HMVインタビュー:Lil Eddie

2009年10月27日 (火)

interview

Lil Eddie

確かにホームレス生活は大変だったし、幸せな期間だったとは言えないけど、ゼロの状態からプラスに運ぶ力を身につけることができたのは、あの頃の経験が大きかったと思ってる。それに最悪の状況を経験してきたからこそ、今の状況を心から幸せだと思えるしね。

--- まずは自己紹介をお願いします。

名前はエドウィン・セラーノ。リル・エディーという名前で活動している現在25歳のシンガーソングライター。 プロのライターとして活動し始めたのは15歳からで、歌を始めたのは10歳からかな。 今日はこのスタジオでニューアルバム『City Of My Heart』のレコーディングをやってるんだ。

--- 日本にも、「ソングライターのリル・エディー」としてあなたの事を知っている人は多いと思いますが、これまでに手掛けた作品やアーティストは?

カイリ・ミノーグの「All I See」、トレイ・ソングスやエイメリー、JoJo、カール・トーマス、112、P・ディディ、マリオ・ワイナンズ・・・その他にも色々なアーティストの曲を書かせてもらってるよ。ジャンルも様々だけど、どのアーティストも才能豊かで素晴らしい人たちばかりだったよ。そういう経験を経て、今回シンガー、リル・エディーとしてのアルバムを出すことになったんだ。

--- この業界に入ったキッカケは?

歌い始めたキッカケは、兄が入っていたニューヨーク少年合唱団に入ったのがキッカケだったんだ。初めて参加した合唱団のツアーで、「歌を歌うと飛行機に乗れるんだ!」って、当時は無邪気にはしゃいでたよ。だけどそのうち、歌を歌う事で世界を見る機会が得られるってことに気付いたし、合唱団の経験を通して自分の声質を発見した。子供の頃にこういう経験をしていたから、中学と高校では夢中で自分のデモテープを制作してた。 この業界に入ったキッカケは本当に偶然なんだけど・・・高校の頃、スタバでバイトをしていて、バイトの帰りはいつもヘッドフォンをして、歌いながら帰ってたんだ。ある日、バイト先から電車の中までずっと付いてくる人がいて、急に「自己紹介をさせて欲しい」って言われたんだ。で、話を聞くとその人は同じラティーノの有名な振付師だった。オレもダンスは好きだから話をして、連絡先を交換したんだ。その後、彼を通して色んな人を紹介してもらったのがキッカケでオレのキャリアがスタートしたんだよ。そのうち、オレには歌うだけじゃなくて曲を書く才能もあるんだってことに気がついて、プロデューサーとしての仕事も始めたんだ。・・・だけど最初はオレのビッグマウスから始まったんだよ。ある人に「お前は曲も書けるのか?」って聞かれて、本当は何の経験もなかったんだけど「もちろん書けるよ!」って言っちゃったんだ。それからは必死でライターとしての勉強を始めた感じかな。本当、色々な偶然や奇跡がある日突然やって来たような感じだった。

--- ってことは、ライターとしての勉強は全て自分で?

そうだね。当時は少しでもプロから知恵を盗もう思って、ライターやプロデューサーの周りにくっついてたね。それにマリオ・ワイナンズやパフィーがソングライティングについて色んなことを教えてくれた。そういう経験を通して少しずつソングライターとしての自信が付いていったし、納得のいく作品を作れるようになったんだ。

--- そういえば、ニューヨーク少年合唱団の頃、長野オリンピックの開/閉会式参加のために日本に来日した事があるって本当?

そうなんだ。93年の長野オリンピックの開会式や関連式典にニューヨーク少年合唱団が招待されたんだ。約2ヶ月間長野にホームステイしていて、東京にも遊びに行ったよ。ただ、その頃はまだ幼かったから、あまり覚えていないし、今思うともっと経験しておきたい事はたくさんあったんだけどね。とはいえ、靴を脱いで家にはいる習慣にも驚いたし、日本独特の色んな文化にも触れることができて、本当にラッキーだったと思う。今回、こうやってまた日本に行くチャンスをもらえてワクワクしてるし、また日本に行けることを楽しみにしてるんだ。

--- プロフィールには子供の頃、家をなくしてホームレス生活を強いられたって書いてあったけど、それは本当?

