れた会社だったのでその時持っていたバーンスタインのマーラーを時系列的に(映像録音問わず)聞いてみようと思った。10日ぐらいかかっただろうか。わたしにとってマーラーは一番共感できる作曲家であり(現在もそうだが)、バーンスタインのマーラーにとにかく夢中だった。あの時映像はレーザーディスクだった。聞き終わったとき強く思った。「バーンスタインで良かった」と。わたしにはバーンスタインのマーラーはマーラーのマーラーとしか聞こえない。マーラーの演奏は一つではないし(そもそも演奏が一つしかないなんてありえない)、またわたしのマーラーの聞き方も当時とは変化しているだろう。だがわたしは今でも思う。「バーンスタインで良かった」と。「あの時クラシック音楽を聴き始めたばかりの時夢中になって聞いた、その選択は間違っていなかった」と。稀代のマーラー指揮者の演奏が交響曲全曲映像で残っている意味は計り知れなく重い。マーラーについて少しでも興味があるなら必見である。

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     2023/07/28

    これもまたわたしにとってとても大切な録音。わたしに「ムラヴィンスキーの天才を教えてくれた」録音だから。わたしが最初にこのCDを購入したとき、このCDは決して高く評価されてはいなかった。ムラヴィンスキーの「未完成」のCDはむしろ他のほうが評価は高かった。これはウイーン音楽祭にムラヴィンスキーが参加したときの録音だが、録音状態はパッとしなかった。だけど最初に聴いた時、「未完成」の序奏が終わり一瞬の間の後主部が弦で奏でられたとき、首の後ろの産毛が総毛立った。ゾッとした。この人の知識の巨大さに。この演奏の凄さに。それまでもわたしはムラヴィンスキーはすごいと思っていた。あのチャイコフスキーには感心していた。だがあの瞬間わたしは本当の意味でムラヴィンスキーの天才を理解した。ムラヴィンスキーがいかに恐るべき指揮者であるか、そしてそもそも我々ごく普通の人間がムラヴィンスキーを語ることのむなしさを。

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     2023/07/21

    カール・シューリヒトのベートーヴェン交響曲第3番「英雄」はわたしにとって非常に思い入れのある録音である。わたしに19世紀生まれの演奏家と20世紀生まれの演奏家の違いを教えてくれた(特に第2楽章で)非常に大事な録音である。それからわたしは本当の意味で過去の演奏の凄さ、クラシック音楽の聴き方がわかってきたのだと思う。確かに今の録音技術の進化は素晴らしい。また、現在の演奏を聴くのも非常に大事だ。しかし過去の音・芸術を聴かないとしたら、それは大きな片手落ちと言わざるを得ないだろう。必要なのは常に問い続けることだ。安住することではないだろうから。

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     2023/04/25

    2022年クラウス・マケラは2回来日した。6.7月の東京都交響楽団と10月のパリ菅。わたしは都響の2回を聴いたがその時はプログラムが不思議だった。「これはどう考えても都響が本命だろう」と思った。今になって、特にこのCDを聴いて思った。「あ、こういうことね」と。これは各オーケストラの個性、特質を考えたプログラミングだったと。都響は名だたるマーラーオーケストラでありオーケストラの性能は非常に高いし、パリ菅は「火の鳥」「春の祭典」の初演オーケストラであり、パリはディアギレフの公演が開催された場所である。正直この2曲に関してはわたしはブーレーズのコロンビア録音が忘れられない。あれは本当に凄い録音だった。だがマケラもよくやったと思う。やはりマケラは理知的な指揮者だ。彼は決して意識を手放さない。そして「音を出すのをためらわない」。やはりこの若者は注目すべき指揮者である。

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     2023/02/05

    「ニューイヤーコンサートってやっぱりいいよなあ」というのが見ての感想。ウエルザー=メストはやはりいい指揮者だ。あの「間」の取り方、指揮しているときの表情、何よりあの楽しそうなしぐさ。素晴らしい指揮者だと思う。あまりこういうことは言うべきではないかもしれないけれど、やっぱり「違う」。伊達にオーストリア出身ではない。やはりしっかりした力を持っている人だと思う。いいものを見せていただきました。ウエルザー=メストは素晴らしい指揮者だ。

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     2022/12/09

    わたしが東京都交響楽団の年間会員になってから36年たった。年間会員になったきっかけは前年に聴いた若杉弘の「英雄」に驚かされたことと2月に聴いたメシアンの「トゥーランガラリーラ交響曲」(ピアノ独奏はミッシェル・ベロフ)が好印象だったので。わたしはこのケーゲルのブルックナーやマークのブルックナーは聞いていない。だがマークのベートーヴェンや若杉やベルティーニのマーラー、そして何よりフルネのフランス音楽を聴いている。このケーゲルの演奏はとても正直である。ケーゲルは原子霧や素朴な田舎者などというものには一顧だにしない。彼は自分の感じたそのままに音楽を奏でる。美しいと感じたそのままに、純粋に。そして楽員は必死にその音楽に食らいつき聴衆もまたあんぐりと口を開けたままというのが手に取るようにわかる。
    わたしは東京都交響楽団の年間会員になってよかったと心の底から思う。こんなに素晴らしい演奏が聴けるのだから。ブルックナーは決して素朴なだけではない。

