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『あんにょん由美香』 公開記念! 「TAO」 番外編 :ゲスト→松江哲明監督 2 

Wednesday, July 29th 2009

--- 脚本があったんですね。


松江:脚本、ありました。今までの作品、僕は全部用意してますね。脚本というか、プロット的なものは全部準備しますね。ドキュメンタリーで「ラストこうなる」っていうのを作ります。そこを作んないとやっぱり、現場でね、どうなるか分かんないので。ただ、それを被写体には見せないです。僕は、被写体に見せない、もしくは別の人には見せて、「こういうようなことをやりたいから」ってそこまで伝えて、現場で起きた時のガチのリアクションが僕が撮りたいドキュメンタリーなんですよ。要するに、その人の自然なものなんていうのは、僕は全然興味ないんですよ。それだったら、「監視カメラ、俯瞰で置いといて撮ればいいじゃん」っていう話しなんで。じゃなくて、カメラを意識したり、カメラがあることで何かこう、台詞っぽいことを言っちゃったりとか、お芝居をしちゃったりとか、そこが観たいんですよね。

それを起こすために状況を作ったりとか、例えば『あんにょん由美香』で言うと、現場に行くってことなんですよ。説明をどこまですればいいのかっていうのは考えたんですけど、現場に行って出てくる言葉っていうのは、僕はすごい魅力的で。やっぱり、あの坂上んないと、平野(勝之)さんが何言うかって分かんないんですよ。こういう会議室みたいな場所で話しを聞いて、「平野(勝之)さん、どうだったんですか?」「いやあ、大変だったよ」っていうのより、一緒にあの坂上がって、「あの時何するんだ」っていう、そういうのが見たいんですよね。そこに出てくる言葉が演技でもいいんですよ、それはもう。その時の言葉っていうので僕はもう、信じれるので。そこですね。それはやっぱり、前の『童貞。』を作ったあたりから・・・あとAVを撮ってる時にそこまでの自分の中での言葉っていうのはなかったんですよ。AV撮ってて、何がおもしろかったのかってやっぱり、最初から嘘なんですよね。名前が嘘、出身地が嘘、生年月日が嘘、スリーサイズが嘘・・・。


--- 全部、嘘(笑)。


松江:そう(笑)。言っちゃえば、「あたしこういうプレイが得意です」っていうそれだって嘘っていうのがありますから。でも、嘘っていう前提の中で、裸でぶつかって、隠しきれない本音が出ちゃったりとか、セックスって出ちゃうとこあるじゃないですか?これはおもしろかったんですよね。だからそれは、その後の『童貞。』とかで応用して。「出だしは嘘でも全然いいんだ。嘘があるから前提で、人間って本音が出ちゃうんだなあ」っていうか。それを『あんにょん由美香』でも応用したというか。それがたぶん、自分のドキュメンタリーの作り方だし、観たいものって思いますね。


--- 今のお話しにちょうどあったんですけど、松江さんはそれぞれ、作品中の由美香さんと同じような体験をカンパニー松尾さんや平野勝之さん、いまおかしんじさんとされましたが、由美香さんと同じような体験をされたことで、ご自身の中でどのように感じられたのかなあと思ったんですが。


松江:あれは、何て言うんですかね・・・これはどういう風に言えば伝わるのかなあ・・・僕の中で必要な“儀式”なんですよ。


---  “儀式”・・・。


直井:レビューで書いてましたよね、“仁義を斬る”って(笑)。


松江:ああ、そうそうそうそう(笑)。“仁義を斬る”みたいな、そういうことですね。例えば、この作品、やっぱりドキュメンタリーを撮るにあたって、家族の方とかもちろん、由美香さんのお母さんとお話しするとか、それと一緒なんですよ。『由美香』の北海道に行くとか、『たまもの』の現場に行くとかは、僕なりの“仁義”なんですよね。

