【インタビュー】RISE OF THE NORTHSTAR

2018年11月14日 (水) 18:30

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 バンド名は『北斗の拳』、衣装は学ラン。フランス発日本大好きクロスオーヴァー・バンド、ライズ・オブ・ザ・ノーススターが、ニュー・アルバム『SHIの伝承』をリリースするということで、ヴォーカリストのヴィティアにいろいろと話を聞いてみた。

川嶋未来(以下、川嶋):ニュー・アルバム『SHIの伝承』が発売になります。デビュー作と比べてどのような点が進化していると言えるでしょう。

ヴィティア:今回は良いプロダクションを得るのにとても時間をかけた。これは以前のアルバムにはなかったことだよ。それに今回初めて7弦ギターを使ったんだ。アルバムの半分の曲で7弦ギターを使ったから、とてもヘヴィな仕上がりになってるし、とても暗い雰囲気がある作品になっていると思う。それにこのアルバムは、初のコンセプト・アルバムなんだ。収録曲のうち4曲が、ストーリーに沿った内容になっていて、とても世界観のある作品になっている。日本のマンガを参照するだけでなく、俺自身の人生のストーリーも盛り込んであるんだ。これも初の試みだよ。

川嶋:タイトルはどのような意味なのですか。「SHI」とは何を意味しているのですか。

ヴィティア:1、2、3、SHIだよ(笑)。SHIというのは主人公の名前なんだ。アルバムのストーリーは、俺自身と主人公であるSHIの絆についてさ。SHIが俺に憑依をして、そのSHIとの関係を通じて自分自身を発見していくという内容なんだ。一体憑依をしているのはどちらの方なのか、というのが最終的に導かれる疑問になっている。

川嶋:「SHI」は師、士、四、死、詩など、たくさんの意味がありますからね。

ヴィティア:まさにポイントはそこなんだよ。だからこそ主人公の名前を「SHI」にしたのさ!「SHI」をどう解釈するかはリスナー次第なんだ。「SHI」に複数の意味があることに気付いてくれたのはとてもうれしいよ。

川嶋:アルバムは日本人女性による語りが入っていますが。

ヴィティア:シホという日本語・フランス語のバイリンガル女性に手伝ってもらってるんだ。ビデオの日本語字幕なども彼女にやってもらっている。彼女は映画『ドラゴンボール』のフランス語版の翻訳もやっているプロフェッショナルな翻訳者さ。

川嶋:先ほど収録曲のうち4曲がコンセプトになっているとのことでしたが、どの4曲なのですか。

ヴィティア:1曲目の「ジ・アウェイクニング」でストーリーが始まる。これは幼少期のことだよ。この曲の最後に、サムライの声が聞こえるだろう?これがSHIの目覚めだ。それから「爆発が起きた」で、俺とSHIの関係を語っている。だからこれをファースト・シングルにしたんだ。デビュー作『Welcame』と、今のライズ・オブ・ザ・ノーススターの間の話さ。この曲では俺たち自身、そしてSHIについて歌っている。この曲のビデオにはSHIも登場するよ。それから「小僧」。この曲ではさらにストーリーの深い部分へと入っていって、エンディングは俺とSHIの会話になっている。これはライヴでも俺とSHIの掛け合いとして再現される予定だ。「皆は一人の為に」は、俺とSHIの闘いだ。憑依をしているのはどちらなのか、ということ。この4曲がストーリーに関わっているんだ。つまり1、2、3、SHIということ(笑)。

川嶋:「爆発が起きた」には、「テンシマト」という日本語らしき単語が出てきますが、これはどういう意味なのですか。

ヴィティア:(笑)。『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-』というマンガに出て来るキャラクターが使う技の名前だよ。

川嶋:「熱血」では渋谷という地名が出てきますね。なぜ渋谷なのでしょう。

ヴィティア:2008年にバンドを始めてからずっと「渋谷」という地名を使い続けてるんだ。渋谷というのは、若者が集まる非常にダイナミックな場所だろう?バンドを始めたときから、ずっと渋谷に行きたいと思っていたんだ。だから今でも歌詞の中に渋谷を登場させるようにしているんだよ。

川嶋:「小僧」とは何を指しているのですか。

ヴィティア:SHIは何世紀も生きているキャラクターという設定だからね。彼の目から見れば、俺は「小僧」だという意味さ(笑)。

川嶋:「不良の到来」には、1910という数字が出てきますが、これは何を意味しているのですか。

ヴィティア:言葉遊びだよ。1910年にパリで大きな洪水があったんだ。言葉のフロウ(言い回し)と、洪水における水のフロウ(流れ)をかけているんだ(笑)。 川嶋:この曲には「サイタマ」という言葉も出てきますよね。

