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ねずみ さんのレビュー一覧 

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/10/21

     「10月の朝のこと…」で始まるシニカルなストーリー。
     オープニングから群青色の海底を漂っているような鈍いジャズのビートが、踏み入れてはいけない扉の向こうの不可思議な世界へと誘ってくます。
     相変わらずのスタイリッシュで、スノッブで、リスナーをクライマーズ・ハイな気分にさせる和音の重奏ですが、40年も第一線で仕事を続けている音の錬金術師は、いつしか地球上に存在しない金属を造り出そうとしているような、我々の手の届かない領域へと向かっているようにも思えます。
     やれやれ。

     本作は Donald Fagen のソロ作品ということもあって、Steely Dan よりも数倍もコマーシャルに作られているっていうのに、初心者クライマーには難易度の高いボルダリング岩壁となっていて、緩やかな漂流に油断していると、とんでもない無人島へと運ばれてしまいそうです。
     これまでの延長線上にある、というのは判るのですが、果たして名盤なのか、駄盤なのか、自分の感覚も麻痺してしまっていて、どう位置付ければいいのかもわかりません。
     ただ、一つだけ言えることは、このアルバムの時間軸は今よりももっと未来にあるということ。そして、自分の手には負えない代物だということ。

     何年先になるか分からない次回作までに、なんとしても征服してしまわなければ…。そんな嬉しいため息をつきながら、今夜もプレイボタンを押しているのです。

    1人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 3人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/10/07

     最近、某販売会社の名盤発掘企画で彼らの Big Tree 時代の3枚が国内(一部再発)リリースされましたが、なぜか、このアルバムだけスルーされていました。
     たぶん、アコースティックなポップ路線の過渡期的な作品集だったり、シングル・ヒットも「愛への旅立ち」だけだったりしたことが減点されたのかもしれません。
     しかし、前作の『二人のフェリー・ロード』に肩を並べる、もしかしたら、それ以上にいい曲がいっぱい詰まったお宝盤だったりするのです。
     Best 盤に取り上げられている作品以外では、胸を締め付けるほどに切ないメロディーを持つ「Hold Me」や、しっとりと聴かせる泣きのバラード「Beyond The Tears」といった、彼ららしい爽やかなコーラス&ハーモニーを聴かせてくれる”定番”もしっかりと収められています。

     疲れたハートをやさしく癒してくれる温かい歌声。
     彼らのアルバムを聴いていると、なんだかホッとします。
     ブレンド・コーヒーでも飲みながら、長くお蔵に入っている「Kep Your Smile」でも聴いてみたいものです。

    3人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 0人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/10/05

     アジアの次は南米か?と、その多国籍=無国籍志向に期待と不安を抱いたものですが、フタを開けてみると、ボディーそのものは軽量化されたのに機能的には高度になったコンピュータのように、より都会的で洗練されたスレンダーな作品集となっています。

     前作でもオリエンタルなエッセンスはタイトル曲の隠し味程度しか使われていませんでしたが、この作品も、アルゼンチン版カウボーイたちが生活するパンパの牧歌的な雰囲気が楽曲全体を包み込んでいます。
     その一方で、アルバム・ジャケットや、さりげなく組み込まれた歌詞や旋律など、アルバム・タイトルのメッセージは深海魚のように作品の底流を回遊していて、リスナーは無意識のうちに自身の深層心理に入り込んでくるサブリミナルな刺激を受けることになるのです。

     先の読めないコード進行には、睡魔を誘う高速道路の連続するカーブのような心地よさがあり、完璧なまでに無機質でスタイリッシュで完成度の高い作品群には、他の追随を許さない孤高のオリジナリティーがあります。
     加えて、限りなくデジタルに近いアナログなサウンドには、楽器を操る人の温もりのようなものを感じさせてくれます。

     村上春樹氏が描く現実と非現実の隙間に拡がる空間、或いは時空の歪みに紛れ込んだような不思議な感覚を味わうことができるのです。

     『Aja』か『Gaucho』か。
     自分の周りには今なお二大派閥の論争が続いています。

    0人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 3人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/10/05

     個人的には、何と言っても「願い If I Could Change Your Mind」、この曲に尽きます。
     特にシングル・ヒットしたわけでもないのに、80年代半ばには、某FM局の深夜の音楽番組で何度か流されていました。
     このアルバムのラストに収められている渾身のバラード・ナンバーは、静かなピアノの旋律で始まり、囁くように唄い始める女性ボーカルは徐々にテンションを上げ、最後は切ない願いのようなタイトル・フレーズとそれを支える重厚なオーケストレーションのリフレインで幕を閉じます。
     ある意味、完璧を求めて計算し尽くされた、音楽のサグラダ・ファミリアのような風格を感じさせる1曲です。

