【インタビュー】TRI STATE CORNER

2018年12月20日 (木) 21:00

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 2月にレフュージとの来日公演が控えているトライ・ステイト・コーナー。ヴォーカルは、現レイジのドラマー、ヴァシリオス“ラッキー”マニアトプロス。そしてドラムは、元レイジ、現レフュージのクリス・エフティミアディスが叩いている。ラッキーに色々と話を聞いてみた。

川嶋未来(以下、川嶋):トライ・ステイト・コーナーのニュー・アルバム『ヒーロー』が、ついにここ日本でも発売になります。これはどのようなアルバムだと言えますか。

ラッキー:『ヒーロー』は俺たちの5枚目の作品で、バンドとしてはもう15年目になる。ここに至るまで、ブズーキなどの素晴らしいオリエンタルな要素とハードロックを、どのようにミックスするのかをずっと探って来た。それがこのアルバムではうまくまとまったと思う。アルバムを聴いた人はみんな、このバンドのやりたいことがわかってくれるんじゃないかな。それから、このアルバムは3部作の最終作でもある。つまりこのアルバムは、6−7年かけて続けて来たストーリーの結末であり、バンドとしての完成型でもあると言うことさ。

川嶋:その3部作のコンセプトはどのようなものですか。

ラッキー:3部作は、11年の『Historia』というアルバムからスタートしたのだけど、これは60年代初頭の移民の話なんだ。故郷を離れ、外国を目指し、戦争や経済状態のせいで祖国では成し遂げられなかった愛や成功を見つける人たちの話さ。俺たちの両親の実話に基づいているんだ。俺はギリシャ人で、俺の両親を始め、当時の移民はみんな、何かを成し遂げるためにドイツを目指したのさ。両親の時代はとても大変だったんだよ。彼らの素晴らしい、そしてクレイジーなストーリーをアルバムのコンセプトの中心にしたんだ。続く2作目、『Home』では、現在の俺たちの様子をテーマにした。両親たちが移住をした結果、現在の俺たちが今、外国の地でどんな困難に直面しているのか。2つの異なった文化の狭間で生きるとはどういうことなのか、異なった言語の中で暮らすとはどういうことなのか。そして、俺たちが世界をどのように見ているかを描いている。そして3部作の最後となる『ヒーロー』のテーマは未来。つまり、歴史、現在、未来という構成になっているんだ。世界はこの先どうなるのか。どう発展していくのか。俺たちは、経済のことばかりではなく、人間のことを考えるべきだ。数字や機能ばかりに捕らわれるのではなくね。『ヒーロー』というタイトルだけど、実際にヒーローがいるというわけではない。ヒーローは、それぞれの内面に存在しているんだ。世界をより良いものにしていくためのヒーローがね。

川嶋:現在もヨーロッパを中心に、移民の問題は拡大しています。このあたりもコンセプトに影響しているのでしょうか。

ラッキー:もちろんしているよ。だけど正直なところ、このストーリーを書き始めた7−8年前には、こういう状況には気づいていなかった。こういう問題が、時代に関わらず起こることだということがわかっていなかったんだ。俺のストーリーは確かに60年代初頭のことだけれど、これは同時に現在の状況も反映している。政治の状況などのせいで、国を離れなくてはいけない人たちは、いつの時代にも存在するのさ。こういうことは60年代、70年代、80年代、そして現在も存在していて、20年後にも無くなっていないだろう。問題に目をつぶるべきではなく、さまざまな人たちと共存して、より大きな価値を見出せるよう解決策を見つけるべきなんだ。

川嶋:トライ・ステイト・コーナーの音楽は、ハードロックとギリシャの音楽を混ぜたものなのですか。それとも、例えばトルコやアラブの音楽も射程に入っているのでしょうか。

ラッキー:とても良い質問だね。こういう質問は大好きさ。というのも、たいていはブズーキというギリシャの楽器にばかり焦点が当たるからね。そもそもブズーキは、トルコも含まれていたビザンティン時代の楽器なんだ。俺はトルコ音楽も大好きだよ。モロッコやチュニジアといった国々でも、似たような楽器が使われていた。だから俺は、自分の音楽をグリーク・ハード・ロックとは呼びたくない。これはオリエンタルな影響を受けたハードロックなのさ。俺が大好きなバンドの1つにMyrathがいる。彼らはチュニジア出身で、日本でライヴを見て話もしたのだけど、彼らも俺たちと同じ考えを持っているんだ。つまり、彼らはチュニジアだけではなく、モロッコやアルジェリアやトルコ、ギリシャの音楽にも目を配っている。これらの国々の音楽には、共通したオリエンタルなスタイルがあるからね。

