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『罪とか罰とか』 ケラリーノ・サンドロヴィッチ監督 2

Monday, March 2nd 2009

ケラリーノ・サンドロヴィッチ
 
『罪とか罰とか』 

ケラリーノ・サンドロヴィッチ監督 INTERVIEW



ケラリーノ・サンドロヴィッチ監督ことKERAさんとお会いするのは、
グミ・チョコレート・パイン』以来、これが2回目になる。
自分のインタビュー史上でも、同じ方に再度お会いすることは初めての経験であり、記録的。

初"映画"監督作品『1980』の時から、KERAさんが愛する"モンティ・パイソン"っぽいテイストの映画を
作ることへの禁止令が出ていたそうだが、今作においては、それが何故か"解除"になったということで、
以前よりさらにも増して、KERAさんがやりたかったことをやってしまった感が多分!

成海璃子ちゃんが本格コメディに初挑戦!」と謳われていることが多い、この『罪とか罰とか』は、
冒頭からいきなり、意表をつかれることとなる。そしてそのまま・・・エンディングまで。

また、KERAワールドには欠かせないあの人この人はもちろん、「意外なところにあの人が!?」と
ちょっと役でも豪華な出演者の方々もお見逃しなきよう。

KERAさんにとっての犬山イヌコさんの存在についてやKERAさんの頭の中のソースを少しでも、
みなさまにお召し上がり頂ければ・・・ありがたきしあわせ。

テアトル新宿、シネマライズ他にて全国公開中!



INTERVIEW and TEXT and PHOT: 長澤玲美




あの中川慶一くんのナレーションは、
『トニー滝谷』と『プロジェクトX』が頭にあったの。




---  まずあの・・・初めのオープニングというか、冒頭部分からもう意表をつかれたんですけど、段田安則さん演じる・・・。


KERA  加瀬吾郎。


---  ええ。加瀬吾郎の1日・・・というかが初めにあって、あれは、中川慶一さんのナレーションなんですよね?


KERA  そうです。中川(慶一)くんっていう。


---  あの声のトーンとか雰囲気がすごくよかったです。


KERA  あれはね、亡くなった市川準監督のイッセー尾形さんと宮沢りえさんが主演の『トニー滝谷』で、西島(秀俊)くんがナレーションやってるんですけど・・・。


---  されてましたね。


KERA  あれが頭にあったの。そのトーン、静かなトーン。あと、『プロジェクトX』ね。


---  『プロジェクトX』も?(笑)。


KERA  うん。「そういうトーンで」っていうオファーだったんですけどね。


---  「あれがどういう風に発展して行くんだろう・・・」っていうのが全く読めなくて、その後、あのコンビニのシーンにつながっていきますけど・・・。


KERA  うんうん。


---  あの・・・外人さんが出て来ますよね?


KERA  うん、黒人の人ね(笑)。


---  ええ。KERAさんの作品で、ああいう外人さんが何かセリフがあるとかって、あんまりない・・・。


KERA  ないねえ。だって、外人とコミュニケーションするの苦手だから(笑)。出来るだけ、子供と外人は・・・笑わせやすいんだけど、監督としてはあんまり・・・「出来ればなしでいきたいな」っていうのはあったんですけどね。あれ、舞台でやったギャグなんですよ。


---  そうだったんですね。


KERA  もう"鉄板"なんだけど・・・。


---  ええーっと・・・(笑)。


KERA  "みざりチンコうねかた"・・・うちみ、ねんざ、肩こりね。(注:うちみ、ねんざ、肩こりを箇条書きにしてみて、右から縦に読んでみて下さい)でもそれは、100発100中だったから、もうギャグとしては"鉄板"なんだけど、舞台では、中越(典子)が読んだのね。でもやっぱり、映画だとリアリズムの世界だから、外人とかじゃないと説得力ないでしょ?だからそこはちょっと、「マストで外人で」っていう風に言ったんですけど。舞台ならちょっと、まあコント的な舞台だったから、まあ誰でもいい・・・誰がそれをやってもギャグとしてね。でも、映画で日本人があれ間違えて読むってあり得ないもんね(笑)。


---  そうですね(笑)。でもあの・・・やっぱり、外人さん出てきちゃうと笑っちゃうじゃないですか?例えば、ダウンタウンのコントでも、「板尾の嫁」とか(笑)。


KERA  「板尾の嫁」ね(笑)、うんうん。


---  それに笑っちゃうのと一緒で、もう・・・「やられた!」って思いましたね(笑)。


KERA  「本当にわかってない」っていう、無自覚性が強調されるからだよね(笑)。何か頼まれて、ただ出て来てやってるっていう(笑)。「この人、自分の役割りどこまでわかってるんだろうなあ」っていうのがおもしろいですよね。で、あの黒人さんもさ、カメラが止まった時に旦那の話しとかするのね。で、旦那は日本人で税関で働いてるんだって(笑)。


---  へえええ(笑)。


KERA  で、そういう話しもおかしいですよね(笑)。


---  日本にはあの・・・結構長く住まれてる方なんですかね?


