CD 輸入盤

ロリン・マゼール/ドイツ・グラモフォン録音全集(39CD)

基本情報

ジャンル
:
カタログNo
:
4863243
組み枚数
:
39
レーベル
:
Dg
:
Europe
フォーマット
:
CD
その他
:
限定盤,輸入盤

商品説明


没後10年を前に20世紀の名指揮者によるDG録音の集大成。CD39枚組ボックス・セット

ロリン・マゼールは間違いなく20世紀の偉大な指揮者のひとりです。9歳でレオポルド・ストコフスキーの招きでフィラデルフィア管弦楽団を指揮し、11歳でアルトゥーロ・トスカニーニのNBC交響楽団を指揮しました。1957年に有名なチャイコフスキーのアルバムでドイツ・グラモフォンに録音を開始。最初に音楽監督を務めたのはベルリン・ドイツ・オペラとベルリン放送交響楽団で、その後ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団とともに多くの録音を行いました。長い指揮者人生の中でマゼールはフランス国立管弦楽団の音楽監督、ウィーン国立歌劇場の総監督、バイエルン放送交響楽団の首席指揮者、ニューヨーク・フィルハーモニックの音楽監督など、多くの重要なポストに就きました。1980年から1986年までウィーン・フィルハーモニー管弦楽団とのニューイヤー・コンサートを行いましたが、その後1994年、1996年、1999年、2005年のコンサートも指揮しました。2024年に没後10年を迎えるマゼールのドイツ・グラモフォンへのすべての録音が初めてまとめて発売されます。CD39枚組ボックス・セット。限定盤。
 グラモフォン誌に「最高の録音」と書かれたマゼールによるラヴェルの歌劇『子供と魔法』『スペインの時』、そしてベートーヴェンの交響曲第5番とシューベルトの『未完成』交響曲も収録されています。
 オリジナル・ジャケット仕様。タリー・ポッターによるエッセイが掲載された80ページのブックレット付き(欧文)。

「ここにあるのは音楽です(…)私たちには音楽が必要です。なぜならそれが人々の真の言語だから。言葉は実際には何も表現していません。そこにはいろいろと障害があるからです。それらは違う人々にとって違うことを意味してしまいます。しかし音は魂から魂へと飛んで行き、そこに絆を作り、一瞬で理解できるものです。世界中を旅している私たちは皆、そのことを理解しています。コミュニケーションは一瞬で、文化や心の状態を通して正しく伝わります。それは素晴らしいことです。音楽は私たちの言語であり、私たちの真の言語です。人類が実際に持っているたった一つの言語なのです」〜ロリン・マゼール(輸入元情報)

 初期のマゼールについて

【マゼールとヨーロッパ】
マゼールはまだ26歳だった1957年、ドイツ・グラモフォンでカラヤンより先にベルリン・フィルとのレコーディングを開始するという異例の扱いを受けた指揮者でした。8歳で指揮者デビューしたマゼールは、10歳のときにはNBC交響楽団の夏期公演でも指揮、続いてニューヨーク・フィルも指揮して大きな注目を集めるほどの天才でした。
その後、1952年にイタリアに留学してバッハなどバロック音楽を勉強、帰国後はボストンのバークシャー音楽センターでさらに指揮を学び、翌1953年にはヨーロッパに戻ってイタリアで指揮者デビューして成功を収めることとなります。

【マゼールとドイツ・グラモフォン】
そのデビュー公演がきっかけとなって、マゼールはヨーロッパ各地のオーケストラに客演を重ねるようになり、次第に知名度を高めてドイツ・グラモフォンと契約を結ぶに至ります。
マゼールのレコーディング・デビューは、1957年2月におこなわれたベルリオーズ、チャイコフスキー、プロコフィエフによる3つの『ロメオとジュリエット』を収めた2枚組アルバムで、ベルリン・フィルとの録音でした。 このデビュー盤は、ドイツ・グラモフォンがステレオ録音を本格導入する前におこなわれたためモノラルとなってしまいましたが、セッション録音なので音質は聴きやすい水準です。
その9か月後にベルリン放送交響楽団と録音したストラヴィンスキーの『火の鳥』組曲と『うぐいすの歌』はステレオ録音で、以降のアルバムはすべてステレオとなり、1965年までの8年間にベルリン・フィルを中心に、ベルリン放送響、フランス国立放送管とおこなわれた勢いのある演奏を楽しむことができます。

【当時のマゼール】
ちなみにこの時期のマゼールは、1960年に史上最年少でバイロイト・デビューを果たし、1963年にはザルツブルク音楽祭にも出演したほか、ベルリン・ドイツ・オペラ日本公演ではベームらと共に来日、『トリスタンとイゾルデ』の日本初演をおこなった後、東京交響楽団、読売日本交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団を指揮したりもしていました。
そうした成功を受けて、1964年には、亡くなったフリッチャイの後を継いでベルリン放送交響楽団の首席指揮者となり、翌1965年には、ホルライザーの後任としてベルリン・ドイツ・オペラの音楽監督にも就任しています。
また、マゼールは英語のほかにドイツ語、フランス語、イタリア語に堪能で、そうした背景もあってか、フランスのオーケストラを頻繁に指揮し、さらにフランス語のオペラの録音までおこなっていたといいますから、その活動範囲の広さは驚異的。
シャープな芸風だった若きマゼールは、当時破竹の勢いだったカラヤンの対抗勢力として大いに注目を集め、ドイツ・グラモフォン、EMIに続いてデッカやフィリップス、コンサート・ホール・レーベルなどへも録音を開始、バロックから近代に至る幅広いレパートリーを取り上げ、若手指揮者としては異例の活躍ぶりを見せていました。(HMV)


