【インタビュー】フレデリク・ルクレール

2018年11月05日 (月) 20:30

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 来日公演迫るスーパースター・エクストリーム・メタル・バンド、シンセイナム。そのブレーンであるフレデリク・ルクレールに、いろいろと話を聞いてみた。

川嶋未来(以下、川嶋):シンセイナムのニュー・アルバム『リパルション・フォー・ヒューマニティ』がリリースになりました。リアクションはどうですか。

フレデリク:基本的に良いよ。良いレビューはもちろん嬉しいことだけど、その話はしても面白く無いからね。悪いレビューの話をしよう。

悪いレビューなんてありました?

フレデリク:あったよ。ファースト・アルバムは、非常に型どおりのデス・メタルのアルバムだっただろう?公式どおりのね。だけど今回は、まったく好き勝手にやったから。面白かったのは、何人かが「このアルバムは長すぎる」って文句を言っていたこと。ファック!CDだって安いものじゃないからね。値段に見合う長さにしようと思っただけなんだけど。まあ、すべてのファンを満足させることはできないから。アルバムは60分ちょっとあるけど、別に全部聴く必要はないだろ?疲れたらストップすればいい。映画の場合は長くても途中で止めるのは難しいけどさ。アルバムが退屈だって言うならわかる。でも、長いって文句を言うのはアホらしいよ。「ショーンとアッティラのツイン・ヴォーカルが素晴らしい」なんていうレビューも面白かったな。今回アッティラはほとんど歌っていないのに。「ドラゴンフォースの影響も大きい」なんていうのもあった。

その意見には賛成できないですか?

フレデリク:まったくできないよ。もちろんこのアルバムのヴァイブをきちんととらえた素晴らしいレビューもたくさんあった。基本的には良いレビューが大半なのだけど、俺としては悪いレビューを読む方が好きなんだ。色々な考えがあるということがわかって。「インタールードが無い」って言う文句もあったな。

確かにファースト・アルバムはインタールードがたくさん入っていましたよね。

フレデリク:そう。ファーストを出した時は「インタールードが多すぎて、アルバムの流れが悪い」というがネガティヴなレビューの決まり文句だったのだけど。「マイ・スワン・ソング」をすごく褒める人がいたかと思うと、「こんなの遅くてクソだ」っていうレビューもあった。「ブラック・メタル色が少ない」なんていう意見もあったけど、俺に言わせれば「マイ・スワン・ソング」なんてブラック・メタルそのものだよ。Darkthroneみたいなね。良いレビューはありがたいし、悪いレビューは面白いよ。正直なところ、時々Twitterで「君の意見は間違ってるよ」って言ってやりたくなることもあるけどね。

ロブ・フリンはやりましたよね。Decibel Magazineの酷評にSNS上で反論して。

フレデリク:ロブはそういうことを我慢しないタイプだよね。彼はそういうことをやりそうなキャラクターだとみんなに思われているし。ファンも、ロブのそういう行動を期待している。だけど俺はキャラじゃないからなあ。俺がレビューに文句をつけたら、やっぱり感じが悪いだろうね。もちろん誰しもアルバムを気に入らない権利というのは持っていると思う。そもそも『リパルション・フォー・ヒューマニティ』のコンセプトは、「人間が嫌い」ということだし。もし俺がそういうキャラだったのなら、「君は間違ってるよ。これは完全にブラック・メタルだ。君は自分の言っていることがわからないようだね」、「この曲はスラッシュからの影響なんて皆無だ」なんて言ってもいいんだけど。