ヴィティア:『ワンパンマン』だよ。主人公がサイタマという名前なんだ。このマンガでは、サイタマがワンパンチでどんなやつも殺してしまう。だから俺も同じように、「ワン・パンチライン」(注:パンチラインはヒップホップ用語。決め台詞のような意味)でみんなを殺るっていうわけさ。ライズ・オブ・ザ・ノーススターはメタル・バンドだけど、ラップからも大きな影響を受けているから、パンチラインがたくさんあるのさ。

川嶋:なるほど。日本人は「サイタマ」と聞くと、一番に「埼玉」という東京の隣の県を思い浮かべてしまうんですよ。

ヴィティア:(爆笑)。なるほど。確かに埼玉県ってあるね(笑)。

川嶋:今回のアルバムでも、さまざまな日本のマンガからの引用が見受けられますが、具体的にどんな作品が使われているのでしょう。

ヴィティア:たくさんありすぎて、すべての歌詞を見ながらでないと思い出せないよ(笑)。ぜひ自分たちで何の引用なのか、見つけ出してほしいね。

川嶋:バンド名は、どのように決めたのでしょう。

ヴィティア:『北斗の拳』という日本のマンガの英語タイトル、「フィスト・オブ・ザ・ノース・スター」からインスパイアされた。日本からインスピレーションを受けて、アメリカ音楽をプレイするフランスのバンドだから、俺たちの名前にぴったりだと思う。

川嶋:バンド名に『北斗の拳』を選んだとういことは、これが一番お気に入りのマンガということなのでしょうか。

ヴィティア:最も気に入っている作品の1つではあるね。お気に入りはたくさんありすぎるから(笑)。

川嶋:『北斗の拳』はどのようにして知ったのですか。テレビでしょうか。

ヴィティア:最初はフランスのテレビで見たんだ。だけどその後マンガを読んで、それで大ファンになったんだよ。

川嶋:フランス版のテレビ・アニメは、かなり改変されていると聞いたことがあるのですが。

ヴィティア:そうなんだよ。テレビ版は検閲されていて、いくつかのシーンがカットされたり、血が赤ではなく紫になっていたりね。テレビで『北斗の拳』を見たのは、4歳の頃だった。フランスのアニメ・チャンネルで、ほかのアニメに混じって放送されていたんだよ。まあそんな小さい子まで見るわけだからね。さすがに暴力シーンがカットされるのも仕方がない。だけど紙のマンガの方は、オリジナルと同じものだった。

川嶋:確かに改めて考えるとめちゃくちゃヴァイオレントな内容でしたよね。

ヴィティア:(爆笑)

川嶋:日本の文化に興味を持ったきっかけは何だったのですか。

ヴィティア:テレビで日本のアニメを見たのがきっかけだね。そこからマンガであるとか、色々と日本の文化に興味を持つようになったんだ。日本の文化のおかげで、絵を描くということにも目覚めた。グラフィック・アーティストを目指していたこともあって、有名なグラフィックの学校にも通っていたんだ。『Welcame』も、今回のアルバムも、ジャケットなどをデザインしたのは俺なんだ。バンドのマーチャンダイズもデザインしているよ。


川嶋:学ランがあなたたちの衣装ですが、このアイデアはどのように出てきたのでしょう。

ヴィティア:『スラムダンク』や『ROOKIES』といったマンガからインスパイアされたのだけど、学ランを着ることは俺にとってとても自然なことだった。学ランを着てステージに上がるというのは子どものころやりたいと思っていたことなんだ。

川嶋:ライズ・オブ・ザ・ノーススターの音楽を、無理やりにでもカテゴライズするとしたらどうなりますか。

ヴィティア:アルバムに入っている曲のタイトルどおりだよ。「This Is Crossover」。メタル、ラップ、ハードコア、そしてマンガのクロスオーヴァーさ。ここでも4つの要素が出て来る。4(SHI)というのは、今回のアルバムにたびたび出て来る要素なのさ。

川嶋:音楽的に影響を受けたバンドというと、どのあたりでしょう。

ヴィティア:バンド全体ではなく、俺個人ということになるけれど、Rage Against Machine、Wu-Tang Clan、Machine Headのファースト、Biohazard、ロスのdownset.。Slipknotはバンドみんなが好きだね。それからフランスのラップ・グループNTM。

川嶋:日本には何度も来られていますよね。

ヴィティア:バンドとしては3回行ってる。

川嶋:実際に日本に来てみて、それまで抱いていた印象と変わった部分はありますか。

ヴィティア:初めて日本に行ったときから、一度もがっかりさせられたことはないよ。あまりに期待が高すぎたゆえに、がっかりさせられてしまうことってあるだろう?日本にはもちろん高い期待を持っていたのだけど、実際にその期待に応えてくれたよ。ますます日本が好きになったね。