KERA  あの人?(笑)。


---  ええ(笑)。


KERA  そうみたい。「結婚して、旦那が税関で働いてるから」って・・・(笑)。


---  結構・・・ちゃんとした旦那さんなんですね(笑)。


KERA  そうそう、堅いことやってんだよね。


---  ちょっと、外人さんに笑わせられたので、このことはぜひ、お聞きしたかったんです(笑)。


KERA  あの人のこと言った人、初めてだな(笑)。


 
だって、外人とコミュニケーションするの
苦手だから(笑)。





---  本当ですか?(笑)。KERAさんの作品のイメージって、わたしの勝手な解釈なんですけど、何かすごく"ぴゅんぴゅん"してるっていう言葉が似合うなって、勝手に思っていて・・・。シュールであり、ブラックであり、でも何かこう・・・KERAさんご自身では、メッセージ性っていうところまでは考えてらっしゃらないのかもしれないんですけど、ちょっといいことを言ったりするシーンもあったりして、そういうバランスがすごく絶妙で大好きなんですけど、そういった要素を含めたKERAさんの作品を音で表すと、"ぴゅんぴゅん"って感じなんです。それで、その"ぴゅんぴゅん"が今作は、以前の作品にも増して強い印象が・・・"ぴゅんぴゅん"がちょっと強い・・・(笑)。


KERA  「そうですか」としか言いようがないけど・・・(笑)。舞台はさ、最近わりとウエットな作品が続いてて、『罪とか罰とか』は舞台でいうと、80年代の終わりから90年代の前半とかにやってた舞台のテイストなんですよね。だから、確かにその頃は、今舞台でやってる感じはかなり落ち着いたことをやってるけど、もっと何か、そうね?(笑)。"ぴゅんぴゅん"してたかもしれないね、うん。舞台装置もその頃はあんまりなかったし、ほとんど段差とかだけでどんどん、時間とか場所が飛んでっていう。


---  すみません、何か"ぴゅんぴゅん"ばっかり言って・・・(笑)。ええっと・・・タイトルが『罪とか罰とか』ですけど、『彼女の一番長い日』っていうタイトルの予定だったんですよね?


KERA  そうです、そうです。


---  このタイトルに最終決定されたのは、どういう理由だったんですか?


KERA  それはね、製作委員会が決めました(笑)。


---  製作委員会が・・・(笑)。


KERA  最初ね、『アヤメ』ってタイトルだったの。


---  『彼女の一番長い日』から『アヤメ』に?


KERA  うん。「『アヤメ』にさせてくれ」って言われて、「絶対ヤダ」って言ったの。あの・・・別に、だったら、主人公の名前をもっと考えた。まさか、タイトルになると思わないからさ。本当、1分か2分で決めてんだよね。


---  "耳川モモ"も?


KERA   "耳川モモ"も。考えてないもん(笑)。で、"耳川モモ"はまだいいんだけど、あの・・・円城寺あやさんっていう女優さんがいるんですよ。(劇団)夢の遊眠社で、段田(安則)さんの先輩だな?同期かな?で、その円城寺あやさんの名前に"め"を付けただけだから(笑)。だから、それがあんまりクローズアップされると思ってなかったから、「ちょっとアヤメはなしでしょう」っていう。で、これになったんですね。


---  この『罪とか罰とか』の"とか"がKERAさんっぽいといいますか・・・。


KERA  うん。すごいいいなって思ったんです、これ聞いた時に。


---  それも製作委員会の方から提案があって?


KERA  そうそうそう。


---  警察が出てくるテイストのものだから、"罪と罰"なんですかね?(笑)。


KERA  じゃないですかね、きっと(笑)。うん、たぶん。


---  名前のことで・・・警官役の名前のサブのネーミングで、(六角精児さん演じる、林巡査部長=)"歯槽膿漏"とか、(廻飛雄さん演じる、平川=)"極めて目の悪い警官"とか・・・。


KERA  ああああ、はいはいはいはい(笑)。


---  (林和義さん演じる、大野木特設資料班=)"抜け毛"とか、(島田曜蔵さん演じる、太った警官=)"関取"とか、"排尿する警官"とかってあったんですけど・・・。


KERA  ああ、クレジットのね。


---  ええ。あの名前とかも、ナレーションで入ったりしますよね。こういう名前も本当にぱって思い付かれて書かれてるんですか?