(笑)。ロブは、今やレビューなんていうものに意味がないと言っていましたが。

フレデリク:俺が10代の頃、レビューを読んでいた時は、これを書いているやつはエキスパートであるべきだと思っていた。雑誌に書いて、お金をもらって生活しているのだからね。ところが今はインターネットのおかげで、誰でも気軽にレビューができるようになった。それは素晴らしいことだけど、同時に誰でも音楽ジャーナリストのふりをすることができるということ。カメラに向かって「このアルバムは〜」なんていう具合に。そういうものには確かにあまり意味はないかもしれない。俺が10代の頃、つまり数年前(笑)、俺が大好きだったアルバムに悪い評価がつけられていた記憶もある。My Dying Brideの『Turn Loose the Swans』のような本当に素晴らしいアルバムにね。『Cowboy from Hell』がボロクソに書かれてるのも読んだ。B面がつまらないとかって。あの頃はA面、B面があったから。そういう意味で、レビューというのは意味がないというのはわかる。だけど一方で、アーティストとしては良いレビューを書いてもらうというのは重要なことさ。あまり音楽をよく知らない層は、今でもそういうレビューを参考にしているからね。最近は音楽のチョイスもすごく多くなっているし。まあレビューを書いている人間が、自分の言っていることをわかっているとは思わない。不満を抱えたミュージシャンが書いているケースもあるし。今回の俺たちのアルバムが、フランスの雑誌でものすごく良いことを書かれているのに、点数が3/5というのもあった。好きなら5点つけてくれと思うんだけどね。俺は音楽ファンとして、レビューを読むのは好きなんだ。例えば俺はIron Maidenの『No Prayer for the Dying』が大好きなのだけど、みんなこのアルバムが嫌いだよね。

私もまったく好きじゃありません。

フレデリク:(笑)。俺はこれが初めて聞いたIron Maidenのアルバムだったから、その影響もあると思う。あれは『Virtual XI』よりずっといいよ。

まあそれはそうですけど。

フレデリク:最近のアルバムよりもずっといい。最新作は全然良くなかったし。『No Prayer for the Dying』の方がよっぽどいいよ。『Seventh Son of a Seventh Son』の後に出たから、見落とされがちなアルバムだけど。インターネットで、俺と同じ意見の人を見つけるのも面白いし、逆に俺が大好きなアルバムが酷評されているのも興味深い。レビューは重要だよ。だけど、そのレビューが真実とは限らない。自分の作品のレビューを読んで、正直傷つくこともあるけど、基本的には気にしないよ。

今は、YouTubeとかで何でも聴けるじゃないですか。気になる音源があったら、直接聴けば良い。だけど80年は、そもそも試聴する術もなかったので、レビューの持つ意味はとても大きかったのだと思います。

フレデリク:そうなんだけどね。だけどYouTubeにも大量の音楽があるだろ。良いレビューがつけば、YouTubeで聴いてもらえる可能性も高まるよ。俺は新作のレビューは全く読まないけど。最近は雑誌も全く買わないし、Behemothの新作の評判がどうかなんかなんて調べたりもしない。知りたいことがあれば、自分で直接見るようにしてる。でも今でもレビューを読んで、参考にしている人たちはいるからね。

ところでシンセイナムのツアーが始まりますが、どこを回るのですか。

フレデリク:フランスから始まってヨーロッパを回る。イタリアとスペインは行かないけど。いや、イタリアは行くな。スペインとポルトガルに行かないんだ。まあいいや。その後ロシアに行く。あと、香港、台北、タイも行くよ。

それは日本のあとですか?

フレデリク:いや、前。日本で少しゆっくりしようと思ったんだけどね。ブッキング・エージェントにアジアのショウを入れられちゃった(笑)。東京のショウの翌日はオフなんだけど、その後オーストラリアとニュージーランドに行く。

アメリカは行かないのでしょうか。

フレデリク:予定はあったのだけど。よく知ってるバンドとのパッケージ・ツアーで、4バンドの一番手をやる予定だったんだ。俺たちはバンドとしては新人だから。だけど結局3バンドでのツアーということに決まったらしく、俺たちは行かないことになった。アメリカのマーケットはまた違うからね。ジョーイのファンは多いだろうけど、やっぱりデス・メタルというジャンルはそれほど人気があるわけじゃないから。

各国でどんなバンドと共演するのでしょう。

フレデリク:ヨーロッパはスペシャル・ゲストとしてHatesphereと回る。彼らのライヴは何度か見たことがあるけど、とても良かったので楽しみだよ。あと、オープニングが出る場合もある。ヨーロッパ・ツアーの半分のショウでは、T.A.N.K.がオープニングをやる。あとはCritical Mess、フィンランドではMorbid Vomit(注:病的なゲロ)も出る。

凄い名前ですね(笑)。

フレデリク:クールだろ(笑)。ロシアはわからないな。日本ではSighというバンドが出るらしいけど、聴いたことがない。良いバンドだといいけど(笑)。オーストラリアとニュージーランドではBulletbeltというバンドがスペシャル・ゲストとして出る。彼らとは友人なんだ。俺は基本的に自分の気に入ってる人、尊敬している人たちとやりたいと思ってる。プロモーターは、Bulletbeltはあまり知られていないと言っていたのだけど、俺にとってはそんなことはどうでもいいんだよ。彼らは俺の友人で、俺が彼らのことを気に入ってるからね。

ところで先ほどTankって言いました?