【収録情報】
Disc1-2
● ベルリオーズ:劇的交響曲『ロメオとジュリエット』 Op.17より

 1. キャピュレット家の饗宴(第2部)
 2. マブ女王または夢の妖精(スケルツォ)(第4部)
 3. 愛の場面(第3部)
 4. キャピュレット家の墓地におけるロメオ(第4部)
● チャイコフスキー:幻想序曲『ロメオとジュリエット』
● プロコフィエフ:『ロメオとジュリエット』組曲第2番 Op.64bより

 第1曲:モンタギュー家とキャピュレット家
 第4曲:踊り
 第7曲:ジュリエットの墓の前のロメオ
 第6曲:アンティル諸島から来た娘たちの踊り
● プロコフィエフ:『ロメオとジュリエット』組曲第1番 Op.64aより
 第7曲:タイボルトの死

 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
 ロリン・マゼール
(指揮)

 録音:1957年6月、ベルリン(モノラル)

若い頃から大作を得意としていたマゼールは、ベルリオーズの『ロメオとジュリエット』も各地で演奏、ライヴ録音も遺されていますが、抜粋とはいえレコーディング・デビューまで『ロメオとジュリエット』というのはすごい話です。組み合わせのチャイコフスキーとプロコフィエフの『ロメオとジュリエット』も好んで指揮していた作品で、2人の主人公の劇的な恋愛と周囲の闘争を描き上げるという題材をマゼールが濃密に描きあげます。(HMV)
Disc3
ストラヴィンスキー:
● 『火の鳥』組曲(1919年版)

 序奏
 火の鳥のヴァリアシオン
 王女たちのロンド
 魔王カスチェイの凶悪な踊り
 子守歌
 終曲
● 交響詩『ナイチンゲールの歌』
 導入部
 中国の行進曲
 ナイチンゲールの歌
 機械仕掛けのナイチンゲールの演奏

 ベルリン放送交響楽団
 ロリン・マゼール
(指揮)

 録音:1957年11月、ベルリン(ステレオ)

27歳のマゼールによる傑作。緩急の幅を広くとり、リズム的な要素も重視した見事な演奏。組み合わせはレパートリーの広かったマゼールならではの『うぐいすの歌(ナイチンゲールの歌)』というのも面白いところです。(HMV)
Disc4
ベートーヴェン:
1. 交響曲第5番ハ短調 Op.67『運命』
2. 『献堂式』序曲 Op.124

 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
 ロリン・マゼール
(指揮)

 録音:1958年6月(1)、5月(2)、ベルリン(ステレオ)

ベートーヴェンを得意としていたベルリン・フィルは、この録音の2ヶ月前にはクリュイタンスと『運命』をセッション録音、半年前にはカラヤンと日本公演でも演奏して映像収録をおこなっていました。マゼールの指揮は迫力も緊迫感も抒情美も兼ね備えた高水準なもの。組み合わせが当時は非常に珍しかった『献堂式』序曲というのも秀逸。バロック風な要素を感じさせる音楽が心地よく演奏されています。(HMV)
Disc5
ブラームス:
● 交響曲第3番ヘ長調 Op.90
● 悲劇的序曲 Op.81

 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
 ロリン・マゼール
(指揮)

 録音:1959年1月、ベルリン(ステレオ)

ブラームスを得意としたマゼールですが、キャリアの初期からその表現力は図抜けていました。ここでも起伏の激しい演奏で作品の面白さを引き出しています。11分で駆け抜ける『悲劇的序曲』での緊迫した音楽も最高です。(HMV)
Disc6
1. レスピーギ:交響詩『ローマの松』

 ボルゲーゼ荘の松
 カタコンブ付近の松
 ジャニコロの松
 アッピア街道の松
2. ムソルグスキー/リムスキー=コルサコフ編:交響詩『禿山の一夜』
3. リムスキー=コルサコフ:スペイン奇想曲 Op.34

 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
 ロリン・マゼール
(指揮)

 録音:1958年12月(1,3)、1959年2月(2)、ベルリン(ステレオ)

ベルリン・フィルの重厚な機能美が徹底的に活かされたマゼール若き日の快演。(HMV)
Disc7
シューベルト:
● 交響曲第4番ハ短調 D.417『悲劇的』
● 交響曲第8番ロ短調 D.759『未完成』

 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
 ロリン・マゼール
(指揮)

 録音:1959年11月、ベルリン(ステレオ)