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     2022/09/19

    フルトヴェングラーのブルックナーについて何を語ればいいのだろう?わたしにはこの演奏は「人間が演奏した」ものに聞こえる。第1、第3楽章の崇高さ。第2楽章の「人間の行為としての」演奏。ブルックナーには大きく言えば二つの演奏傾向があるように思える。「人間の行為としての」演奏とテンポをなるべく動かさず「崇高さを求める」演奏と。わたしがフルトヴェングラーに魅了されるのは「人間がいる」から。ただ演奏するだけでなくそこには「人間の行為として」、「届かないけれどどうしようもなく手を伸ばす」強烈な憧れ、それをわたしのような録音媒体を聴く者にも感じさせるから、わたしはフルトヴェングラーを聴く。
    以上のような経緯からわたしにはこの演奏は素晴らしい演奏に聞こえる。わたしにはこの演奏は「必聴」に思えるのだが。

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     2022/09/04

    聞き終えて溜息しか出てこない。ベルリンフィルはかつてはこんな素晴らしい音を出していたのだ、と。かつてはこんな素晴らしい演奏が聴けたのだと。1970、80年代ならば、録音がいいからと言えただろう。しかしこれほどのいい音で聞ける以上、もはやそれは言い訳にできはしない。かつては音楽をこんなに真剣に、そして切実に演奏した人がいたのだ。そしてそれを聞くことができた人がいる…。今2022年フルトヴェングラーどころかカラヤン時代もはるかかなた。そしてわたしはフルトヴェングラーに「強烈に」憧れる。わたしは残りの人生こんな素敵な時間をどれだけ経験できるのだろうか。

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  • 11 people agree with this review
     2022/04/03

    全てのクラシック音楽ファンに言いたい。「瞠目せよ。天才の誕生である」。わたしのような所謂「老境」に差し掛かった者の人生の楽しみに「若い才能との出会い」というものがある。例えば先年まで東京都交響楽団の首席客演指揮者を勤めていたヤクブ・フルシャ。彼は素晴らしい指揮者だ。
    わたしは彼のコンサートに幸いにも多く接する事ができたが、中でもマーラーの交響曲第1番は驚くべきコンサートだった。わたしはあれを聴いてフルシャが「驚くべき」指揮者だと確信した。そして今また新しい才能に出会うことができた。「「クラウス・マケラ」という才能に。クラウス・マケラは何かが突出しているわけではない。彼は自分の行動がわかっているし、恣意的な処理など一つもない。それでいて彼は小さくまとまることを良しとしない。彼は自分を偽らず「正しく」行動する。しかも極めて高いレベルで。
    この先も彼のコンサートに接することができると思うと、また生きる理由が増えた。なんと楽しい人生か。

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     2021/07/01

    ヤクブ・フルシャは史上最高マーラー指揮者だ。
    わたしは35年東京都交響楽団の年間会員を続けている。2016年のフルシャの公演ももちろん聴いた。あれは凄かった。とにかく情報量が全然違う。それまでは最高のマーラー指揮者はバーンスタインだと思っていたけれどあの演奏には、心底驚かされた。都響の練度も言わずもがな。「マーラーがこの曲を作曲したとき頭の中で響いたのはこの演奏だ」とさえ思った。わたしは残念ながら60代のフルシャしか聞けないだろう。しかしそれでも、かつてフルトヴェングラーやシューリヒトたちの成長を聴けた楽しみは経験できる。そのフルシャのマーラー。それも4番。これは聞かなければいけない演奏だろうと思う。

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  • 10 people agree with this review
     2021/03/31

    遅まきながらようやく購入。「エロイカ」から聞いてみた。聞いてみてぶっ飛んだ。「音」が「生きている」。まるで生成りの木綿のような「きれいごと」ではない「音」が。古楽器での演奏とはこういうことだったのかと思う。逆に過去の演奏を聴き返してみようと思わせる演奏だと思う。これはすごいことだ。サバール恐るべし。これは、音楽好きを名乗るならば聴かなければいけない演奏である。

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  • 2 people agree with this review
     2020/06/25

    今クラシックを聴き始めた人は、本当に幸せだと思う。こんなに素晴らしい音でフルトヴェングラーを聴けるのだから。そしてこのCD。確かにモーツァルトは異形だ。まるで黒い塊のような重戦車のようなモーツァルト。これを好きになれない人もいるだろう。そしてブラームス!なんという艶めかしさ!なんという色気!こういう演奏ができる指揮者が70年前にはいたのだ。こういう指揮者を昔は聴けたのだ。うらやましくてしょうがない。確かにオーケストラやソリストなどの「平均的な」技術は向上しているだろう。だが、演奏はどうだろうか。我々は狭間にいる気がしてならない。だがあきらめるのは早い。素晴らしい芽が現われつつあるのかも知れないのだから。やはりわたしにとってフルトヴェングラーは指揮者の代名詞だ。

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  • 5 people agree with this review
     2019/11/17

    ようやく全曲聞き終わった。これは文化遺産だと思う。クレンペラーは拍節感、リズムに対する感覚を強固に持っている指揮者だと思う。予想に反して(少なくとも私にとって)、テンポは遅くない、というか遅いと感じない。これはクレンペラーが曲に対する明確なヴィジョンを持ち、なおかつ、それをオーケストラに効率よく伝えることができることの証明だろう。そしてそれを我々は(こうして映像で視聴した人間を含めて)伝統として、つながっていく音楽として受け取ることができる。これを文化遺産と言わずしてなんというのか?この演奏をライブで聴いたもの、またこうして視聴できる我々は幸せである。

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  • 6 people agree with this review
     2015/12/07

    マーク/都響の「第九」は、95年の都響創立30周年を聞いている。あれも名演だったが、これはそれ以上の圧倒的な大演奏!しかも正統的な。とにかく合唱が優秀。ソリストの出来もいい。
    そしてなんといってもマークが凄い!脇に逸れることなく、音楽自体に語らせている。中々出来る事ではないだろう。都響もほんとにいいオーケストラだし、マークをこんないいオーケストラで聞くことが出来た我々は、なんて幸せな聴衆なのだろうか。

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