フレデリク:もちろんあのTankじゃないよ。厳密にはT.A.N.Kというバンド。

どこのバンドですか?

フレデリク:フランス(笑)。Think of a New Kindの略なんだよ。だから本当はTOANKじゃないといけないんだけど、それだと「トアンク」になっちゃうからね(笑)。

シンセイナムのメンバーはアメリカ、フランスなど、住んでいるところがバラバラですが、リハーサルはどうするのでしょう。

フレデリク:今のところはみんなそれぞれが練習をしているところ。(ギターの)ステファンは俺のところに来たりもするけどね。ジョーイは相当練習をしているみたいだよ。もうすでに通しで3回セットを叩いたと言っていた。彼はいつもドラムを叩いているんだよ。俺はまだ練習始めてない。曲はほぼ全部俺が書いたからね、ほとんど曲は覚えているし。ツアーの前にみんなで集まって、一緒にリハをやる予定だよ。ツアー初日はめちゃくちゃになるかもしれないけど(笑)。日本に来るころにはきちんと演奏できるようになってるはず(笑)。


セットリストはもう決まっているのですか。

フレデリク:もう決めてある。それぞれが曲を練習する必要があるから、なるべく早く決めておかないといけなくて。俺としては、ぎりぎりに「やっぱりこの曲もやろう」なんていうのが好きなんだけど、他のメンバーが俺みたいにすべての曲を覚えているとは限らないからね。ドラゴンフォースもそうなのだけど、レコーディングのときは、もちろん曲をすべて覚えている。だけどその後しばらくプレイしない曲は、忘れてしまうんだよ。そもそも曲が多すぎるから。Sighもそうだろう?いきなり"Ready for the Final War"をやってくれと言われても、できないんじゃない?

セットリストはどうやって決めたのでしょう。

フレデリク:基本的にはプレイしやすいものを選んだ。俺たちの曲には、あまりに複雑すぎるものもあるからね。非常にトリッキーで、曲自体はとても気に入っているけど、さすがにライヴ向きでないものもある。ライヴ自体を楽しみたいから、リラックスして演奏できる曲が良いと思ってるんだ。もちろん全部ではないよ。「インヴァーテッド・クロス」なんかもやる予定だけど、あれは非常に複雑な曲だし。「ニュイ・ノアール」なんかも、簡単な曲ではない。特にファーストでは、非常にトリッキーな曲があったからね。そういうのはさすがに。あと、Spotifyを見て、ファンの意見もチェックしてみたよ。シングルの曲も演奏するし、自分たちが気に入ってる曲もやる。例えば「ゴッズ・オブ・ヘル」もやるのだけど、ってさすがに情報漏らしすぎかな(笑)。まだ誰にも言ってないんだけど。ファンがこの曲が好きかはわからないし、他のメンバーも「え、これやるの?」なんていう感じだったけど、俺がやりたいからね(笑)。この曲気に入ってるんだよ。速い曲と遅い曲のバランスも考えている。速い曲ばかり、遅い曲ばかりにならないように。

話は変わりますが、Mary's BloodのギタリストSAKIとプロジェクトをやる予定とのことですが。

フレデリク:そうなんだよ。

彼女とは、どのようにして知り合ったのですか。

フレデリク:何年か前に香港で会ったんだ。彼女のバンド、Mary's Bloodがドラゴンフォースのオープニングをやってね。たまにあるよね、会った瞬間にこの人とは気が合いそうだなってわかることが。動物的直感みたいなやつ。で、確か次の年だったと思うけど、日本でまた会う機会があって、そのときは居酒屋で音楽について語り合ったんだ。

出会いが日本ではなく香港というのが面白いですね。

フレデリク:おそらくは香港のプロモーターが、Mary's Bloodを呼んだんだと思う。ドラゴンフォースが彼女たちに声をかけたわけじゃない。「日本のMary's Bloodというバンドがオープニングをやる」って言われたから、「へえ、それは面白そうだね」という感じだった。日本ではなく、香港で日本のバンドがオープニングをやるんだからね。それでステージを見てみたら、とてもクールだった。

