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CD ロリン・マゼール/ドイツ・グラモフォン録音全集(39CD)

ロリン・マゼール/ドイツ・グラモフォン録音全集(39CD)

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    slave  |  東京都  |  不明  |  2023年09月30日

    マゼールのイメージと言えば、「鬼才」「クール」というような単語が浮かぶように思う。私には、彼は長らく捉えどころのない指揮者だった。広いレパートリー、巧みな統率力を備えつつ、数多くのポストを渡り歩く、神童から天才になった人物。だが、彼の専門的なレパートリーは何なのか?バーンスタイン=マーラー、チェリビダッケ=ブルックナーのような特定の作曲家との結びつき、あるいは、小澤=ボストン、カラヤン=BPОのような特定の楽団とのそれもない。 しかし、最近ようやく分かった気がする。 甘い物を食べたい、しかし太りたくない、とすればどうするだろう。同じように、クラシック音楽を聴き、しかし、バースタインのような熱狂は疲れるし、チェリビダッケのような集中もやり切れない、カラヤンのような耽美も息苦しいとなると、俄然、指揮者の巨大な自我の押し付けのないマゼールの行き方の意味と価値が分かる。 「個性を売る」ということのために、音楽本来の姿以上にデフォルメをした演奏に対して、マゼールは一線を画している。彼は拍を整理し、それぞれのパートの分離を明晰に示し、各奏者が歌いやすいように指揮している。その姿は室内楽団のような風景だ。 このように明晰な演奏家は他にブーレーズ以外はいないだろう。ブーレーズの領分がほぼ20世紀の音楽であるので、客観主義は理解できる。しかし、マゼールはそれ以外の分野でも、客観的、つまり、音楽の造形と響きの美しさで聴かせる。熱狂や興奮を注意深く避けているようである。この演奏方針だとオーケストラ奏者からは好かれるのではないだろうか。 かくして没後10年を迎える頃に、私のマゼールを巡る長い戸惑いは霧が晴れるように晴れて行った。今は、マゼールの録音を探しては聴いている。 今回のボックス化は大歓迎だ。Decca,Warner,Telarc,RCA=SONYなどの他、バイロイトでのライヴなどもぜひまとめて欲しいものだし、映像もできるだけ良い条件でまとめて貰いたい。 マゼールの輝かしい経歴とショーン・コネリーのような癖のある風貌から想像される音楽と、彼が目指した音楽のずれが、長い間、私のマゼールへの理解を阻んでいたのである。 恐らく、ジャーナリストも、こうした聴衆のギャップを埋めるような適格なインタビューを構成できなかったのだろう。彼が世を去って10年が経とうとしている今、ようやく彼のことが分かった気がする。 彼にとって不運だったのは、彼のキャリアの晩年にCDの新規録音が全体に減ってしまい、晩年の彼の録音が残らなかったことだ。 今回のDGのボックスにも、DGから晩年に発売されたニューヨーク・フィルでのライヴは収録されていない。加えて、彼の録音が必ずしもカタログに多く残っていない。 没後10周年までは、このボックスを楽しもうと思う。

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