『あんにょん由美香』 公開記念! 「TAO」 番外編 :ゲスト→松江哲明監督 1
Wednesday, July 29th 2009
--- 本日は、弊社にわざわざお越し下さり、ありがとうございました。実はわたし、直井さんが編集長をされている「Spotted701」の大ファンで。この雑誌をきっかけに、林由美香さんや松江監督のことなど、本当にたくさんのことを知ったんです。いつも、たのしく勉強もさせて頂いています(笑)。(「SPOTTED701」創刊2周年&最新号発売記念PARTY開催決定!同誌執筆陣&同プロダクションが制作・配給・宣伝などで関わる映画関係者を迎え、2009年の上半期を振り返り、下半期に続々登場する注目の新作たちを一挙紹介!秘蔵映像、ミニライブ、ゲストトークなど盛りだくさんで送るドリーミー&カオスな夜をお届けします。詳細はこちらから!)直井卓敏(以下:直井):ありがとうございます(笑)。
--- 最新号が・・・。
直井:27日の土曜日の特集上映初日に合わせて・・・。(『あんにょん由美香』 公開記念・林由美香×松江哲明特集上映として、R18 LOVE CINEMA SHOWCASE VOL.6と題され、6月26日から7月10日まで上映済み。また、「Spotted701」は、中野ブロードウェイ「タコシェ」やポレポレ東中野などの映画館、Spotted ONLINEで購入可能です)
--- 「Spotted701」は薄いけど、ものすごく内容が濃いですよね。
松江哲明(以下:松江):詰め込み式ですよね(笑)。
直井:だんだん増えていくっていう・・・空間、隙間恐怖症で(笑)。
--- 今後とも、新刊が発売されるのをたのしみにしておりますので(笑)。さっそくなのですが・・・松江監督の最新作『あんにょん由美香』のお話しをさせて頂きますね。
松江:よろしくお願いします。
--- マスコミ試写で拝見させて頂いたんですが、会場に笑いが起こっていたりで、観客にすごく一体感があって、あったかい雰囲気でした。作品をご覧になった方からは、どのような感想がありましたか?
松江:今までの僕の『童貞。をプロデュース』(以下 『童貞。』)とか例えば、アダルトの作品とか『あんにょんキムチ』とかと明らかに違うのは、「泣けた」っていう言葉ですね。『あんにょん由美香』は実は、完成してまだ1ヶ月くらいしか経ってないんですよ(笑)。なので、僕もやっと最近客観的というか、意見が聞けるようになったというか。『童貞。』とかは完成してから時間が経ってたので、お客さんのリアクションが分かった上で劇場公開っていう風に動けたんですけど。「『あんにょん由美香』は、どういう風に伝わるのかな?」って思ってたところに、「泣けた」っていうの反応は僕にとっては意外というか、「あ、そこまで伝わったんだ」って思って、すごくうれしいですね。
今までの僕の作品で「おもしろかった」とか「笑えた」っていうのは聞くんですけど、素材を撮ってて、「ここ、おもしろいな」とか「ユーモラスだな」っていうところをどういう風に見せれば笑いになるのかっていうような、編集での見せ方というかはもう、何となく分かるんですよ、お客さんをのせていく感じは。でも、この映画に関しては、泣けるような編集の仕方というか・・・ってあまり、僕はやったことがないというか。ただもう、作品に出て下さった方達の気持ちだったりとか、自分が託したいことっていうのだけは丁寧に伝えようと思って。それが結果、「泣けた」っていう言葉だったりとか、あと予想以上に、女性のリアクションがよかったっていうか。題材が題材で、僕としては由美香さんのような生き方というか、こういう生き方をした人がいたんだっていうことを・・・かつ、こういう風に男達に愛された人なんだっていうことを出来るだけ、女性に知って欲しいなあと思って。
例えば・・・今流れだから話しますけど、僕、自分の映画を観て欲しい人っていうのが、もちろん特別僕の作品を連続で見てくれる方とか「映画を好きで」っていう方もいると思うんですけど、やっぱり、「新しい人と出会いたい」って常に思うんですよね。テレビではやってない表現、映画でしか出来ない表現っていうのをやっぱりすごい意識して、見知らぬ人と一緒に映画を観た時に、その人の生活に戻った時にこう、ふっと大事なものになってるといいなって思うんですよ。「人にどう届けたらいいのか」っていうことをいつもすごい意識してますし。今、映画がもうまさに二分化されちゃってる時代じゃないですか。ものすごい宣伝してる、THE MOVIEっていうようなメジャーなものとインディペンデントで作んなきゃいけないものと。で、正直言って、インディペンデントの作品が映画でしか出来ないことだったりをしてるのかっていうと、僕は決してそうじゃなくて、「もう君、プロって言っちゃえばいいじゃん」っていうか。プロになるための練習みたいな自主映画って、一番嫌いなんですよ。やっぱり、『トランスフォーマー(/リベンジ)』と同じお金を取るんだったら、『トランスフォーマー(/リベンジ)』にはない映画的興奮をお客さんに1800円分返さないといけないと思うんですよね。だから、そういう時に同じような土俵とか予算っていう言い訳をしたくないんですよ。本当にじゃあ、マイケル・ベイに出来ないことって何だろうとか、(スティーヴン・)スピルバーグに出来ないこととかっていうのも・・・僕もそういう映画大好きですから。じゃあ、そういう分かりやすい宣伝で引っかからない、「日常にないおもしろいものが観たいけど何かないな」とかっていう人がふらっとこのタイミングで僕の映画を観てくれて、何か「明日がんばろう」でもいいし、「由美香さんみたいなこういう恋愛したいな」とか「こういう生き方もあるんだな」っていうみたいに出会ってくれるとうれしいですね。
--- わたしもこのタイミングで改めて、林由美香さんを知って、松江さんの作品で新しい出会いをさせて頂いた1人ですね。由美香さんの全記録をまとめた書籍「女優 林由美香」によって、彼女が主演した謎の韓国産エロビデオ『東京の人妻 純子』(以下 『純子』)を発掘されたそうなのですが、この作品に出会わなければ今作を撮られることはなかったんですよね?