川嶋:オリエンタルな音楽の特徴はどのようなものだと思いますか。いわゆる西洋の音楽とは、どんな点が違うのでしょう。

ラッキー:雰囲気やハーモニーが全然違う。どちらの音楽も、使っている音の数は一緒だ。だけど、その組み合わせの仕方で、特徴が出てくるのさ。アイルランド、スカンディナヴィア、日本、インド。いずれの国の音楽も、それぞれの伝統に従ったやり方でハーモニーを作っていて、それぞれでやり方が異なっている。そのやり方を、普通のハードロックに取り込んで、かつ双方をうまく生かすというのは少々トリッキーなんだ。

川嶋:それはつまりスケール(音階)の違いということでしょうか。

ラッキー:そう、スケールとハーモニー。それから音楽に込める基本的なムード。ギリシャやオリエンタルな音楽は、たいていメランコリックな雰囲気を持っている。だから、スーパーハッピーなギリシャの音楽を書くというのは難しいんだよ。特別な感情を込めて、雰囲気とハーモニーを作って、それぞれ個性的なタッチを生んでいくのさ。

川嶋:オリエンタルな要素と伝統的なハードロックをミックスする際、もっとも難しい部分はどのようなところでしょう。

ラッキー:これも良い質問だね。実を言うと、今はもう特段難しいことはない。15年続けて、もう100曲近く書いたからね。初めは、俺たちがやっているのはハードロックの影響を受けたギリシャ音楽なのか、それともギリシャ・スタイルのハードロックなのかと言うことを常に考えていた。オリエンタル・スタイルと言うべきかな。これがはっきりしていなかったせいで、一体どの程度ギリシャの要素を入れるべきなのかが、よくわからなかった。結局は、俺たちはロックバンドなんだよ。ロックの要素を持ったギリシャ音楽をやっているのではなくてね。ギリシャに行けば、当然ロックバンドは沢山いる。だけど、どこの国においても理解をしてもらえるやり方で、ギリシャ音楽を取り入れているロックバンドは多くない。やっぱりどの程度ギリシャ音楽を加えていくべきかというさじ加減が難しかったね。

川嶋:今はトライ・ステイト・コーナーとしてのスタイルが完成したということですね。

ラッキー:バンドとして、考えなくてもちょうど良いバランスでやれると言う地点に達したんだと思う。ミュージシャンとして、深く考えず、感情を解放すれば自然とバンドとしての音楽が湧き上がってくるということがあるだろ。心から湧き上がってくるものでないことを試しても、意味がないからね。深く考えなくても、自然にパーフェクトなものが作れる状態になったということさ。

川嶋:ライヴでブズーキをフィーチャするのは、やはり難しいですか。何しろ轟音のギターやドラムに混じって演奏しなくてはいけないですし。

ラッキー:最初は難しかった。どんなバンドでも、音域については考えなくては行けない。優秀なミキサーはそれがわかっているよね。この楽器には中帯域を割り当てて、ヴォーカルはここ、みたいな感じで。例えば、ライヴで1つの楽器だけを取り出すと決して良い音ではないかもしれないけど、すべてを混ぜ合わせると素晴らしいと言うことが起こりうる。それがミックスというものだからね。やっぱり最初は、ブズーキみたいな楽器をどういう帯域に割り当てるべきか、よくわからなかったんだ。ブズーキは高帯域が多く出るのだけど、これとヴォーカルやバッキング・ヴォーカルがぶつからないようにするにはどうすればいいかとか、とてもデリケートな問題だった。だけど、さすがにライヴも500回くらいやって、作品も5枚も作ったから、今ではどうすればいいかわかっているよ。ブズーキはアコースティックな楽器だから、ハードなギターやベースの中で、非常に気を使ってミックスしなければいけないけれど。

川嶋:バンド名のトライ・ステイト・コーナーというのは、どのような意味なのでしょう。

ラッキー:"Tri State Corner"というのは、英語で3つの国が接するポイントという意味なんだ。例えばヨーロッパでは、ドイツ、オランダ、ベルギーが同時に接しているポイントがある。アジアにもあるはずだよ。ロシア、モンゴル、中国とか。俺たちは、ドイツに住んでいるギリシャ人とポーランド人ということで、このバンド名にしたんだよ。3つの国が1つのスポットに集まっているという意味でね。

