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Raise さんのレビュー一覧 

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     2012/04/05

     安さ、実力ともに合わせればイタリア現代オケの旗手? とでも言うべきナクソス御用立て馬車馬オケは、今日も今日とてフランチェスコ・ラ・ヴェッキア先生とご一緒に微妙にニッチな祖国の作曲家を録音中。こちとらチャイコやヴェルディを録音してるだけじゃ勝ち目ないのよ、と言わんばかりのひん曲がったレパートリーに今回加わったのは、あのフェルッチョ・ブゾーニの怪曲「ピアノ協奏曲」。祖国の忘れ去られた巨匠たちの救済に務める彼の指揮は、相変わらず熱い。ローマ響は相変わらずアンサンブルが粗く、予算の関係からか楽器の音色にもどことなく地方オケの哀しい安っぽさが滲み出ているのですが、今回も引っ張るのは指揮者、そしてそれに加えてソリストのロベルト・カペッラ。彼は1976年のブゾーニ国際で優勝しているとかで、その実力は折り紙つき。アムラン、ジョン・オグドンといった錚々たる面子が既に優れた録音を残している以上、ナクソスとしても実力者を雇用せざるをえないわけにはいかなかったご様子(笑)。粗いが熱気盛んなオケはまさしくB級の旨みで、第四楽章のタランテッラなんかに弾ける熱さ華やかさ、垣間見える静けさには舌を巻きます。豪華なカデンツァに馬鹿馬鹿しささえ感じさせる諧謔マックスのリズムは、もうこれは笑って受け止めるべき。露骨なまでのイタリア舞曲が四楽章なら、一楽章と三楽章は深刻ぶったドイツ調。長大なこの二つの奇数楽章では、かっちりと引き締まった指揮ぶり、真摯なピアニズムを見せてくれる。第五楽章での合唱団も、ルカ・マレンヅィオ合唱団などという怪しさ満点にもかかわらず良く統制されきっていて不足なし。ソリスト、本当に素敵です。アムランやオグドンといった化け物クラスには決して勝てずとも、語り口の豊かさは確かにある。75分という長さは、公衆を面前に演奏されたピアノ協奏曲でも最大の長さとか。分裂症的にドイツ・イタリア、クラシックと通俗音楽を入れ込ませ、どこを切りだしても歌と音の大洪水のような悪魔的難曲を、しっかりと追い続ける集中力には(指揮者ともども)賛辞を送りたいです。お値段以上のニトリ録音なのは間違いない。少なくとも安いことは確かなので、Hyperion盤やEMI盤前のお試しに一枚、というところでしょうか。

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     2012/04/05

     1978年生まれの女性ギタリスト村治佳織は、美人だ。で、これがよくない。よくある巷の美男美女アーティストと同じような取扱いを受けかねないけれど、実際には幼くしてあのギター界の巨匠、福田進一に堂々師事。ブローウェルや武満徹、あるいは日本ではマイナーな南米音楽の名匠たちを臆せずに次々録音する彼の姿が、そのまま彼女のユニークなレパートリーにつながっていると思うと感慨深い。冒頭、いかにもキャッチーな通俗名曲として受け止められがちな「アランフェス協奏曲」だけれど、村治の演奏は低音を深く響かせた足取りの確かなもの。ロドリーゴ特有の鄙びたメランコリー、田園の暖かさが溢れかえったこの曲では、むしろその音のエッジが鋭すぎるかもしれない程。人口に膾炙し過ぎた一曲で、露骨なロマンチシズムに溺れることなく曲の古典的な輪郭を正確に伝える演奏には、この人なりの演奏家としての良心が存分に溢れているようで、非常に好ましく思う(作曲家本人との面会も、この名曲を一個人の音楽作品として捉えるだけの心構えを生んだのかれもしれない)。映画音楽の作曲家として有名なマルコム・アーノルドの小品は、独特のポピュラーさ、それとは対照的なねじくれまがった節回し、この二つの表情付けの鋭敏さに驚かされる。ラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」の編曲者として知られるローラン・ディアンスの「タンゴ・エン・スカイ」でも、数多い音符を一音たりとも零すことなくどっしり腰を据えて弾いてくれる(そして、ここらでようやくショー・ピースの弾き手としての顔も見せてくれる)。美人ギタリスト、という安っぽい言葉の響きからは決して想像出来ない、素晴らしい演奏だ。