ダイナミックに開始される交響曲第4番『悲劇的』は第1楽章の長大な序奏部をロマンティックに美しく描き、快速な主部とのコントラストも鮮やかな演奏。『未完成』はちょうど1年後のクリュイタンスがベルリン・フィルを指揮した録音と比較すると張り詰めた印象が強く、金管の扱いなど規模感の大きな演奏に仕上がっています。(HMV)
Disc8
モーツァルト:
● 交響曲第1番変ホ長調 K.16
● 交響曲第28番ハ長調 K.200
● 交響曲第41番ハ長調 K.551『ジュピター』

 フランス国立放送管弦楽団
 ロリン・マゼール
(指揮)

 録音:1960年1月、パリ(ステレオ)

モーツァルトが8歳の時に書いた交響曲第1番と、18歳の時の第28番、そして32歳の時に書かれた第41番『ジュピター』の3曲を収録。第1番終楽章にはのちの第41番終楽章を予見させる旋律があらわれ、また第28番第3楽章は第41番第3楽章と似た素材が使用されるなど共通項を持った作品の組みあわせです。(HMV)
Disc9
ベートーヴェン:
1. 交響曲第6番ヘ長調 Op.68『田園』
2. 12のコントルダンス WoO14

 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
 ロリン・マゼール
(指揮)

 録音:1960年3月(1)、4月(2)、ベルリン(ステレオ)

『田園』は1959年の11月から12月と、1960年3月にかけての録音。1960年3月といえば、同じベルリン・フィルを指揮してクリュイタンスが有名なセッション録音をおこなった月でもありますが、若きマゼールの『田園』も歌とノリのバランスが良い演奏です。組みあわせの「12のコントルダンス」は、第7曲に交響曲第3番『英雄』終楽章に使われた旋律があらわれることでも有名な作品。(HMV)
Disc10
● ラヴェル:歌劇『子供と魔法』


 子供:フランソワーズ・オジェア(ソプラノ)
 火、お姫様、うぐいす:シルヴェーヌ・ジルマ(ソプラノ)
 ママ、ティーカップ、とんぼ:ジャニーヌ・コラール(メゾ・ソプラノ)
 安楽椅子、白猫、リス、羊飼い:ジャーヌ・ベルビエ(ソプラノ)
 こうもり、ふくろう、羊飼いの娘:コレット・エルゾグ(ソプラノ)
 肘掛椅子、樹:ハインツ・レーフス(バス)
 振り子時計、黒猫:カミーユ・モラーヌ(バリトン)
 ティーポット、数字のこびと、カエル:ミシェル・セネシャル(テノール)
 フランス国立放送合唱団
 フランス国立放送少年合唱団
 フランス国立放送管弦楽団
 ロリン・マゼール
(指揮)

 録音:1960年11月、パリ(ステレオ)

子供と子供が破壊したさまざまなモノたちの織りなす短いドタバタ・オペラ。ラヴェルのオーケストレーションの見事さと、面白いコロラトゥーラも含むモノたちの多彩な歌が聴きものです。名歌手カミーユ・モラーヌまで出演した豪華なキャストです。(HMV)
Disc11
メンデルスゾーン:
1. 交響曲第4番イ長調 Op.90『イタリア』
2. 交響曲第5番ニ短調 Op.107『宗教改革』

 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
 ロリン・マゼール
(指揮)

 録音:1960年4月(1)、1961年1月(2)、ベルリン(ステレオ)

若きマゼールの芸風を象徴するかのような切れ味鋭くよく弾む演奏。特に『イタリア』は作品との相性も良く、初期ロマン派らしい爽やかさがたまりません。21歳の時に書かれた『宗教改革』では、ベルリン・フィルの管楽器の落ち着いた色調が敬虔な雰囲気を醸しだす第1楽章序奏部や終楽章のコラール主題「神はわがやぐら」が聴きものですが、速い部分の切れ味も素晴らしく、若きメンデルスゾーンの天才ぶりを鮮やかに描き出します。(HMV)
Disc12
シューベルト:
● 交響曲第5番変ロ長調 D.485
● 交響曲第6番ハ長調 D.589

 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
 ロリン・マゼール
(指揮)

 録音:1961年1月、ベルリン(ステレオ)

軽やかで親しみやすい交響曲第5番はロココ風な雰囲気をもつ作品。一方、第6番は第1楽章序奏部などにベートーヴェンの影響が垣間見えるものの、のちの『グレート』に繋がる素材とその展開など重要な特徴も備えています。マゼール指揮ベルリン・フィルは、快活な演奏によって両作品の個性を描き分けています。(HMV)
Disc13
● フランク:交響曲ニ短調

 ベルリン放送交響楽団
 ロリン・マゼール
(指揮)

 録音:1961年1月、ベルリン(ステレオ)

ブルックナーの8番やマーラーの交響曲第1番第1稿とほぼ同じ時期に書かれたフランクの交響曲は、オーケストレーションも大変に充実した傑作。マゼールは旋律一辺倒になることなく各楽器をくっきりと鳴らし、すごい迫力と立体的な音響を実現しています。情報量の多さと先鋭な表情が圧倒的なユニークな演奏です。(HMV)
Disc14
1. ブリテン:青少年のための管弦楽入門 Op.34
2. プロコフィエフ:交響的物語『ピーターと狼』 Op.67