川嶋:あなたの生い立ちについて教えてください。先ほどご両親はギリシャから移住されたとのことでしたが、あなた自身はドイツ生まれですか。

ラッキー:俺は生まれもドイツなんだ。祖父は第2次世界大戦の時に、ドイツ軍にギリシャから連れてこられたんだ。その後、彼はギリシャに戻って結婚をして、母を生んだ。そして母が3歳の時に、ドイツに移住したんだよ。父と母はドイツで知り合って結婚したのさ。父もギリシャ人さ。俺はドイツで生まれたけど、年に1度はギリシャに行って、ギリシャ語の勉強もした。

川嶋:なるほど。では、もともとギリシャの音楽や文化にも通じていたんですね。

ラッキー:そう、ギリシャの音楽は、CDを持っていなくても、もともとたくさん知っている。子どもの頃からたくさん聞いてきたからね。ギリシャの音楽も言葉も、俺にとってまったく自然なものさ。読み書きも普通にできる。ドイツ語もギリシャ語も同じように学んできたからね。どちらも同じレベルで話せるんだよ。2つの文化についても同じように通じている。両方が俺の中に存在しているから、両者を区別するのも難しいくらいさ。俺の父親もミュージシャンだったんだ。数年前に亡くなってしまったけど。俺と兄貴は、親父と一緒に20年間トラディショナルなギリシャ音楽をプレイしていたのさ。だからギリシャ音楽をやるというのも、俺にとっては当たり前のことなんだよ。


川嶋:トライ・ステイト・コーナーのブズーキ・プレイヤー、イオアニスとはご兄弟なんですよね。

ラッキー:そう、兄だよ。彼はただ兄貴というだけでなく、俺にとっては親友で、最高のミュージシャン、そして世界で最高の人間だよ。

川嶋:あなたの音楽的バックグラウンドはどのようなものですか。どのようにして音楽の道に入ったのでしょう。

ラッキー:これは少々興味深い話だよ。さっきも言ったように、親父はミュージシャンで、子供達も音楽学校に通わせていたんだ。だけど子供は音楽学校なんて行きたくないからね。外でサッカーをやりたいものさ。まあ、とにかく6−7歳の頃、無理やり音楽学校に通わされてね、音楽の基礎を学ばされたんだ。嫌だったけど、選択権はなかったし、楽しくはなかったよ(笑)。遊んでいる方が良いからね。ところが2−3年も続けていると、音楽の楽しさというものがわかり始めた。そして兄貴は、父親が望んだように、ギリシャ音楽の道を進み始めたんだ。ギリシャ音楽に、自分の世界を見出したんだよ。だけど、俺は違った。俺はロックが好きになってね。アイアン・メイデンやスレイヤーとか。それで、しばらくの間、兄貴と俺はまったく別の道を歩んでいたのだけど、結局再び一緒にトライ・ステイト・コーナーをやることになったというわけさ。俺は14歳の頃、レイジが大好きだった。部屋にポスターを貼りまくって、彼らのライヴを観るために、親父に200−300kmも離れたところまで連れていってもらうほどのファンだった。当時コンサートの会場で、たまたまクリスと話す機会を得て、直接「ドラムを教えてください」ってお願いしたんだよ。俺たちはそうやって知り合ったんだ。それでクリスが7年ほどレッスンをしてくれた。俺はレイジのドラムテックもやっていた。モーターヘッドやサクソンなどともツアーをしたよ。俺は15歳か16歳だった。そして30年後、俺がレイジのドラマーで、クリスが俺のバンドのドラマーなんだからさ。クレイジーだよね。トライ・ステイト・コーナーは、ただのバンドじゃないよ。俺たちは友達であり家族であり、お互いが大好きで、リスペクトもし合っている。

川嶋:あなたはダラブッカもプレイされますよね。

ラッキー:そう、これはギリシャのコンガみたいな楽器だよ。俺はドラマーだし、ギリシャの伝統音楽もわかるから、オリエンタルなタッチを加えるために使ってる。ライヴでも叩くよ。とても特徴的な音がするし、ドラマーとしてはパーカッションを叩くのは素晴らしいことだからね。俺はこのバンドではシンガーだけど、ドラムを叩くのが大好きだから。

川嶋:あれはアラブの楽器なんですよね。

ラッキー:そう、元々はアラブの楽器で、19世紀初めにギリシャに伝わったんだ。ブズーキも元々トルコの楽器だしね。ギリシャの伝統楽器ではあるけれど、トルコから伝わったのさ。