KERA  "歯槽膿漏"と"抜け毛"はね、元の舞台があるんです、『ビフテキと暴走』っていう。その中で犬山(イヌコ)がそば屋の店員で、そのそば屋の店員がアイドルの演歌歌手みたいになって、で、一日所長になって、指令を出すっていうシーンがあって、10分くらいの短いシーンであるんですよ。それをもうちょっとこう・・・もっともらしく膨らませたのがこの映画なんですよ。で、"歯槽膿漏"と"抜け毛"はその時からあったんですよね。


---  この2つに他も加えて、おもしろい名前がたくさん・・・(笑)。


KERA   (笑)。"排尿する警官"とかは、台本上は、何か違う名前があったんだけど、観てる人にはわからないから、名前呼ばれないからね。それでそういう風に書いたんですね。で、今回はエンドクレジットに一応、「誰がどの役をやったかっていうのがわかるようにしたいな」っていうのがあって、前2作は全部、名前が役者名だけなんですけど、今回は一応、「配役がわかるようにしたい」っていうのがあって、で、"排尿する警官"とかはその時に慌てて考えたんですよ。


---  やっぱりあの・・・わたしは、KERAさんのそういう言葉遣いというか・・・それがすごく・・・いちいちツボに入るんですよね(笑)。


KERA   "排尿する警官"が?(笑)。


---  "排尿する警官"とかあの・・・例えば、"歯槽膿漏"であったり"抜け毛"であったり、絶対、警官の名前でそういう風に呼ばれたりすることはないじゃないですか?


KERA   そりゃそうだよねえ(笑)。そりゃそうだよ(笑)。


---  (笑)。なので・・・意表をつかれることがすごく、KERAさんの作品では多くて、そういう驚きみたいなところもあって、すごく大好きなんですけど。


KERA  (成海)璃子もそうだと思うんですよ、きっと。似たようなところに反応するなあ。



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罪とか罰とか 『罪とか罰とか』

2009年2月28日(土)より公開中!成海璃子×ケラリーノ・サンドロヴィッチ。キュートでミラクルな猛毒ポリス・コメディを完全ノベライズ。

   
グミ・チョコレート・パイン 『グミ・チョコレート・パイン』

脚本・監督:ケラリーノ・サンドロヴィッチ×原作:大槻ケンヂ×テーマ曲:電気グルーヴ!

   
1980 (イチキュウハチマル) 『1980 (イチキュウハチマル)』

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時効警察 『時効警察』

斬新な発想を軸にミステリー要素と散りばめられた笑いのエッセンスが共存するドラマ。脚本・ 監督には三木聡、岩松了、園子温、ケラリーノ・サンドロヴィッチら。

   
帰ってきた時効警察 『帰ってきた時効警察』

圧倒的な人気、驚異的なDVDセールスを記録した人気ドラマ『時効警察』が更にパワーアップして帰ってきた!TV未放送シーンを大量に復活させた特別本編!

   
犯さん哉 『犯さん哉』

最高のコンビ?最悪の組み合わせ?「大人の毒気」と「子供の奔放さ」を併せ持つ2人の中年、ケラリーノ・サンドロヴィッチと古田新太ががっつりタッグ!

   
Slapsticks 『Slapsticks』

作者のケラリーノ・サンドロヴィッチが「1920年代の偉大なるフィルム・メーカー達への感謝状。または、百年後には後片もなくなっている僕達自身への賛辞」と綴る、唯一のロマンス戯曲。

   
労働者 M 『労働者 M』

堤真一×小泉今日子×松尾スズキが集結!近未来と現代の日本を舞台に展開する、ケラリーノ・サンドロヴィッチ書き下ろしの傑作SF革命喜劇。

   
カメレオンズ リップ 『カメレオンズ リップ』

笑いとペーソスの絶妙なバランスを独特な感性で演出するケラリーノ・サンドロヴィッチの、シアターコクーン初登場作品。誰が何をねらっているのか、ウソの動機も結果も謎だらけの、「文系」クライム・コメディ!

   
Don't Trust Over 30 Horipro Xnylon 100c Special Session 『Don't Trust Over 30 Horipro Xnylon 100c Special Session』

現代からカントリー&ウエスタンが流行した1958年へ、さらに1968年へタイムスリップ!

   



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