川嶋:お気に入りのアルバム3枚を教えてください。

ヴィティア:難しいな(笑)。Rage Against Machineのファースト。Metallicaのブラック・アルバム。あとは何だろう。Deftonesのセカンド(『Around the Fur』)かな。

川嶋:現在のフランスのメタル・シーンはどんな感じですか。シンパシーを感じるバンドなどはいますでしょうか。

(フランス語で、「フランスのシーンは良くないよ」「本当?」という、ヴィティアと通訳のやりとりが聞こえる)

川嶋:フランスのシーンは良くないって言いましたよね?

ヴィティア:(大爆笑)。フランスには確かにたくさんのバンドがいるし、以前に比べるとバンドのクオリティも高くなってきている。だけど彼らはもっと高い志を持つべきだと思うんだよ。フランスに留まっていないで、国外にも目を向けるべきだ。シンパシーを感じるバンドということであれば、The Great Divideかな。彼らとはとても仲が良いんだ。ただ、基本的に俺たちは自分たちのことに一生懸命で、なかなか他のバンドには目が行かないんだよ。

川嶋:隣国のドイツがメタル大国なのに対し、フランスというのはあまりメタルな国という印象がありません。このような文化の違いは、どのような理由によるものだと思いますか。

ヴィティア:フランスと比べると、ドイツのマーケットというのはロックを歓迎する傾向にあると思う。フランスのマーケットは確かにメタル向きではないのだけど、これはおそらくフランスの文化というのが、常に文学や言葉というものを中心にしてきたからではないかな。それにメタルというものは、基本的に英語で歌う海外のバンドが中心だからね。英語で歌うということは、フランスにおけるマーケットを狭めてしまうということになる。フランスではラップがとても人気があるのだけど、ラップというのはまさに言葉が中心だろう?これが文学中心のフランスの文化に合致しているんだと思う。俺はフランス人だから、フランス語で歌詞を書きたいという欲求があって、だから今回のアルバムではフランス語のパートがたくさんあるんだ。

川嶋:では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。

ヴィティア:また日本に行くのが待ちきれないよ。デビュー・アルバムは、ただのイントロダクションでしかなかったからね。今回のアルバムで、ぜひもっと多くの人に俺たちのことを知ってほしい。日本という国は、フランスと同じくらい大好きだから、ぜひまた日本でプレイしたい。

 ヴィティアがいかに日本を愛しているか、よくわかっていただけたと思う。ニュー・アルバムの『SHIの伝承』という邦題も、日本側でつけたものではない。『Legend of SHI』という原題に加え、『SHIの伝承』という日本語タイトルが、もともとついているのだ!それだけではない。すべての曲に、邦題がもともとついているのである。そしてまた「SHI」だけがアルファベット表記になっているのも絶妙だ。「肝心の『SHI』を漢字表記しなければ、何のことかわからないだろう!」なんて早合点してしまいがちだが、「SHI」というわずか1文字の言葉が持つ意味の多様性を利用するため、あえてアルファベット表記をしているというのだから頭が下がる。(私はどうしても、一休さんの「しの字のひとやすみ」というエピソードを思い出してしまう。将軍様に、何十メートルもありそうな巨大な紙いっぱいに有難い言葉を書いてみせろ、と迫られた一休さんは、ただ一文字「し」と書いてみせる。「し」ほどさまざまな意味を持ち、かつ深い言葉はない、というオチだったように記憶している。)

 外見からして学ランの不良スタイル。EPのジャケットにデカデカと「意気地」なんて漢字で書いてあったり、14年のデビュー・アルバム『Welcame』のアートワークは、あのマンガ丸出しだったり、さらには「暴走族」なんていうストレートすぎるタイトルの曲が入っていたりと、あまりに日本への愛が強くまっすぐすぎるため、ライズ・オブ・ザ・ノーススターの真価は見誤られがちな部分もあるだろう。だが、東日本大震災の際には「Phoenix」という曲を作り、その売上を寄付までしてくれた彼らの愛は、ホンモノ中のホンモノなのだ。そしてそれは、音楽についても同じ。Agnostic FrontやMadballといった、ガチガチのNYHCのバンドが支持を表明していることからもわかるとおり、彼らのバンドとしての実力は、やはりホンモノなのだ。日本に対する愛も本気。音楽に対する姿勢も本気。彼らはそれこそ熱血マンガを地で行くようなバンド。ライズ・オブ・ザ・ノーススターは、ここ日本でこそもっともっと知られるべき存在である。

取材・文 川嶋未来


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