 ロリン・マゼール(ナレーター&テキスト作成:1)
 アレック・クランズ(ナレーター:2)
 フランス国立管弦楽団
 ロリン・マゼール
(指揮)

 録音:1962年2月、パリ(ステレオ)
Disc15
● チャイコフスキー:交響曲第4番ヘ短調 Op.36

 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
 ロリン・マゼール
(指揮)

 録音:1960年6月、ベルリン(ステレオ)

この録音の3ヶ月前にはカラヤンがEMIにこの交響曲第4番をセッション録音していました。会場があちらはグリューネヴァルト教会、こちらはイエス・キリスト教会という違いはありますが、同時期のベルリン・フィルで個性の異なる素晴らしい演奏がおこなわれていたことになります。特にマゼールのシャープでたたみかけるような迫力は聴きものです。(HMV)
Disc16
シューベルト:
● 交響曲第2番変ロ長調 D.125
● 交響曲第3番ニ長調 D.200

 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
 ロリン・マゼール
(指揮)

 録音:1962年3月、ベルリン(ステレオ)

モーツァルトの39番やベートーヴェンの『プロメテウスの創造物』を思わせる部分など驚く部分もある第2番など、若きシューベルトがモーツァルトやベートーヴェン、ハイドンの影響を強く受けながら作曲した作品の組み合わせ。(HMV)
Disc17
● ラヴェル:歌劇『スペインの時』


 コンセプシオン:ジャーヌ・ベルビエ(ソプラノ)
 トルケマダ(時計屋):ジャン・ジロドー(テノール)
 ラミロ(ラバ曳き)ガブリエル・バキエ(バリトン)
 ドン・イニーゴ(銀行家):ジョゼ・ヴァン・ダム(バス)
 ゴンサルヴェ(学生):ミシェル・セネシャル(テノール)
 フランス国立放送管弦楽団
 ロリン・マゼール
(指揮)

 録音:1965年2月、パリ(ステレオ)

浮気好きなコンセプシオンをめぐる短いドタバタ・オペラ。ラヴェルが人物の性格描写をオーケストラで入念におこなっていることでも知られており、また、にぎやかな時計の音も楽しい聴きものになっています。(HMV)
Disc18
ファリャ:
1. バレエ組曲『恋は魔術師』

 序奏と情景
 洞窟の中で
 悩ましい愛の歌
 亡霊
 恐怖の踊り
 魔法の輪
 真夜中
 火祭りの踊り
 情景
 きつね火の歌
 パントマイム
 愛の戯れの踊り
 フィナーレ(暁の鐘)
2. 『三角帽子』第1組曲より
 粉屋の女房の踊り(ファンダンゴ)
3. 『三角帽子』第2組曲より
 隣人たちの踊り(セギディーリャス)
 粉屋の踊り(ファルーカ)
 終幕の踊り(ホタ)

 グレース・バンブリー(メゾ・ソプラノ:1)
 ベルリン放送交響楽団
 ロリン・マゼール
(指揮)

 録音:1965年6月、ベルリン(ステレオ)

パリで7年間暮らしていたファリャは、第1次世界大戦勃発と共に、中立政策をとっていたスペインに帰国、そこで作曲したのが『恋は魔術師』と『三角帽子』で、ここでは前者の組曲と、後者の抜粋を収録しています。どちらもスペインの民族主義的な素材とフランスの印象主義の影響を受けたカラフルで生き生きとした作曲技法が結びついた音楽で、マゼールはその管弦楽法の魅力をシャープな切り口でフルに引き出しています。なお、『恋は魔術師』で歌っているメゾ・ソプラノのグレース・バンブリーは1961年のバイロイト音楽祭で大喝采を浴びたアメリカ人歌手です。(HMV)
Disc19-20
● ヴェルディ:歌劇『ルイーザ・ミラー』全曲


 ルイーザ・ミラー:カーティア・リッチャレッリ(ソプラノ)
 ロドルフォ:プラシド・ドミンゴ(テノール)
 フェデリカ:エレナ・オブラツォワ(メゾ・ソプラノ)
 ミラー:レナート・ブルゾン(バリトン)
 ヴァルター伯爵:グウィン・ハウエル(バス)
 ヴルム:ウラディミーロ・ガンツァローリ(バス・バリトン)
 ラウラ:オードリー・ミッチェル(ソプラノ)
 農夫:ルイジ・デ・コラート(バリトン)
 コヴェント・ガーデン王立歌劇場管弦楽団&合唱団
 ロリン・マゼール
(指揮)

 録音:1979年6月、ロンドン(ステレオ)
Disc21
バルトーク:
● 管弦楽のための協奏曲 Sz.116
● 2つの映像 Sz.46(花ざかり/村の踊り)

 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
 ロリン・マゼール
(指揮)

 録音:1979年12月、ベルリン(ステレオ)
Disc22
チャイコフスキー:
● ヴァイオリン協奏曲ニ長調 Op.35
● 憂鬱なセレナード Op.26

 ギドン・クレーメル
(ヴァイオリン)
 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
 ロリン・マゼール
(指揮)