松江:そうですね、ないと思いますね。やっぱり、『純子』があったから撮れた。僕が由美香さんを撮れる題材が見つかったってことなんですよね。それは作品でも語ったり、プレスでも書いたように、僕自身由美香さんに、「松江君、まだまだね。」って言われた経験があって(笑)。で、やっぱり、由美香さんに出てもらう以上は、「自分の中でこれだ!」っていうものじゃないといけないっていうのがあったんですよ。それは『由美香』とか『たまもの』を観てるからで。シナリオの完成度がいまいち低いものでも、由美香さんが出ることによって、ピンク映画のレベルを上げるというか、お芝居でクオリティーをすごく上げてたところってあると思うんですけど、僕が由美香さんに出てもらったりする時は、ちょい役とかありえないんですよ。自分の中でこわかったんですよね、由美香さんに出てもらうっていうこととか、作品を観てもらうこと自体が。自信があったものでも、「これでもだめだ」って言われたら、もう2度と観てもらえないというか。そこはやっぱり、ずっとあったんですよ。そういう気持ちでいたうちに亡くなってしまって、「ああ、撮れないまんまだった」っていうのがあったので、亡くなった後に「由美香さんの作品撮ろう」っていうのはなかったですね。柳下毅一郎さん(映画評論家。特殊翻訳家。女優・林由美香の膨大なフィルモグラフィーをまとめた「女優 林由美香」では監修と担当。林由美香を「最後の映画女優」と評した)は、お通夜の時だったかな?その後のイベント上映とかで、「女優 林由美香」っていう本を作るって聞いた時、もちろん僕も書かせて頂いたりっていうのはあったんですけど、自分が由美香さんの映画を撮るっていうのは全くなかったですね。
でも、『純子』観た時に、「これだったら撮れる」って思ったんですよ。自分がつっこめるというか。僕だったら撮れる=他の人には撮れないだろうっていうのがあったんですよね。というのは僕がずっとこう・・・最初『あんにょんキムチ』っていうのを撮った時から、韓国という国自体に興味があったというか、僕が在日三世っていうのもあって。「なぜ、自分が撮れるか?」っていうのがあるとすると、つっこめるんですよね、韓国に対して。例えば、あの『純子』って作品を観た時に、日本の人はもちろん作品を観て笑えはするけど、「これ下らないよね」ってとこまで言えるかとか、この作品のメイキングを撮りながら、美談になっちゃうんじゃないかとか、日本の人が撮ったら。でも、僕だったら、韓国人のアイデンティティというか、それが出来るなって思ったんですよ。
日本の人が在日を語るとか韓国を語る時に、『セキ☆ララ』って作品をやった時なんですけど、すごい印象的だったのは、韓国人・・・在日の女の子と話してて、日本人の男優さんが韓国について、在日について話を聞くんですよ。そうすると、もちろん彼は知らないんですよね。それで、年下の女の子に「ごめんね」って謝ったんですよ、「知らなくて」って。でも、こういったことってよく聞くんですよね。日本の人って知らないことに対して、すごい引け目というか「ごめんなさいね」っていう風に言っちゃうあの感じがやっぱり、すごい僕も言われたこともありますし、経験して分かるんですよ。その、出ちゃうってことが。もしくはその一方で、韓国にも行ったことがない、アジアの国を見たことないっていう人の言葉がものすごく強い・・・絶対僕、彼らは韓国行ったことないと思うんですよね。国に1回行ったら、ああいう言葉って出ないと思うんですよ。韓国とかに対しても、どこが間違ってる、正しいとかっていうんじゃなくて、「間違ってるけどおもしろいじゃん」って言えるような何か、その強さが『純子』にはあったんですよね。で、この作品自体を調べる=やっぱり、自分が今まで撮ってきたことの韓国に対する、おもしろがり方というか、それも描けるし、由美香さんのことも描けるような気がして。それがどこまで描けるかは正直、スタートした時は分からなかったんです。
この作品はもともと脚本を用意して、“フェイクドキュメンタリー”として作ろうと思ったんですよ。それで、構成協力に向井康介くんの名前が入ってるんですけど。そういう風にして、自分の中で作り込んで描きたい韓国だったり、由美香さんっていうのを撮ろうとしたんですけど、結果、撮っていくうちに、取材終わる度に、「これはおもしろい」っていう発見が常にあったので、だんだん、フェイクにする必要がなくなってったんですよね。予想してたことが外れた時に「おもしろい」って思えたんですよ。“予想外”っていうのはやっぱり、予想しないと何が“外”なのか分かんないじゃないですか?だから、撮りながら自分の思惑というかが「どんどんどんどん崩れるな」っていうのが気持ちよかったですね、撮ってて。
『あんにょん由美香』 予告編はこちらから!
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左から:『あんにょん由美香』 サントラ、『由美香』、『たまもの』、『女優・林由美香』、 『セキ☆ララ』、『デトロイト・メタル・シティ: スペシャル・エディション』、『童貞の教室 よりみちパン!セ』、『童貞。をプロファイル』、『ばかのハコ船』、『手錠(ロスト・ヴァージン やみつき援助交際)』、『花井さちこの華麗な生涯』