そうなんだ。オレが5歳のとき火事で全てを失ったんだ。その後しばらくは家族全員ホームレス生活を強いられた。車で寝泊りしたり、シェルターみたいなところで生活してた。とても大変な時期だったけど、母親はいつもオレに環境以上のチャンスを与えようとしてくれた。母親はずっとオレの音楽に対する夢や情熱を信じてくれていたんだ。それに兄弟たちもオレのことを応援してくれていた。確かにホームレス生活は大変だったし、幸せな期間だったとは言えないけど、ゼロの状態からプラスに運ぶ力を身につけることができたのは、あの頃の経験が大きかったと思ってる。それに最悪の状況を経験してきたからこそ、今の状況を心から幸せだと思えるしね。ちょっとのことじゃ落ち込んだりマイナス思考にならなくて済むのは、あの経験のおかげだと思う。

--- 初めて買ったレコードって覚えてる?

初めて買ったレコードは覚えてないけど、初めて「勉強したい!」と思ったアルバムは、メアリー・J・ブライジやマイケル・ジャクソンのアルバムだったと思う。リリックをノートに書いて、自分で歌ってみたりしたんだ。他にも映画『ボディーガード』のサントラも何度も聴いたね。その後はTLCやジャネット・ジャクソン、Boyz II Men、スティービー・ワンダーを聴いてたかな。

--- 今マイケル・ジャクソンの名前が出ましたが、マイケルから影響を受けたタイプ?

音楽に携わっている人だったら、マイケルに影響を受けた事のない人なんていないと思う。それくらい彼には影響力があったと思うよ。たとえ他のアーティストからの影響を受けていたとしても、ベースとなる部分はマイケルの影響が絶大だと思う。子供の頃からマイケルのダンスや歌に憧れていたからね。アーティストとしてだけじゃなく、人間としても素晴らしいと思う。彼ほど大きなハートで世界を変えようとした人は他にはいないと思う。

--- 実はこのスタジオ、マイケルも使っていたスタジオらしいですよ。

そうみたいだね。素晴らしい経験だよ。噂だと、ペットのバブルスはスタジオの中に専用の個室を持ってたらしいよ。とにかく今回、マイケルと同じスタジオに入れたって言うのは貴重な体験だよね。すごく嬉しいよ。

--- ソングライターからシンガーという立場に変わった理由は?

実際のところ、オレのキャリアはシンガーとしてのスタートの方が先だったんだ。マリオ・ワイナンズが初めにシンガーとしてのチャンスをくれたんだけど、その後少しずつライターとしてのスキルも身につけていった。世の中ではソングライターとしてのイメージが強いかもしれないけど、オレは自分の事をシンガーだと思ってるんだ。それに、たとえライターだろうとシンガーだろうと、「ストーリーを伝える」ってことには変わりないしね。オレの感じたことや考えている事を、オレの声を通して世界中の人と共感しあえたら、それ以上ステキな事はないと思ってるんだ。今回シンガーとしてアルバムをリリースする事になったのは、タイミングだったと思ってる。色々な事を経験してきて、今こそシンガーとして作品を残すのに相応しいタイミングだったということかな。

--- では、曲作りに関してですが、あなたは事前に出来上がったトラックを聴かないそうですね?その場で湧いたインスピレーションで曲を作るんですよね?あなた以外にそういうタイプのアーティストって多いのでしょうか?