     遠目には普通に見えて実は普通ではない2人の女性のジャケット写真もそうですが、美しいものの内側に潜む影の部分を一つの美学として描き出しています。

     プロ野球で勝っているゲームを締めくくるクローザーのような役割を担う”決め”の1曲のラインナップは、後の『運命の切り札』や『Ammonia Avenue』へと引き継がれていきます。

    3人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 3人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/10/05

     地鳴りのようにうねるベース・ラインの荒波に揉まれながら闇をつんざく重厚なギター…。タイトル曲の「呪われた夜」は、まるで濃密なタールの海を漂っているような、大都会に息づく様々な感情が混じり合った、へヴィーでソウルフルなナンバーです。魔女がささやいていた頃からその兆しはあったとはいえ、大空を自由に飛び回っていた鷲たちも遂に大都会の真夜中のカウボーイになってしまった、そんな軽い衝撃を受けました。
     ”魔女の呪い”は続く「Too Many Hands」へと引き継がれ、ひとときの清涼剤のような「Hollywood Waltz」を挟んで、問題作の「魔術師の旅」へとさらに加速していきます。

     The Beatles のアルバム『アビー・ロード』のSide-Aを想わせるワイルドな世界とは対照的に、後半は Eagles 本来のアコースティックな楽曲群が待っています。

     悪夢にうなされた黒い夜が終わり、レコード盤をひっくり返すと、爽やかな涼風のようなギターで始まるポップなカントリー・ナンバー「いつわりの瞳」が聴こえてきます。ちょっぴりウェットな恋物語が唄われていますが、どこまでも Peaceful で Easy なメロディーは、アメリカ中西部の大らかな世界へと運んでくれます。
     呪縛からすっかり解放された後に登場するのは、正統派カントリー・ロック愛好者を唸らせた玄人好みの「Take It To The Limit」。
     そして「Visions」で少しはしゃいだ後には、心に沁みる極上の夕焼け Song「After The Thrill Is Gone」が待っています。

     ラストはしっとりと聴かせる「安らぎによせて」で締めくくるという、『Hotel California』とは違ったドラマチックでスタンダードな深い味わいの1枚です。

    3人の方が、このレビューに「共感」しています。

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     2012/10/05

     前作『Late For The Sky』で頂点を極めた感のある Jackson Browne の衰えを知らない力量を感じさせる完成度の高い1枚です。

     個人的には、オープニングの火のついた導火線の緊迫感が伝わってくる「The Fuse」とシングル・カットされた「あふれ出る涙」、そしてのラストを締めくくるタイトル曲「The Pretender」の3作品がアルバムの要になっているような気がします。
     もちろん、どっしりと腰を据えて粛々と唄われる「Your Bright Baby Blues」と、中米の明るい太陽の光を浴びているようなメキシカン・スタイルの「Linda Paloma」が加えられたA面は、ほぼ完璧なラインナップとなっていますが…。

     アルバム・ジャケットに写る一人の市民としてダウンタウンを歩く普段着の彼の姿は、”Stranger”ではなく”Pretender”として街に溶け込んでいて、何となく、先の見えない社会を生きていく勇気のようなものを与えてくれているような気がします。

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     2012/10/05

     このアルバムは、ライブ盤ではないのですが、ステージで熱唱する Barry Manilow の姿が見えるくらい、ライブ感覚に溢れています。

     コンサートのオープニングでもよく唄われる「New York City Rhythm」に始まり、マイナーからメジャーへのコード進行が美しい「愛のフィーリング」、どこまでも前向きで元気をもらえる「二人で生きよう」と続き、50年代のゴージャスなビッグ・バンドを想わせる「Bandstand Boogie」へと展開するショータイム。
     LP盤ではB面のトップを飾る壮大なスケールの「歌の贈り物」が一番の聴かせどころですが、しっとりと唄われる「As Sure As I’m Standin’ Here」と「Lay Me Down」に挟まれた、とびきり愉快な「A Nice Boy Like Me」なんかが個人的なお気に入りだったりします。
     ショーの締めくくりは、明日への夢と希望を与えてくれる音楽讃歌「Beautiful Music」。さらに、最近のCD盤には2つのアンコール曲のオマケが付きです。

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/09/25

     本邦では怒涛の紙ジャケット化が進む中、オールタイムなベスト盤の影に隠れて、おいしいセットものがリリースされました。

     とかく「あの1枚が足りない」、「コレとアレを差し替えてほしい」という75点の組み合わせが多い中、JT や Boz、S Wonder や America 同様、余計な中抜きをせずに痒いところに手の届くシンプルな選択が光る5枚1箱です。
     マスターの程度が不明なことやスリーブが無いなど、職人技のような装丁のボックスセットとは大きく差のある廉価盤5枚組ですが、この価格でこのボリュームなら、「安かろう、でも、内容は良かろう!」として許してもらえるのではないでしょうか。

