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シェーンベルク(1874-1951)

CD 歌劇「今日から明日へ」(全1幕) ウィトルジー/ギーレン/フランクフルト放SO

歌劇「今日から明日へ」(全1幕) ウィトルジー/ギーレン/フランクフルト放SO

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    伊奈八  |  茨城県  |  不明  |  2022年02月12日

    極めて希少な「今日から明日へ」の決定盤だ。 この盤は、ストローブ=ユイレ監督による「今日から明日へ」の映画の音源でもある。 シェーンベルクは歌劇のような作品を4つ書いている。「期待」 op. 17 (1909) 、「幸福な手」op. 18 (1910/13)、「今日から明日へ」op. 32 (1929)、「モーゼとアロン」(作品番号なし)(1930/32)の4つだ。 「今日から明日へ」は、全編12音技法で書かれた史上初のオペラだが、録音が少ない。 物語はコミカルなホーム・ドラマなのだが、12音技法で書かれた音楽の味わいが、普通のオペレッタ的な分かり易さと懸け離れているのが原因だろう。 台本は、シェーンベルクの再婚相手、ゲルトルート夫人が書いている。夫婦の機微がよく描かれており、今日でも色褪せない内容を持っている。 物語は、パーティー帰りの気だるいムードから始まる。夫がパーティーで出会ったオシャレな妻の女友達のことを褒め、地味な妻を馬鹿にするので、次第に夫婦が険悪になる過程がリアルに描かれている。 中盤からは、妻がオシャレに変身して夫を翻弄したり、真夜中にガスの集金が来て夫がオロオロしたりとコミカルになり、音楽も面白くなってくる。 そこへパーティー会場からテノール歌手(妻を誘惑していた)が電話してきて、夫婦でパーティー会場に来るよう誘う。妻が着替えてさらにセクシーに変身したのを見て、夫は敗北を認め、妻に行かないでくれと懇願する。 夫婦が仲直りをしたところへ、パーティー会場で待ちくたびれた女友達(夫が褒めていた女性)とテノール歌手がやってきて、凝った4重唱となる。そこが音楽的にはクライマックス。 招かれざる客達は夫婦をなじるが、夫婦の絆は強くなっていて動じない。客達が帰って平和な朝が訪れハッピーエンドとなる。 シェーンベルクの12音技法の作品にも色々あって、ピアノ協奏曲のように調性的な響きが多い曲もある。「今日から明日へ」は、紋切り型のオペレッタ的音楽になることを極力避けたためか、調性的に響く部分が全然無い。非常に緻密に細やかに書かれている音楽だが、聴いただけで理解するのは大変難しい音楽となっている。 演奏は、ミヒャエル・ギーレンの指揮フランクフルト放送交響楽団が担当しており、全体的に真面目な調子ながら、大変良い演奏となっている。歌手達の健闘も素晴らしい。 「全体的に真面目な調子」と言い得るのは、ギーレン盤以外にCD化されている唯一の音源であるロスバウト盤(Stradivarius STR 10054)が、モーツァルトの歌劇を得意としたロスバウトらしく、難解な曲にも関わらず、それこそモーツァルトの歌劇を思わせる軽やかな演奏となっているからである。 ギーレン盤の演奏が真面目な調子なのは、ストローブ=ユイレ監督の希望でもあったのだろう。 いずれにせよ、現在手に入れ易く、音質も良い唯一のCDなので、作品に興味がある方にはお薦めできる。 ただし、歌詞対訳が無いから、この作品に初めて接する人には、ストローブ=ユイレ監督による映画のDVDを是非ともお薦めしたい。分かり易さが段違いであるし、非常に優れた映画だ。

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