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『あんにょん由美香』 公開記念! 「TAO」 番外編 :ゲスト→松江哲明監督 3 

Wednesday, July 29th 2009

--- みなさん、出演に対しては好意的でしたか?


松江:正直言うと、出てもらえなかった方はいます。


--- 『あんにょん由美香』に出演された方ではなくて?


松江:なくて。出て頂いた方というか、僕にとってはもう、この作品のハードルってやっぱりそこなんですよ。出て頂いた時点で、本当にもうありがたいというか。やっぱり何人かの方は、時期がまだ・・・この映画、結果3年かかってしまったので、撮り始めは由美香さんが亡くなって1年だったんですよ。その時に「まだ話せない」とか、僕らがやろうとしてたことに対して、「ちょっとその意図では乗れない、出れません」っていう風におっしゃって。でも、それはその人の由美香さんとの関わり方っていうのがありますから、そこは僕もすごい分かるんですよね。断るっていうのはある意味、そういう“仁義の斬り方”だと思うんですよ、その人その人の。でも、僕が本当にありがたかったのは、カメラの前でちゃんと、疑問とかを出してくれたことですね。(カンパニー)松尾さんや平野(勝之)さんがちゃんと口にしてくれたじゃないですか?「覚悟はあんのか」っていうことを。

あれはやっぱりね、カメラの前で話さないっていうこととか、あのことを出すっていう“覚悟”はすごいと思うんですよ。それがたぶん、僕が個人的に松尾さんとのお付き合いとか、平野さんとのお付き合いとかっていうのがあって出て下さって、カメラの前で、ああいう風に葛藤を出してくれたと思うんですけど、だから、そこはすごくありがたかったですよね。あんなこと、言わなくていいことじゃないですか?だからといって、彼らも「いや、由美香はよかったよ」っていうことだけでもいけないっていう風にたぶん考えて下さって。そこですよね、僕がやっぱりうれしかったのは。で、そこはやっぱり、重かったですし、正直。「これ撮るのはどうなのかな?」っていうこととか。でも、自分の10年作って来たやり方っていうのは、そこも出すっていうか・・・作品の中に疑問だったりとか、ある種、作品の予想外っていうか。ある意味それがプラスでない時、マイナスであるかもしれないけど、でも、自分が感じた動揺したこととかっていうのは全部出そうと思って、自分のドキュメンタリーは作っているので、だから今回も、「そうしなきゃいけないな」っていう風には思いましたね。でも、それをちゃんと問うて下さったのは先輩というか、すごいありがたかったですね。韓国の人達もみなさん、出て下さるってことが一番、本当にうれしいですね。


直井:編集で使うことも躊躇しましたもんね。


松江:そうですね。本当は、平野さんのところとかは使うの嫌だったんですよ。あれはもう、撮ってる時に。それはね、たぶん、すごい個人的なことを問われてるから、観てるお客さんが分かんないだろうっていうのもあったんですけど、ただ、最初に編集を僕が進められなくて、豊里(洋)っていう、僕の映画学校の生徒だった彼が3時間半くらいまでまとめてくれたんですけど、そのヴァージョンっていうのは入れてくるんですよ、そういうところを。僕が北海道で下半身出してるとことか(笑)。僕は使う気なかったんですよ。でも、ドキュメンタリーって、編集した時に素材がどう見えてくるのかっていうのが全く全然違う問題なので、現場で思いついたら全部撮っちゃうんですよね。思い付いちゃった自分がいけないと思って全部撮るんですけど、彼はね、そういうところを入れてきて、またね、そういうところの方がおもしろいんですよね。それではっきりね、平野さんのあそこのパート・・・あの夜のところとか何かね、映画がぐーんと上がってるのが見えちゃったんですよ。だから、「ああ、これは使わなきゃな」って。だからやっと、主語を自分に出来たっていうか。「この作品の語り口はやっぱり自分で、僕っていう言葉を使わなきゃいけない」っていう風に思いましたね。


--- 平野さんと松尾さんは、出来上がりの映像を観られての感想をおっしゃったんですか?


松江:それはまだ聞いてないです。


--- これからまた、“覚悟”を持って・・・(笑)。


松江:そうですね(笑)。「今度会った時に話すよ」って、松尾さんからはメールが届いたので。


--- 「誤魔化すなよ」とか「覚悟はあるのか」っていう風に言われたことに対しての、松江さんのお考えというか“覚悟“というものは、ちゃんと向き合って・・・。


松江:それはやっぱり、あのラストですね、僕の“覚悟“は。ああいうラストになったのは、僕なりの由美香さんとの・・・亡くなった人の映画とかって、”追悼“っていう言葉はすごい伝わりやすくなっちゃうんですけど、人からみたら”追悼“なのかもしれないけど、僕にとっては”出会い”なんですよ。”出会い”であり“再生”というか。で、そうする限りやっぱり、由美香さんはいつでも会えますから。そこですよね、そこが僕の“覚悟”の答えでしたね。そこが先輩達にはどう映るのかはまだ分からないですけど、でも、僕が考えて、今自分が信じれるものっていうのは、映画しかないので。だからやっぱり、自然と・・・自分は由美香さんを作品込みでスクリーンの中の人なんだなっていうことがすごい強く見えましたね。それはもしかしたら由美香さんを知らない人にとっても何か、伝わりやすい入り口なのかもしれないし。だからこそ、「たくさんの人に」っていう気持ちも強いですし。結局、最後は映画になりましたね。「これはどういう意味なのか」っていうのは観て欲しいんですけど。


--- 先ほどのお話しで、作品のプロットをある程度出されてから撮り始められたとお聞きしましたが、あのラストシーンも頭の中にあったんですか?