川嶋:トルコを発祥とする楽器は多いですよね。

ラッキー:その通りだよ。トルコの音楽は最高さ。トルコには才能のあるミュージシャンも沢山いるし。

川嶋:では、ハードロックやメタルに限った場合、どのようなバンドから影響を受けているのですか。

ラッキー:一番大きな影響は、やっぱりドリーム・シアターだね。彼らは様々な音楽を取り入れている、とてつもない才能を持ったバンドさ。彼らのライヴは27回も見たことあるよ。それからラッシュからの影響もある。俺はレッド・ツェッペリンやレインボー、イエス、ラッシュ、ナザレスなんかを聴いて育ったんだ。メタルに関しては、俺はジューダス・プリースト・ボーイだった。メタリカやメタル・チャーチ、フロットサム・アンド・ジェットサムとかも大好きだった。ロニー・ジェイムス・ディオ、ブラック・サバスとかね。子供の頃はこういう音楽を吸収する以外のことは何もしていなかったほどさ。

川嶋:お好きなヴォーカリストは誰ですか。

ラッキー:一番好きなヴォーカリストとなると、ジェフ・テイトだね。幸いなことに、彼とは個人的な知り合いになることができた。『オペレーション:マインドクライム』や『エンパイア』における彼は、ただ単に素晴らしいヴォーカリストというだけではなく、素晴らしいミュージシャンでもある。ただ1つの楽器、つまり彼の場合は声が優れているというだけではなくて、ミュージシャンとして素晴らしいということ。彼は声に様々なものを込めることができるけれど、これは練習して習得できることではないよ。それから2番目は、もちろんロニー・ジェイムス・ディオ。彼はマスターだよね。

川嶋:ご自身のことはシンガー、ドラマー、どちらだと思っていますか。

ラッキー:俺はミュージック・ラバーさ。俺は音楽を愛しているんだ。音楽を聴くのも書くのも、ドラムをプレイするのも、コンサートに行くのも、すべて大好きなのさ。レイジでドラムを叩くのも、このバンドで歌うのも、どちらも大好きなんだよ。違うメガネをかけるだけのこと。ヴォーカリストとしてのメガネか、ドラマーとしてのメガネか。しかし、結局どちらも音楽であることに変わりはない。どっちも大好きさ。まあ、トライ・ステイト・コーナーは自分のバンドで、自分で曲も書いているから、ちょっとこっちの方が好きかもしれないけどね。レイジはピーヴィーのベイビーだからね。俺がその一部であることに感謝をしているよ。

川嶋:先ほどMyrathの名前が出ましたが、他にもシンパシーを覚えるバンドはいますか。

ラッキー:Myrathは本当に、ここ何年かで1番好きなバンドだよ。彼らの音楽がどれほど俺の心を動かしたのかは言い尽くせないほどさ。彼らとラウドパークであった時に、俺にサインを求めてきたけど、「俺は君のサインが欲しいよ」って言ったんだ(笑)。彼らのCDもTシャツも買ったよ。他にも好きなバンドはいるよ。アルター・ブリッジとかね。マーク・トレモンティの。レイジで世界中のフェスティヴアルを回っていると、色々なバンドと親しくなって、そうなると彼らの音楽にも注意を払うようになる。例えばプリティ・メイズなんかも大好きになった。素晴らしいバンドだよね。

川嶋:お気に入りのアルバムを3枚教えてください。

ラッキー:これは俺にとっては簡単な質問だよ。クイーンズライクの『オペレーション:マインドクライム』。それからドリーム・シアターの『イメージズ・アンド・ワーズ』。この2枚はずっと大好きだね。それから3枚目は、驚くなかれ、レイジの『XIII』(笑)!自分が所属するバンドだから言ってるんじゃないよ。これは本当に素晴らしいアルバムだ。初めて聴いたときはブッ飛んだね。

川嶋:2月に日本での初ライヴが行われますが。

ラッキー:イエス!俺たちにとって初めての日本でのライヴだから、どのような見せ方をするのがベストかを考えているんだ。みんな俺たちのことを知らないだろうからね。俺はレイジのメンバーだし、クリスがドラムを叩いているということで、どういうバンドなのか調べている人はいるかもしれないけど、ほとんどの人は俺たちの音楽を聞いたことがないだろう。だけど、反応を伺ってライヴをやるのではなく、俺たちの旅へと誘うようなステージにしたいと思ってるんだ。45分間の、これまで体験したことのないような旅さ。

川嶋:では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。

ラッキー:日本のファンのみなさん、俺はレイジのメンバーとして3度日本に行っているけれど、俺のバンドであるトライ・ステイト・コーナーでまた日本に行って、みんなと時間を共有できるというのは、最高に名誉なことだ。俺に親切にしてくれてきた人たちにありがとうと言いたい。あの美しい国に行って、またみんなに会えるのを楽しみにしているよ。Stay tuned and see you soon!

取材・文 川嶋未来


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