 録音:1979年12月、ベルリン(デジタル)
Disc23
● ニューイヤー・コンサート 1980


1. J.シュトラウス2世:喜歌劇『こうもり』序曲
2. J.シュトラウス2世:新ピチカート・ポルカ Op.449
3. J.シュトラウス2世:常動曲 Op.257
4. J.シュトラウス2世:ワルツ『ウィーン気質』 Op.354
5. J.シュトラウス2世:山賊のギャロップ Op.378
6. J.シュトラウス2世:喜歌劇『こうもり』よりチャルダーシュ『ふるさとの調べよ』
7. ヨーゼフ・シュトラウス:ポルカ『ことづて』 Op.240
8. オッフェンバック:喜歌劇『天国と地獄』序曲
9. J.シュトラウス2世:行進曲『フランツ・ヨーゼフ1世万歳』 Op.126
10. J.シュトラウス2世:ポルカ『蜃気楼』 Op.330
11. ツィーラー:ポルカ『気もはればれと』 Op.386
12. J.シュトラウス2世:ワルツ『美しく青きドナウ』 Op.314
13. J.シュトラウス1世:ラデツキー行進曲 Op.228

 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
 ロリン・マゼール
(指揮)

 録音:1980年1月、ウィーン(デジタル/ライヴ)
Disc24
● ニューイヤー・コンサート 1981


1. J.シュトラウス2世:喜歌劇『ジプシー男爵』より入場行進曲
2. J.シュトラウス2世:ワルツ『南国のばら』 Op.388
3. J.シュトラウス2世&ヨーゼフ・シュトラウス:ピチカート・ポルカ
4. ヨーゼフ・シュトラウス:ポルカ・シュネル『憂いもなく』 Op.271
5. ヨーゼフ・シュトラウス:ワルツ『トランスアクツィオン』 Op.184
6. J.シュトラウス1世:ギャロップ『ため息』 Op.9
7. J.シュトラウス2世:ポルカ・シュネル『恋と踊りに熱中』 Op.393
8. J.シュトラウス2世:トリッチ・トラッチ・ポルカ Op.214
9. ヨーゼフ・シュトラウス:ポルカ・マズルカ『女心』 Op.166
10. J.シュトラウス2世:ワルツ『春の声』 Op.410
11. J.シュトラウス2世:エジプト行進曲 Op.335
12. J.シュトラウス2世:加速度円舞曲 Op.234
13. J.シュトラウス2世:ポルカ・シュネル『浮気心』 Op.319
14. J.シュトラウス2世:爆発ポルカ Op.43(M.シェーンヘル編)

 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
 ロリン・マゼール(指揮)

 録音:1981年1月、ウィーン(デジタル/ライヴ)
Disc25
● ドヴォルザーク:交響曲第8番ト長調 Op.88

 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
 ロリン・マゼール
(指揮)

 録音:1981年3月、ウィーン(デジタル)
Disc26
● ツェムリンスキー:抒情交響曲 Op.18

 ユリア・ヴァラディ
(ソプラノ)
 ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(バリトン)
 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
 ロリン・マゼール
(指揮)

 録音:1981年3月、ベルリン(デジタル)
Disc27
ラフマニノフ:
● 交響曲第3番イ短調 Op.44
● 交響詩『死の島』 Op.29

 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
 ロリン・マゼール
(指揮)

 録音:1981年11月、ベルリン(デジタル)
Disc28
● ニューイヤー・コンサート 1982


1. J.シュトラウス2世:皇帝円舞曲 Op.437
2. J.シュトラウス2世:ポルカ・シュネル『エレクトロファー』 Op.297
3. J.シュトラウス2世:ポルカ・フランセーズ『どういたしまして』 Op.372
4. エドゥアルト・シュトラウス:ポルカ・シュネル『駅伝馬車で』 Op.259
5. ヨーゼフ・シュトラウス:ワルツ『うわごと』 Op.212
6. ニコライ:歌劇『ウィンザーの陽気な女房たち』序曲
7. J.シュトラウス1世:カチューシャ・ギャロップ Op.97(M.シェーンヘル編)
8. ヨーゼフ・シュトラウス:鍛冶屋のポルカ Op.269(合唱ヴァージョン)
9. J.シュトラウス2世:ワルツ『もろびと手をとり』 Op.443
10. J.シュトラウス2世:ポルカ・シュネル『観光列車』 Op.281
11. J.シュトラウス1世:ラデツキー行進曲 Op.228

 ウィーン少年合唱団(3,8)
 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
 ロリン・マゼール
(指揮)

 録音:1982年1月、ウィーン(デジタル/ライヴ)
Disc29
ドヴォルザーク:
● 交響曲第9番ホ短調 Op.95『新世界より』
● 序曲『謝肉祭』 Op.92

 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
 ロリン・マゼール
(指揮)

 録音:1982年10月、ウィーン(デジタル)
Disc30
● ラフマニノフ:交響曲第2番ホ短調 Op.27

 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
 ロリン・マゼール
(指揮)

