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1人の方が、このレビューに「共感」しています。 2018/06/11
7番の成功を受けて自信を持って感性の翼を広げた作品である8番初稿。初めて聴いたときにはチンプンカンプンだったが今では彼の交響曲の中で最も好む。この8番初稿と9番フィナーレ断章を聴くにブルックナーが当時(ひょっとしたら現代も)の感性から大きく隔たった境地に立っていたことを窺わせる。この初稿はブルックナーの感性に沸き起こる世界認識を文学的・価値判断的に収斂させたのではなく、描写的・記述判断的に羅列したかのような印象を聴衆に抱かせると思う。彼のセンサーを通して見える世界は様々な矛盾する要素を自身の中にダイナミックに取り込んだ「全体」=「実在」ではなかろうか?(この初稿への無理解と第2稿への修正を経た8番の成功が無ければ9番の完成楽章の姿もだいぶ違っていただろう。)マーラー7番やシベリウス4番等も???から大好きになったがこの作品は第2稿の名演がとても充実していてそちらの満足度が依然として高いのでなかなか省みられなかった。第2稿が傑作であることに異議は無いが個人的事実として5番・終楽章付き9番の方が聴く頻度が高く、最近は初稿と第2稿の頻度は同じ位になっている。これまでティントナー、フェドセーエフ等を愛聴してきたがこのルイージ版は学究的な動機ではない演奏家の作品への好感が十分に感じられるだけでなく、今後初稿が8番のスタンダードになる可能性が大いにありうることを示す非常に画期的な演奏だと思う。
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