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HMVインタビュー:Smooth Current

Monday, June 8th 2009

interview

Smooth Current

より綺麗なサウンドにすれば出来るんだけど、敢えてそうはしたくなかったんだよね。

--- ここでちょっと、リョウさんの活動を遡りますけど、Gems(Smooth Current氏主宰のレーベルから出していたアナログEPシリーズ)が出たくらいから、このシーンって徐々に大きくなっていったって思うんですけど。あれ、相当売れましたよね?

R:そうね〜、正直、一枚目は話題先攻だった所もあるし、自分たちも初めてのアナログで手探りだったんで、実際に形になり始めたのは2枚目くらいからかな。といってもまあ、人件費等も含め、正直かなりのコストが掛かってるし、ヴァイナルだから大変だったけど、ああいうものを世に出すっていう役割としては、それなりに良い結果には結びつけられたな。

--- で、『Blue Chronicle』があって、ShinSight Trioがあって、去年、HMVの渋谷とオンライン10周年を記念したミックスCDをLevitatorz(Smooth Current, Shin-Ski, Mista Donutの3人によるユニット。Mix CD『Live@somewhere』はインタビュワーであるsKiTTが企画・発案)をやってもらって、それでようやくソロ・アルバムって流れが出来てますよね。

R:その間にUltra VybeでオフィシャルMix CD『Optical Axis』もやったし、今年は「動」の年にしたいなっていうのがあって。いつもマイペースな分、今年は攻めるっていうか(笑)。

--- Levitatorzって、メンバー個々では結構知られているじゃないですか。リョウさん、Shin-Skiさん、Mista Donutさん...。

R:そうだね。これまでLevitatorzって作品を出すような活動はしてなくて、それこそ知る人ぞ知る存在っていうか、個々の活動履歴から辿ってくれてライブとかイベントのオファーがあって出たりはするけど、実際アルバム・スケールでのリリースはしてないし、っていう。ものすごい地下では知られているっていうか。

--- 僕はそれを上に引っぱり出したかったんですよね。

R:それで話もらった時は、びっくりしたもんね。レヴィ(Levitatorz)で出しちゃって大丈夫?って(笑)。

--- いや、大丈夫ですよ。実際、あのミックスCDは売れましたし、HMV ONLINEでも、発売日2日後には速攻で売り切れちゃって追加しましたもんね。

R:だから、話もらって嬉しかった反面、そういう結果が出せてホッとしたっていうか。

--- そういうのがありつつ、やっとアルバムを出したわけですけど...。なんで、こんな遠回りしちゃったかというと、アルバムのイントロ「The Beginning...」の冒頭部分に、レヴィの曲とか、Gemsの曲とかをラジオっぽく薄く入れてるじゃないですか。そういうのも聴いてもらいたいなって思って、わざと話したんです(笑)。

R:さすが、よく聞いてくれてるね(笑)。 ここまで辿り着くまでのいろんなこと...自分だけじゃなくて、Shin-Skiとか、ShinSight Trioとか、Levitatorzとかの活動とか、現場のDJだったり、それに付随するいろんな仲間がいて、やっとここに来れたっていう。浪花節になっちゃうけど、そういうのがあってここまで辿り着いたっていうのを、自分のことだけプロモーションするんじゃなく、通ってきた道筋を全て入れたかったんだよね。あのコラージュの部分でそのメッセージ性は伝わっていると思うし。

--- その後、Insightとの曲「Disbelievers Clear The Way」。ここの曲順はリョウさんのDJスタイルと似てるなって思います。ゆるーく始まって徐々にあげていくって。

R:そう?そもそも、全体の曲順に関しては、J-44社長と色々ディスカッションしたりして決めたんだけど、イントロ〜Insightの流れだけは絶対譲らなかったのね(笑)。他はある程度柔軟に入れ替えていったんだけど、ここだけは自分の中のテッパンで。

--- Insightとは、ShinSight Trioの時からですか?

R:そうね〜 。 Insightの前のアルバムからかな。彼のアルバム『Targeting Zones』(04年)でリミックスをやらせてもらってからで。あと、彼が日本にツアーで来た時、DJやってから交流が始まってという...。

--- あと、オレ、一番強烈だったのって、キックとスネアの音なんですよ。スゴいイイ鳴りしてるじゃないですか。 オレはあれで持ってかれたっていうか。Da Beatminerzが昔作っていたような、太くて潰れたようなスネア音っていうか。

R:お〜 嬉しいね〜!ビートにはこだわるけど、あとはスタジオワークでUmessun(ミックス&マスタリングを担当)に頑張ってもらって。ただ出すんじゃなくて、質感や他との相性も大切だし。

--- そこがジャジーで括られている人と違うなっていうのを、最初に聴いて欲しいなって思いますね。

R:いえいえ。

--- 次のSubstantial参加の「The Dream Chaser」。リョウさんに直接言うのも何ですが、僕的には、初期のHydeoutっぽいかな 〜って(笑)。