松江:いやいやいや!ないです。あのラストはないです。あれはもう、途中で台本見つかった時に、「これは観たい!」ってなって、「これで由美香さんになれる」「純子はやっぱり、由美香さんだったんだ」ってこう・・・残った男達のあの会話っていうのが由美香さんそのものじゃないかって思って。で、テンション上がって韓国に行って、これでラストにしようって思ってたんですけど、まあ、プラスね、その後のラストがもう1個あるじゃないですか?沖縄が。あれはやっぱり、びっくりしましたね。本当は途中では『純子』のラストを撮って、その『純子』のエンドクレジットに『あんにょん由美香』のクレジットを足そうと思ってたんですよ。あのラストでふあーって広がって、クレジットが上がるんですよね、『純子』のエンディングが。で、その後に『あんにょん由美香』スタッフって入れて上げるような。

だから、『純子』と『あんにょん由美香』をミックスして映画にするっていうようなことを考えてたんですけど、でも、その後にちょっと、沖縄の“首里劇場”であれを見つけてしまったので、そうすると何かねえ・・・「入れなきゃ」というか。「撮らなきゃ」って。そうするとより、僕っていう主語が強くなりましたね。むしろ、「それで語らなきゃいけないなあ」っていうのがやっぱり、あのラスト撮ってて思いましたし。より何か、自分の想いっていうのを強く出せたような気がしますね。でね、またあそこに猫がね、映写室にいるんですよ。だから、猫が映写やってるみたいで。


直井:(笑)。


松江:あれは、本当に最後に撮ったんですけど、そうするとね、今までの撮ってきたシーンにも案外ね、猫いっぱい映ってたんですよ。


直井:そうそうそうそう。


松江:偶然なんですけど。松尾さんとカレー食べた時とか、由美香さんの実家の周りとか、猫がたくさんいて、何か由美香さんがいるような気がして(笑)。由美香さんが飼ってたの犬だったんですけど、でも何かね、僕は由美香さんは犬っていうより、猫っぽいんですよね。すごい気まぐれで、ふっといなくなったりとか、またふっと来たりとかっていう、そういうのがすごい、猫っぽくて。編集しながら、「あ、これ由美香さんなんだな」って思って、編集でね、もう1回変えたんですよ。猫をいっぱい入れて、ポイント、ポイントで。そういうところも、観てる人が気にして引っかかってくれてたらいいですね。


直井:何かね、ふらっといるんですよ(笑)。


松江:そうそう、ふらっといるんですよね(笑)。いやあ、こんなにね、動物が寄ってくる映画なかったですよ、今まで僕、撮影で。


直井:ヤギも出ますしね。


松江:ヤギもね。


--- 出てましたね(笑)。


松江:何かね、動物入れるの好きなんですよ。『童貞。』でも、犬とかね、ちょこちょこ出てきてね。動物って、演出しきれないじゃないですか。そういうの好きなんですよ。


--- 沖縄の“首里劇場“に行かれたのは、由美香さんとは全く関係なく・・・。


松江:関係なく、関係なく。


直井:『童貞。』の上映があったんですよ。それのゲストで松江さんが。


松江:そうなんですよ。それで行って、“桜坂劇場”っていうところがあって、そこで『童貞。』の上映をして、すぐ近くに“首里劇場”があるのは知ってたんですよ。松尾さんのAVでその“桜坂劇場”の人が撮った、沖縄を舞台にした年末年始の作品があって、それでその人がピンク映画をずっと観てるっていうのがあって、その“首里劇場”の雰囲気が素晴らしくて。それで見た時に、実はその時も猫いたんですよ(笑)。「何かここ、沖縄っぽいなあ」って思って連れてってもらったら、ポスターに「林由美香」ってあって、「うわあー」と思って。


直井:その場でカメラ調達してね(笑)。


松江:そう、カメラ調達して、制作会社に。カメラ持ってってないですから、撮る気がなかったので。でも、「これは撮らなきゃな」って思って、制作会社を紹介して頂いて、カメラをレンタルして。”首里劇場”のおじさんにはね、3日くらい会いに行ってるんですよ。最初にいきなり行って、「撮らして下さい」は失礼だから、3日くらい通って、「お兄ちゃんまた来たね、観ていきな」とかって、だんだんちょっと仲良くなってというか。映写室を見させて頂いて、「実は今、こういう作品を撮ってて、この林由美香さんって人を・・・」って。で、やっぱりね、ずっとピンク映画とか、古い映画をかけてる方なので、由美香さんのこともね、「この人亡くなったんだ」とかって話しも出来て、「それじゃあ、うち撮っていいよ」っていう風に言って下さって。それで撮影させてもらったんですよね。


--- 「日本中の映画館のどこかでは必ず、由美香さんの映画がやってる」ってすごいことですよね。わたしは劇場で、ピンク映画を観る機会を得て来なかったので・・・。


松江:もちろんもちろん(笑)。でも、本当に普通に池袋の成人映画館とか、未だにやってますからね。


直井:3本立てなので、1本はだいたい新作で。由美香さんはなんせ、出演作品200何十本あるので、プリントがニュープリントになったり、タイトルが変わってまた出会ったりとかって多いんですよね。


松江:そんな女優さん、他にいないですよね。


『あんにょん由美香』 予告編はこちらから!







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