--- 『DEAD END RUN』では、劇場でライブを体感しているような音響の仕掛けをされていましたが、またああいう効果とは違う試みですよね?
石井 普通にドラマを撮るにしても、ただの音じゃないとは思う、凝るとは思うんですけど(笑)・・・より、技が巧妙になるかもしれないですね。例えば、ハリウッドなんかでも、『
ファイトクラブ』の
デヴィット・フィンチャーとかも"娯楽映画"なんだけど、音をすごく創造的な使い方をしてるし、アートだったら、
ゴダールとか
デヴィッド・リンチとかはやっぱり、独自のサウンドデザインをしてるんで、自分がどのへんでやっていけるかっていうのは題材が・・・シナリオが出来て、プランニング出来てからやろうと思うんですけどね。あとは、それにかけられる予算?どのあたりで勝負するのかっていう。
--- 石井さんが作ろうとされている作品はやっぱり、お金がかかりますよね?(笑)。
石井 うーん、「お金がかかる」っていうとプロデューサーが尻込みするんで(笑)・・・。
--- (笑)。
石井 「お金はかからない」です(笑)。工夫でやります。工夫して・・・知恵は使うけど、余計な、無駄なお金は使いません(笑)。
--- 知恵は使うけど・・・(笑)。お金じゃないですよね。
石井 そうなんですよね。本当はお金じゃないんですよ。全然あの・・・大事なことは、低予算でも出来るし、お金をかければかけたでまたそれはそれで大変だから。お金のダイナミズムってあると思うんですけど、たくさんお金があるっていう。ただ、お金を上手く使うのもすごく、クリエイティブなことなんで。なかなかそれはそれで・・・でもそれは自分が選ぶことじゃないというか。(お金は)あればあった方がいいんですけどね(笑)、もちろん。
--- そうですね(笑)。
石井 あったら、いくらでも使ってあげますから(笑)、クリエイティブにね。インディーズ出身なんで、無駄金使うのはすごい嫌なんですよね。
--- "その時にしか撮れないものを出し惜しみせずに撮り切る"っていうのが、一貫して変わらない石井さんの"信条"なんですもんね?
石井 そうですね。それはもう、"信条"ですね。それはもう、絶対変わらないと思う。「毎回デビュー作品で、毎回遺作だって思って撮る」っていう(笑)。「貯金ゼロにしてしまいたい」っていう。そうしないと、また新しいアイデアっていうのは入ってこないんですよね。逆にいうと、そこまでやらないと「見えてこない」っていうかな。
『
鏡心』なんかでは、あれからほとんど動きが止まってたんで・・・(笑)。ちょっと、"色即是空"な世界に入ってたから、作り終わってそれは少し反省したんで、今後はやっぱり、"動く映画"を・・・(笑)。
--- そうですか?(笑)。
石井 うん(笑)。そういうのを撮っていきたいなって思いますけどね。さっきも言ったように、切り離した方がいいかもしれないですね。アートっていう文体・・・時間は必要としないっていうのかな?まあ、例えば・・・ふらっと観て、ある種のインパクトがあるっていうものと、映画っていう、1時間半とか2時間とかきちっとあって、何か・・・そこで自分が今後、物語性とドラマ性とあとは人間のキャラクターみたいな・・・そっちは"劇映画"を大切にしていって、こっちはより純粋に・・・もうそういうことはすっ飛ばして、全くの自分の表現・・・そういうまあ、たぶん2本立てで行くんだろうなって思ってますけどね。
で、神戸の方がそれが両方出来る。お金がいらなくて、アーティストと職人がいるわけだから。で、今はもうね、ハイヴィジョンのね、こんな小さなスチールカメラでも、ハイヴィジョンの映像撮れますからね。個人でそういうアート映像が撮れるようになったんで、そのことも、大学でやってることは大きいかもしれないですね。
--- 最後に質問させて頂きたいんですが・・・今までのお話しにもつながるとは思うんですが、石井監督にとっての"娯楽映画"を撮るということがご自身の「宿命でもある」ともおっしゃってましたが・・・。
石井 そうですね。自分の宿命はある種やっぱりその・・・わたしは、"表現の本質"みたいなことをきちっと・・・「何故人間が表現を必要とするのか」「何故映画を観たいのか」っていうことの自分なりの答えをきちっと果たしたいし。ただ、それを純粋にやれば、アート映画・・・
(アンドレイ・)タルコフスキー監督すごい好きなんですけど、
(セルゲイ・)パラジャーノフとか
ゴダールとか・・・それだけを追及するっていう。それは、実にたのしいと思う。
ただ自分の役割り、映画の世界の中での自分の役割りっていうのは、"娯楽映画"という・・・みなさんが観て初めて成り立つ映画というのかな。たくさんの人が観れる作品。表現の本質は失わずに、でも娯楽として観れる映画という・・・娯楽と芸術の中間をやるのが一番おもしろいと思ってるんですよね。だけど、難しい(笑)。
個人でやる分にはね、別に自分が調合すりゃいいんだからそれでいいんですけど、"娯楽映画"の場合どうしてもお金がかかるんで、個人の持ってるお金で収まらないから。収まる場合はもう、アートでいいと思うんですよね。「俺が好きに作るんだから、ガタガタ言うな」っていう(笑)。
だから、"娯楽映画"でお金がかかる場合は、お金を出す人がいますし、入場料払って観る人が必要だから、それによってある予算とかそういう生活が成り立ってるわけじゃないですか。そこをきちっと満足させてあげなきゃいけないんで、その調合はなかなかやっぱり、簡単ではないので、その試行錯誤を8年間やってるって感じですかね。で、それが世に出る時には、ある種1つの自分なりの回答をそこで見せるっていうことだと思います。今それに取り組んでて、まあ、いい線いってると思いますけどね(笑)。
"激しくて美しい映画" 撮りたいですね。逆かな?"美しくて激しい映画" 、うん。
--- その"美しくて激しい映画"が完成されるのをたのしみにしておりますね。本日は、ありがとうございました。
石井 こちらこそ、ありがとうございました。
おわり
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