R:そ〜かな?オレは全然意識してないんだけど...(笑)。確かに初期のHydeout関連イベントはだいたい出演してたし、スタン(Substantial)のその頃の曲ももちろん聞いてたけど、そこに寄せたつもりは全く無く、ホントにゼロから作った音で、Ken(Kenichi Fukushima)と2人で色々とディレクションしていったらこうなったってだけなんだよね。まぁスタンの声からそこを連想する人も多いのかな〜とは思うけど。

--- Substantialのラップって早いBPMのトラックに合いますね。

R:昔の音源もそうだけど、以前NYに行ったとき、スタンのライブ誘われて見に行って、そういった所でも彼に合うテイストは知ってたからね。

--- 次の曲「Re: Strain Of Stairs」が前半のハイライトですよね。

R:この曲は、もともと「Strain Of Stairs」(『Blue Chronicle』収録)っていう曲があって、それとでー対っていうか、あの曲を「好きです」って言ってくれるリスナーの人が多かったし、自分的にも思い入れがあって、もう一度しっかりリメイクして出したいなって思ってたんだ。

--- ミックス作業前の音をミックスCD『Optical Axis』に入れてたじゃないですか?あれと、今回のアルバムに入ってる最終版とで、だいぶ変わっているんで、そこを聴き比べてもらえると面白いですよね。

R:なんていうんだろう。より綺麗なサウンドにすれば出来るんだけど、敢えてそうはしたくなかったんだよね。スタジオで、Umessunに「大丈夫っすか?ビート割れちゃってますけどいいんですか?」って。「いや、いいんだ、パッキパキにして。」「これホント割れちゃいますよ。」「いいんだいいんだ」ってやり合いがしばらく続いて(笑)。この曲に関しては綺麗なイメージは捨ててくれって(笑)。

--- 思い入れがある分、一番、再構築し直しで時間が掛かったんですかね。

R:ほんとは全部音を丸投げ出来ちゃえばいいんだけど、自分で理想に近い形まで作り込んでしまうクセがあって、最初にスタジオに入って一回エフェクトとかも含めゼロにしてから作りだすわけだから、そこからまずは自分の仕上げた音のイメージに近づけていくっていう作業で、Umessunに手間かけちゃうっていうか、そういう悪いクセがあって。でも、この曲に関してはイメージが自分なりにあって、大変だったけどウメのおかげで形にできたかなって。

--- キラートラックというのが一番相応しいんじゃないですかね。

R:そうね。自分でもこの曲は押し曲の1つでもあるし、実際この曲でPVも作ってもらってるからね。

profile

東京出身のDJ/トラックメイカー。空間創りに長けた選曲とスキルを交えた流麗なDJプレイで幅広い支持を集め、ホームイベント『Pleasure』のレジデントの他、日本各地のイベントや海外有力アーティスト達の来日時には欠かせない存在だ。数多くのミックス作品も手掛け、収録曲がレコード店でのセールスに影響力を持つなど、DJとしての「確かな耳」を持つカリスマとして注目を浴びている。DJ活動と並行して、Shin-Ski、Mista Donutとの技巧派トリオ=Levitatorzの一員としても活動。トラック制作の他、MPC・ターンテーブルを駆使したライヴも行っている。リミックス・楽曲提供等で交流を深めていたボストンの奇才InsightとShin-Skiとは、国境を越えたヒップホップ・ユニットShinSight Trioを結成し、アルバム『Shallow Nights Blurry Moon』をリリース。全スクラッチを担当し、アルバムの評価を高めた。トラックメイカー"Smooth Current"として、累計1万枚を超えるアナログとしては異例のビッグ・セールスを叩き出した『GEMS EP』シリーズ、その発展形アルバム『Blue Chronicle』のリリースがある他、Insight、Time Machine、Lushlife、Pete Philly、E-Reece & Core Elements、Shade & Blu-Swing、Midicronica、Inhelit(DJ Chika for Cradle)等、国内外アーティストのリミックス・楽曲提供で、オリジナリティ溢れるサウンドを聴かせている。'08年秋には、サンフランシスコのレーベルOMの顔的存在Mark Farinaによる人気シリーズ『Mushroom Jazz』の最新盤にも楽曲提供し、海外からも高い評価・注目を集めている。長いキャリアで築き上げた実績・人気を誇りながらも、アルバム・スケールでのリリースが無く、待望されていた唯一の存在であったこともあり、事実、メジャー/インディー各社からのアルバム・オファーが多数寄せられた実力者だ。'09年1月には、初のオフィシャル・ミックスCD『Optical Axis』をリリースし、流れるように美しい構成美とセレクションでスケールの違いを見せつけた。'09年6月、デビュー・アルバム『Maintain The Focus』をリリース。

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