 録音:1982年12月、ベルリン
Disc31
● ニューイヤー・コンサート 1983


1. J.シュトラウス2世:ワルツ『ウィーンのボンボン』 Op.307
2. ヨーゼフ・シュトラウス:ポルカ・シュネル『自転車』 Op.259
3. ヨーゼフ・シュトラウス:ポルカ・マズルカ『とんぼ』 Op.204
4. J.シュトラウス2世:ポルカ・シュネル『ハンガリー万歳』 Op.332
5. J.シュトラウス2世:ワルツ『ウィーンの森の物語』 Op.325
6. ヨーゼフ・シュトラウス:喜歌劇『ヴェネツィアの一夜』序曲
7. J.シュトラウス2世:ポルカ・シュネル『百発百中』 Op.326
8. J.シュトラウス2世:ワルツ『レモンの花咲くところ』 Op.364
9. ヨーゼフ・シュトラウス:ポルカ・マズルカ『遠方から』 Op.270
10. J.シュトラウス2世:喜歌劇『インディゴと40人の盗賊』序曲

 カール・スヴォボダ(ツィター:5)
 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
 ロリン・マゼール
(指揮)

 録音:1983年1月、ウィーン(デジタル/ライヴ)
Disc32
● ニューイヤー・コンサート 1980〜83


1. J.シュトラウス2世:喜歌劇『くるまば草』序曲
2. ヨーゼフ・シュトラウス:ポルカ・マズルカ『踊るミューズ』 Op.266
3. ヨーゼフ・シュトラウス:ワルツ『天体の音楽』 Op.235
4. J.シュトラウス2世:ポルカ・シュネル『雷鳴と電光』 Op.324
5. J.シュトラウス2世:ワルツ『朝の新聞』 Op.279
6. ヨーゼフ・シュトラウス:ポルカ・マズルカ『解放された女』 Op.282
7. ヨーゼフ・シュトラウス:ワルツ『水彩画』 Op.258
8. ランナー:ワルツ『宮廷舞踏会』 Op.161

 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
 ロリン・マゼール
(指揮)

 録音:1980〜1983年、ウィーン(デジタル/ライヴ)
Disc33
● ドヴォルザーク:交響曲第7番ニ短調 Op.70

 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
 ロリン・マゼール
(指揮)

 録音:1983年2月、ウィーン(デジタル)
Disc34
R.シュトラウス:
1. 交響詩『ツァラトゥストラはかく語りき』 Op.30
2. 交響詩『マクベス』 Op.23


 ライナー・キュッヒル(ヴァイオリン・ソロ:1)
 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
 ロリン・マゼール
(指揮)

 録音:1983年2月、ウィーン(デジタル)
Disc35
ラフマニノフ:
● 交響的舞曲 Op.45
● 歌劇『アレコ』より間奏曲
● ヴォカリーズ Op.34-14

 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
 ロリン・マゼール
(指揮)

 録音:1983年3月、ベルリン(デジタル)
Disc36
● R.シュトラウス:家庭交響曲 Op.53

 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
 ロリン・マゼール
(指揮)

 録音:1983年10月、ウィーン(デジタル/ライヴ)
Disc37
ベルリオーズ:
1. 交響曲『イタリアのハロルド』 Op.16
2. 序曲『ローマの謝肉祭』 Op.9


 ヴォルフラム・クリスト(ヴィオラ:1)
 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
 ロリン・マゼール
(指揮)

 録音:1984年4月、ベルリン(デジタル)
Disc38
ラフマニノフ:
1. 交響曲第1番ニ短調 Op.13
2. 幻想曲『岩』 Op.7

 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
 ロリン・マゼール
(指揮)

 録音:1984年4月(1)、6月(2)、ベルリン
Disc39
● リムスキー=コルサコフ:交響組曲『シェエラザード』 Op.35


 レオン・シュピーラー(ヴァイオリン・ソロ)
 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
 ロリン・マゼール
(指揮)

 録音:1985年2月、ベルリン(デジタル)


 マゼール年表

ロリン・マゼールは2014年7月13日、アメリカのヴァージニア州キャッスルトンにある自宅で、肺炎とその合併症のため亡くなられました。2013年春にはミュンヘン・フィルとの日本公演を精力的におこなっていたマゼールですが、晩年の数ヶ月は体調が思わしくなかったようで、ボストン交響楽団との日本公演や、PMF(パシフィック・ミュージック・フェスティバル)での来日もキャンセル、ミュンヘン・フィルの首席指揮者も辞任するなど健康状態が心配されていた矢先のことでした。

 長大なキャリアと膨大な録音

マゼールのプロ指揮者としてのキャリアは60年を超えており、膨大な数のレコーディングも遺しています。今後は、DG、DECCA、PHILIPS、EMI、SONY、RCA、EURODISCなど有名音源については、ボックス化が進むものと思われますし、ライヴ録音や映像などについても復活・再編や発掘をぜひ期待したいところです。

