室内交響曲第2番/浄められた夜Op.4/他 湯浅/アルスター管弦楽団
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伊奈八 | 茨城県 | 不明 | 2022年03月19日
日本人指揮者による、感動的なシェーンベルク作品集だ。 指揮は湯浅卓雄氏。活動が海外中心のため国内で聴く機会は少ないが、Naxosに邦人作曲家の作品や海外の現代作品を多く録音している。このCDの演奏の素晴らしさからすると、知る人ぞ知る実力派と思われる。演奏のアルスター管弦楽団も国内ではマイナー感が強いが、トルトゥリエの指揮でCHANDOSから優れた演奏のCDが多く出ている表現力の高いオケだ。 このCDに収録されているのは、室内交響曲第2番op.38、映画の一場面のための伴奏音楽op.34、浄められた夜op.4の弦楽合奏版の3曲だ。いずれも大変優れた演奏で、名演と思う。 その演奏は、余分な強調がなく自然体で、しかも曲の深さを存分に伝えてくるものだ。旋律は呼吸をするようによく歌い、管弦楽は隅々まで実に繊細に、効果的に鳴り響いている。良い状態で再生すると、演奏会でシェーンベルクの実演を聴くのに極めて近い体験ができる。 室内交響曲第2番も、映画の一場面のための伴奏音楽も、全てが成るべくして成るという必然に従って音のドラマが進行する説得力に呑み込まれ、曲の持つ悲劇性がずっしりと重い感動を残す。 浄められた夜は、湯浅氏の豊かな想像力が反映されて、個性のより強い演奏となっている。 前半は、主人公の女性が孤独感ゆえに過ちを犯してしまうという悲劇がありありと伝わってくる。これだけ主人公の女性の心理に寄り添った演奏も稀だ。湯浅の目にはそれこそ映画の一場面のように各場面の情景が「見えて」いるかのようだ。 後半は、温かく包容力のある男の赦しの場面だが、特徴的なのは男女の気持ちが通い合い、舞曲調の曲想になる部分からかなりテンポが速くなることだ。これは、湯浅が登場人物を2人とも意志の強い性格と捉えていることが反映しているように思われる。女にしても、前半の行動はかなり大胆であり、嘆くときもなよなよとはしていない。結構激しく嘆いている。男も、そんな女を受け止められる程強い性格なので、2人が喜び踊るときも激しく元気に踊るのであろう。そのように理解して初めて腑に落ちる解釈であるようにも思われる。 いずれにせよ、かくも優れた演奏が日本人指揮者によって録音されたことに、シェーンベルクの音楽を愛している私は大いに誇らしさを感じている。この名盤の価値を多くの人に知ってもらいたいものだ。0人の方が、このレビューに「共感」しています。
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