自分の直感を信じている部分が大きいと思う。基本的に、曲は全てレコーディング当日に、最初にトラックを聴いたときの直感で作ってるんだ。普段から、友達との会話や本から得たイメージやストーリーを書き溜めているんだ。レコーディングでは、トラックを聴いて、それに合ったストーリーをノートの中から探すっていう作業だね。だから、最初のイメージが固まるまで、何度も何度も曲を聴くんだ。そこで浮かんだイメージを最大限に生かす作業は楽しいし、クリエイティブな瞬間だね。

Jay-Zやリル・ウェインも同じような方法でレコーディングしてるみたいだよ。とにかくオレは、自分の感情に素直でいたいんだ。インスピレーションの湧かないトラックで無理やり曲を作るのは嫌なんだ。作業としては大変だけど、トラックとリリックの最高の組み合わせが完成したときの感動と達成感は他には変えられないからね。オレは常に自分に正直でいたい。もし世界がそれを気に入ってくれれば、どんどんオレのことを、そしてオレの作品を使って欲しいと思ってるよ。

--- 好きなアーティストやプロデューサーは?その中で将来コラボしてみたいアーティストは?

たくさんいて、名前を挙げるのは難しいけど・・・Jay-Z、マイケル・ジャクソン、スティービー・ワンダー、レディー・ガガかな。他にもジャンルを問わず、好きなアーティストはたくさんいるよ。コールドプレイやレディオヘッドも好きだよ。あと、どんなジャンルのアーティストとも機会があればコラボしてみたいと思ってるよ。音楽に対して情熱を持っているアーティストであれば、いつでも大歓迎!音楽は世界の共通語だからね。何万年も昔から、人は音楽を伝えてきたんだ。音楽という輪の中ではジャンルや言葉の違いも関係ないと思う。

--- 今回はJeff MiyaharaとMyaとのコラボでしたが、今回が初対面?

Jeffとは何度も電話でこの作品に関する話をしたよ。今回はMyaも参加してくれることになったから、オレもJeffも今日の日を心から楽しみにしてたんだ。きっと今日は2人で奇跡を起こせると確信してたよ。

--- 日本人アーティストで知っている人は?

Seven、Double、Boaかな。オレの友達でBoaの曲を書いたヤツがいて、その友達から日本人アーティストの情報も教えてもらってるんだ。それにオレの別の友達がSevenのダンサーをやってたこともあるんだ。 Doubleには昔曲を書いた事があるよ。

--- では最後に日本のR&Bファンにひとことお願いします。

こんにちはリル・エディーです。いつも応援してくれてありがとう。是非今回のアルバム『City Of My Heart』を聴いてみてください。全てのR&Bファンに贈る、オレからのプレゼントです。これまでにオレが経験した事、見てきたものを正直に言葉にした作品です。 これからも応援宜しくお願いします!

新譜City Of My Heart
弱冠25歳のシンガー・ソングライターLil'Eddieのデビューアルバム! 7歳の時に自宅を火事で失い、スパニッシュ・ハーレムでの路上生活を余儀なくされるという、まるで“あの大ヒット小説”顔負けの幼少時代を過ごした異色のアーティスト。ところがその才能たるや、はんぱなし! NE-YOのプロデュース・チームの一員として活躍する傍ら、Dr.luke、Jr Rotem、Rodney Jerkins、The Underdogs、Lil’ jon などの日本でも特に人気のあるビッグ・プロデューサーとも連日スタジオ入りし、Cris Brown、Miley Cyrus、Kylie Minogue、Drake、An-ya、Jay Sean、Jojo、Carl Thomas、Amerie、Bow Won、Israel など多くのアーティスト達へ楽曲を提供。また早耳R&Bファンの間では、リーク音源が話題になっており、05年に発売を予定していたMario Winans全面バックアップの幻の1stはネットオークションなどで高値で取引されているほど。注目のデビューアルバムからのリード・シングルは和製Stargateと呼び声高いJeff Miyaharaがプロデュースする「せつな系だけど踊れちゃう」路線の鉄板ミディアム「Searching For Love feat. Mya」。それ以外にも、アルバムには日本人好みの「美メロ」、「せつな系」、「メロディアス」な楽曲が盛りだくさん。今後の新しい洋楽R&Bの方向性を示す1枚となりそうです。