 1930年代

1930年3月6日、パリ近郊で、ユダヤ系でロシア系の父と、ハンガリー系でロシア系の母の間に誕生し、ほどなくアメリカに移住。ピッツバーグで育ったマゼールは、幼少期から音楽的才能を示し、4歳でピアノ、5歳でヴァイオリン、7歳で指揮を学び、8歳でアイダホの大学のオーケストラを相手にシューベルトの『未完成』で指揮者デビュー。翌年にはニューヨークの世界博覧会に出演してオーケストラを指揮、天才少年指揮者として大きな話題となりました。

 1940年代

10歳のときにNBC交響楽団の夏期公演でも指揮、続いてニューヨーク・フィルも指揮して注目を集めます。
 しかしマゼールはその間も学業は継続、ピッツバーグ大学に在籍して哲学や語学など学ぶ一方で、バカレイニコフに就いて指揮とヴァイオリンの研鑽を積み、ピッツバーグ交響楽団でもヴァイオリン奏者として演奏、さらにアート弦楽四重奏団も結成するなどして活躍、1949年にはピッツバーグ交響楽団副指揮者となっています。

 1950年代

1952年にイタリアに留学してバッハなどバロック音楽を勉強、帰国後はボストンのバークシャー音楽センターでさらに指揮を学び、1953年にはイタリアでも指揮者デビューして成功を収め、それがきっかけとなってヨーロッパ各地のオーケストラに客演を重ね、次第に知名度を高めて行きます。

レコーディングなど
マゼールのレコーディング・デビューは、1957年、DGへのベルリオーズ『ロメオとジュリエット』抜粋ほかを収めたアルバムで、ベルリン・フィルとの録音でした。このデビュー盤はモノラルでしたが、当時のレコード業界は本格的にステレオ録音を導入しはじめた時期だったこともあり、マゼールはこの時期、主にベルリン・フィルを指揮して数多くのステレオ録音を残すこととなります。

 1960年代

1960年、マゼールは史上最年少でバイロイト・デビューを果たし、1963年にはザルツブルク音楽祭にも出演したほか、ベルリン・ドイツ・オペラ日本公演ではベームらと共に来日、『トリスタンとイゾルデ』の日本初演をおこなった後、東京交響楽団、読売日本交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団を指揮しています。
 そうした成功を受けて、1964年には、亡くなったフリッチャイの後を継いでベルリン放送交響楽団の首席指揮者となり、翌1965年には、ホルライザーの後任としてベルリン・ドイツ・オペラの音楽監督に就任しています。

レコーディングなど
シャープな芸風だった若きマゼールは、当時破竹の勢いだったカラヤンの対抗勢力として大いに注目を集め、DG、EMIに続いてDECCAへの録音も開始、ウィーン・フィルを指揮したシベリウスとチャイコフスキーの交響曲全集など多くのレコーディングに取り組みます。
 一方で、PHILIPSには、手兵となったベルリン放送交響楽団との録音をおこない、バロックから近代に至る幅広いレパートリーを取り上げるなど、若手指揮者としては異例の活躍ぶりを見せていました。
 ほかにも、コンサート・ホール・レーベルへのブルックナー3番やマーラー4番など、面白いアルバムが多数制作されていました。

 1970年代

1970年から72年にかけて、高齢のクレンペラーを補佐する役割でニュー・フィルハーモニア管弦楽団の準指揮者を務め、1972年にはジョージ・セル亡き後のクリーヴランド管弦楽団に音楽監督として登場。1976年にはフランス国立管弦楽団の客演指揮者も兼任していました。

レコーディングなど
それまでのDECCAやEMIに加え、SONYとTELARCへのレコーディングも新たに開始、前者ではマルチ系、後者ではワンポイント系のマイク・セッティングによる録音という、性格の違いのはっきりしたサウンド・ポリシーにも対応して見事な演奏を聴かせています。
 また、オイロディスク・レーベルでレコーディングした、アンナ・モッフォとの『カルメン』や、コーガンとのメンデルスゾーンも記憶に残る素晴らしい内容でした。
 オペラ映画『ドン・ジョヴァンニ』もこの時期の代表作といえるものです。

 1980年代

1982年にはウィーン国立歌劇場の音楽総監督に就任。しかし、政治家とのトラブルのため、1984年には辞任してしまいます。
 同年、故郷にあるピッツバーグ交響楽団の音楽顧問に就任したマゼールは、1988年には同楽団の音楽監督となり、1996年まで務めあげています。

レコーディングなど
この時期のマゼールは、久々にベルリン・フィルとの録音をおこなうようになり、DGとEMIへの一連の録音のほか、TELARCでも『ニーベルングの指環』編曲集(1987)を録音していました。SONYではピッツバーグ響といくつものアルバムを制作し、DECCAではミラノ・スカラ座での『アイーダ』を録音するなど華々しい活躍を見せていました、
 オペラ映画『カルメン』も素晴らしい内容です。

 1990年代

1993年にバイエルン放送響の首席指揮者に就任。着任当初はピッツバーグ交響楽団の首席指揮者も兼ねていましたが、1996年からはこのバイエルンとの活動に専念し、細部まで凝った解釈と多彩なレパートリーでオーケストラの表現の可能性を拡大。2002年まで充実した演奏活動を展開していました。