で、さっき、「『純子』がなかったら由美香さんを撮れなかった」って言いましたけど、僕はお酒飲んだり、イベントご一緒したりとかっていうことはあったんですけど、他の監督達と比べて、そんなにプライベートのお付き合いないんですよ、由美香さんと。僕にとっての由美香さんは、あくまでも作品の中なんですよね。作品の中で観てる由美香さん。私生活うんぬんとかは、僕は分からないんですよね。だから、そこを描こうとしちゃうと嘘になっちゃうし、絶対中途半端なものになるし・・・で、そこは僕は描きたくないんですよ。やっぱり、直接そういうことに関係ない人で亡くなった後に撮れないんですよ。僕が由美香さんを撮る時に語る切り口っていうのは、作品込みなんですよね。だから、由美香さんを描くっていう時に、監督達に出てもらいたかったし、その人達の言葉っていうのが必要だったんですよね。でもやっぱり、撮る前はね、結構言われたんですよ。「何で『純子』っていうやつを撮ってるのに、北海道行くの?意味分かんない」って(笑)。


---  それは、どういう方に言われたんですか?


松江:それはある程度由美香さんのことを知ってたりとか、『純子』を観た人ですね。「これだけ追っかけても十分おもしろいじゃん」っていうことを言われたんですけど、でも、そこで現場での由美香さんは、『純子』の現場の由美香さんっていうところだけでは何か、弱い気がしたんですよ。由美香さんのあの作品、『純子』を観た時に僕は、「すごくある意味で、由美香さんらしいな」と思ったんですよね。あの女性のキャラクターだったりとか、ああいうへろへろのね、何が何だか分からないような現場のああいうぐだぐだな作品であっても、真面目にお芝居する姿っていうのがある意味・・・語られるのって、そういった作品じゃないですか。作品の完成度が高いものが「由美香さんらしい」って残りますけど、でも実は膨大な数のああいったぐだぐだな作品に由美香さんは出てて、その中の本当に監督がすごくいい掬い方をしてカンヌ映画祭に招待されたり、『由美香』っていう映画が劇場公開されたりとかっていうことがあったわけで。

でも、あそこがある意味、「由美香さんらしいな」って僕は思ってたんですよね。それを語るにはやっぱり、どういうスタンスでお仕事してたのか・・・ただこう「下らないぐだぐだなやつにたまたま出ました」ではだめだと思うんですよ。やっぱり、由美香さんの中では一緒だったと思うんですよね。特別、「『たまもの』だから気合い入れてがんばるぞ」じゃないんですよ。あの『たまもの』は、本当たまたま、クランクイン直前に演る女優さんがいなくて由美香さんに決まって、それで完成した後に上手くいったっていうことで、それがまさに由美香さんらしいんですよね。だから他の現場でのスタンスを聞くことで、「『純子』もそういうスタンスなんじゃないか」っていうことを何か、自分の中で知っておきたかったっていうか。入れたかったんですよ。で、韓国に行ってね、「由美香はいい加減だった」って言うはずはないって思ってたんですよね、僕は。由美香さんは、そういうスタンスではお仕事しないから、どんなものでも本気でやる人ですから。本気でやるというか、出せちゃう人なんですよね、演技力を。そういう全身全霊で本当に女優っていうところを描くには両方ないと、自分の中では成立しなかったし。でも正直、観てもらうまで僕も不安だったんですけど、お客さんで「そこのブロックは関係ないね」って言う人はいませんでしたから。やっぱり、両方あって同時に入ってきたことで、ラストの意味が伝わるっていう風に思いますね。


---  松江さんも、『あんにょん由美香』の作品中で、すごく体を張って、いろいろされてましたよね。


松江:されてましたね(笑)。いや、でもそれは当然ですよ、体を張るのは。マイケル・ベイさんも体張ってると思うんですよ(笑)。(大きな声で)「アクショーン!」ってやるのと同じように、やっぱりドキュメンタリーの人も体張らないと。僕の張り方は、向こうは爆破してるように、僕は自転車で走ることだったり、人に迷惑かけたりして・・・ハ(・テヒ)さんとかすっごい迷惑そうな通訳の人とかね(笑)、「ああ、何か困っちゃったな」っていう人に「話し聞かせて下さい」って行くのが、僕の体の張り方ですよね。


『あんにょん由美香』 予告編はこちらから!







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