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2006年2月25日 (土)

特別寄稿 許光俊の言いたい放題

第4回 「快楽主義のベートーヴェンにウキウキ」

 以前、ここで取り上げたバティスのモーツァルト集は残念ながら廃盤らしい。その代わりと言うわけでもないが、このところバティスの録音が次々に輸入されているようだ。  それも当然至極。チェリビダッケやヴァントみたいに考え抜いた、鍛え抜いた演奏が消えた今、どうせなら、逆方向の演奏が楽しいではないか。

 そして実際、バティスのベートーヴェン全集は、こんなに思いこみがなくて、こんなに爽快で、こんなにくたびれないベートーヴェン演奏はほとんど空前絶後というほどに、快適なのである。聴いていて、心が晴れ晴れするのである。くつろがせてくれるのである。

 早い話、まるでロッシーニだ。これを聴いていると、構造がどうだとか、細かい部分がどうだとか、まったく考えたくなくなる。単にニコニコしていればいいのである。

 特に第1ー4番の愉悦感はいいなと思う。ゆっくりした楽章ですらウキウキ感があるし、もちろんフィナーレともなれば爽快に疾駆。自然な抑揚がついたスムーズな流れなので、セカセカしない。「英雄」さえもが幸福感の下に演奏されている。こんな楽しげで嬉しそうで快楽主義的なベートーヴェンって、カルロス・クライバーの4番以来ではないか。

 第5,7番あたりも快適だ。意味ありげなポーズはなく、ひたすら突進。トスカニーニから、偏執狂的超まじめさを取り除くとこうなる、とでも言おうか。

 ベートーヴェンをこんなふうにやれてしまうというのは、もしかしたら、いやたぶん、たいへんなことなのではないか? 何も考えないようでいて、ちゃんとした魅力的な演奏になっているというのは。深刻ぶらないでも大人の音楽になっているというのは。
 この直後に、ラトルの第9を聴いた。立派だし、おもしろい演奏だ。でも、ヨーロッパはもがいているんだな(そこが彼らのいいところではあるのだけど)と痛感させられたのだった。

(きょみつとし 音楽評論家 慶応大学助教授)

※表示のポイント倍率は、
ブロンズ・ゴールド・プラチナステージの場合です。

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