バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)
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u.f.o.313 | 不明 | 不明 | 2021年06月23日
ブロードウェイのショービジネスの裏側を描いたいくつかのハリウッド作品のなかで、自分が最初に衝撃を受けたのが、1980年にカンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞した「オール・ザット・ジャズ」を見たときだった。そして本作はそれ以来の興奮を与えてくれる作品となったように思う。まず、自分はアメリカのショービズ界の事情に詳しいわけでもないので、おおよそこの映画に散りばめられている細々した風刺やパロディーをすべて理解できるわけでもない。従って、欧米での評論にあるような細かい内容的な評価は難しいのだが、この映画の売りのひとつでもある、いわゆるワンカットさながらの長回しのカメラワークによって表現された世界観にはかなりのインパクトを受けた。まるでニューヨークという名の戦場をヘトヘトになるまで走り回っているかのような臨場感だった。映像の中では主人公の代弁者のごとくストリートミュージシャンがドラムを叩き続け、狂人なのか天才なのかわからない人がポエトリーを叫び上げる。また、むき出しの魂と才能がぶつかり合い、欺瞞と賛美がプライドと信念を弄び、目の前のスポットライトと喝采が過去のものなのか、幻覚なのか、現実のものなのかもわからなくなり、路地裏よりも暗くて細くて汚い舞台裏を主人公が這いずり回るのを間近で目撃する。こんなことが息もできないような緊張感とテンポで視覚的にシームレスにつながっていくのだ。それはとてもニューヨーク的であり、まさに分刻みの戦場にいるかのようでもある。かといって、そこから何か突破口がある映画なのかといえば、そうでもなく、答えが見る側に委ねられているエンディングは賛否が分かれるところだと思う。ただ、ハリウッドVSブロードウェイ、エンタメVS芸術というアメリカショービズ界の永遠の対立軸を本作の主人公の錯乱状態に落とし込んだのだと思えば、まあ、理解できなくもない…と言ったところだろうか。 (なお、カメオで「トランスフォーマー」のバンブルビーやスパイダーマンが登場するのがかわいいということも付け加えておく)0人の方が、このレビューに「共感」しています。
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