鍵のかかる部屋 新潮文庫 改版
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苺 | 不明 | 不明 | 2021年03月21日
三島由紀夫をまだ読んだことない人に、とっつきやすいものを勧めるとしたら、まあ『三島由紀夫レター教室』や『命売ります』などになりがちですが、 エンタメではなくてもう少し三島の本流っぽい作品で何かないか、と言われたら、私は自信を持って『鍵のかかる部屋』を読んでみて!と言います。 短い話です。三島にしては簡潔な文体が使われていながら、三島ならではの巧みな比喩表現も楽しめます。 気だるげでデカダンなストーリーも、今の人が読んでも全く古くないと思います。 終戦直後、まだ世情が混沌としていた時代。主人公の一雄は東大を出て財務省に入ったばかりのエリート官吏です。ダンスを習いに行って出会った人妻の家へ定期的に密会に出かけます。 しばらくしてその女は急病で亡くなり、一雄がその家に行くこともなくなるのですが、ある日ふと思いついて、また訪ねていく。すると家にはその女の娘・九つの房子がいた。 房子はませた娘で、一雄が好きらしく…というのがあらすじです。 あやしい雰囲気はあるものの嫌悪感をいただかせるような作品には決してなっていないところがさすが三島。そこらの作家では同じ話を書いたとしてもこうはならないでしょう。一流の作家でなければ書けない作品です。 表題作以外にも、『訃音』など、皮肉の効いた、エンタメではないのに読みやすい作品が複数収められています。 是非手に取ってみてください。0人の方が、このレビューに「共感」しています。
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