     バックのオケは「アランフェス協奏曲」では鈍重かつ繊細さに欠けるが、アーノルドや続くカステルヌオーヴォ=テデスコにおいてはその重々しさがかえって曲の形式感をよく伝えているように思う。 イタリア生まれ、後に渡米して映画音楽の基礎を作ったとされるカステルヌオーヴォ=テデスコの作風は、シェイクスピアや旧約聖書に取材、あるいはギター・ソナタでボッケリーニを讃えるあたりから御想像通り(なんせ師匠がピツェッティにカゼッラなのだ)。第三楽章の「カヴァレスコ」とは、騎士のように、ぐらいの意味合いだろうか。重々しく誇らしげな行進には、はるか彼方ローマのマルタ宮殿に駐在する騎士たちが重ねあわされているのかもしれない。

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     2012/01/21

    ローマ響は、ボーンマス響やニュージーランド管、スロヴァキア放送管弦楽団などに並ぶナクソス期待のニュー馬車馬オケ。お前誰やねんとツッコミ必至のイタリア近現代作曲家をお抱え指揮者フランチェスコ・ラ・ヴェッキアとお揃いでいそいそ録音。馬車馬オケだけあって演奏はピンキリ。東欧オケのような凄まじい駄演を疲労するわけではないのが流石にヨーロッパのオケですが、それでも曲目によって演奏のレベルが異なりがちなのはいかがなものか。しかしこのオケのいいところは、良い曲には必ず良い演奏を持ってくるところ! ご存知ナクソス(マルコ・ポーロ)がリバイバルの火をつけた作曲家兼音楽学者ジャン・フランチェスコ・マリピエロの演奏に関しては、同レーベルは外れなしで有名。モスクワ交響楽団に気合を入れさせた(笑)プロデュースの腕はさすが廉価王ナクソス。マリピエロはレスピーギ、カセッラと並んで80年組と呼ばれ、音楽史上では歌劇一辺倒のイタリアに器楽復興の機運を持ち込んだという大きな意義を持っています。印象主義かと思いきや笑っちゃうほどのマーラー・トリビュート、擬古典かと思いきやオネゲル・ライクでメカニカルな作風となかなか軸の定まりづらいカセッラ、音楽学者としての学識肌が災いしてかなかなか録音してもらえないマリピエロを尻目にレスピーギの一人勝ち状態。勿論彼も素晴らしい作曲家なのですが、残る二人の録音も増えればよいですね。印象主義の文脈で語られることが多いマリピエロの作風は、「自然の印象」「間隙と静寂」と当盤のタイトルだけでも見え見え。しかしイタリアンなチーズの響きも(笑)随所に伺われ飽き知らず。後期の交響曲に伺えるようなやや晦渋な響きの方が印象に残りやすいかも。とはいえ彼独特の清新な和音もたっぷり。一粒で何度でも美味しい、それがマリピエロの魅力です。馬車馬オケらしく多少お疲れの音色ではありますが、ラ・ヴェッキアさんの根性の入れ様はなかなか。歌心たっぷりの木管ソロも伸びやかで気持ちよい。線の細さを確かなコンセントレーションでまとめ上げる手腕はお見事です。

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     2012/01/21

     ソリストを務めるジョン・レナハンは1958年、イギリス生まれのピアニスト。ジュリアン・ロイド・ウェーバーやジャズの助演を務め、ソリストよりも伴奏で有名なお方です。マイケル・ナイマンのピアノ協奏曲をアルスター管弦楽団と録音したNaxos盤では、グラモフォン・アワードを獲得、UKのクラシック・チャートで五位に上り詰めた実績もお持ち(ちなみにこの盤の指揮を執ったのは、我らが日本の誇る名廉価盤(笑)指揮者、湯浅卓雄)。廉価盤の大将ナクソスには少々実力のあり過ぎるぐらいの彼のアイアランド全集も、近日出たピアノ協奏曲の余白録音で完成。長い沈黙ののちに出たこの第三集は、待ちくたびれたファンを大歓喜させた一枚です。アイアランドのピアノ曲は特に人気の高い分野。「緑の道」「春が待てない」「アーモンドの樹」と題名を見るだけで音楽史的な立ち位置も一目瞭然。実に穏健な和声と美しくメロディアスな楽曲に、程よく力の抜けたレナハンの演奏はピッタリ。繊細かつ朴訥平明、それでいて芯のしっかり立った語り口が素晴らしいです。一方で脂の乗り切った四十代に書かれたソナタではシリアスな表情もしっかりと伺わせ、彼のピアノ作品の諸相をしっかり切り出す良選曲。イングランドの詩人A・E・ハウスマンやシェイクスピアの詩句にインスピレーションを得た「緑の道」や、「ロンドンの夜のバラード」にはかつてのドビュッシアンとしての面影も。たとえクラシック音楽に興味がなくとも、イージー・リスニングとしても聴けてしまうだけの懐の深さ、平易さをしっかりと持ち合わせている。それでいて高品位。演奏、曲目ともに間違いなくナクソスのピアノ・ソロではトップクラス。お勧めです。

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