     愛好者のすそ野を広げる企画ものとしては十分なお買い得盤です。

    2人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/09/25

     円高の恩恵を与れるようになって、2枚組でもこの値段で入手できるようになりました。ありがたいことです。
     この Leo Sayer のほぼフルタイムなベスト盤も、手元にある邦盤が年代ものだったので買い足した一品ですが、1枚ものでは収まりきれなかった隠れた名曲群との出会いもあり、改めて彼の力量の深さを感じることができました。
     個人的には77年以降に軸足を置いて収録した2枚目、特にアルバム収録のソフトでウェットなナンバーに秀曲が多く、久しぶりに費用対効果の大きい買い物でした。

    1人の方が、このレビューに「共感」しています。

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     2012/09/25

     村上ラジオ・シリーズ第三弾。
     今回も雑誌掲載のショートでランダムな呟きをホチキスしたエッセイ集ですが、起源となった『カンガルー日和』やスクラップ・ブックのエッセンスがそのまま引き継がれていて、ちょっとした隙間時間に読めてしまう、カジュアルな1冊です。

     ストライクな話題に共感したり、トリビアな裏話にほくそえんだり、時にハッとさせられるような一文に目から鱗だったり…、とにかくリラックスして楽しめる雑文集です。

     相変わらず、大橋さんの心和む挿絵と、時刻表の綴じ込みに掲載されていたような春樹氏のアンニュイなひと言コラムが楽しめます。

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     2012/07/25

     ”ヨーロッパ産ブラジリアンAOR”という、わけのわからないカテゴリーに足を踏み入れてしまいましたが、これが思わぬ拾い物となりました。
     ボサ・ノヴァ調の半音下がりの旋律で綴られるリラクゼーション空間に、都会的でコンテンポラリーな雰囲気が融合した心地よいサウンドが溶け込んで、全編、バランスの良いイパネマ海岸音楽が展開されています。
     どこまでも暑い夏、せめて頭の中だけでもクール・ダウンさせるために、赤道直下の紺碧の海と白い砂の大陸を想わせる良質のカフェ・ミュージックを楽しみましょう。

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  • 4人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/07/25

     一連のリマスター・シリーズ第3弾ということで、順当に『RAM』までたどり着いた感がありますが、今後の予定が気になっていたところ、輸入盤の封入カードにComing Soonのアナウンスがされていました。
     突出した『Band On The Run』を皮切りに、解散後の『McCartney』から順番に、と思いきや、クレジットされていたのは、『Venus & Mars』『Speed Of Sound』『Wings Over America』という、王道+意外な3作品でした。
     毎年1作品ずつ、とすれば、2014のワールドカップ・イヤーに待望の『Wings At Speed Of Sound』がリリースされることとなります。世間での評価は低いものがありますが、個人的にはこの『Ram』と並んで Paul の作品では最もお気に入りの1枚なので、今から楽しみです。
     サッカー日本代表の出場決定の経過を楽しみながら、プレミアム盤を購入のための積立貯金をはじめたいと思う今日この頃です。

    4人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 0人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/06/24

     テンポよくリズムを刻み込むドラムマシーンとシャープなキーボード。
     ソフトなファンキーさとしっかりとしたメロディーが、このアルバムの屋台骨を支えています。
     解説にあるように、インストゥルメンタルとボーカル・ナンバーがバランス良く配置されていて、タイトルにあるような深夜の街灯の影に漂うダークな空気感が伝わってくるみたいです。
     アルバム収録曲と比べても遜色のないボーナス・トラックも充実していて、文句なしの1枚です。

    0人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/06/18

     当時、こんなアルバムが出ていたことすら知らなかった、自分にとっては21世紀になってようやく出逢えた隠れた名盤です。
     LP盤2枚組というボリュームを感じさせない、とにかく軽くて、ジャケットのイメージがピッタリなくらいソフトでブライトな楽曲がいっぱい詰まっています。
     夜のしじまに響き渡るような重厚で骨太のギター・サウンドは影を潜めているものの、その分、柔らかな初夏の陽ざしに包まれているような優しいタッチで描かれた爽やかな世界が拡がっています。
     通り過ぎる涼風を感じていたい季節にぴったりの 2in1 です。

    2人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/06/16

     桜色のアルバム・ジャケットにぴったりの春爛漫な楽曲集です。
     Al のボーカルがバックの演奏を追い越してしまいそうな、スピード感がたまらない「Closer To Your Love」や「Easy」。決して涸れることのない泉のように、愛する気持ちで満ち溢れる「奏でる愛」。どこまでも Happy なタイトル曲。ラストは、満天の星空の下で聴いていたい、スタンダードな「今夜教えて」でしっとりと幕を閉じる、すべてが”春色”に彩られた好です。
     Jay Graydon のプロデュースによる次作『Jarreau』と並ぶ、まさに金字塔のアルバムです。もちろん、満点。

    2人の方が、このレビューに「共感」しています。

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