レコーディングなど
RCAとの録音を開始。バイエルン放送響やウィーン・フィルと多くのアルバムを制作しています。SONYではスカラ座での『西部の娘』など収録。

 2000年代

2002年には、ニューヨーク・フィルの音楽監督に就任、2004年には、イタリアのパルマに本拠を置くアルトゥーロ・トスカニーニ・フィル(トスカニーニ響とも)の音楽監督も兼務し、さらに各地のオーケストラへの客演も継続される多忙な中、自作のオペラ『1984』をロンドンのロイヤル・オペラで初演するなど、その活動ぶりには実にエネルギッシュなものがありました。ちなみにニューヨーク・フィルの音楽監督は2009年まで務めています。

レコーディングなど
映像では、ベルリン・フィルとの交響組曲『ニーベルングの指環』(2000 LIVE)、スカラ座での『椿姫』(2007)、フェニーチェ座での『椿姫』(2004)、マゼール&ニューヨーク・フィル・イン平壌(2008)、フェニーチェ座ニューイヤー・コンサート(2004)、ウィーン・フィル・ニューイヤー・コンサート(2005)、トスカニーニ響とのヴェルディ:レクィエム(2007)などがあります。

 2010年代

2010年の大晦日、東京文化会館でベートーヴェンの全交響曲を指揮するというスタミナで驚かせました。2012年には82歳の高齢でミュンヘン・フィルの首席指揮者となり、2013年には日本も含むワールド・ツアーを展開。しかし、2014年の春には体調が悪化し、7月13日、ヴァージニア州キャッスルトンの自宅で亡くなります。84歳でした。

レコーディングなど
フィルハーモニア管とのマーラー第1・2・3番(2011 SIGNUM)、フィルハーモニア管とのマーラー第4・5・6番(2011 SIGNUM)、ミュンヘン・フィルとのブルックナー交響曲第3番(2012 SONY)など。
 映像では、ウィーン・フィル、シェーンブルン夏の夜のコンサート(2013)、バレンシアでのファリャ『はかない人生』(2010)など。(HMV)


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マゼールのイメージと言えば、「鬼才」「ク...

投稿日:2023/09/30 (土)

マゼールのイメージと言えば、「鬼才」「クール」というような単語が浮かぶように思う。私には、彼は長らく捉えどころのない指揮者だった。広いレパートリー、巧みな統率力を備えつつ、数多くのポストを渡り歩く、神童から天才になった人物。だが、彼の専門的なレパートリーは何なのか?バーンスタイン=マーラー、チェリビダッケ=ブルックナーのような特定の作曲家との結びつき、あるいは、小澤=ボストン、カラヤン=BPОのような特定の楽団とのそれもない。 しかし、最近ようやく分かった気がする。 甘い物を食べたい、しかし太りたくない、とすればどうするだろう。同じように、クラシック音楽を聴き、しかし、バースタインのような熱狂は疲れるし、チェリビダッケのような集中もやり切れない、カラヤンのような耽美も息苦しいとなると、俄然、指揮者の巨大な自我の押し付けのないマゼールの行き方の意味と価値が分かる。 「個性を売る」ということのために、音楽本来の姿以上にデフォルメをした演奏に対して、マゼールは一線を画している。彼は拍を整理し、それぞれのパートの分離を明晰に示し、各奏者が歌いやすいように指揮している。その姿は室内楽団のような風景だ。 このように明晰な演奏家は他にブーレーズ以外はいないだろう。ブーレーズの領分がほぼ20世紀の音楽であるので、客観主義は理解できる。しかし、マゼールはそれ以外の分野でも、客観的、つまり、音楽の造形と響きの美しさで聴かせる。熱狂や興奮を注意深く避けているようである。この演奏方針だとオーケストラ奏者からは好かれるのではないだろうか。 かくして没後10年を迎える頃に、私のマゼールを巡る長い戸惑いは霧が晴れるように晴れて行った。今は、マゼールの録音を探しては聴いている。 今回のボックス化は大歓迎だ。Decca,Warner,Telarc,RCA=SONYなどの他、バイロイトでのライヴなどもぜひまとめて欲しいものだし、映像もできるだけ良い条件でまとめて貰いたい。 マゼールの輝かしい経歴とショーン・コネリーのような癖のある風貌から想像される音楽と、彼が目指した音楽のずれが、長い間、私のマゼールへの理解を阻んでいたのである。 恐らく、ジャーナリストも、こうした聴衆のギャップを埋めるような適格なインタビューを構成できなかったのだろう。彼が世を去って10年が経とうとしている今、ようやく彼のことが分かった気がする。 彼にとって不運だったのは、彼のキャリアの晩年にCDの新規録音が全体に減ってしまい、晩年の彼の録音が残らなかったことだ。 今回のDGのボックスにも、DGから晩年に発売されたニューヨーク・フィルでのライヴは収録されていない。加えて、彼の録音が必ずしもカタログに多く残っていない。 没後10周年までは、このボックスを楽しもうと思う。

slave さん | 東京都 | 不明

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