ステージを見て、具体的にどんな印象を持ちましたか。

フレデリク:とても気に入ったよ。彼女たちのことは知らなかったから、どんなバンドなのか想像がつかなかった。ドラゴンフォースのメンバー全員で並んで見た。普段こういうことはないんだよ。最初は女の子のバンドだからという興味本位で見ていたのだけど、そのうち「このバンドカッコいいね、ギタリストがいい」なんていう感じでさ。とても楽しかったよ。

プロジェクトをやろうと言い出したのはどちらなのでしょう。

フレデリク:SAKIチャンから話をもらったんだ。とても良いアイデアだと思った。それでこのプロジェクトでは、俺がいくつかの楽器も演奏して、プロデュースもやることになったのさ。

音楽的にはどんな方向性になるのですか。

フレデリク:もちろんメタルだけど、日本的な要素も少し盛り込んでる。このプロジェクトは、日本だけではなく、ヨーロッパのメタル・ファンにもアピールするものにしたいと思ってるんだ。フランスを筆頭に、ヨーロッパでは日本的なものがとても人気があるからね。日本の伝統的な楽器を持ち込むのはとても面白いアイデアだと思うよ。琴などで、日本的メロディを入れる予定さ。俺も彼女も、いろいろと異なったスタイルのメタルを聴いているから、基本的にはヘヴィ・メタルだけれども、その他の要素もいろいろと入って来るよ。俺は1つのスタイルのメタルだけに特化することをあまり好まないし。

他にもメンバーを加える予定なのでしょうか。

フレデリク:すでに何人かとは話をしていて、参加が決まっているミュージシャンもいる。まだ秘密だけどね。基本的には俺とSAKIチャン2人が中心のプロジェクトだけど、他にも有名なミュージシャンが何人も参加する予定だよ。

あなたはギター、ベース、それからヴォーカルもやるのですか。

フレデリク:ギターとベースは弾く。ヴォーカルはどうだろう。SAKIチャンはギターを演奏して、彼女も少し歌うかもしれない。俺はドラゴンフォースでバッキング・ヴォーカルはやっているけど、正直なところシンガーとしてはあまり自信がないんだ。せっかくのプロジェクトで、やりたいことをやるチャンスだからね。もしかしたら歌うかもしれないけど。今ちょうどそのあたりについて詰めているところなんだ。

アルバムはいつ頃リリースの予定でしょう。

フレデリク:来年になると思う。俺はシセイナム、ドラゴンフォース、そしてこのプロジェクトと、非常に忙しいというのもあって。

では最後に、シンセイナムのライヴを心待ちにしているファンへのメッセージをお願いします。

フレデリク:いつもサポートしてくれてありがとう。今日もこうやって日本にプロモーションしにきているわけだけど、いつも言うように、俺にとって日本はとても大切な国なんだ。11月にシンセイナムとしてプレイするのを、本当に本当に楽しみにしているよ。11月6日、渋谷Club Quattroで、Sighとにゃんごすたーと一緒にね。

 改めて言うまでもないと思うが、シンセイナムはドラゴンフォース、元スリップノット、ラウドブラストといったバンドが結集したスーパースター・バンドである。こういうバンドは、たいてい各メンバーのスケジュール調整が困難なせいで、活動がスローペースであったり、ツアーが不可能だったりするもの。だがシンセイナムは違う。16年から3年連続で作品をリリースしているだけでなく、今秋ついにツアーも行うのだ。そしてそのツアーには、日本公演も含まれているのである!ドラゴンフォースの時とは違った顔を見せるであろうフレデリク。そして久々にジョーイ・ジョーディソンの勇姿を拝めるのも楽しみでならない。ぜひこのチャンスをお見逃しなく!

取材・文 川嶋未来


シンセイナム 1夜限定 初来日公演
(スペシャル・オープニング・アクト:にゃんごすたー / スペシャル・ゲスト:Sigh)
公演日:11月6日(火)
会場:渋谷クラブクアトロ
開場:18:00 / 開演19:00
チケット:スタンディング 7,500円(税込) ※ドリンク代別途


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